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  • 公開日:2019.09.06
  • 最終更新日: 2025.03.16
海洋プラごみを一掃 25歳CEO率いるオーシャン・クリーンアップのいま

ボイヤン・スラット

The Ocean Cleanup

ボイヤン・スラット
NGO オーシャン・クリーンアップ創業者兼CEO
1994年オランダ生まれ、25歳。18歳でオーシャン・クリーンアップを創業。海の自然力を利用し、世界の海のプラスチックごみの回収に挑む。

太平洋ごみベルトのごみがマイクロ・プラスチックに日々変わり続けるいま、信頼できる確実なテクノロジーを早急に確立する必要がある。そんな中で、私たちは、間違いなく太平洋ごみベルトのごみを永久に取り除く方法に限りなく近づいている。(翻訳=梅原洋陽)

NPO「オーシャン・クリーンアップ」のミッションは、世界中の海からプラスチックを回収することだ。私たちの取り組みが始まったのは「太平洋ごみベルト」と呼ばれる、世界最大のプラスチック集積地。

いま直面している課題が2つある。

1.8000万キログラムものプラスチックが集まっているものの、広がっているエリアがあまりにも大きい。その大きさはフランスの3倍、テキサスの2倍もある。

2.そのエリアがとても遠くにあり、中心と陸地の距離は地上と国際宇宙ステーション(ISS)の距離の5倍も離れている。そのため、そこまで船を動かすにかかる費用が莫大だ。

これらの課題に対する解決策は、回収する前にプラスチックを集め、船の使用時間を減らすためにも、回収装置を長時間、自動で稼働できるようにすることだ。

落ち葉だらけの芝生を掃除する熊手と比較すると分かりやすいだろう。落ち葉を片付けるのに、一枚一枚拾うこともできるが、それだと長い時間がかかってしまう。その代わりに熊手を使って一箇所に落ち葉を集め、一気に集める方法もある。これが私たちの目指す形だ。大きな違いは、私たちの使う熊手は、地球上で最も過酷な環境で何年間も使用でき、人間の助けなしで集められたプラスチックを取りこぼすことなく回収しないといけないということだ。

The Ocean Cleanup

運用テストの重要性

海からごみをなくす長い道のりは、大きく3つのステップに分けられる

1.コンセプトを検証する:効果的にプラスチックを回収し、長時間保持できるデザインを確立するまで、テストと統合を繰り返す。

2.拡張性のあるものにする:稼働が可能なシステムを確立したら、コストとスケールするためにデザインを最適化する。

3.規模を拡大する:ごみベルトの中に清掃システムを増やし、5年ごとに50%のゴミを回収できるようにする。

問題は日に日に深刻になっている。海洋プラスチックは、有害なマイクロ・プラスチックにどんどん変わっていくため、実績に裏打ちされた方法を早急に確立する必要がある。

私たちの最初の挑戦、システム001(別名:ウィルソン)は昨年、実行された。数ヶ月間のテストの後、今年の初めにウィルソンは破損個所を修理するために引き上げることになってしまった。意図した帰還ではなかったものの、診断と解決策はすんなりと見つかった。より深刻だったのは、このシステムでは一度集めたプラスチックが再度流れ出てしまうことだ。ウィルソンはプラスチックより常に速く移動するのではなく、速かったり、遅かったりしてしまうことが判明した。これだと、流れ込んだプラスチックが、再び外に出てしまう。

The Ocean Cleanup

絶対的な解決策は存在しないが、改良したデザインシステム001Bを設計した。これによりスピードの上げ下げができ、異なる配置を試すことができる。また、システムとプラスチックのスピードの違いを知ることが可能だ。このシステムは6月の終わりに開始され、その後パラシュート・アンカーを使用して減速させたり、巨大なブイを活用して加速させるテストを6週間行った。

結果

総合的に見ると、どの配置もウィルソンより良い働きをした。すべての試験において、効率的なスピードの違いを示した。プラスチックが然るべき方向からシステムに流れ込んだということである。最も良かった改良点は、パラシュート・アンカーを使用して必要なだけ減速ができるようにしたことだった。自然の風や波がプラスチックをシステム内に押し込んでくれる。

The Ocean Cleanup

減速を試したら、スピードの変化による問題は特に見られなかった。プラスチックは常に先端に入り込み、外に流れ出ることはなかった。だから、このアイデアを採用していこうと思う。

テスト期間中、プラスチックはシステム001Bにより1万分の1のスケールで1箇所に集められた。これをベルト全体に応用すると、テキサスの2倍の大きさのプラスチックの広がっているエリアをヒューストンの大きさの35分の1まで小さくすることができる。集中的に集められるということだ。

トワイライト・ゾーン

良い方向に進んでいるはいるものの、テクノロジー的に完成しているとは言えない。システム001を改良した際、故障の原因となるレールとの干渉をなくし、デザインをよりシンプルにするためにスクリーンを少し前に移動させ、浮きからの距離を離した。スイミングプールのレーンのように、コルク・ラインを用いてスクリーンを正しい場所に保持し、弛んだり、沈んだりしないようにするためだ。この改良はかなり効果的ではあるが、スクリーンと浮きの間に空間を生んでしまう。この空間を私たちは「トワイライト・ゾーン」と呼んでいる。

もし有名なテレビシリーズをご存知なら分かると思うが、毎回のエピソードに面白いひねりがある。私たちにとってのひねりは何かと言うと、プラスチックはコルク・ラインを超えてトワイライト・ゾーンに入ってくる。これはシステムの中にゴミが入っているとも言えるが、フローター・パイプの下にはスクリーンがないために、プラスチックを完全に回収できたとは言えない。スクリーンより前でプラスチックを回収することが成功だ。

トワイライト・ゾーンを抜け出す

この問題の解決は、一定のスピードを保つことよりはかなり簡単なようだが、重要な課題ではある。私たちは、コルク・ラインの浮力と高さを上げて解決して行く。現在のコルク・ラインの浮きの直径は15cmだが、これを32cmの浮きを3つ重ね、約50cmの高さになるようにする。

改良は終わり、いま太平洋ごみベルトに向かっている最中だ。

最後に

期待できる展開になってきているが、私たちは慎重に進めている。予期していない課題が訪れるかもしれない。越波以外の難題もあるかもしれない。しかし、間違いなく太平洋ごみベルトのゴミを永久に取り除く方法に限りなく今近づいている。

The Ocean Cleanup

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ボイヤン・スラット

NGO オーシャン・クリーンアップ創業者兼CEO

1994年オランダ生まれ、25歳。18歳でオーシャン・クリーンアップを創業。海の自然力を利用し、世界の海のプラスチックごみの回収に挑む。

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