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英国の非営利団体フォーラム・フォー・ザ・フューチャーとBラボ 米国・カナダ支部は、4月に「Business Guide to Advancing Climate Justice(気候正義を前進させるためのビジネスガイド)」を公表した。すでに企業の気候変動対策についてはさまざまな指針や基準が存在しているが、このガイドは気候変動による影響を強く受けている当事者の視点を主軸としている点が特徴だ。ガイドの想定読者や今後の取り組み予定などについて、両団体の担当者に聞いた。(翻訳・編集=茂木澄花)
いよいよ気候変動が進む中、企業は自社の環境への影響を軽減するとともに、公正・正義を推進することが、かつてなく重要になっている。このほど、英国の非営利団体フォーラム・フォー・ザ・フューチャーとBラボ 米国・カナダ支部が共同で制作した「気候正義を前進させるためのビジネスガイド」が公表された。利用可能な気候関連の取り組み指針や基準はすでに数多くあるが、企業をはじめとした多様なステークホルダーが活用できる、包摂と協働の指針として注目されている。
この新しいガイドの特徴は、気候変動による影響を最も受けている人たちの声を大きく取り上げている点だ。ガイドで示されている7つの原則は、気候変動の最前線に立つコミュニティの実体験に基づいている。同ガイドが目指すのは、協働のアプローチによって、企業がリジェネラティブな活動と社会的責任を主軸とした新たなリーダーシップの形を取り入れられるよう後押しすることだ。
最前線に立つコミュニティと協働するための7原則は次のとおり。
1.信頼と率直なコミュニケーションを大切にする
2.地域の知恵と視点を重視する
3.公正に資源を割り当てる
4.民族的・文化的な知識を優先する
5.立場の違いを認め、信頼を再構築する
6.明確で公正な意思決定を行う
7.長期的かつサステナブルに取り組む
サステナブル・ブランズは、ガイドの内容を深掘りするため共著者らに話を聞き、Q&Aの形で内容をまとめた。
――国連グローバル・コンパクト、SBTi、CDP、TCFDなど、気候アクションに関する企業向けのガイドや基準は世界中に数多くあります。今回のガイドは、それらと何が違うのでしょうか?
「気候正義を前進させるためのビジネスガイド」が、企業の気候変動対策に関する他のガイドや基準と異なるのは、次のような人たちの考え方が優先的にまとめられている点です。気候変動の最前線に住む人やそうした場所で働いている人。社会正義の課題解決を支援し、進展させるための取り組みを行っている人。そして、民間セクターには行動を起こす重要な責任があると考えている人です。ガイドではまず、気候変動による影響を最も受けている人たちの経験、ストーリー、意見の基本的な内容が伝えられています。それに続き、気候変動問題の解決に向けて最前線のコミュニティと協働して取り組んでいる企業、政策立案者、市民社会の専門家の声が取り上げられています。
このガイドは、気候正義に対する一般的な認識や、企業が自社を他社と比較する標準的な方法を示すものではありません。それらは、個々の状況や、影響を受けるコミュニティ、そうしたコミュニティが直面する具体的な課題によって大きく異なるからです。このコンテンツを提供しているのは、幅広い議論に参加し、取り組みを始める準備ができている企業に対して実務的な指針を提示するためです。私たちは「何ができるか」についての議論を高めて結び付け、民間セクターが至急取り組む必要がある分野を明確に伝えることを目指しています。
――ガイドの対象読者は誰ですか?「公正な移行」を促進するうえでの同ガイドの影響力をどのように評価していきますか?
本ガイドが対象とするのは、次のような人たちです。ビジネスリーダー、起業家、サステナビリティの専門家、コミュニティマネジャー、人事マネジャー、サプライチェーン・物流マネジャー、研究開発チームのメンバー、渉外責任者、そして、公正・正義を気候変動対策やサステナビリティの取り組みの主軸に据えようと尽力している経営層。
本ガイドは、新たなリーダーシップの手法を受け入れることに前向きで、その準備ができている人々に向けて書かれています。新たなリーダーシップの手法に必要なのは、いわゆる「専門家」によるトップダウンが基本となっている、従来の考え方からの根本的な脱却です。また、謙虚さと学びを大切にし、気候危機に立ち向かうために企業と最前線に立つコミュニティが協働することの必要性を認識する、リジェネラティブの考え方も重要です。
「公正な移行」を促進するうえでの本ガイドの影響力を評価することは、簡単ではありません。確かに、今回のガイドの他にも、すでにユニークで相補的なガイドや基準は多くあります。企業が、私たちが作成したツールを、気候正義を促進するための多くのツールのうちの一つとして活用してくれることを願っています。
すでに、企業からの関心と取り組みには目を見張るものがあります。本ガイドの7原則を実行に移し始めたという声がもっと企業から届くことが楽しみです。事例が徐々に具体性を増していくのに伴い、このガイドから得た学びを、コミュニティと連携している企業と共有し、さらに幅広い企業に伝えることを目指します。企業がコミュニティと連携して、一歩ずつ「公正な移行」に貢献できるようになることが目標です。
――ガイドでは、北米の、気候変動の影響を強く受けているコミュニティに焦点が当てられています。他の地域にはどのように応用できるでしょうか? 特に、気候の影響に対して、より脆弱(ぜいじゃく)とも言える新興国や途上国にも当てはめられますか?
