![]() Image credit:Arbor Day Foundation
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猛暑や異常気象に次々と見舞われ、都市はますます住みにくくなっている。そこで注目されつつあるのが、緑豊かな街づくりの重要性だ。気候変動にも災害にも負けず、持続可能でレジリエンスな都市を実現するために生かしたい自然の力「アーバン・フォレスト」の取り組みを戦略的に進めることが肝要だ。(翻訳・編集=遠藤康子)
世界の平均気温はぐんぐん上がり、異常気象の発生頻度も増す一方だ。そんな中、都市の街路樹や樹林(アーバン・フォレスト)が、強靭(きょうじん)なコミュニティを構築する上で重要な役割を担っていることが明らかになっている。米航空宇宙局(NASA)の最新データによれば、世界の平均表面温度は19世紀以降、華氏2度(摂氏1度)上昇した。こうした不穏な傾向からも分かるように、気候が世界各地の都市に及ぼす影響は深刻さを増している。しかし幸いにも、アーバン・フォレストが気候レジリエンス(気候変動に対する強靭性と適応力を高めること)の向上に不可欠だという認識が今、広まりつつある。
気候危機が都市にもたらす影響
米国とカナダでは、人口の80%以上が都市で暮らしており、住民とインフラが密集している都市環境では、気候変動がもたらす問題に悩まされることが常態化している。地表温度上昇の一因であるヒートアイランド現象によって、都市は耐えがたいほど暑くなり、人々はエネルギーを大量消費するエアコンなどにいっそう頼らざるを得ない。加えて、豪雨や暴風、酷暑の発生頻度も増し、インフラのみならず、都市で暮らす人々の健康とウェルビーイングも脅かされている。
気候災害の影響を和らげるアーバン・フォレスト
こうした状況に立ち向かう上で必要不可欠なのが、アーバン・フォレストの戦略的な開発と管理だ。都市に植えられている街路樹や樹林は貴重な恩恵をもたらす。日陰をつくったり蒸発散を行ったりして空気を冷却し、暴風雨で降り注いだ雨水を吸収して洪水リスクを低減し、汚染物質を浄化して空気の質を向上させるからだ。これらのおかげで、気候災害が発生したときに、都市コミュニティが被る物理的影響ならびに社会経済的影響を小さくできるという貴重な恩恵を受けている。
効果的なアーバン・フォレストを長く持続させていくためには、細かな配慮が必要だ。例えば、刻々と変化する気候条件と都市環境に適応できる耐性に優れた樹種を選ばなくてはならない。環境面での利点を最大化するために木々を適切に配置したり、より広範な都市設計や災害リスク低減戦略に森林を組み込んだりするなどの配慮も欠かせない。
官民がともに担うべき緑の街づくり
アーバン・フォレストを気候レジリエンス戦略に取り入れるには、行政と企業がその変化を主導できるし、また主導していかなければならない。グリーンインフラの整備を優先することで、気候変動の悪影響を軽減し、より住みやすい都市を構築することができる。アーバン・フォレストに力を入れれば、先を見越した気候変動適応策を講じられるだけではない。災害関連費と、汚染物質ならびに酷暑関連の医療コストを削減できるという大きな経済的メリットも得られる。
コミュニティの関与も不可欠だ。アーバン・フォレストの計画と保全に地元住民を巻き込むことで、そうした取り組みは充実し、持続可能なものになる。米デラウェア州とメリーランド州にガス・電力を供給するデルマーバ・パワーは、森林保護団体アーバーデイ基金が行う省エネプログラム「Energy-Saving Tree Program」と提携し、持続可能な林冠(樹林上部の枝葉の連なり)拡大に向け、地域住民とともに取り組んでいる。住民に毎年、苗木を無料配布し、所有地に木を植えることで得られる効果を実感してもらっているのだ。こうした啓発活動によって、市民の間では都市緑化のメリットについての意識が向上し、グリーンスペースを守り拡大していこうという機運が生まれる。
気候レジリエンス向上は全ての人の責任
アーバン・フォレストには、地域に植えてある全ての樹木が含まれる。街路樹や公園・緑地の樹林はもちろん、企業や大学キャンパスなどの私有地に植えられている樹木もアーバン・フォレストだ。これらの地域に関係する全員が力を合わせれば、気候災害に負けない強靭なアーバン・フォレストを育てていくことができる。一人ひとりが、自らが担うアーバン・フォレストに対する責任を果たしていかなければならない。
その一環として、森林認証団体「持続可能な林業イニシアチブ(SFI)」の規格を活用するのも一つの手だ。SFIが定めた、持続可能な都市森林基準「Urban and Community Forestry Sustainability Standard」の認証オプションには、「Climate and Disaster Resilience(気候と災害のレジリエンス)」がある。地域のアーバン・フォレストが第三者機関の認証を獲得すれば、コミュニティが気候レジリエンス向上に貢献していることが表明できる。
SFIは、持続可能な森林が人類共通の未来にとって不可欠だという信念の下、多種多様なパートナーと提携し、森林を中心に据えた取り組みを通じて持続可能性を推進している。目指すのは、持続可能な方法で管理された森林を大切にしながら恩恵を享受する世界だ。
戦略的な視点でアーバン・フォレストを改善していくことは、都市の気候レジリエンスと災害レジリエンスを強化できる有効な手段だ。木々は自然が与えてくれたソリューションであり、気温上昇と悪天候による影響を和らげ、インフラを守り、都市に住む人の生活の質向上を後押ししてくれる。深刻化する気候変動の影響を乗り越えようとしている私たちにとって、緑あふれる都市の育成は有益であるばかりか、強く長期的に持続可能なコミュニティを構築する上で必要不可欠なのだ。