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  • 公開日:2024.04.15
  • 最終更新日: 2025.03.28
JR東日本や森ビルなど、都市開発や空間設計から考える「ウェルビーイング」とは

横田 伸治(よこた・しんじ)

SB国際会議2024東京・丸の内

Day1 ブレイクアウト

働き暮らす上で、ウェルビーイング向上が重視されるようになってきたが、その定義は難しい。一人一人が豊かだと感じる生き方はさまざまで、それらを個別に実現することこそが、ウェルビーイングに結びつくからだ。SB国際会議2024東京・丸の内では、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)、オカムラ、東京建物、森ビルから、都市開発や空間設計をフィールドに活躍する担当者が、ウェルビーイングの在り方を議論した。(横田伸治)

ファシリテーター
蒔田智則・ヘンリックイノベーション 環境設備エンジニア
パネリスト
入江 洋・東日本旅客鉄道 イノベーション戦略本部 マネージャー
川口健太・オカムラ ワークデザイン統括部 クリエイティブディレクションセンター 所長
黒田 敏・東京建物 新規事業開発部 課長代理
中 裕樹・森ビル タウンマネジメント事業部 運営部麻布台ヒルズ運営グループ チームリーダー

入江氏

セッションではまず、JR東日本の入江 洋氏が同社のウェルビーイングへの取り組みを紹介した。同社グループは、2018年に経営ビジョン「変革2027」を策定。グループ一体で、「鉄道を起点としたサービス提供」から、「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」へ転換を図った。安全な生活インフラを土台とし、すべての人の「心豊かな生活」実現を目指している。

そうした中、ウェルビーイングな社会の実現に向けて、データやノウハウを共有する場として、2023年4月に「WaaS(Well-being as a Service)共創コンソーシアム」を設立した。コンソーシアムが取り組んでいる事例の一つに、「ウェルネスサイクルツーリズム」がある。自転車観光を楽しむだけでなく、デジタル機器を活用することで運動後の疲労や回復といった健康変化をエンタメ化し、新たな旅行体験の創出を目指す。昨年の秋に、凸版印刷や長野県、飯山市、奈良県立医科大学などと連携し、実証実験を行った。入江氏は「引き続き自治体などと共に取り組みを進め、『移動』を楽しみ、ウェルビーイングにつなげていきたい」と語った。

黒田氏

東京建物の黒田 敏氏は、ウェルビーイングを「ライフスタイルが変化し、働く場所、暮らす場所などの区別がなくなった時代で、多様化したニーズが満たされている状態」と考える。空間の目的を多機能化する実例として取り組んでいるのが、東京・新宿の国立競技場南側に位置する明治公園をフィールドとする「MEIJI PARK PROJECT」だ。

「MEIJI PARK PROJECT」では、公園内に飲食店や温浴施設、アウトドア用品店などを併設しており、「例えば、園内のカフェで仕事をして、公園でランニングして、サウナやスパでリラックスする。従来はレジャー目的だったパブリックスペースの用途を拡張することで、ニーズに適応できる」と狙いを明かした。

中氏

森ビルの中 裕樹氏も、まちづくりを通したウェルビーイングの実例を挙げた。2023年11月に「MODERN URBAN VILLAGE 緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」をコンセプトに開業した麻布台ヒルズを紹介した。

麻布台ヒルズは、人と自然が調和し、人と人がつながり、刺激し合いながら創造的に生きるライフスタイルを提案。その一つに、医療施設を核に位置付け、フィットネスクラブやレストランなどさまざまな施設が連携し、生活者のウェルネスにつなげる「ウェルネス構想」がある。現在、慶應義塾大学と連携して、麻布台ヒルズで過ごす人にどのようなポジティブな変化が起きるかをモニタリングする実験を行っているという。

中氏は「私たちは『営み』を作ることが最も得意。竣工して終わりではなく、イベントや共同研究、情報発信を続けて暮らすことで人々が健康になれる街を目指す」と話した。

川口氏

オフィスの設計を通して、働く空間のウェルビーイングを考えるオカムラ。同社の川口健太氏は、ウェルビーイングを「人がそれぞれ個性を発揮しながら、自分らしく働き暮らすことができる状態」と定義し、「心身の健康と、他者とのつながり」を重要なポイントに挙げた。

同社のオフィスでは、ただ机を部署ごとに並べるのではなく、「てきぱきエリア」「ゆったりエリア」「もくもくエリア」など、目的に応じたスペースを作り有機的に配置している。川口氏は「ウェルビーイングに貢献できるオフィスづくりは、社員一人一人にとってもちろん良いが、人的資本への投資として、企業価値にもつながる」と意義を強調した。

ウェルビーイングの評価指標が課題

蒔田氏

事例紹介に続いたクロストークで、特に議論が白熱したのは「ウェルビーイングの評価指標」だ。登壇者全員が「難しいところ」と口を揃え、入江氏は「お金に換算したり、違う単位なりで示さないと、取り組みが前に進まない」と言う。中氏も「ヒルズ利用者の運動量や食事がどう改善されたかといったデータを取りたいが、自宅との距離や食事なども関わってくるので、不動産の中だけで見るのは難しい」と悩みを打ち明けた。

一方、黒田氏は「公園利用者へのインタビューでは、『楽しかった』『また来たい』という定量的でない部分も拾っていきたい」と話し、川口氏は「当社はオフィス評価に、生産性だけでなく社員の幸福度という指標も取り入れようとしている」と、独自の評価軸を語った。

セッション終盤では、入江氏が「登壇企業のお三方は、とてもウェルビーイング度が高いんだろうなと思った」と発言。「社会貢献をしたいという思いを持って仕事をされていて、定義以上にウェルビーイングとはこういうことなんだなと感じた。幸せを感じながら、1社の利益だけでなくいろんな領域が一緒になって社会のことを考えていけば、ウェルビーイングな社会が来るのでは」とまとめた。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。

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