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  • 公開日:2021.02.23
  • 最終更新日: 2025.03.11
ネスレが植物由来の製品ラインアップを強化、キットカットやネスカフェを順次発売

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

ネスレが2020年8月に発表した植物由来のツナ(マグロ)の代替品をつかったラップ(Nestlé)

スイスの食品大手ネスレはこのほど、同社の代表的なチョコレート菓子「キットカット」で、原材料に一切乳製品を使わないプラントベース(植物由来)の新バージョンを加えると発表した。現時点で日本での販売は未定だが、年内に世界数カ国で販売を開始する。また日本ではネスカフェシリーズのラインアップに、植物由来の素材を使用した「プラントベースラテ」を8製品追加し、3月1日から順次発売すると発表。ネスレは、健康や気候変動対策の観点からも植物由来の原材料を使用した食品や飲料を増やす方針を示しており、今後、日本でもそうした商品が続々と登場しそうだ。(廣末智子)

ネスレによると、「キットカット V」と名付けられた植物由来のキットカットは、「世界中のキットカットファンの大きな期待に応えるヴィーガンバージョン」であるとともに、「生活の中にもう少し植物由来の食品を取り入れたいと思っているすべての人に向けた商品」であり、「長年愛されてきたサクサクのウエハースと滑らかなチョコレートの絶妙なバランスとを実現した」という。また原材料には、乳製品を一切使用せず、国際NGOレインフォレスト・アライアンスと連携し、持続可能なカカオの調達計画「ネスレ カカオプラン」に沿って調達した、持続可能なカカオを100%使用した、としている。

レインフォレスト・アライアンスは、その製品、または原料が、社会、経済、環境からなる持続可能性の3つの柱の強化につながる手法を用いて生産されたものであることを認証する機関を指す。ネスレは昨年12月、「環境再生型の農業と再生可能な電力への移行によって、気候変動対策を強化する」とする内容の行動指針を示していることからも、新キットカットについても商品の製造過程における気候変動問題などへの対応を強調しているものとみられる。

ネスレはすでに米、オーツ麦、大豆、ココナッツ、エンドウ豆、アーモンドを原料とした乳製品に代わる植物性の代替品をさまざまなカテゴリーで販売しており、例えば、乳製品を使用しないアイスクリーム、コーヒークリーマー、米とオーツ麦や、エンドウ豆をベースとした飲料、またプラントベースのカプチーノとラテ、ビーガンのコンデンスミルク代替品、さらにプラントベースのハンバーガーに挟むための乳製品を使用しないチーズなどがあるという。

2019年10月に発表した、植物由来のベーコーンチーズバーガー。パテ、ベーコン、チーズはすべて植物性の代替品

また同社の調査では「人々はさまざまな植物性食品を探し求めている」といい、菓子部門の責任者であるアレクサンダー・フォン・マイヨ(Alexander von Maillot)氏は、「人々の食生活を変える静かな食の革命が進行中です。私たちはその最前線に立ち、植物由来の食品や飲料の開発に挑戦していきたい」と表明。さらに「そのためにも、最も有名で愛されているブランドのヴィーガンバージョンを提供するのは最良の方法」と続け、新キットカットに同社がかける思いを発信している。

日本市場初の乳成分不使用ラテ8製品を3月発売

もっともネスレ日本(神戸市)の広報を担当するコーポレートアフェアーズ統括部メディアリレーション室によると、「キットカット V」の日本での発売は「現時点で未定」の状況。日本では健康志向と環境配慮への意識の高まりを背景に、日本市場では新ジャンルとなる乳成分不使用のラテ製品となる、ネスカフェの「プラントベースラテ」を3月から発売する。液体飲料のほか、お湯を注いでつくるスティックタイプのもの、カプセル式のものなど3カテゴリーからなる8製品をラインナップしており、それぞれ、コーヒーとの相性が良い、オーツ麦とアーモンドを厳選して使用しているという。

一方、同社の深谷龍彦社長は昨年夏、日本経済新聞の取材に対し、植物由来の成分でつくる「植物肉」を2021年にも日本市場に投入し、まずはハンバーガーチェーンやレストランなどに向けた業務用として販売することを明言しており、これについてSustainable Brands Japanが問い合わせたところ、メディアリレーション室から「現時点ではお伝えできることはありません」とする回答があった。

いずれにしろ、日本でも「植物肉」や「代替肉」がコンビニやスーパー、外食産業などで注目を集めるなど、プラントベース食品市場はここ数年で拡大している。ネスレ日本も、今後もプラントベースの製品ラインアップを拡大していく方針で、「消費者のみなさまにさまざまな選択肢を提供するための取り組みを進めていきます。『Good Food , Good Life』を掲げる企業として、食の持つ力で、現在、そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」としている。

written by

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。

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