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  • 公開日:2024.07.18
  • 最終更新日: 2025.03.02
7月は脱プラ月間:生活者が参画できる循環型サービスはどこまで広がっているか

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

日本で10年活動するテラサイクル・ジャパンは今月、有料バッグで使用済みプラを回収する「ゼロ・ウェイスト・バッグ」の新サービスを始めた

プラスチック汚染問題の解決に向け、日本でも循環型ビジネスを展開するさまざまなプラットフォームが生まれている。使い捨てではなく、繰り返し使える容器で販売したり、使い終わったプラスチック製品を回収し、再び同じ製品や、新たに違う製品へと生まれ変わらせる事業に力を入れる企業も多いなか、生活者一人ひとりが参画できる身近なサービスはどこまで広がっているのか――。
毎年7月は、世界的に「脱プラスチック月間」とされているのに合わせ、新たな動きをピックアップする。(廣末智子)

マイボトルやマイタンブラーの持ち歩きには限界、ではどうすれば?

グリーンピース・ジャパン 「グッバイ・ウェイスト マップ」公開

国際環境NGO、グリーンピース・ジャパンは今年5月、マイボトルやマイタンブラーを所有している人1000人を対象にした意識調査の結果を発表した。それによると、66.8%が「週1日以上マイボトル・タンブラーを持ち歩く」が、その26.3%は「水やお茶用」で、「コーヒー用など」はほとんどなかった。ここから見えてくるのは、“マイボトルやマイタンブラーを持ち歩くことの限界”だ。

例えばスターバックスやタリーズなど独自にマイボトルやマイタンブラーの持ち込みを推奨する大手コーヒーチェーン店は少なくないが、こうした店での利用のために、マイボトルやタンブラーを持ち歩かない理由には、「すでに1本を水などの他の用途で持っているので、これ以上増やしたくない」(43.3%)、「かさばるから」(25.5%)、「自分で洗うのが面倒」(17.3%)などが挙げられた。

このように、生活者自身がマイボトルやタンブラーを持ち歩くのには限界を感じている中で、近年は、店側で繰り返し使える容器を貸し出し、回収して洗浄し、また貸し出す、リユースの仕組みも広がりつつある。調査ではそうした「返却式リユースカップの仕組み」についての認知度は35.2%にとどまる一方で、そのサービスを利用したことがある人の9割以上が「また利用したい」と回答し、企業によるリユースサービスの可能性の大きさが明らかになったという。

グリーンピース・ジャパンが公開した「グッバイ・ウェイスト マップ」の検索画面

こうした傾向を踏まえ、グリーンピース・ジャパンはこのほど、使い捨て容器を使わずに飲食できるリユース容器の貸し出しを行っている事業者や飲食店などを検索できる「グッバイ・ウェイスト マップ」を公開した。現時点では北海道と関東、甲信越・北陸、東海の4エリアのみだが、4事業者の合計136店舗の情報が掲載され、「どんなお店を選ぶかで、ごみの量は減らせる」と生活者にアピールしている。

では現在、生活者が利用しやすいリユースサービスにはどんなものがあるのか。ここでは、同マップに載っている最先端のサービスを紹介する。

1. Re&Go(リアンドゴ―)

保温保冷機能を備えたリユース容器のシェアリングサービス。スマホから二次元コードを読み取り、無料で利用できる。容器は加盟店舗ならどこでも返却可能。返却された容器は事業会社が定期的に回収し、専門の施設で清潔に洗浄した後、再度店舗へ配送することで、安全に繰り返し利用できる仕組みだ。

2. Megloo(メグルー)

2021年10月に鎌倉市で生まれたリユース容器循環サービス。共通のリユース容器を地域でシェアすることでテイクアウトやデリバリー時の使い捨て容器を削減している。テイクアウトの際に二次元コードを読み込んで容器を借り、使用後は対応店舗やボックスに返却する仕組み。飲食店に戻った容器は洗浄され、また別の顧客に提供される。容器は耐久性・耐熱性に優れたバイオマス素材で、500回以上繰り返し使え、その後はリサイクルできる。

名古屋市のカフェによる、朝の通勤時間帯に販売する水出し緑茶のテイクアウトサービス。茶葉本来のおいしさを味わってもらうために、茶葉入りボトルをレンタルで提供している。水を継ぎ足すことで3回分楽しめ、ボトル返却時の洗浄は不要。可能な限り環境に配慮しつつ、お茶を広める方法として開発されたサービスで、茶葉で入れる緑茶体験の入口としても機能している。

4. アルパッケ(arupakke)

長野県内で34店舗(2024年5月時点)が参加する会員制サービス。店頭で入会の申し込みをすれば、参加店舗で提供しているメニューや、食べ残した料理を持ち帰るためのリユース容器を利用できる。容器は複数店舗で共有し、使い終われば、参加店舗のどこへでも返却できる。

容器再利用のLoopや40種類のリサイクルプログラム、
有料バッグで使用済みプラ回収する新サービスも

「捨てるという概念を捨てる」日本で活動10年のテラサイクルジャパン

一方、「捨てるという概念を捨てよう」というミッションのもと、さまざまなメーカーや小売店と協業し、グローバル展開している、循環型ショッピングプラットフォームにLoop (ループ)がある。飲料から日用品まで、洗浄後に再利用することで使い捨てプラスチックを使わないライフスタイルを推進する同プラットフォームは、2019 年のダボス会議で発表され、日本では2021年5月にスタート。現在、全国101のイオンとイオンスタイルの実店舗とオンラインストアなどで21種類の商品を販売している。

