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  • 公開日:2025.04.21
  • 最終更新日: 2025.04.21
混沌とした世界情勢の中、気候変動コミュニケーションを強化する3つの方法
  • Charlotte Colombeau
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英国の俳優ベネディクト・カンバーバッチが出演する啓発キャンペーン「Make My Money Matter」。年金基金による企業への投資が森林破壊を招いていることを訴える。Image credit:Make My Money Matter

2025年は騒々しく幕を開けた。米国のトランプ政権は気候変動を軽視し、数えきれないほどの方法で私たちの未来を脅かすドミノ効果を引き起こそうとしている。気候変動対策に継続して取り組み、後押ししていくには、より大胆で明確なコミュニケーション、強力な連携、さらに誤情報や無関心によって進歩が止まらないようにすることが必要だ。

私たちはすでにプラスチックの使用量や肉食を減らしたり、持続可能性を浸透させるためにキャリアを捧げたりと、個人のレベルでできるあらゆることに取り組んでいる。そんな中、破壊的な変化を助長し、短期的な勝利のために長期的な視点に立つことを避けようと懸命になるトランプ政権が復帰し、これまでの取り組みが弱体化していくのを目の当たりにして落胆している。

就任からの2カ月間で、米政府のウェブサイトから気候変動に関するあらゆる記述が消えた。さらに、米国のパリ協定からの離脱によって、2030年までのCO2排出量が40億トン増える見込みだ。これはEUと日本の年間の排出量の合計に相当する量だ。事実上、米国は世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるチャンスに別れを告げたといえる。(翻訳・編集=小松はるか)

状況に応じて、気候変動に関するコミュニケーションを進化させる

こんな状況でも良いニュースがあるとすれば、私たちは前回の第1次トランプ政権の時よりも準備ができているということだ。さらに、トランプ大統領がすでに招いているカオスによって明確になったことが一つある。世界は一国の気候変動へのリーダーシップが変わるのを待っている余裕はないということだ。

では、どうすれば私たち自身を鼓舞し続け、勢いを持続することができるのか。

 

誤情報を覆し、人々の関心を高める

気候変動や気候科学に関する誤情報が急増するとみて間違いないだろう。

真実を巡る攻防が日常に再び戻ってきた中、たとえ気候変動対策に反対する人たちであっても虚偽情報を受け入れないようにしていくのは私たち次第なのだ。そういう人たちが中立の立場になるには、説教ではなく、本物のつながりを構築していかなければならない。共感しながら、恐れや心配、動機、信念を受け入れていくということだ。さらに、気候変動に関するコミュニケーションについては、真実を主柱に据えながらも、力強く、明快で主張がはっきりしたものへと刷新することが必要だ。

こうした手法をとる事例の一つに、英国の「Make My Money Matter」が展開するキャンペーンがある。同キャンペーンは、人々がお金の流れと自身の価値観を一致させられるようにすることを目指しており、英国俳優のオリヴィア・コールマンやベネディクト・カンバーバッチ、アンビカ・モッドなどと協力し、強力なメッセージと大胆なユーモアを交え、銀行の選択や年金基金が気候変動に与える負の影響を訴える。

希望を持ち、前進し続ける

近視眼的な政策によって道のりはより厳しいものになるかもしれない。しかしありがたいことに、そうした政策が気候変動の取り組みを全面的に頓挫させることはない。したがって、困難に直面しても、「気候変動対策は終わった」というナラティブ(物語)を増幅させてはいけない。なぜなら、悲観的で陰気すぎると無関心を招くことにつながるからだ。また、もし気候変動対策を重視しない人たちとの戦いに敗れたと見なされたら、人々は行動する意味を見失ってしまうこともある。

気候変動に関するコミュニケーションについては、気候変動否定論が誤りであることを暴くだけでなく、また、有害な楽観主義に陥ったりせずに、希望に満ちながらも現実的な未来へのビジョンを描かなければならない。

国連気候変動枠組み条約の元事務局長であるクリスティアナ・フィゲレス氏が共同ホストを務めるポッドキャスト「Outrage + Optimism」(健全な怒りと楽観主義)はこれをうまく実行している例だ。気候危機についての落胆と、具体的な解決策に根差した楽観主義を効果的に融合させた構成となっている。

より大きなインパクトを生み出すために団結する

これまで以上に協業が不可欠になっている。米国が気候変動に関する国際公約に反発する一方で、他の国々は前進しており、期待できる進歩が見られる。

多くの国が戦略的かつ経済的な理由から気候変動対策を強化している。中国は世界最大の排出国であるにもかかわらず、クリーンテクノロジーに重点的に投資し、たとえ同国の政治の風向きが右傾化していたとしても、3億5000万人の経済成長を促進している。

私たちがとるコミュニケーション戦略はこうした世界の潮流を支持するべきだ。さらに、米国の政策によって生み出された新たな障壁に影響されることなく、有意義な進歩が今もなお見られ、気候変動目標の達成は可能であり、手の届く範囲にあるものだということを示すことが必要だ。

それを実践する事例の一つがニュースサイト『ザ・デイリー・クライメート』。非営利で無党派のメディアは、環境衛生問題についての公の議論や政策に科学的視点を取り入れることを目指している。さらに、この分野の前向きな進展や解決策を取り上げるサイト内のグッド・ニュース部門と並行して、気候変動に関するニュース記事を掲載している。

最後に、これからの4年間というのは、地球規模での行動の必要性を強調する上で非常に重要な時間となり、気候変動対策の進捗とそれを統率するリーダーシップがホワイトハウスに勝ることを示せるチャンスにもなるだろう。

世界はますます気候レジリエンス(気候変動への対応力)の強化に力を入れており、この勢いが一国の政策によって止まることはないだろう。解決策は存在し、チャンスも明らかで、米国以外の国々が主導していく道筋は整っている。

気候変動対策に継続的に取り組み、それを支援するには、より強力なコミュニケーションとより強固な連携、さらに誤情報や無関心によって進歩が止まってしまうことを拒むことが必要だ。より強力な政策を推し進める、気候変動対策に取り組む企業を支持する、自らのコミュニティ内での会話を転換させたりするなど、すべての行動が重要になる。気候変動との戦いは終わったわけではなく、進化しており、すべての人に果たすべき役割があるのだ。

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