![]() 「ザ・ノース・フェイス」が、パリ五輪のスポーツクライミング日本代表に提供したユニフォーム。藍色と富士山をモチーフとし、素材の一部には、ポリエステル繊維の低炭素化に向けたゴールドウインなど5カ国7社によるサプライチェーンによって製造された、CO2由来の原料を採用している(写真と図はいずれもゴールドウイン提供)
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スポーツウェアなどを展開するゴールドウインはこのほど、ポリエステル繊維の低炭素化を実現するグローバルなサプライチェーンを、同社を含め、5カ国のメーカーや商社からなる7社で構築した、と発表した。100%非化石由来のポリエステル繊維の製造において、サプライチェーンの川上から川下に位置する企業が協業し、CCU(Carbon Capture and Utilization、二酸化炭素回収・有効利用)技術を活用して製造したCO2由来の原料を用いるのは世界初という。(廣末智子)
ゴールドウインと三菱商事のほか、樹脂および化学業界のNESTE(シンガポール)、SK geo centric(韓国)、INDORAMA VENTURES(タイ)、INDIA GLYCOLS LIMITED(インド)、千代田化工建設の7社。
ゴールドウインによると、CO2由来の原料は、パラキシレンで、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発」事業に採択され、国立大学法人富山大学と千代田化工建設、三菱商事などが共同研究開発を進めている。今回の7社によるプロジェクトには、千代田化工建設のパイロットプラントで製造されたパラキシレンが供給された。
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原料が製品へと加工され、流通していく工程において、バイオ原料等の特定の特性を持った原料がそうでない原料と混合される場合には、特性を持った原料の投入量に応じて製品の一部にその特性を割り当てる「マスバランス方式」を適用し、既存の設備を活用することも、新たに構築したサプライチェーンの特徴の一つになっている。
製品化第1弾はスポーツクライミング日本代表のユニフォーム
![]() 「ザ・ノース・フェイス」の提供による、スポーツクライミング日本代表の試合用ユニフォーム
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このサプライチェーンで製造された、廃食油等に由来するバイオ原料(リニューアブル原料)や、サトウキビ廃糖蜜由来のバイオ原料に加え、CCU技術を活用したCO2由来のポリエステル繊維を一部に採用した製品の第一弾が、今夏刷新された、スポーツクライミング日本代表の試合用ユニフォームだ。ゴールドウインが日本で展開するブランド、ザ・ノース・フェイス(THW NORTH FACE )が、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会のオフィシャルサプライヤーとしてウェアサポートを行っていることから実現したもので、パリ・オリンピックでも着用される。
ユニフォームは、ゴールドウインの研究開発拠点である富山本店の開発本部・商品研究部で型紙の作成を行い、藍染めから得られる藍色を基調に、富士山をモチーフにデザインした。同社は今後もこのサプライチェーンによって製造された非化石由来のポリエステル繊維を用いたスポーツウェアなどを、傘下のブランドで製品化していく計画だ。
循環型社会の実現に向けて 環境配慮型素材のビジョンを共有
今回、ポリエステル繊維の低炭素化を実現するサプライチェーンが発足し、それに参画したことの意義について、7社の担当者らは動画でそれぞれにコメントを発信。その中で、三菱商事の地球環境エネルギーグループ 次世代エネルギー本部の岡本麻代氏は、「衣服の繊維は、従来の石油由来の原料から、環境配慮型の原料に切り替える必要があるが、環境配慮型の原料の調達は、流通量やプレイヤーもまだまだ限られているのが現状で、既存の商流だけではアクセスできない可能性がある。コストも従来品に比べて高く、消費者の手の届くような形で市場に供給するのはチャレンジだ」とした上で、「今回、それが実現できたのは、5カ国7企業が、環境配慮型の素材に向けた同じ思いを持つことができたからだと考える」とビジョンの共有の重要性を強調する。
ゴールドウインのザ・ノース・フェイス事業本部長 兼 グローバルブランド事業本部長で、取締役専務執行役員の森 光氏は、「一番最初の素材から、我々が提供する製品まで、サプライチェーンの川上から川下までがコンソーシアムのようにつながって仕事をしていくことの意義は非常に大きい。プロジェクトは始まったばかりだが、当社の長期ビジョン『PLAY EARTH 2030』の環境重要課題の一つである、循環型社会の実現に向けて、7社で何かが一緒にできたらいい」と期待を込めて語っている。