
Image credit: Maybelline NY
循環型経済を促進する投資やイノベーション事業を行う米クローズド・ループ・パートナーズのサーキュラー・エコノミー・センターは、化粧品の容器などサイズが小さく、これまで再利用されてこなかった小型のプラスチック製包装資材の回収と、再利用を実現する方法を検証した報告書を公表した。
報告書は2年以上にわたる市場調査や包括的な実証実験に基づいてまとめられたものだ。メイベリン・ニューヨークと親会社のロレアル・グループとの共同で調査を始め、のちにクラフト・ハインツやP&G、ターゲットが参画した。(翻訳・編集=小松はるか)
調査からは、小型のプラスチック製包装資材を回収して再利用につなげることが、経済や環境にプラスの影響をもたらすことが明らかになったという。この調査結果が追い風となり、サーキュラー・エコノミー・センターが運営する企業横断型の「小型包装資材を回収するコンソーシアム(The Consortium to Recover Small-Format Packaging)」が設立されることになった。
消費者は毎年、サイズやそのほかの理由によってリサイクルすることが難しい、小型のプラスチック製包装資材に入っている化粧品や医薬品、食品を数十億点買っているが、現在、その多くが埋め立て地や焼却炉に捨てられている。
報告書によると、米国の材料回収施設(MRF)で使われている小さなガラス片を分離するために設計された分別装置(ガラススクリーン)では、少なくとも2つの寸法で2インチ(5.08センチメートル)より小さいサイズのプラスチック製包装資材は、装置をすり抜け埋立地に捨てられることが多いという。また、装置や施設の違いによって、2つまたは1つの寸法で2〜3インチ(7.62センチメートル)程度のものも分別されずに廃棄にまわることがあるようだ。
新たなコンソーシアムは、米国の実社会のなかで小型プラスチックのリサイクルを増やすために、同センターが行った研究結果を検証することに重点的に取り組む。
小型の包装資材は美容や薬局、食品サービス、飲料、小売業界などで広く使われており、リサイクルは業界を横断する課題。そのため、サーキュラー・エコノミー・センターは実証実験のパートナーとして参加してもらうよう呼びかけながら、さまざまな分野の企業・ブランドが参加できるよう進めている。
小型包装資材を回収するコンソーシアムは、ネクストジェン・コンソーシアム、コンポスティング・コンソーシアム、プラスチック製の買い物袋を改革するコンソーシアムと並び、企業の垣根を超えて、素材の課題を解決し、循環型経済を前進させる解決策を見つけ出し、実証実験し、拡大していくというサーキュラー・エコノミー・センターのミッションを実現するものだ。
小型プラスチック製包装資材の研究はなぜ重要か
サーキュラー・エコノミー・センターの新たな研究は、全米の材料回収施設や容器リサイクル工場から、ポリプロピレンなどのプラスチックを含む数万トンの貴重な小型原料を回収するための現実的な道筋を示している。適切な設備の性能向上と再構成を行うことで、かなりの量の原料が廃棄されることなくうまくリサイクルされるという。
例えば、材料回収施設の選別装置の機能を向上させると、これまでは廃棄されていたプラスチックが効率的に分類され、リサイクル原料市場で販売する材料を貯める場所へと運ばれるようになった。これにより、小型プラスチックのなかでも中〜大サイズのものの廃棄が相対的に67%減少した。
企業・ブランドが廃棄物削減目標を達成し、EPR(拡大生産者責任)に関する法律を順守できるように取り組むなか、これまで回収されてこなかった小型プラスチック包装資材を回収する機会を生み出すことは、プラスの効果をもたらすという。
サーキュラー・エコノミー・センターのマネージング・パートナーであるケイト・デイリー氏はこう話す。
「私たちは、今回の調査で分かったことを試験し、コンソーシアムを通じて実社会での概念実証を進めるために、装置・インフラの機能向上に取り組んでいきたいと考えています。
埋め立て地に廃棄されてきたポリプロピレンのような価値のある小型プラスチック包装資材を、回収するための対策を前進させることは重要です。また、これはもともと業界横断的な課題です。コンソーシアムに参加し、廃棄物の差し迫った課題に取り組むのに協力してくれるよう、研究パートナーやさまざまな分野の企業・ブランドに呼びかけています」
今回の調査は、全米で20以上の材料回収施設を運営し、オースティン、サンアントニオ、ニューヨーク、フェニックスなどの米国の主要都市の地方自治体と協定を結ぶ、クローズド・ループ・パートナーズの会社「サーキュラーサービス」と共同で行った。
報告書は、小型包装資材の回収方法を割り出すために、広範囲におよぶ現場の処理過程の検証で構成されており、全米の6カ所以上の材料回収施設で選別装置の機能を調査。
サーキュラー・エコノミー・センターは、2カ所の材料回収施設の選別装置とリサイクル工場の廃棄物からサンプルを回収し、回収したプラスチックを取り出せる装置構成を試し、サンプルを再生事業者に送って処理技術と市場価値を検証するという工程を数回にわたり繰り返した。
企業のメリットは?
美容業界では、プラスチックフリーの容器や再利用可能な容器、詰め替え容器など循環型包装資材のソリューションで市場をけん引するブランドが増えている。一方で、従来の包装資材については素材やリサイクルによる解決策がまだまだ断片的だ。
メイベリン ニューヨークのグローバル・ブランド・プレジデントのトリーシャ・アイヤガーリ氏は、「私たちは世界一の化粧品ブランドとして、化粧品の最も持続可能なライフサイクルを可能にする責任があります。多くの化粧品のパッケージは小さすぎてリサイクルできません。文字通り、リサイクル施設で検知されていません。だからこそ、小型のリサイクルの解決策を生み出し、私たちや美容業界がサステナブル・トランスフォーメーションを加速させられるように、クローズド・ループ・パートナーズのサーキュラー・エコノミー・センターと連携することがとても重要でした」と説明する。
報告書では、小型の包装資材の回収を増やすために不可欠な5つのポイントと、消費財メーカーがどう利益を得られるかを明らかにしている。
- 多くの小型プラスチック材料には高い市場価値がある
- 小型プラスチックを扱える物流面での解決策はすでに存在している
- 既存の技術は、材料回収施設やリサイクル工場で効率的に小型プラスチックの一部を回収するのに適応できる
- こうした素材に対する市場の需要は高く、なかでも機械のリサイクル業者からの需要は高い
- リサイクル施設に的を絞った投資を行うことは、より小さなプラスチック素材を回収するための説得力と拡張性がある事業を成り立たせるのに不可欠
こうした知見は、米国やそのほかの地域のリサイクル施設にも適応することができる。つまり、米国だけでも数万トンものプラスチックを年間に回収することができ、埋め立て地に送ることなく、市場価値を生み出せるということだ。
さらに今回の研究によって次のステップも明らかになった。それは、小型プラスチックを厳格に回収するための設備とインフラを改善するための投資だ。同センターは、埋め立て地に捨てられなかった素材や、回避できたCO2排出量、生み出されたリサイクル素材など、測定可能なトン単位のものが企業に大きな利益をもたらすと見込んでいる。
コンソーシアムは、リサイクル業者や再生業者、政策立案者などから小さな素材を回収するための安定したバリューチェーンを確立し、さまざまな立場の参画者を増やすことにつながるだろう。