食品ではトマトケチャップやガム、飲料ではスポーツ飲料、日用品ではシャンプーや消臭剤、ハンドクリームなど、カテゴリーと商品はさまざまで、それぞれが、各メーカーの考案による、大きさやデザインもばらばらのスタイリッシュな容器に入っているのが特徴だ。

商品は専用アプリを使って購入する仕組み。容器が確実に返却されるよう、各商品にはデポジット(預かり金)が設定されている。使い終わった容器は、購入者が次回以降の来店時に、各店舗の回収ボックスに返却。専用の施設で洗浄後に各メーカーの工場に戻され、中身を充てんし、再び製品となって販売される。

テラサイクル・ジャパンがHP上で展開する、無料のリサイクルプログラムの一例

Loopを展開するテラサイクルジャパンは、さまざまな業界の各メーカーと連携して、HP上で「これまでリサイクルが難しいとされてきたものをリサイクルできる無料のプログラム」を展開している。内容は、使用済みのキッチンスポンジ、ペン、化粧品の容器、スイミングゴーグル、薬が包装されていたシートなど、多種多様な40種類にのぼり、個人や団体から回収するもの、店舗や拠点で回収するものとそれぞれの方式で参加を呼びかける。

さらに、そうした個々のリサイクルプログラムの延長線上で、同社はこの7月、法人向けに新たなリサイクルの仕組みを提供するサービスを始めた。「ゼロ・ウェイスト・バッグ」と名付けた有料の専用バッグ(縦60センチ×54センチ、1枚3800円)を購入し、これに入れて集荷を依頼すれば、オフィスや店舗、施設などから出る産業廃棄物を簡単に少量からリサイクルすることができるというものだ。

対象エリアは現時点で神戸市内のみだが、日本初の試み。回収可能なアイテムは以下の8つで、バッグ1つにつき、1つのカテゴリーを回収する(複数のアイテムを回収する場合は、カテゴリーの数だけバッグが必要)。

1.オーラルケア(歯ブラシやデンタルフロスようじなど)
2.プラスチック製ハンガー
3.ビューティーケア(化粧水や美容液などのプラスチック容器、詰め替えパウチなど)
4.ヘアケア(シャンプーやコンディショナーなどのプラスチック容器や詰め替えパウチなど)
5.文房具(プラスチック製のクリアファイル、ペン、修正テープなど)
6.梱包資材(プラスチック、発泡スチロールの衣類納品ポリ袋、気泡緩衝材など)
7.洗剤系(洗濯洗剤、台所洗剤などのプラスチック容器や詰め替えパウチなど)
8.電源ケーブル(充電用ケーブル、電子ケーブル)

同社によると、8品目のうち6品目は、上記のリサイクルプログラムなどを通じてリサイクルの実績があるが、梱包資材と電源ケーブルは、今回初めてリサイクルの品目に選んだ。いずれも一般的にリサイクルされていない廃棄物で、指定業者が回収し、テラサイクルのリサイクルの手法に沿って、素材ごとに分別される。洗浄したプラスチックは、溶解後に再生原料となり、新しい製品を作るために使用する。ある程度の量が揃えば、ベンチや植木鉢などに生まれ変わらせることも予定しているという。

サービスは始まったばかりでまだ利用するオフィスや店舗などは出ていないが、ゼロ・ウェイスト・バッグに関心を持つパートナー企業は多く、今後はカテゴリーを増やしながら、ヘアサロンやアパレル関連、宿泊業などのほか、学校などの教育機関や公共施設などに利用を広げ、対象エリアを拡大していく考えだ。

同社は日本で事業を開始して10年になるのを踏まえ、代表のエリック・カワバタ氏は、この間の「日本の人々のごみに対する意識の変化」を、「日本は他国と比べて街中にごみが落ちておらず、ごみの分別も行っているため、人々は責任を果たしていると思っていたが、実際には1人当たりのプラスチック容器包装排出量は世界2位で、廃プラスチックの多くを中国へ輸出していた。それが中国への輸出が禁止された2018年以降に風向きが変わった。パンデミックを経て家の中でどれだけごみを排出しているかを実感する機会が増え、エコバッグやマイボトルも定着した。企業もESGの観点からリサイクルや循環の動きを加速させるようになった」と総括。2025年にはプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約が制定される見込みであることから、「今後はますます企業や人々の意識も変わってくるだろう」と語る。

この10年で、確かに、プラスチック製品を取り巻く状況は大きく変わった。ここまでみてきたように、日常生活に身近なところで発生するさまざまな使用済みプラスチックを、生活者がリサイクルしようと思えばリサイクルできる環境が、手を伸ばせば届くところに整えられ始めている。しかしながら、全国に行き渡っているとはとても言えず、地域的、社会的なサーキュラーモデルのスケールアップは急務だ。そして、一人ひとりがプラスチック汚染問題を自分事として捉え、行動に移すことができるかどうかが今、問われている。

written by

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。

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