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  • 公開日:2022.03.24
  • 最終更新日: 2025.03.28
“Sustainability as the only path” サステナビリティ以外の退路は断って、前進するーー長谷部佳宏・花王社長

「社会課題解決のギア(歯車)を回すために、われわれ自身がギアとなりたい」。サステナブル・ブランド国際会議2022横浜で、花王の長谷部佳宏社長の基調講演はそんな力強い呼び掛けで始まった。日々消費する日用品を扱う企業としての決意を込めて、2021年に「Sustainability as the only path (サステナビリティ以外の退路は断って、前進する)」というビジョンを掲げた同社は、今後、どのような姿勢、戦略をもって持続可能な社会への道を進もうとしているのか。講演では「ギア」という概念を中心に、花王の決意、そして未来への約束が語られた。(清家直子)

互いに関係し合う社会課題。解決への歯車を回すための、ギアになりたい

初めに長谷部氏は、同社が「Sustainability as the only path」という決意を掲げるに当たり、3つの「生」に尽力することを再確認したと強調。「1つ目は『生態系』。経済を回すために、生態系を壊してはいけない。2つ目は『生活』。商品の提供を通じて、豊かな生活につなげたい。そして3つ目は『生命』。今、人に起こりうる危害をできるだけなくす。この3つの『生』に、われわれは立ち向かわなければならない」という認識が示された。

そのベースとなる考え方について長谷部氏は、「ギア(歯車)」という概念を用いて説明。SDGsの17の目標をはじめとするさまざまな社会課題には因果関係があり、「一つのギアが動かないことによって全てが動かなくなり、逆に言うと、一つのギアが動き出すと、ほかのギアも回り始めるのではないか。発展しながら循環する社会を世の中は求めている。ギアを大きく回すためにはそれぞれのギアが連携したり、お互いのことを考えることが非常に重要だ」と呼び掛けた。

コロナ禍にあって、経済が優先か、命が優先かという課題に直面するなか、それは「どちらも回さなければいけない宿命」にある。つまり、どのギアをとっても実は二つの要素がある。それぞれの社会課題は全てつながっており、因果関係なしには存在し得ないものだ。

ここで長谷部氏は、花王が取り組むことの意義を、「花王は元々、石けん屋です。水と油を混ぜる、つまり本来、関係ないものを仲良くさせるのが得意な会社。そんなわれわれが間に立ち、それぞれのギアを一緒になって回すことができないかを常に考えている」とアピール。花王がギアとなりうる新しい技術を活用した事業モデルを2つ紹介した。

命を守る取り組みと、快適な暮らしを両立へ 新技術で蚊による感染症の被害撲滅

まずは「モスキートキャンセラー」と名付けた、蚊の完全忌避を目指す新たな闘いについて。世界では年間70万人以上が、蚊が媒介する感染被害で亡くなっている。地球上で最も人を殺す生き物が、蚊なのだ(ちなみに次点は人間である)。これまで、さまざまな蚊の忌避剤が作られてきたが、対抗性の出現などで完全に防げないのが現状だという。

そこで花王は、カバの皮膚の分泌液といった、蚊がある種の触感を嫌がるという性質に着目。そもそも蚊が肌に着地しない「新嫌蚊技術」の開発に成功した。この新技術を用いた商品を富裕エリアで販売し、商品に含まれる募金を元に、デング熱感染リスクのある貧困エリアで調査と商品の無償提供を行うというのが、新事業の設計図だ。同事業はタイからスタートする。

「今、世界は小さくなり、いろんな人たちが国をまたいで飛び回り、パンデミックが広がりやすくなっている。富裕国で商品が売れることが貧困国の人たちを助け、強いてはパンデミックの拡大を止められる。富裕国の人々の快適な暮らしと、貧困国の人々の命を守るためのギアを一緒に回してみようというアイデアです」

廃PET、道路の耐久性、海洋プラスチックゴミ 3つのギアを同時に回す

もう一つは、同社が「ポジティブリサイクル」と位置付ける、再利用しきれない廃PET(廃棄処分されるポリエチレンテレフタレート素材)を舗装強化素材として活用する次世代型道路舗装事業だ。長谷部氏によると、従来のアスファルトに1%の廃PETを添加することで、道路の超耐久性を実現。長期運用コストは約5分の1になり、施工頻度が減ることで工期を同等に削減できる。道路やタイヤから巻き起こる粉じん量も約80%の削減が予測されている。

これは、再生不可能だった廃PETをどうするかという課題ギアと、自動運転時代に向けて道路の安定性を高め、耐久性の低さや多量の粉じんが生じるという道路の現状の問題をどう解決していくかという課題ギアの、双方を回せる技術であるという。

さらに、この2つのギアが回ることで、海洋プラスチックゴミを一気に大きく減らせる可能性が見えてくる。つまり同社が潤滑ギアとなり、3つのギアが回るのだ。

長谷部氏は、環境への取り組みは単なる募金活動では続かず、「経済を武器に、そのエンジンを使って社会を回すことを考えねばならない時が今きている」と強調。花王は今後もESGを中心とした、さまざまな事業モデルを発信していくと表明した。「このような活動に対し、最初は冷ややかな目線があることも承知している。それでも諦めず、われわれのギアのまわし方が世界のお手本となるよう続けていきたい」。静かに、だが力強く語った長谷部氏は、子どもの小さな手が親の手を握り締めている写真に、将来を託すというメッセージを添え、講演を締めくくった。

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