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3月18日、19日の「第9回 サステナブル・ブランド国際会議 2025 東京・丸の内」と同時開催された「Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION」(参加無料イベント)。このなかで花王は「みんなで働きやすい環境をつくる:『職場のロリエ』の想い」と題したセミナーを実施した。ここで語られた「職場のロリエ」プロジェクトおよび花王ESG戦略とは。セミナー終了後に登壇者の同社サニタリー事業部 田村優樹さんとESG戦略部 棚橋弘枝さんにインタビューを実施し、より深く「職場のロリエ」で花王が実現しようとしている未来について聞いた。

「職場のロリエ」とは、どんな取り組み?
―2022年からスタートしたという生理用ナプキンの備品化を目指す「職場のロリエ」プロジェクト。まずは、これを牽引するサニタリー事業部の田村さんに、プロジェクト立ち上げのきっかけなどを教えていただきたいと思います。
田村さん:「職場のロリエ」は、働く人たちの声から生まれたプロジェクトです。近年、「誰もが働きやすい職場づくりをしよう」という動きが活発になっています。
そんな中サニタリー商品を取り扱う私たちにできることを考え、「生理と職場の課題解決に貢献できるのでは」という答えにたどり着きました。事実、月経随伴症状、いわゆる生理にまつわるトラブルによる1年間の経済損失は、およそ5700億円というデータもあります。そして多くの企業がこの課題に対し「認識はあるが何をすればいいか分からない」状況にあるのです※。
※関連する論文や企業による調査などを踏まえて、ボストンコンサルティンググループ試算(令和5年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(ヘルスサービス市場に係る調査事業)経済産業省ヘルスケア産業課 令和6年2月報告内容より

花王の調査によると、「生理と仕事」に関する困りごとのなかで、皆さんが一番苦労したことは「突然生理がきたけど、ナプキンがない」「ナプキンを取り替える時間が取れなかった」ことだと分かりました。これに応えるべく生まれたのが「職場のロリエ」プロジェクト。職場のトイレにナプキンを常備することで、この困りごとを解決しようと活動が始まりました。


―「職場のロリエ」を導入すると、花王からは何が提供され、導入企業は具体的に何をすればいいのでしょうか。
田村さん:「職場のロリエ」を導入してくださった企業様には、花王からナプキンを入れるためのボックス(職場のロリエ ステッカー付属)および、オリジナルの研修動画コンテンツ「生理を知る。考える。」を無償提供します※。導入企業様は福利厚生の一環としてナプキンを備品購入し、提供したボックスに入れて、職場のトイレに設置していただく。そして動画コンテンツで職場における生理の理解浸透、気軽に相談できる雰囲気づくりをしていただく。これで「職場のロリエ」が動き出します。ちなみに、ナプキンに関しては、推奨品はあるものの「職場のロリエ」専用のものはありません。購入に関しても定期購入などではなく、企業様の手配しやすい方法を選択していただくようにしています。
※映像コンテンツは希望する企業にのみ提供。

「生理用品を備品にしては?」と考えることを、変化のきっかけに
― 「職場のロリエ」は、生理と職場の課題を解決する「仕組み」を提供しているのですね。

田村さん:そうですね。この活動の醍醐味は、導入企業様の社員の皆さんが、より働きやすくなること。目指しているのはナプキンの備品化を多くの企業様で実施することではなく、ナプキンの備品化の検討をきっかけに、「誰もが働きやすい職場づくりを考える後押しする」ことです。
「生理用品を備品化すること」をみんなで考えてみる。そこから仲間の体調を気づかったり、声をかけあったりできる、誰もが安心して働くことができる職場づくりが動き出すのではないでしょうか。私たちはそのムーブメントを起こしたいと考えています。
―2025年2月には、導入企業が360社を超えたとのこと。導入企業からはどのような反響がありましたか? また、導入企業の特徴などがあれば教えてください。
田村さん:セミナーでも紹介させていただいたアツギ様、大林組様、湖池屋様をはじめ、女性の働きやすさや職場環境の改善に積極的な、幅広い業界の企業様に導入いただいています。また、工場や建築現場などで働いている女性が多い企業様は特に強く課題感を持たれていることが多く、導入を決めてくださる印象もあります。
導入した企業様からは、「社員が会社を好きになり、モチベーションアップを図ることができた」「女性をサポートしたいという会社の想いを伝えることができた」という声をいただいています。また、社員の皆さんからも「こういうのを待っていた!」「会社が率先してこういう活動をしてくれると良い流れになる」「職場のロリエがあれば安心して働ける」といった声もいただき、改めて活動の意義を感じました。
プロジェクトを広げてくれた590人の「社内アンバサダー」
―「職場のロリエ」が、ここまで大きく拡大した要因はどこにあるのでしょうか?
田村さん: 2024年に、「職場のロリエ」認知向上のために社内で募集した社内アンバサダーの存在が大きいですね。アンバサダーの役割は取引先や知人、家族などに活動を拡散すること。今日一緒にセミナーに登壇している棚橋さんも社内アンバサダーの一人です。

棚橋さん:そうなんです。私自身、「職場のロリエ」は「あったらいいな」と思えるものでしたし、花王が目指す「こころ豊かな未来の実現」につながるプロジェクトだと活動自体に意味を感じました。アンバサダーは最初の説明会から「こうしたほうがいいのでは?」「こんなこともできそう」などの意見を出し合い、とても熱量が高かったんですよ。

