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  • 公開日:2025.02.17
  • 最終更新日: 2025.03.27
成長し続けるリジェネラティブな企業であるために、DEIBの視点が欠かせない

企業の成長と革新には社員の積極的な関与が不可欠だが、組織はどのように人を生かすべきなのか――? 第4回SB-Japanフォーラムでは「Regenerative on Organizational Culture」をテーマに、人を生かすための本質的な考え方や取り組みが議論された。ゲストスピーカーとして登壇したのは、障がい者や高齢者を積極的に雇用し、昇給を随時行うなど型破りな経営を実践する中央シャッター・横引シャッターの市川慎次郎社長。同社が取り組む社内コミュニケーションに、参加者は熱心に耳を傾け、ワークショップでは活発な議論が交わされた。(松島香織)

なぜ「本質的な」組織文化の醸成が必要なのか

本フォーラムはこれまで「リジェネレーション」を大きなテーマに掲げ、持続可能性を追求する企業のあり方を模索してきた。今回登壇したサステナブル・ブランド国際会議D&Iプロデューサーの山岡仁美氏は、まず改めて「リジェネレーション」の概念について説明。山岡氏は、リジェネレーションとは単なる再生や復元にとどまらず、社会全体をより良くしていくことだとし、「目指すべきは環境や社会の持続可能性を確保することに加え、個人や組織が活力を取り戻し、成長し続けること」だと話した。

山岡氏

その実現には、「人間らしさ」を大切にする視点が不可欠だと山岡氏は強調する。特に、DEIB(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、ビロンギング)の観点が重要であり、企業には「人が活躍できる環境を整え、ワークライフバランスやウェルビーイング、エンゲージメントを促進すること」が求められていると述べた。

また山岡氏は、社員一人ひとりの人間らしさを尊重し、柔軟な組織文化を構築している2社を紹介した。1つ目のスターバックスでは「OUR VALUES 私たちの行動指針」として「私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます」という理念が掲げられており、社員の個性や価値観を尊重する文化が根付いているという。また2つ目のNETFLIXでは、社員に自由に判断を下す権限を与えることで、創造性と自主性を高めている。山岡氏はこうした企業の取り組みが、業務プロセスを増やし過ぎて創造性を失うことを防ぎ、組織が環境の変化に適応できる力を養うのだと説明した。

企業の成長にはこうした「本質的な」リジェネラティブが必要であるが、「現実には、企業において、リジェネラティブは表層的なものになっている場合が多い」と山岡氏は指摘する。そして参加者に対して、「皆さんのDEIB推進や組織文化醸成は本質を突いていますか? 施策、制度、ツール、テクノロジーなどに終始しがちではありませんか?」と問いかけ、真の変革を促した。

多様な人材活用と企業経営の新しい形 ― 中央シャッター・横引シャッターの取り組み

市川氏

続いて、「好きな仲間と楽しく働きみんなで豊かになる!~ダイヤの原石たちと創り上げる会社創り~」と題して、中央シャッター・横引シャッター(東京・足立)の市川慎次郎社長が講演した。同社は、20~80代までの社員が在籍し活躍しているという。市川社長は、年齢、性別、国籍、障害の有無に関係なく、さまざまな人々を積極的に雇用しており、その方針は採用にとどまらず社内の文化として根付いているという。その結果、「社員一人ひとりがその強みを生かし、チームとして成果を上げている」と話した。

こうした同社の根底にある理念が、「社員一人ひとりの自己成長や自己実現を中心に据えた会社経営」だ。その中でも特に、年齢で区切った定年制を「人手不足の中小企業だということもあるが、年齢で区切るのはおかしい」と市川社長は一刀両断する。同社では定年制を厳密に運用しておらず、これまでに92歳の社員が昇給するなど、年齢を重ねても成長するチャンスが与えられている。同社は積極的に社員の働きやすさを意識した設備や環境づくりをしており、例えば、腰の高さにコンセントを設置し、床の配線を天井に回すなど、細部にわたる配慮がなされているという。

また、社員に対し市川社長は「利益を追求しつつも、顧客からの“ありがとう”という感謝の言葉を大切にすること。社員が互いに助け合う“お互いさま精神”を大事すること」を特に伝えていると話す。社是・社訓以外のこうした考え方の他、市川社長が考えた独自のキャッチコピーがいくつもあるという。「社長戦力外通告」「好きな仲間と楽しく働き、みんなで豊かになる」などがそれだ。社長自らこうした言葉を考え、意味を伝えることを「社是・社訓を一人ひとりに落とし込むのは難しい。キャッチ―な言葉で印象付けて意味を発信し続けて、社員に浸透させている」と市川社長は説明した。

市川社長が目指すのは、単純な利益追求ではなく、「社員とともに成長し、共に豊かになる」ことだ。社員全員が自分の役割を理解し、共に会社を支えるという意識を持って働くことで、会社の持続的成長を実現できると力を込める。

先代から事業を引き継いだ2代目である市川社長は、自身のことを「(徳川家康から三代・家光につなぐ)秀忠の役割」だと言う。そして「社員みんなが社長の右腕であり、不安や心配ごとは、みんなに相談しているので“社長は孤独”ではない。次の代に上手にバトンタッチしたい」と語った。

「できること」を考え、実行すること

ワークショップで参加者は最初に、市川社長の講演から「参考になったこと・印象に残ったこと」を考え、チームで共有し発表した。あるチームでは、「社員が増えて規模が大きくなると、自分がいる会社を自分でつくる感覚を共有するのが、どんどん難しくなる」と話し合ったという。それに対し市川社長は「大きくなると、やりにくいことはいっぱいあると思う。できないことを考えるのではなく、できることしか考えないようにしている」とコメントした。

また次の「自社の課題と現状」をテーマにしたワークショップでは、社員同士のコミュニケーションが各チームの共通課題となり、参加者から「小さなところから会話を重ねていくことや、相手がどんな人か興味を持つこと。そういう時間をきちんと作ることが重要なんじゃないか」と意見が出た。それに対し、市川社長は挨拶を例に挙げ、「若手社員には、挨拶しても素っ気ない先輩がいたら、自分から感じのいい挨拶をして、相手が変わるまでゲーム感覚で続けなさいと言っている」と話した。そして「もちろん、私も裏に回って挨拶をしない社員をフォローしている」と付け足した。

最後のワークショップでは「実現すべき“本質を突いた”アイデアやアクション」がテーマだ。参加者からは「基本的に人は変われない。変われるのは自分で、相手との共通点を見つけ、自分からアクションを起こしてゆっくり進めればいい」「一方的にこちらが伝えたいことを言っても伝わらないので、相手が知りたいことをキーワードにすることが重要」「言語化や視覚化が大事」など、活発な意見が出ていた。

参加者からの発表を終えて、山岡氏は「コミュニケーションでは“聞く力”がポイントになる。聞くと、相手が考えていることや状況などがキャッチできる。聞かないと共感もできず、表面的で断定的な共感になってしまう。今日は非常に本質に近いところが議論できた」と総括した。

次回のSB-Jフォーラムは、2月18日に開催。1年間の総まとめと3月18~19日に開催する「サステナブル・ブランド国際会議 2025 東京・丸の内」に向けた予習を行う。

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