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サステナブル・ブランドジャパンは19日、「コロナ禍を通じてのパーパス深化と組織風土進化ー企業のあり方のRegenerationー」をテーマに、「第4回SB-Japanフォーラム」をオンラインで開催した。コロナ禍でワーケーションやパラレルワークをはじめとする今までとは違う働き方や人員配置などを進める企業が多い中、こうした動きを“しなやかな深化と進化”へと高め、真に持続可能な組織として変遷を辿っている2社の事例を通して、その根底にあるRegeneration(リジェネレーション=再生)の思考とアイデアについて理解を深めた。フォーラムのナビゲーターは、山岡仁美サステナブル・ブランド国際会議 横浜プロデューサー。(廣末智子)
世界はすでにリジェネレーションに前進
はじめにリジェネレーションについて、山岡プロデューサーが「地球規模や世界共通の課題を解決するために必携」であると同時に、「持続可能性だけを追求するのでなく、再生しながら社会全体を繁栄させていく考え方である」とあらためて説明。「世界はすでにリジェネレーションに前進している」として世界の大手企業の名前を挙げた。例えば、消費財大手の英ユニリーバのカラフルなロゴマークには、充実した暮らしの象徴である鳥や、新鮮な原材料、命を次の世代に伝えるものとしてのDNAなど、さまざまな思いが込められていることを紹介。また日本企業の中にも、日本人の自然から学ぶ姿勢を大切にアマゾンの熱帯雨林で森林農業を行うフルッタフルッタや、教育や投資事業を通じて“共感資本社会”の実現を目指すeumo(東京・港)など、リジェネレーションに通じるパーパスを掲げる企業が少なからずあることを報告した。
「働きがい」改革が奏功 ――リコー
ここでゲストスピーカー2氏が登壇。はじめに、リコージャパンからICT事業本部コミュニケーション事業企画室の山口明弘氏が、「ニューノーマル時代の新たな働き方へのチャレンジ」と題して同社の変革の過程を紹介した。それによると、同社は一人ひとりの社員が生き生きと働き、すべての社員が最適なワークライフを実現するための「働きがいの改革」を早くから進め、2016年には在宅勤務制度を、2018年には月10日、週3日までのリモートワーク制度を導入。また昨年7月に開催予定だったオリンピック期間に向け、一斉に在宅やサテライトオフィスでの勤務に切り替える準備を進めていたため、コロナ禍での企業対応もスムーズにできた。現在は日数の上限もなく、公共スペース勤務も可能な「どこでも、いつでも」勤務を標準化し、オフィスでの新しい働き方や、非対面による営業活動の効率化などを示したガイドラインを部門ごとに発行している。
こうした勤務体系が可能になったのには、この20年間、積極的にITの活用を進めてきたことが大きく、現在も、リアルな場とリモートな場を融合し、議論を見える化するためのツールなどを活用しながら、コミュニケーションの円滑化を図っている。同社にとってデジタル革命は、単にオフィスワークの効率化だけでなく、働く人のストレスとなっている「面倒とマンネリ、ミスできないの“3M”」をなくし、もっと楽しんで働ける幸せな環境づくりを目指したもので、山下良則社長自身が「自律型人材の活躍と人間らしい仕事の追求で“はたらく”に歓びを」というトップメッセージを強く打ち出しているのも社員のモチベーションにつながっているというのが一社員としての山口氏の見方だ。その一例として、勤務時間の20%を使って新しいことにチャレンジするための制度である、幸福の“福”を当てた“福業制度”を使ってキャリアアップを図っている社員の活動なども紹介された。
目標は「グレート・リセット」――大川印刷
続いて2018年に第2回ジャパンSDGsアワードSDGsパートナーシップ賞を受賞した大川印刷(横浜市)の大川哲郎社長が「やればできる!全集中!」と題して、創業140周年を迎える同社がSDGsの取り組みで注目されるまでの歩みやコロナ禍がもたらした進化などを語った。
同社は今から20年以上前、経営コンサルタントに「明日、あなたの会社がなくなったら、あなたのお客さんは本当に困りますか?」と言われ、「とにかく地域や社会に必要とされる人と企業を目指さなければ」と思ったのがきっかけで、自社の存在意義(パーパス)を「ソーシャル・プリンティング・カンパニー(社会的印刷会社)」と定義。以来、試行錯誤を繰り返しながら本業を通じた社会課題の解決に取り組み、一昨年には再エネ100%を達成、「CO2ゼロ印刷」を展開する国内唯一の印刷会社となった。
そんな同社もコロナ禍で業績にダメージを受けている。もっともその中で見えてきたことは多く、コロナや次なる脅威に向き合うべく、進化を続けている。コロナ禍で変わったことはテレワークや有給休暇の取得促進、残業削減などのほか、本社工場と営業部をZoomでつなぎ、毎日、朝礼と昼礼、夕礼の3回、動画を通じて皆が顔を合わせるようになったこと、また入社予定者との交流ワークショップや他企業とのパートナーシップによるオンラインセミナーの開催などを通じて、これまで以上に活発な人と人との交流が、社内外で生まれていることがあるという。
さらに同社はZ世代の活用や、他企業で退職を余儀なくされた人らの中途採用にも力を入れており、入社してすぐにテレワークになってしまった新入社員の活躍の場としてオンラインで会社のPRを中心に行う経営企画広報室を開設した。これは「会社に従業員を合わせるのではなく、新入社員に会社組織を合わせよう」という新発想によるもので、社員自らが「環境印刷で刷ろう」というプラカードを掲げて気候変動アクションに参加するなど、やる気の創出につながっている。またテレワークの普及によってできた営業所の空きスペースを活用して廃材を使ったステージをつくり、SDGsに関する情報などをライブ発信したり、会社説明会や株主総会なども行える場として3月にもオープンさせる計画が進行中だ。
最後に大川社長は、今年のダボス会議のテーマでもあり、これまでの資本主義を見直し、人々の幸福を中心とする経済にシフトしていくべきだとする「グレート・リセット」に言及し、「私どもも、そうした流れにつながることを目標にしている」と締めくくった。
この後、参加者がチームに分かれ、山岡プロデューサーが提示したリジェネレーションを、社会と文化、経済とエコロジーの4つのカテゴリーに定義分けして考える「リジェネレーションマップ」(出典:コーシャ・ジュベール「エコビレッジの原則」)の指標に基づいて活発に議論。社会面では「子どもが変われば未来も変わる」ことを目指した教育、文化面では伝統文化の継承、経済面では異業種の共創、環境面では量り売りなどを通じたゼロ・ウェイストの取り組みなどが挙げられた。それぞれのカテゴリーで原点回帰とも言える動きを強め、それらをリンクさせながら社会全体の羅針盤としてリジェネレーションを進めていくことの重要性を確認した。
廣末 智子(ひろすえ ともこ)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年より現職。サステナビリティを通して、さまざまな現場の思いを発信中。