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  • 公開日:2024.06.18
  • 最終更新日: 2025.03.28
人口減少対策には、市民を引きつけ巻き込むこと――未来の世界と日本のデザイン(2)

第6回未来まちづくりフォーラム

深刻化する気候変動、COVIT-19、ウクライナ侵攻などで混迷を極める現代は、スピード感のある社会変革が求められている。そうした中、重要視されているのが、持続可能な社会づくりを担うのは「人」であるとの考え方だ。SB国際会議2024東京・丸の内と同時開催された本フォーラムでは、「未来の世界と日本のデザイン」をテーマにセッションが展開された。今回は「ウェルビーイングの実現と人的資本への対応」に焦点を当て、経済・環境・社会が三位一体となる未来のまちづくりについての議論が交わされた。(原 由希奈)

ファシリテーター
石山アンジュ・一般社団法人シェアリングエコノミー協会 代表理事
パネリスト
芥川愛子・国際社会経済研究所 ソートリーダーシップ推進部 プロフェッショナル
太田昇・真庭市 市長

石山氏
  • 「人と人」「人と企業」をつなぐ仕組みをつくる――石山氏

ファシリテーターを務めたのは、シェアリングエコノミー活動家として多数のメディアに出演する石山アンジュ氏だ。シェアリングエコノミーとは、人と人、企業がつながり、モノや場所・スキルなどを共有すること。石山氏は、「DX化が進む現代では、“必要とする人”と“持っている人”を無数に可視化できる。さまざまな個人が地域社会に参画する機会が失われつつある今、デジタルの力でその機会を取り戻せる」と語り、少子高齢化や空き家問題などの地域課題を解決する取り組み「シェアリングシティ」には、全国170の自治体が参画していると紹介した。

芥川氏
  • 成功事例を積み上げていくこと――芥川氏

NECグループのシンクタンクである国際社会経済研究所の芥川愛子氏は、“幸せがつづくまち”をつくる「パーパス都市経営」を紹介。芥川氏は「私たちが避けなければならない20年後の未来は、自己責任だけが問われる冷酷な社会」だと話し、「地域らしいウェルビーイングの高いまち」を目指す際の、3つのポイントを紹介した。

1つ目は「パーパスを言葉にして共有すること」。自治体・住民・企業といった立場を超えて、目的や目標を共有できる者同士が仲間となり、将来像や価値観、志を言葉にしていく。この対話を通じて具体性と地域らしさがにじみ出て、地域の軸となるという。2つ目は、「経営的マインドをもって、みんなで無理せず続けること」。地域の底力を発揮するために、人を育て、活躍し、頼れるところは頼り、続けられる仕組みを作ることだ。3つ目は、「信頼を育むために技術を利用すること」。立場の異なる主体がデータを共通言語にすれば、理解の助けとなる。機械に任せられることは機械に任せ、人にしかできない業務に集中し信頼を育むことができる。そして、パーパス都市経営の実践のコツは「初めから難しいことに挑戦するのではく、価値観の合う仲間と小さな成功事例を積み上げていくことだ」と話した。

太田氏
  • 地域おこし協力隊の定住率78%――真庭市太田市長

2018年に「SDGs未来都市」に選定された岡山県真庭市。市長の太田昇氏によると、同市は森林面積が約79%を占め、エネルギーはバイオマス発電による自給率が約62%。食料自給率も高水準を維持しているという。

また太田氏は、現代の日本が抱えるリスクとして、人口の東京一極集中や食料・エネルギー自給率の低さを挙げた。将来の災害に備える意味でも、全国に人口を分散させる必要があるという。一方、同市では県外から人を呼び込むため、地域おこし協力隊がさまざまな活動を行っているが、任期終了後の隊員の定住率は78%に及んでいる(2022年度の全国平均は約65%)。

後半のディスカッションでは、ウェルビーイング実現のためのポイントなど、意見が交わされた。芥川氏は、「この不確実な時代にあっても揺らがないものは、地域の伝統や人々の価値観」だと語り、成功事例として愛媛県今治市を挙げた。今治市は2005年(平成17年)に12市町村が合併して以降、地場産業である海事産業で従事する人を2015年までに1.3倍に増やし、生産額1.4倍、付加価値額1.56倍に成長させた。伝統ある海事産業を「地域の新たな発展軸」と捉え直し、地域の企業とともに専門人材を育成し、国際的な交流イベントを開くとともに、子どもや家族が参加できるイベントを多く開催し、次世代の担い手づくりに注力したという。

太田氏は、「フィンランドやデンマークのように、人口密度が低くても人々の幸福度が高い国は多くある」と話し、そうした国々の事例を日本も取り入れるべきだと述べた。また、食料・エネルギー自給率を高める必要性も改めて強調した。

最後に石山氏は、「人口減少という簡単には抗えない事実を、私たちは目の前に突きつけられている。だが、もっとも大切なのは、市民の心を引きつけ、連携し、巻き込んでいくことだ」と締めくくった。

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