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  • 公開日:2019.07.01
  • 最終更新日: 2025.03.02
食品ロスに打開策―廃食材から染料の再活用広がる

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

食品から生まれた色を着ることで食品ロスの解決策に

廃棄予定の野菜や食材を染料として再活用する豊島(愛知県・名古屋市)が展開するプロジェクト「FOOD TEXTILE」がフードロスへの関心から広がりを見せている。カゴメのトマトから「赤」、コーヒー残渣から「ブラウン」の色素を抽出するなど、豊島が染料として利用するのは食品メーカーの規格外野菜や廃棄食材だ。同社は食品の色素を染料化する独自の技術により、商品化を推進する。食品ロスの解決策と、ファッションメーカーのエシカルやサステナビリティへの関心の高まりが相まって、用途や販路も拡大している。(環境ライター 箕輪弥生)

廃棄レタスからさわやかなイエローのTシャツ、紫キャベツからシックなピンクのネクタイなど、「FOOD TEXTILE」が提供するのは食品から生まれる自然で温かみのある色合いが特徴だ。

ひとつの食品からつくり出される染料は1種類に留まらない。豊島の独自技術により、ひとつの食品から複数の色をつくり出すことができ、色落ちも少なく堅牢性も高いという。

2015年に始まった同プロジェクトは、キユーピーのCSR事業部から廃棄食材の削減について相談を受けたことから始まった。現在、食材を提供するメーカーは、カゴメ、タリーズコーヒージャパン(東京・新宿)、ハーブの輸入販売を行う生活の木(東京・渋谷)などの食品関連企業から農園まで約15社に広がった。

豊島は食品メーカーと製品をつくる企業・組織の橋渡しをし、布地の提供から製品づくりまでを行う

国内の食品ロスは年間600万トンを超えて高止まりし、その対策として今年5月に「食品ロス削減推進法」が成立したことなどから食品ロスへの関心はさらに高まっている。同プロジェクトでは廃棄食品を有価物として買い取るため、食品メーカー側では廃棄予定の食材が再利用されるだけでなく、廃棄物処理に関わる費用が圧縮されるというメリットも生む。

他ブランドとのコラボレーション進む

同プロジェクトを立ち上げ、推進してきた豊島の谷村佳宏氏によると、ファッション業界でもエシカルや環境への配慮に対する注目度が高まっているため、自社のオリジナル製品に加え、企業のコラボレーション企画が増えているという。

そのひとつが、コンバースフットウェア(東京・港区)が今年8月に販売する環境に配慮したエコ素材を使用するシューズ、「オールスター フードテキスタイル HI」だ。展開する3色はコーヒーの豆かすからブラウン、生活の木の規格外ハーブから青を、そして散った桜の花びらから淡いピンクに染め上げた。靴底にはリサイクルラバーを使い、エシカルやサステナビリティを意識した新シリーズの最初の商品として販売される。

コンバースとコラボした新製品。桜色のシューズは、被災地に桜を植える活動の支援にもなる

さらに、自社の廃棄食品から企業のユニフォームやノベルティをつくりたい、カフェやイベント用につくりたいといった大手メーカーなどからの問い合わせも多く、用途の広がりが伺える。

谷村氏は同プロジェクトへの関心の高まりをとらえ、「今後は、日本独自の染色技術をアピールする海外のラグジュアリーブランドへの販売ラインや地方の廃棄される特産物を利用した販促物販ラインを強化していきたい」と話す。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

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