• 青木 茂樹
  • コラム
  • 公開日:2018.07.13
  • 最終更新日: 2025.03.28
G☆Local Eco!
行政・企業・市民の連携が好循環を生むGreenest City–後編

青木 茂樹 (あおき・しげき)

2.Greenest Cityへの行政・企業・市民の連携

バンクーバー経済委員会が作成したSTATE OF VANCOUVER’S GREEN ECONOMY 2018によれば、①バンクーバー市の政策と②企業のイノベーション、そして③市民の需要が連携することでこれらを達成しているという。

実は空港からダウンタウンへ車で移動すると、気がつくことがあった。空港からの高速道路が無く、ひたすら一般道を走っていくのである。そこで地図を見て気がついたのであるが、街中には高速道路が存在しないのである。

STATE OF VANCOUVER’S GREEN ECONOMY 2018によれば、1960年代にバンクーバー市は政策として車中心の社会ではなく、居住性を選択し、北米で唯一、街中に高速道路を持たない都市となったという。

むしろ地図にはメトロ(スカイトレイン)と自転車ルートが示され、自動車や人との道路の共有が示されている。こうして徹底した炭素削減へ向けた公共交通と人力による移動の推奨が進められている。 

「Metro Vancouver Cycling Map-West」より一部抜粋

この市の環境政策を支える企業として、ゼネラル・フュージョン、カーボン・エンジニアリングなどの起業家マインドをもった企業が集まることで、バンクーバーはエコシステムのスタートアップ企業が集まる世界有数の街と認知されている。

これらの企業では、エコシステムをつくるために互いに連携しながら競争や協調していくという規律が産まれており、現存する産業部門を乗り越え、目覚ましい解決方法が産み出されることとなっている。

そして環境に優しい施策の究極の駆動力は“需要”である。2030年までに新たな建物は排出物ゼロを目指しているが、環境保護に価値をおくバンクーバー市民の考え方こそが、こうした需要を牽引していくことになっている。

まさに行政、企業、市民の連携が好循環となってサステナビリティへのイノベーションを引き起こしているのだ。

3.ダイバーシティ×サステナビリティ×ビジネス

バンクーバーには世界のトップ校として名高いブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)がある。湾岸沿いの山々のなかにある広々とした大学であるが、現在のカナダの若き首相ジャスティン・トルドー氏ら歴代4名の首相と7名のノーベル賞受賞者、オリンピックでは67名のメダリストを輩出した名門校である。

ここで特筆すべきはUBC人類学博物館であろう。先住民のトーテムポールを始め、世界の民族の文化歴史の所蔵品を一覧できる博物館である。私もダウンタウンから地図を片手にサイクリングロードを自転車で快適に走りながら向かった。

行く先々で地図を眺めていると、カナダ人の気質であろうか必ず「何を探しているんだ?」と声を掛けてくる。「UBCの博物館に行くつもりなんだが」と応えると、「あそこは素晴らしい博物館だ」と我が事のように誇らしげに話し出すのだ。やや長めの説明を聞きながら、まさにダイバーシティこそが彼らのアイデンティティとなっている背景を知ることとなった。

こうした博物館の収蔵品も優れているのだが、バンクーバーのギフトショップを覗くとさらに面白い。

今年のサステナブル・ブランド国際会議では、マイクロプラスチックの話題が筆頭であり、会議でもペットボトルを使用しないように金属製ボトルが配られ、ウォーターサーバーから水を入れて利用した。こういう時代がくるのかなと思っていたら、すでにギフトショップには、先住民アートの金属製ボトルがつくられ、ズラッと並べられていたのだ。

先住民アートの金属製ボトルのお土産(2018年6月、筆者撮影)

また先住民アートが施された皿やトングも、原料は再生ガラスでつくられているという。

まさにダイバーシティという文化がサステナビリティと相まって、ビジネスとして展開されていることを知り、私はこの街の毛細血管の細部にまでサステナビリティが染み込んでいるという凄さを体感したのである。

先住民アートが施されたサステナビリティ関連のお土産品(2018年6月、筆者撮影)

–おわり–  –前編に戻る–

written by

青木 茂樹 (あおき・しげき)

サステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー 駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授

1997年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。山梨学院大学商学部教授、 University of Southern California Marshall School 客員研究員、Aalborg University Business School 客員研究員(2022年4月〜2024年3月)などを歴任。 多くの企業の新規事業の立ち上げやブランド構築に携わる。地方創生にも関わり、山梨県産業振興ビジョン策定委員、NPOやまなしサイクルプロジェクト理事長。人財育成として、私立大学情報教育協会FD/ICT活用研究会委員、経産省第1回社会人基礎力大賞を指導。やまなし大使。

Related
この記事に関連するニュース

サントリーと電通の事例から探る、ネットゼロ社会の構築
2024.05.23
  • ニュース
  • #パートナーシップ
  • #ステークホルダー
地域の社会課題解決へ学校の枠超え高校生が議論――第3回SB Student Ambassador ③ 中国・北海道ブロック大会
2022.12.12
  • SBコミュニティニュース
  • #パートナーシップ
  • #ステークホルダー
企業とNPO/NGOの連携 ハードルを越えて社会課題に立ち向かうには
2020.07.09
  • ニュース
  • #パートナーシップ
  • #ステークホルダー
ブランドと消費者が連携して「持続可能な暮らし」を実現するには サントリー、イオン、アスクルの役員が語る
2020.03.04
  • ニュース
  • #パートナーシップ
  • #ステークホルダー

News
SB JAPAN 新着記事

水素を活用する社会の実現へ ホンダが進める多元的で多面的な取り組みとは
2025.04.03
  • ニュース
  • #リジェネレーション
自社の歴史から学ぶ、人の感動起点の製品開発とサステナビリティ
2025.04.02
  • ニュース
  • #リジェネレーション
米国の現状から何を学ぶべきか、「リジェネレーション」の可能性とは――米SBの創設者とCEOが語る
2025.04.01
  • ニュース
  • #リジェネレーション
SB-Jの発行元がSincに移行――サイトリニューアルでコンテンツを一層充実へ
2025.04.01
  • ニュース

    Ranking
    アクセスランキング

    • TOP
    • ニュース
    • 行政・企業・市民の連携が好循環を生むGreenest City–後編