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米国の調査会社クロールの調べで、ESG格付けの高い企業は低い企業に比べて総利回り(投資収益率)が高い傾向にあることが分かった。同社は、日本を含む世界12の国・地域の上場企業1万3000社以上を対象に、2013年から2021年までの過去9年間の総合的なリターン(配当金と値上がり益)と国際的なESG格付けの関連性を分析した。(翻訳・編集=小松はるか)
調査『ESGとグローバル投資家のリターン研究』について、クロールのカーラ・ヌネス氏は「ESG・サステナビリティ投資の未来は、ESG格付けと情報開示の信頼性、そして、上場企業の業績指標としての両者の妥当性に、投資家が確信を持てるかによって決まるだろう」と話す。
「ESG格付けとリターンとの関係を定量分析することは、ESGに基づく投資決定を評価するための重要な要素だ。ESG格付けに関する規制が強化されれば、この分野にいくぶんか統一性がもたらされる可能性がある」
新たに国際的な規制や財務報告の基準が定められようとしているなか、ESG投資は、経営陣、投資会社、規制機関、基準決定者にとって、投資決定の重要なけん引役であり続けるだろう。動的なESGファクターを特定して評価するためのESGマテリアリティ(重要課題)の強力な枠組みが、有効な報告を行うのに欠かせない。マテリアリティの概念はESGの開示基準や提案によって異なるため、複雑なデータ収集作業がますます必要となり、技術的な解決策と内部統制への細心の注意が求められるだろう。
ヌネス氏は「ESGの情報開示に対し認証・保証サービスを求める声は飛躍的に増えており、投資家は投資判断を行う上でESG情報をより頼りにするようになるだろう」と言う。
今回の調査では、格付けの高い企業に重点を置いた投資戦略が優れた成果を生み出すかどうかを解明するために、9年間の総利回りとMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)のESG格付けとを比較した。対象は、4つの地理区分(アジア、北米、西欧、世界)に位置する12の国・地域(米国、英国、インド、オーストラリア、カナダ、韓国、中国、ドイツ、日本、ブラジル、フランス、香港)の11産業だ。
調査でわかった5つの重要なポイント
・世界的に、MSCIのESG格付けでリーダーに選定された企業は年率平均リターンが12.9%だったのに対し、ラガード(遅滞者)に選定された企業の年率平均リターンは8.6%だった。これは最上位の企業による相対パフォーマンスに、約50%のプレミアム(上乗せ幅)がつくことを示す。
・ESGの格付け企業が最も多い国、米国のリーダー企業は年率平均リターンが20.3%に上り、ラガード企業は13.9%にとどまった。世界的な傾向と同じく、ESG格付け最上位の企業による相対パフォーマンスは下位の企業よりも50%近く高かった。
・ラガード企業に比べ、リーダー企業の相対パフォーマンスは一部の例外はあるものの、主要な地理区分やほとんどの産業において一貫して優れていた。
・MSCIによると、欧州企業のESGの取り組みは他の地域よりも進んでいる。例えば、2021年12月、西欧企業の約3分の1がリーダー企業に選定されていた。これに対し、北米の企業は10%、アジアの企業は6%のみだった。
・世界的な傾向として、リーダー企業は生活必需品やヘルスケアを除くすべての産業において、ラガード企業よりもパフォーマンスが優れていた。これは「ESG投資のアウトパフォーマンス(市場平均を上回る運用成績)がIT株のオーバーウェート(組み入れ比率が基準よりも高いこと)に起因する」と言っている、一部のマーケットアナリストの主張と矛盾する。
クロールは、サステナブル投資の世界的な増加によって、ESG格付けと投資パフォーマンスとの相関関係をさらに深く理解する必要性が生まれていると指摘。世界持続可能投資連合(GSIA)によると、2020年には先進国市場の投資資産の3分の1以上が“サステナブル”に分類され、その規模は世界で35兆3000億ドル(約5200兆円)、米国だけでも17兆1000億ドル(約2500兆円)に達した。
しかし、米国でのグリーンウォッシュをめぐる訴訟や反ESGの動きは、サステナブル投資と位置付けられているものに大きな反発をもたらし、規制の施行、訴訟の増加、相次ぐESG・サステナビリティ情報開示のための新基準の提案・成立などを促進した。結果として、多くの投資ファンドは名称や分類を変更し、サステナビリティに特化していることを謳うことはなくなった。そのため、2021年と2022年のサステナビリティ投資の潮流を比較することは極めて難しくなった。また、BCG(ボストン コンサルティング グループ)の最新の分析によると、世界の総運用資産残高は、2021年の108兆6000億ドル(約1京6000兆円)から2022年には98兆3000億ドル(約1京4500兆円)へと9.5%減少し、比較がさらに難しくなった。
ESG投資に関していえば、規制や報告基準が固まり、企業に確固たる地位をもたらすなか、クロールが実施したような調査は、人々が価値を置くところに資金を投じるための投資対効果を示し続けるために重要といえる。