• ワールドニュース
  • 公開日:2025.03.04
  • 最終更新日: 2025.03.28
お手本は「サメ肌」、航空業界で生物の生態を模倣した「バイオミミクリー」の活用進む――燃料消費とCO2排出の削減に貢献

Image: Lufthansa Group

生物の動きや生態から着想を得た、持続可能なデザイン「バイオミミクリー(生物模倣)」が、航空業界で着実に広がっている。中でも機体への「サメ肌」を模したコーティングは、航空機の摩擦抵抗を減らすことで、燃料消費とCO2排出の削減に威力を発揮する。(翻訳・編集=茂木澄花)

航空業界は、空の旅の持続可能性を高めるため、あらゆる取り組みを進めている。例えば、パイロットに燃料消費の少ない操縦を促す働きかけ、排出増につながるマイレージサービスの見直し、持続可能な航空燃料(SAF)の開発、旅程における炭素排出量を開示する仕組み作りなどがある。そうした中、「自然のデザイン」(今回の事例では動物の生態)から学ぶバイオミミクリーが、航空機自体の効率性を最大化する方法として非常に有望視されている。

サメ肌を模したフィルムで摩擦を低減

欧州の航空会社グループ傘下のルフトハンザ テクニックと、総合化学メーカーBASFは、サメ肌の特性を模倣した「エアロシャーク(AeroSHARK)」フィルムを共同開発した。このフィルムには、プリズム型をした50マイクロメートルの透明な「リブレット(微細な溝)」がびっしりと施されており、航空機を空気力学的に最適化する。気流に沿うように貼り付けることで、リブレットが摩擦を軽減し、飛行効率が上がる。ルフトハンザ テクニックによると、翼に貼れば揚力の向上にもつながるという。

1月14日、オーストリア航空が、初めてボーイング777-200ERにエアロシャークを施した機体を運航した。サメ肌のようなフィルムで覆われた長距離用航空機がバンコク・ウィーン間を飛んだのだ。オーストリア航空は、この機体を皮切りに、計4機のボーイング777-200ERにエアロシャーク搭載を計画している。4機の改良は2025年3月までに完了する予定。エアロシャークの搭載により大幅に摩擦抵抗が減らせるため、同社の長距離用航空機によるCO2排出量と燃料消費が削減できる見込みだ。

1機あたり合計830平方メートルのサメ肌フィルムを、胴体部分とエンジン収容部分に貼った場合、1回のフライトで消費する燃料を約1%削減できる。4機のボーイング777にこの技術を活用すると、約2650トンの燃料を節約し、8300トン超のCO2排出を削減できる計算だ。これはウィーン発ニューヨーク行きのフライト約46回分に相当する。

オーストリア航空COOのフランチェスコ・ショルティーノ氏は「飛行機の運航によるCO2排出量を減らすことが、当社のサステナビリティ活動の中心です。ルフトハンザ テクニックが開発した『サメ肌』を活用することは、当社の長距離用航空機の飛行効率を上げることにつながる重要な投資です」と語る。

この技術をボーイング777-200ERに活用するのはオーストリア航空が初めてだが、エアロシャークはすでに世界中の空を飛んでいる。南北アメリカで、この技術をルフトハンザ グループ以外で初めて導入したのはラタム航空だ。2023年12月以降、エアロシャークを導入した航空機1機につき、1日の運航でジェットエンジンの消費が約1%減少している。この結果を受けてラタム航空は、既存4機のボーイング777-300ERに、追加でエアロシャークを導入する計画だ。これにより、2000トンものケロシン(ジェット燃料)を節約し、6000トンのCO2排出を削減できる見込みだ(ボーイング777によるサンパウロからマイアミまでのフライト約28回に相当)。