気候正義は全世界的な課題ですが、本ガイドは米国とカナダのコミュニティや企業から集めた情報に基づいています。そこから得られた学びはさまざまな状況に当てはめられると考えていますが、気候正義に関する経験は状況に左右されるという認識は非常に重要です。
世界中のコミュニティや企業が、自分たちの環境やニーズに合わせてこのガイドの事例を活用できる可能性があります。多くの企業は、新興国や途上国にサプライチェーンを持っています。本ガイドのコミュニティ連携のセクションから得た知見を活用して、影響力を持つすべてのコミュニティ内のバリューチェーン全体で、気候正義を推進することができるでしょう。
――同ガイドで示されている主な論点は「気候正義は、単独では達成できない」ということです。フォーラム・フォー・ザ・フューチャーとBラボ 米国・カナダ支部は、すべての人にとっての公正な未来を達成するために、かじ取り役を設置したり、協働に基づくネットワークを構築したりすることを目指していますか?
気候正義は、周囲との協力なくしては達成できず、セクターやコミュニティをまたいだ共同での取り組みや連携が必要だと、私たちは認識しています。
フォーラム・フォー・ザ・フューチャーは今年、気候危機に対して脆弱な地域で、地域に根差した連携を取ることに注力しています。この取り組みによって、最前線のコミュニティ同士が結び付くでしょう。そして「気候正義を前進させるためのビジネスガイド」を活用して、目の前にある課題を理解し、協働で取り組みを行うために民間セクターが何を提供すべきか特定することができるでしょう。この地域に根差した取り組みでは、企業、自治体、市民社会など、コミュニティと幅広く協働していく予定です。それにより、現在行われている介入と計画の間のギャップを明らかにし、関係者間の対話を促進し、協働で取り組みを行える可能性のある地域を特定します。私たちの目標は、コミュニティが主役となり、土地ごとの独自のニーズに対応できる、公正な気候変動対策のための取り組みを活性化することです。
地域に根差したアプローチに加え、フォーラム・フォー・ザ・フューチャーとBラボ 米国・カナダ支部は、引き続き学びのためのイベントを共同開催していく予定です。企業が私たちのガイドから得た知見を活かす方法を明確にし、気候正義に向けて協働する取り組みに貢献できるイベントです。クライメート・ウィークNYCの期間中も開催を予定しています。
Bラボ 米国・カナダ支部は最近、気候変動対策の取り組み計画に気候正義を組み込むことを目指す企業向けに、企業間の学びの場を企画しました。ここではガイドに掲載されている推奨事項が多く引き合いに出され、企業は実務的な応用の実態を知ることができました。他にもさまざまな企画を進めています。今夏、Bラボ 米国・カナダ支部は「公正な移行に向けた気候ファイナンスの取り組み」と題し、学びと取り組みに関するグループ活動も開始予定です。50社弱のBコープがガイド内の気候ファイナンスの推奨事項を検討し、各企業の財務が「公正な移行」につながるようにする方法を、互いに学び合う場になる予定です。
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最前線に立つコミュニティと戦略的に連携することで、気候正義が単なる理想ではなく具体的な現実となる未来が近づく。その影響を定量的に示すのは簡単なことではない。しかし「気候正義を前進させるためのビジネスガイド」で示されている7原則がビジネスリーダーたちの間で注目されるとともに、成功事例が広がり、協力関係は強まり、潜在的な影響力がますます明らかになっている。
今後のイベントや、共同での取り組みや連携の機会についての問い合わせは、フォーラム・フォー・ザ・フューチャーのクスィーニア・ベニファンド氏、またはBラボ 米国・カナダ支部のカイリー・ニーリス氏まで。