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サステナブル・ブランド(SB)国際会議は、2017年から3カ年計画で「グッド・ライフ」を世界共通テーマに掲げた。初年度となる2017年は「グッド・ライフの再定義」、2年目は「グッド・ライフのリデザイン」、3年目は「グッド・ライフのデリバリー」と続いていく。そもそも、なぜ「グッド・ライフ」をグローバルテーマにしたのか。今後、企業やブランドと生活者の関係はどのように変わっていくのか。SB国際会議を主宰する米サステナブル・ライフ・メディア社のコーアン・スカジニアCEOに話を聞いた。(寺町幸枝)
「サステナビリティ(持続可能性)に関する機運が高まる一方、多くの企業が自社調査の結果、消費者はサステナブルな生活や商品を求めていないと言い始めていた」。スカジニアCEOは、グッド・ライフをテーマに掲げた経緯を振り返る。
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「直感的に企業調査は現実を映し出していないのではないかと感じた。世界中をまわるなかで、サステナブルな社会へのグローバルシフトは現実に起きている。(それにまつわる)経験や欲望が世界的に共通していることを、調査を通じて明らかにしたいと思った」(スカジニアCEO)
こうしてサステナブル・ブランドと米世論調査機関ハリス・ポール社は2017年5月、米国の18歳以上の1000人を対象に調査したレポート「グッド・ライフを実現する(Enabling the Good Life)」を発表した。
同調査の最大の特徴は、「open-ended interview(自由回答形式のインタビュー)」によるものだったという点だ。選択問題ではない点で、調査に誘導尋問的要素が極めて少ないことが分かる。
「あなたは今グッド・ライフをどのように定義しますか」という質問に対するインタビュー結果から抽出された言葉は、調査機関が定量分析し、次の4つの要素に分類した。
1)健康的でバランスの取れた生活
2)意味のあるつながり
3)金や地位
4)個人的な成功
注目は、「意味あるつながり」という項目が高い評価を受けた点だ。「お一人様文化」が根付く日本で、人とのつながりやコミュニティーとのつながりが求められるという部分は相反するのではないか。
そんな筆者の疑問に対して、スカジニアCEOは「日本人のお一人様文化は、むしろシンプリシティーやマインドフルネスという考え方の延長のように思う。孤独を求めるということ、つまり複雑な人間関係や、ノイズから自身を引き離すという欲求は、つながり先が、パーソナル(自己)と捉えることもできるのではないか」と話す。
この調査から分かったことは、年齢、性別、政治的な背景などに左右されず、人々が指す「グッド・ライフ」を具現化するために最も重視しているのが、「健康的でバランスのとれたシンプルな生活(36%)」だった。
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「個人的に金儲けをするという欲望を追求することだけが、グットライフではなくなった。より意味のある人間関係を築き、シンプルなライフスタイルと地球を大切にするという思いを求める人が増えている」(スカジニアCEO)
さらに、調査ではブランドとグッド・ライフの関係性も浮き彫りとなった。消費者はブランドへ期待が高い一方で、現実的にその生活をサポートする存在になりきれていないという結果が出た。この結果を踏まえ、いまブランドや企業に求められているのは「消費者や顧客をリードする存在になること」とスカジニアCEOは断言する。
企業はなぜ今、変わらなければならないのか。「政治的に、グローバリゼーションを止めようとする動きがあるが、その動きを止めることはできない」とスカジニアCEOは語る。
中国が自然エネルギー導入に舵取りを一気に変えたように、日本をはじめとした世界の国々もこうした動きに追随せざるをえなくなるだろう。
「BtoBにおける変化は、おそらくBtoCビジネスの顧客が、消費者からその『透明性』を求められるケースの影響により、必要に迫られての動きになるのではないか。BtoC企業は、(サステナブルに)コミットしていることを証明するため、サプライチェーンに関わる全ての企業に、同様の行動規範を求めるからだ」(スカジニアCEO)
例えば、宅配業者のUPSがBtoB向けに利用する巨大なTeslaの電気トラックを、大量購入したことはその一例だ。
また実際ここに来て本気でサステナブル化を進める企業が増え始めたという。例えば、コカ・コーラ社のリブランディング(大改革)では、オリンピックを通じて、「水を含めた幅広いポトフォリオを持った飲料メーカー」というイメージを促進させている。健康というカテゴリーから非難を受けやすいソーダ類は、毎日摂るものではなく、「誕生日会」といった特別な時に飲む飲み物というイメージに方向転換している。
フィリップ・モリス社は、自社の旧来製品である紙たばこを否定し、加熱式たばこの販売に切り替えるという大胆な行動を行った。
消費者も、サステナブルな動きに対して、意識し、評価をする傾向が強まっている。またSDGsの世界的な広がりも、こうした動きを加速させている。
日本はまだサステナビリティとブランディングの融合は遅れ気味だが、グローバルな動きの中で、確実に一歩一歩変化の波は届き始めている。
寺町 幸枝(てらまち ゆきえ)
Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。