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2025年の年明け早々に米国カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山火事が甚大な被害をもたらしていることに象徴されるように、気候変動の影響による異常気象が世界各地で猛威を振るう。そうした中、世界気象機関(WMO)などの報告によると、2024年の平均気温は、産業革命前の水準に比べて、パリ協定が気温上昇の抑制目標とする1.5度を初めて超え、大気中の水蒸気含有量も過去最高を記録したことが分かった。各機関は報告書の中で「パリ協定は長期目標であり、1.5度を超える年が1〜2年あったとしても、それが協定の目標達成に失敗したことを意味するわけではない」と強調。しかしその一方で、過去10年は、記録上、最も暖かい10年であり、「2030年代にパリ協定の1.5度目標が達成できなくなる可能性は高い」とも警告している。 (廣末智子)
2024年は史上最も暖かい年――国際的な6つのデータセットが指摘、平均気温は産業革命前から1.55度上昇
![]() 1967年以降の、世界の年平均気温と産業革命前(1850〜1900年)の平均気温との差の推移 出典:C3S/ECMWF
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WMOによると、欧州中期予報センター(ECMWF)と、日本の気象庁、米航空宇宙局(NASA)、米国海洋大気庁(NOAA)など、6つの国際的なデータセットを統合分析した結果、2024年の世界の平均気温は、産業革命前(1850〜1900年)の平均より1.55度高かった(不確実性の幅は±0.13度)。6つのデータセットはすべてが2024年を「史上最も暖かい年」としており※、いずれも直近の1月第2週に発表されたが、これは「2024年に経験した例外的な状況を強調するため」に、機関間で公開のタイミングを調整したものだという。
※方法論が異なるため、すべてが1.5度を超える異常気象を示しているわけではない
例外的な2023年に続き、記録破りの2024年
ここからは、上記6つの国際データのうち、ECMWFが実施するコペルニクス気候変動サービス(C3S)による報告、「2024年の世界気候ハイライト」について詳しくみていきたい。
それによると、2024年は1850年まで遡る記録の中で最も暖かい年であり、世界の平均気温は、これまでの最高だった2023年を0.12度上回る15.10度だった。つまり例外的な暖かさだった2023年に続き、さらなる記録破りの年となった。
中でも記録的な気温上昇となったのは、北半球の冬(2023年12〜2024年2月)と北半球の春(3〜5月)、北半球の夏(6〜8月)の3シーズンで、それぞれ1991〜2020年の平均値と比べても0.78度、0.68度、0.69度高かった。そして7月10日には、人間の体感温度が32度以上を超える「熱ストレス」の影響を受けた地球の面積が、約44%に(1991〜2020年の年間平均最大値は約39%)、7月22日には世界の平均気温が17.16度となり、それぞれ過去の記録を打ち破った。
海洋表層の異常な暖かさ際立つ
また南極と北極の域内を除く海洋の海面水温も、2024年は20.87度と過去最高を記録した。月ごとでは、2023年5月から2024年6月まで15カ月連続で過去最高値を更新。これらは太平洋赤道域で発生したエルニーニョ現象が、発達してピークに達し、衰退した時期に一致する。7月以降、海面水温は2023年を下回ったものの、エルニーニョ現象の終息にもかかわらず、多くの海洋で高水準が続き、12月には、2015年の記録的なエルニーニョ現象のピーク時の海面水温を上回る一方で、ラニーニャ現象が発生するなど、海洋表層の異常な暖かさは際立っている。
さらに年間海面水温の記録を樹立したすべての地域で、ある時点に海洋熱波が発生し、4月には北半球と南半球の主要な海洋盆地が、地球規模のサンゴの白化現象に見舞われていることがNOAAによって確認されている。
また、2024年の大半の時期において、南極周辺の海氷面積は史上最低値に達し、中でも太平洋セクターの氷の覆いの減少が顕著だった。一方、北極圏の海氷面積は、6月までは1991〜2020年の平均に比較的近かったが、その後数カ月で平均を大きく下回り、12月は記録上最低となった。
大気中の水蒸気も過去最高値
![]() 大気中の水蒸気量の、基準期間(1992~2020 年)平均値との比較の推移 出典:C3S/ECMWF
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2024年は、大気中の水蒸気も「少なくとも33年ぶり」の最高値を記録。1991〜2020年の平均より4.9%増加し、これまで2番目に高かった2016年(平均より3.4%増)、3番目に高かった2023年(3.3%増)に比べても大幅に多かった。
