
Day1 プレナリー 長谷部哲也・本田技研工業 水素事業開発部 部長 |
2050年のカーボンニュートラル、そして水素を活用する社会の実現に向け、本田技研工業(以下・ホンダ)は多元的で多面的な取り組みを進める。
「サステナブル・ブランド国際会議2025東京・丸の内」のプレナリーに登壇した長谷部哲也・水素事業開発部部長は、気候変動による異常気象や災害の甚大化、また欧州グリーンディールや日本での水素社会推進法成立など世界の潮流を紹介しながら、「各国でクリーン水素生産量の数値目標が提示され、今後、水素社会実現に向けて投資が加速すると見られる」と見通しを語った。
水素社会への鍵を握るのは、燃料電池モジュールを乗用車以外にも活用し、水素需要を底上げしていくことだという。
ホンダは、2050年にすべての製品・企業活動を通じたカーボンニュートラルを目指しており、長谷部氏は「環境負荷ゼロの循環型社会・カーボンニュートラル社会に向けて、ホンダは多元的で多面的なアプローチを考えており、水素は重要な位置づけを担う」と説明。水素は、再生可能エネルギー由来の電気を水電解技術により効率的に貯蔵できるほか、陸上・海上輸送、パイプラインなど需要地に適した方法での運搬が可能であるなど、エネルギーキャリアとしての有用性を挙げた。
具体的に進めるのは、ホンダが1980年代から研究を続けてきたコア技術である燃料電池モジュールの多用途展開だ。まず、従来の主力商品である乗用車領域では、2024年7月に新型燃料電池車「CR-V e:FCEV」をリリース。先代モデルと比較し、3分の1以下のコストで2倍以上の耐久性を実現しているという新型燃料電池モジュールは、乗用車以外のさまざまなアプリケーションにも適合するようパッケージングしており、単体での外販も予定される。大容量のエネルギーの貯蔵・運搬が容易な上、短時間の充填(じゅうてん)が可能であることから、長距離を走行する商用トラックや、データセンターなどの発電機として設置される定置型電源、またはディーゼルエンジンで駆動する建設機械など、大出力の用途に活用を広げていくという。
今後の鍵を握るのは、燃料電池モジュールの量産技術の確立だ。長谷部氏は「本格普及に向けては、さらなる進化が必要」として、次世代型の燃料電池モジュールの開発計画も明かした。2月に初公開されたばかりの次世代モデルでは、新型「CR-V」のモジュールからさらにコスト半減・耐久性倍増を実現しつつ、コンパクト化を進める。このモジュールは、新型「CR-V」とともにサステナブル・ブランド国際会議2025の会場でも展示され、注目を集めた。プレナリーでは、今後、ホンダで初となるモジュールの量産工場を栃木県内に立ち上げ、2027年の稼働を目指す計画も披露された。
長谷部氏は「燃料電池モジュールを導入することで、企業はカーボンニュートラルでのビジネスが可能になる上、水素の普及による水素価格の低減効果も見込める」とメリットを語り、導入先企業の運用サポートや、水素スタンドの整備などエコシステムの形成も積極的に推進していくことを宣言。「水素を『つかう』領域で、社会のカーボンニュートラル化を促進し、水素需要の喚起に貢献していきたい」と力を込めた。
横田 伸治(よこた・しんじ)
東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、サステナブル・ブランド ジャパン編集局デスク・記者。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。