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  • 公開日:2021.07.07
  • 最終更新日: 2025.03.29
グローバル企業に続き、日本でもサプライチェーン全体を含めた脱炭素推進の動きが加速

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

アップルはサプライヤーと共に再エネを作り出すプロジェクトを積極的に行う (写真:アップル)

自社だけでなく、サプライチェーン全体で脱炭素を目指そうという企業の動きが国内外で拡大している。この取り組みで先進的な米アップルは、すでに110社を超えるサプライヤーがRE100を目指し、アップル自身が100%再生可能エネルギーへ移行した際に得た経験をサプライヤーに伝えるなど、支援を強化している。国内でも積水ハウスがサプライヤーに対し、事業で使用する電気で再生エネ100%を使用することや、科学的な根拠に基づいて温室効果ガスの削減目標を設定する「SBT」の認定取得を求める。セイコーエプソンやトヨタ自動車もサプライヤーに対して具体的な目標を提示して温室効果ガスの削減を促すなど、サプライヤーが脱炭素できるかについても重要な課題となってきた。(環境ライター 箕輪弥生)

人、情報、資金の全方位でサプライヤーの脱炭素を支援する米アップル

すでに自社のカーボンニュートラルを全世界の事業所の企業活動で達成している米アップルは、全事業、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてにおいて、2030年までにカーボンニュートラル達成を目指すという計画を明らかにしている。

この計画に基づいて、アップルはサプライヤーが再生可能エネルギーの目標を達成するために、再エネ分野のエキスパートを招いてサプライヤーに独自の教育を行ったり、アップル自身が100%再エネへ移行した際に得た経験を資料としてサプライヤーに伝えるなど、再エネにシフトする方法を具体的に提供している。

さらに、同社はサプライヤーに直接、再エネ事業者を紹介したり、中国ではサプライヤーが再エネを調達できるように「China Clean Energy Fund 」を創設し、アップルとサプライヤー10社が約3億ドルを投資し、1ギガワットの再エネを産出する取り組みを始めるなど、人、情報、資金の全方位でサプライヤーの脱炭素を支援する。

サプライヤーの脱炭素を求める積水ハウス、エプソン、トヨタ自動車

日本でもサプライヤーの脱炭素を本格的に推進する企業が増えている。

積水ハウスは自社のRE100を2030年までに達成する見込みだが、サプライヤーに対しても事業で使用する電力を再生エネ100%にすることを求める。さらに、科学的な根拠に基づいて温室効果ガスの削減目標を設定する取り組みである「SBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)」の導入をサプライヤーの約400社に呼びかけている。

これについて同社の近田智也執行役員は「サプライチェーンの脱炭素化にはサプライヤーの協力が不可欠。当社のためだけの脱炭素ならば当社納入資材の脱炭素化だけで十分だが、世界全体が脱炭素に向かう中でサプライヤー自体が脱炭素に取り組まねば、持続可能な経営とはいえず、当社にとってもリスクとなる」と説明する。

これまで同社が開催したサプライヤー向けのWEB勉強会では、「具体的なCO2削減取り組みの事例、RE100イニシアチブ参加やSBT認定取得の手続きについて情報提供をし、個別の質問や相談に答えるなどサポートを行っている」(近田執行役員)。

一方、セイコーエプソンは、2050年に、「カーボンマイナス」および「地下資源消費ゼロ」を目指すと表明しているが、そのためにサプライヤー1700社と協力して、2030年までに温室効果ガス排出量を2017年度の半分に減らすことを目標として動き出す。

トヨタ自動車もサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成に向け、本格的に動きだした。このほど、1次取引先の300〜400社に対し、今年のCO2排出量の削減目標として前年比3%減を要請した。トヨタ自動車からサプライヤーに対する具体的な削減目標の要請が明らかになったのは初めてだ。

排出量調査では企業全体の排出総量に加え、駆動部品から電気系、車体部品まで約80品目の排出量を見える化し、サプライヤーへ排出量削減を促す。

トヨタ自動車の主要な1次取引先の中にはすでに脱炭素への取り組みをはじめた企業もある。今後、1次取引先から材料や部品を調達する2次、3次取引先へとこの動きが広がっていくことは必至だ。

これまでグローバル企業や大企業主導で進んできた脱炭素への取り組みだが、サプライチェーン全体への働きかけが強まるにつれ、中小サプライヤーに至るまで、排出量削減の取り組みが求められることになりそうだ。

しかし、脱炭素への取り組みはサプライヤーにとってはコスト負担が大きいことも事実。目標数値の提示にとどまらず、実現するための情報、技術などをサプライヤーに提供するなど協力して進めていくことが必要だ。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

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