2024年8月には、台湾のエバー航空が、アジアの航空会社として初めてエアロシャークを導入した。ボーイング777F長距離貨物輸送機9機の胴体部分とエンジン収容部分をエアロシャークのフィルムで覆うという改良を施したのだ。エバー航空によると、このフィルムによって摩擦抵抗が減少し、燃料消費とそれに伴う排出量が約1%減少したという。年換算すると、ケロシン2500トン超の節約、CO2排出7800トン超の削減に当たる。

その1カ月後、日本の全日本空輸(ANA)が、単一の航空会社としては世界で初めて、エアロシャークを搭載したボーイング777の旅客機と貨物輸送機、両方の運航を始めた。エアロシャークを施した最初のボーイング777Fは2024年9月に貨物輸送機として運航が開始され、2025年春までにはボーイング777-300ER旅客機のコーティングが完了する予定だ。貨物輸送機、旅客機ともに、胴体部分のほとんどをフィルムで覆い、その結果1機あたり年間約250トンの燃料使用、800トンのCO2排出が削減できる見込みだ。

ルフトハンザ グループ内では現時点で、航空機17機(前述のオーストリア航空に加え、スイス・インターナショナル・エアラインズのボーイング777-300ERが12機、ルフトハンザ カーゴのボーイング777Fが4機)に摩擦軽減フィルムが貼られ、運航している。ルフトハンザドイツ航空のボーイング747-400も合わせると、エアロシャーク搭載航空機の飛行時間はすでに累計で10万時間を超える。

お手本はサメ肌以外にも

欧州の航空機メーカーであるエアバスも、10年以上にわたり、効率的な機体を設計するために生物を模倣したイノベーションを活用してきた。同社は「シャークレット」を開発するにあたり、サメから着想を得た。シャークレットは、翼端から垂直に延びる、サメの背びれに似た部品で、2013年にエアバスA320ファミリーの機体に後付けされた。翼端に垂直に搭載することで、空気力学的に翼端渦をかなり小さくでき、付随する空気抵抗を減らせる。

エアバスはまた、自然からアイデアを得て、ギャレー用の軽量パーティション(機内食を準備するスペースと客室を仕切る壁)も開発した。これは「バイオニックパーティション」として知られ、粘菌と骨の成長を模倣して設計されている。このパーティションの導入によって削減される航空機のCO2排出は、年間46万5000トンと推定される。またエアバスは、鳥の羽を模し、飛行中の状況に応じて複数の翼の形状に変化させられる「エクストラ・パフォーマンス・ウィング」も導入予定。2025年中に飛行試験を開始する見込みだ。

SB.com オリジナル記事へ

Related
この記事に関連するニュース

使用済み太陽光パネルを再生する“Panel to Panel” 岡山の企業が実現へ第一歩
2025.03.17
  • ニュース
  • #サーキュラーエコノミー
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
第2回 COP29や各国の事例から探る「カーボンプライシング」
2025.03.17
  • コラム
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
引越しもエシカルに!?――運送各社が脱炭素意識、大手からはCO2排出量オフセットプランも
2025.03.13
  • ニュース
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
水素の可能性は燃料電池車だけではない。業界の変革に向け、ホンダが挑戦するカーボンニュートラルへのアプローチとは
2025.03.06
  • インタビュー
  • #水素
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

News
SB JAPAN 新着記事

自社の歴史から学ぶ、人の感動起点の製品開発とサステナビリティ
2025.04.02
  • ニュース
    米国の現状から何を学ぶべきか、「リジェネレーション」の可能性とは――米SBの創設者とCEOが語る
    2025.04.01
    • ニュース
    • #リジェネレーション
    SB-Jの発行元がSincに移行――サイトリニューアルでコンテンツを一層充実へ
    2025.04.01
    • ニュース
      本格的に動き始めたエネルギーの「アグリゲーションビジネス」とは何か
      2025.03.31
      • ニュース
      • #再生可能エネルギー

      Ranking
      アクセスランキング

      • TOP
      • ニュース
      • お手本は「サメ肌」、航空業界で生物の生態を模倣した「バイオミミクリー」の活用進む――燃料消費とCO2排出の削減に貢献