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  • 公開日:2022.12.27
  • 最終更新日: 2025.03.13
世界初、ヴィーガン蜂蜜を開発 ハチを使わず植物性蜂蜜を作る米スタートアップ

メリバイオの蜂蜜をかけたパンナコッタ Image credit: MeliBio

米カリフォルニア州オークランドのスタートアップ「メリバイオ(MeliBio)」は世界で初めて、植物性の原料を使い、見た目も味も栄養価も本物の蜂蜜と遜色ない植物由来の蜂蜜を開発した。ハチの労働力を使わないため、ヴィーガンでも食べられる蜂蜜として注目されている。製品は2023年から欧米を中心に販売が始まる。メリバイオCEOのダーコ・マンディッチ氏に話を聞いた。

ハチは人類の存続に不可欠な存在だ。地球上の花粉媒介のおよそ8割はハチによって行われ、ハチは生物多様性や食料生産の基盤を支えている。2万種以上いるとされるハチの中でもミツバチは最もよく知られている種だ。

ミツバチが作る蜂蜜の需要は年々高まっており、81億7000万ドル(約1兆846億円)規模といわれる市場は2025年に140億ドル(約1兆8528億円)規模に上ると予測されている。一方で、こうして1種のみの健全性を重視することによって他の種のハチが危険にさらされている。

商業用のミツバチの群れが増えると、在来の花粉媒介者の間で餌を巡る競争が激化し、野生種の減少にさらに拍車がかかり生態系の安定性が脅かされる。これに気候変動の影響も加わり、2万種以上の野生種や在来種のハチが危機に瀕しているのだ。管理されたミツバチは、野生のミツバチの病気の拡大や深刻化も招くという。

ミツバチにも異変が起きている。気候変動や害虫、農薬によって蜂群崩壊症候群(CCD)が起き、数十億の働き蜂が巣と女王蜂を置き去りにして失踪する問題が発生している。さらに、調査によると、ミツバチの数は2006年以降、毎年30%ずつ減少すると予測される。

世界的にハチが減少する中、蜂蜜メーカーのサプライチェーンは非常に不安定で予測不可能な状況に陥っている。こうした中、CEOのマンディッチ氏とCTOのアーロン・シャラー氏は2020年にメリバイオを設立。ハチが作る蜂蜜と見た目、味、栄養価、質感が同様の完全植物性の発酵食品の開発に成功した。この発明によって世界的な蜂蜜の需要を満たすために生じる養蜂家やミツバチへの負荷も軽減され、数千種の在来種のハチを悪影響から守ることができるようになる。

マンディッチ氏は「私たちはあらゆる種のハチが繁栄することを望んでいます。ハチの多様性は地球の持続可能性に直接影響を及ぼすからです。メリバイオは、ハチの労働力を使わないビー(ハチ)フリーな蜂蜜を画期的な方法で作っています。分子レベルで、自然界でハチが蜜を作る方法を模倣し、合成生物学や精密発酵、植物科学を融合させて動物性原料を使わない製品を製造しています。科学の力を活用し、現在そして未来の需要を満たすためにこの産業を成長させることで、ミツバチを休ませることができ、繁栄にもつながり、地球上で花粉媒介が適切に行われるようになります」と語る。

マンディッチCEO

マンディッチ氏は、サステナビリティは同社の蜂蜜の開発において最も大切なことだったと話す。そして次に大切なこととして挙げたのが、製品の品質・信頼に対する業界からの懸念だ。蜂蜜は牛乳、オリーブオイルに次いで3番目に偽装の多い食品といわれ、偽物の蜂蜜は養蜂家、ミツバチ、消費者などバリューチェーン全体に悪影響を及ぼすからだ。

植物由来の蜂蜜には他にもメリットがある。ヴィーガンでも食べることできるほか、実験室で作られているため、赤ちゃんが食べると危険なボツリヌス菌などのクロストリジウム属の細菌が含まれていないことだ。

「地球は厳しい状況に置かれています。私たちが依存する産業や製品を改革していく必要があります。人類が生み出したあらゆる知識を動員し、現世代や将来世代にとって持続可能な世界をつくる最大のチャンスです。持続可能性はゲームの名前だと捉えています。画期的な発明が持続可能な世界の実現を可能にするのです」(マンディッチ氏)

料理誌『ボナペティ』も「本物の味」と保証するこのヴィーガン蜂蜜に、食品のみならず飲料、化粧品業界も沸き立っている。本格的に発売が始まるのは2023年前半の予定で、世界の50社以上から注文があるという。

「私たちが開発した植物由来の蜂蜜はさまざまな料理に合います」とマンディッチ氏は言う。メリバイオはまずはパートナーシップを構築することに注力する考えだ。すでにミシュランの星を獲得したマンハッタンのフレンチレストラン「イレブン・マディソン・パーク」やプラントベースのメニューを提供する飲食店などとコラボレーションしている。

さらに、同社は欧米の多くの消費財企業とも商談を進めている。2022年11月末には、欧州最大のオーガニック食品業社ナラヤンフーズ(Narayan Foods)と提携し、「ベターフーディー」ブランドの一商品として植物由来の蜂蜜を欧州の7万5000店舗で販売すると発表した。

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