田村さん:590名もの人が応募してくれて、本当に驚きましたし感動しました。最近では導入企業様から同業他社様へのご紹介など、「職場のロリエ」がますます広がりを見せています。今後もさらに活動を広め、「職場環境をみんなで考え、変えていく」アクションが各地で生まれてほしいと願っています。
ESG戦略に沿った、パーパスドリブンなプロジェクト「職場のロリエ」
―棚橋さんはESG戦略部所属とのことですが、ESG戦略という視点において、この「職場のロリエ」プロジェクトはどういった意味を持っていますか?
棚橋さん:花王は「豊かな共生世界の実現」というパーパスを掲げ、これに基づいて、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定しています。ここでいう「Kirei Lifestyle」とは、「世界中の人々が安心して、清潔で快適に、そしてこころ豊かにくらせること」。私たちはこれを実現するために、コミットメントと重点取り組みテーマを設定し、さまざまな活動に取り組んでいます。

「職場のロリエ」は、このなかにある「思いやりのある選択を社会のために」花王が行う社会への提案であり、パーパスドリブンなアクションです。花王にはロリエ以外にもたくさんのブランドがあるのですが、それぞれが「職場のロリエ」のような、パーパスドリブンなアクションに取り組んでいます。
―「職場のロリエ」が起こすムーブメントは、導入企業が外に向けて発信する「社会をもっと良くするための取り組み」としても現れてきそうですね。
棚橋さん:そうですね。多くの方が行動を起こしてくださることが、社会全体の変革にもつながりますし、私たちの勇気にもなります。
―「職場のロリエ」のようなプロジェクトを起こす場合、それを成功させるために企業として必要なこととは何でしょうか?
棚橋さん:まずは、社会課題の解決に取り組みながらビジネスも成長させられるプロジェクトにすることが大事だと思います。「職場のロリエ」もナプキンを入れるボックスは無償で提供していますが、その後商品を購入いただくことで、ビジネスにサステナブルな活動を組み込んでいます。また、仕事としてプロジェクトに取り組めるよう、目標設定や人事評価などにその実績を反映するようにすることも重要です。花王はこれを行うことで各ブランドのパーパスドリブンな取り組みを推進してきました。
目指すところは、ビジネスでの社会課題解決。これを実現できるよう仕組みを作って取り組むことが重要だと私たちは考えています。

「職場のロリエ」から、豊かな未来の「当たり前」を作っていく
―今後、この「職場のロリエ」をどう成長させていきたいと考えていますか? また「職場のロリエ」に期待することとは何でしょうか。
田村さん:導入企業様を増やすことももちろんですが、プロジェクトのさらなる社会的意義の向上にも取り組んでいきます。実は2025年春から、「職場のロリエ」のボックスを少しでも環境に配慮した形にリニューアルすることにしました。使用したのは当社サニタリー製品の製造工程で発生した端材。これを50%ほど使用して新たな「職場のロリエ」ボックスを作り、このプロジェクトの価値を向上させていく計画です。また、導入企業様同士のコミュニケーションプラットフォームも検討中で、情報交換などを通して「職場のロリエ」の輪を広げて「世の中ごと化」していければと考えています。
一方で「職場のロリエ」を学校などの教育現場にも展開していきたいと考えています。いくつか問い合わせもいただいているのですが、職場と同様に学校にも困りごとがあるはず。学生たちが安心して学校に通えるよう、さらなる普及にも力を注ぎたいですね。

棚橋さん:「職場のロリエ」を通して、産官民で共創の輪を広げて社会を動かすムーブメントが起こってくれることを期待しています。「職場のロリエ」の導入にはオフィスビルの管理会社の協力などが必要な場合もあるのですが、この活動はオフィスビルの価値向上にもつながります。一つひとつ理解浸透のステップを踏みながらムーブメントを広げていきたいですね。
田村さん:そうですね、そして10年後は職場のトイレにナプキンがあることが当たり前になるように、「職場のロリエ」から、人々のくらしが豊かになる「新たな当たり前」を作っていけたらと思います。
花王のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」では、Kirei Lifestyleを「こころ豊かに暮らすこと、すべてにおもいやりが満ちていること」だと語っている。そして「たとえ小さなことでも正しい選択をして自分らしく生きる」ことが大切さだと伝えている。「職場のロリエ」の活動も、小さなことなのかもしれない。しかしそこから広がるエフェクトは大きなものになるのではないか。社会を変革させる最初のアクションとはこういった活動なのかもしれない。取材を通して、まずは動き出すこと、そこから共感を広げていくこと、それが大きな変革の種になっていくのだと感じた。

インタビュイー 花王株式会社 サニタリー事業部 ロリエ マーケティング担当 田村優樹さん ESG部門 ESG戦略部 マネージャー 棚橋弘枝さん |
(関連URL) 花王「職場のロリエ」 花王 | サステナビリティ |
笠井 美春(かさい・みはる)
愛媛県今治市出身。大学にて文芸を専修。卒業後、株式会社博展において秘書、採用、人材育成、広報に携わったのち、2011年からフリーライターへ。企業誌や雑誌で幅広く取材、インタビュー原稿に携わり、2019年からは中学道徳教科書において創作文も執筆中。