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  • 公開日:2022.04.28
  • 最終更新日: 2025.03.14
スタートアップの参入で活気増すアニマルフリー食品産業

肉の代替食品としてジャックフルーツを使った肉まん Image credit: Karana

植物や動物の細胞などをつかう代替食品市場は日々進化し、新たな事業者が既存の資源を活用しながら、次の消費者トレンドを先取りすべく挑戦を続けている。シンガポールのカラナ(Karana)、モントリオールのオパリア(Opalia)の両社は、環境への負荷がより低く、動物の命を消費しない新たな代替食品の開発に取り組んでいる。

シンガポールのスタートアップ「カラナ(Karana)」は2018年、食べても罪悪感を抱かない、美味しいプラントベース(植物由来)食品をつくることをミッションに立ち上がった。気候変動や環境問題に取り組む食品産業へと転換するために、単に健康的で持続可能なだけでなく、美味しさや楽しさを追求して製品づくりを行う。

同社は現在、ジャックフルーツを使った代替肉をレストランやその他のフードサービス店向けに販売し、これまでほとんど見落とされ、廃棄されてきたジャックフルーツ市場を創出することを目指している。

ジャックフルーツ Image credit: bhofack2

共同創業者のダン・リーグラー氏は、米サステナブル・ブランドの取材に「ジャックフルーツのサプライチェーンはまだ成熟しておらず、十分に広がってもいない」と話す。

ジャックフルーツは、人気の果物や野菜に比べ、収益性の低い作物と考えられてきたため、6〜7割が廃棄されてきたという。しかし、ジャックフルーツは生育に水分をあまり必要とせず、害虫にも強く、他の果物に比べてタンパク質を多く含んでいる。同社では、ジャックフルーツの主要生産国であるスリランカから原料を調達している。

カラナは生のジャックフルーツを肉に似た食品に加工し、ピザのトッピングから餃子の具にいたるまで、ありとあらゆる製品に仕上げ、すでに香港とシンガポールの50店以上のレストランで採用されている。

タンパク質は人口増により不足することが懸念されている。ジャックフルーツにはタンパク質が多く含まれており、代替タンパク質には分類されないものの、さまざまな料理に使える多様性はフレキシタリアン(緩やかな菜食主義者)のシェフや食卓を満足させるだろう。

同社はこのほど、米カリフォルニア州サンマテオにもオフィスを構え、サンフランシスコのいくつかのレストランでも製品の提供を始めている。今年後半にはロサンゼルスにも進出する計画だ。

リーグラー氏は「西海岸は素晴らしい食と文化を有する市場。ここで事業を始めることは企業としても理にかなっている」と話す。

同氏は、カラナが販売するジャックフルーツは、キッチンで使用する生の状態でも、もうすぐシンガポールで発売される餃子のような製品でも、素晴らしい料理体験を提供できる無限の可能性を秘めた製品だと胸を張る。同社は、他の植物でも食肉のような食感を再現できるか実験し、自社の可能性をさらに広げていく方針だ。

乳牛の細胞をコピーしてミルクをつくる

Image credit: Opalia

「私たちは、牛の乳房にある細胞を使いミルクをつくっている。牛がいなくてもつくれるミルクだ」。カナダ・モントリオールにあるオパリア(Opalia)のCEO兼共同創業者ジェニファー・コーテ氏は、少しSFのようにも思える、自社の商品についてこう紹介した。

オパリアでは、Ph値や温度管理ができるバイオリアクター(生化学反応装置)の中で細胞を培養している。アミノ酸やビタミン、糖分を細胞に与え、牛乳に含まれているものと同じホルモン(プロラクチン)を使って、従来の牛乳と同じ脂肪分と油分を含んだ製品をつくっているのだ。

その結果、技術によって、アニマルフリーの乳製品がより低負荷でつくれるようになった。こうして同社は、多くの人が好む食品を食卓から消し去ることなく、また動物の命を消費せずにテクノロジーによってそれを再現する企業、例えば牛から採取した非遺伝子操作の細胞からステーキを生産する培養肉企業「アレフ・ファームズ」や、牛を使わずに発酵によって牛乳に含まれる乳清やカゼインなどのタンパク質をつくる「パーフェクト・デイ」などのイノベーター企業に仲間入りしたのだ。

コーテ氏によると、初期テストで、同社の製品は従来の牛乳と同じくさまざまな用途に使えることが分かったという。内容分析でも、従来の牛乳に含まれる機能性成分(カゼイン・タンパク質、乳清タンパク質、脂肪、糖分など)をすべて有していることが判明した。

コーテ氏は事業を始めた理由について、『フードナビゲーターUSA』の取材に「持続可能性と動物福祉の観点からだ。牛乳は元々、利益率の低い製品だが、この動機が新しいミルクの生産コストを削減することに積極的に取り組むきっかけになっている」と答えている。

オパリアは最近、通常は妊娠中の牛の胎盤から抽出され、人工細胞増殖の成分として使われているウシ胎児血清(FBS)を製造工程から取り出すことにも成功した。

コーテ氏は「細胞培養によって、FBSをより優れた性能を発揮する、安くて非動物性の増殖基質に置き換えることに成功したことで、細胞由来のミルクの製造コストとリスクを低減することができた。オパリアは、妥協のない、アニマルフリーの乳製品を消費者に紹介することに一歩近づいた」と『フード・イン・カナダ』の取材に答えている。

コーテ氏は『フード・ナビゲーター』に、細胞が望ましい数まで増殖したら、FBSの代替品を取り除き、泌乳を誘発する成分を加えると説明している。こうした成分は、泌乳量を増やしコストの削減を実現するためにも、また生産規模を拡大するためにも重要だ。

オパリアの事業はまだ初期段階だ。最終的には、アニマルフリーのミルクを使ってアイスクリームや他の乳製品をつくることを目指している。コーテ氏は、そうした分野で競争力を持つレベルの技術と製品を開発するためには5〜7年の時間が必要とみている。さらに、同社は製品の環境負荷の測定も始めた。

コーテ氏は、意義のある研究結果を発表するには時期尚早だと言う。しかし、彼女が「これらの細胞は高収量で、永久に複製することができる」と話すように、同社がわずか数個の細胞から最初の製品を開発し、今やすでに持っているサンプルを使って永久に製品を複製できることは注目すべきことだ。量産されると、大きな利益をもたらすだろう。

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