水蒸気は、CO2やメタンガスなどと異なり、人間活動の影響を直接受けて増減することはない。しかし気温が1度上昇するごとに約7%増えるとされ、水蒸気含有量が増えると、大気の温暖化がさらに増幅されるという“水蒸気フィードバック”の仕組みが、気候変動の影響を大きくする。大気中の水分の増加は、異常降雨の可能性を高め、より激しい熱帯低気圧のエネルギーをもたらすからだ。2024年の記録的な水蒸気含有量は、海面温度の上昇による海洋からの表面蒸発量の増加と、温暖化した大気がより多くの水分を保持できることの両方によって起こった現象と見られている。
CO2、メタンガスも記録的レベルに
![]() 2003年以降の大気中のCO2濃度の推移 出典:C3S/CAMS/ECMWF/ブレーメン大学/オランダ宇宙研究所(SRON)
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またCO2とメタンガスの大気濃度も、引き続き上昇し、記録的なレベルに達した。CO2濃度は、2023年と比較して約2.9ppm多い422.1ppmに、メタンガスは同じく約3ppb多い、1897ppbとなった。CO2の増加率は、2022年から2023年の増加率2.5ppmより大きく、少なくとも過去200万年間のどの時点よりも高かった。メタンガスの増加率は過去数年よりは低くなったが、少なくとも過去80万年間のどの時点よりも高くなっている。
南北アメリカ大陸が山火事で最も影響受ける
こうした異常とも言える気候変動は、2024年も熱波や洪水、干ばつ、山火事などの形で世界各地に爪痕を残し、生態系やインフラ、人間の健康に重大な影響を及ぼした。NOAAの暫定データによると、86の熱帯暴風雨が発生したほか、欧州でも50近くの命名された嵐が発生するなど、世界中で毎月のように熱帯低気圧が深刻な洪水をもたらした。
また国や地域の記録を破る、著しい熱波が世界各地で数多く発生。中南米や南アフリカなどいくつかの地域では、極端な高温と、長期にわたる降水量不足が重なった。
乾燥した気候はいくつかの地域で山火事を引き起こし、コペルニクス大気監視サービス(CAMS)によるGFAS山火事排出データによると、最も影響を受けた大陸は南北アメリカ大陸だった。カナダやブラジル南部とボリビアでは持続的に大規模な火災が観測され、火災による炭素排出量はボリビアとベネズエラで過去最高となった。
WMOが警告:「異常気象は10年連続で続き、すべては人間の活動による」
2023年と2024年はどれほど異常で、なぜ暖かかったのか――。この点について、コペルニクス気候変動サービスによる報告書は、「1970年代以降、地球温暖化は10年ごとに約0.2度上昇する傾向で進んでいるのに加え、世界の平均気温には年によって最大約0.3度の自然変動がある中で、比較的強いエルニーニョ現象が2年連続で発生したことなどが、記録的な高温につながった」とした上で、両年の大気の温暖化と湿潤化の大部分は、「人為的な温暖化の加速と、複数の海域の海面水温の高さに起因している」と分析する。最近の英国気象庁の予測によると、2025年は世界で3番目、あるいは2番目に暖かい年になる可能性が高いという。
なお報告書はパリ協定について、「世界の平均気温の上昇を、『産業革命以前の水準より2度より十分低く抑え、1.5度より低く抑える努力を追求する』ことを目指しているが、これを達成する構成要素などは具体的に明記されていない」とした上で、世界の気温上昇がそれらのいずれかを超えたことを確認するには、「20年から30年の平均気温が必要」とする認識を説明。それをもとに、「1.5度を超える年が1〜2年あったとしても、パリ協定の目標達成に失敗したことを意味するわけではない」と強調する一方で、「2030年代にパリ協定の1.5度目標が達成できなくなる可能性は高い」と警告する。
こうした見方を踏まえ、WMOのセレステ・サウロ事務局長は、「重要なのは、ほんのわずかな気温上昇も問題であることを認識すること。気温上昇が1.5度未満か超えているかにかかわらず、温暖化が1段階進むごとに、私たちの生活や経済、そして地球への影響は増大する」と強調。その上で、「壊滅的で極端な天候、海面上昇、氷の融解を伴う記録破りの異常気象は、この1、2年だけでなく、10年連続で続いている。すべては、人間の活動による記録破りの温室効果ガスレベルによって引き起こされたものだ」と改めて述べ、これまで以上に野心的で緊急の気候変動対策の必要性を訴えている。
廣末 智子(ひろすえ ともこ)
地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。