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  • 公開日:2024.03.19
  • 最終更新日: 2025.03.29
データ分析に基づいたサステナブル・マーケティング―― 大切な“得”が“徳”につながる仕掛けづくり

井上 美羽(いのうえ みう)

SB国際会議2024東京・丸の内

Day1 ブレイクアウト

企業がサステナビリティを推進していくには、社内全体はもちろん、顧客である生活者をも巻き込む力が必要だ。一見、水と油のようにも思えるサステナビリティとブランディングを一体化していくためには、さまざまなデータに基づいた市場分析をしっかりと行っていくことが欠かせない。本セッションでは、主にSDGsを巡る日本の生活者の意識や動向をどう読み取り、企業戦略に結びつけていくべきかがテーマとなった。(井上美羽)

ファシリテーター
青木茂樹・SB国際会議アカデミック・プロデューサー
パネリスト
正司真美・QVCジャパンCustomer Insights & Analyticsディレクター
田中宏昌・インテージホールディングス 生活者研究センター センター長
平井江理子・楽天グループ 地域創生事業EARTH MALL with Rakuten担当

SDGsへの理解は深まり、行動に近づく局面にある――インテージ

田中氏

初めに、市場調査やマーケティングリサーチを手掛けるインテージから、田中宏昌氏が登壇。同社の調査によるSDGsの認知度は直近の2023年12月は84.6%と高く、SDGsは幅広い層で理解が深まり、行動に近づいている局面にあること、そして17の目標の中では社会情勢を反映して「平和と公正をすべての人に」や「すべての人に健康と福祉を」「気候変動に具体的な対策を」が上位にあることなどを報告した。

また消費行動(買い物)をする目的について聞いた項目では、「より良い社会や環境の実現のため」は約1割で、「自分へのメリットのため」が約6割だったという。そうした数字を示した上で、田中氏はそこから得られるビジネスのヒントを、「Z世代には“得”よりも “徳”を先行して考える傾向もある。買う側にとっての“得”が、社会の“徳”につながっていくような商品を提案することが大事ではないか」などとアドバイスした。

サステナブルな商品のストーリーを丁寧に紡ぐ――QVC

正司氏

一方、実際に商品を販売する事業者はデータをどのように見ているのか。テレビとネットを通して年間約2万1000点を取り扱うQVCで、日々、データドリブンな施策のサポートをしているという正司真美氏は、最初にSDGsや気候変動に対する多国間の意識調査の推移などを示しながら、「SDGsは本当に日本に根付いてきているのかと考えさせられる」と指摘。「そのような中で、QVCとしてはお客さまの心に刺さるような商品を提供していかなくてはいけない、という思いで試行錯誤している」と話した。

2022年からはサステナブルな商品を集めた特集番組を定期的に放送したり、AIを活用したリアルタイム字幕放送などを年間を通じて行い、その結果、独自の顧客アンケートで「QVCがSDGsに積極的に貢献していると思う」とする回答は上昇し、該当商品の購入者も増加しているという。QVCらしい商品としては、採掘に関してさまざまな問題のある天然ダイアモンドと違って、「エシカルに調達できる」ことが特徴の、研究所などで育てられた“ラボグロウンダイヤモンド”などを挙げ、正司氏は、一つ一つの商品に込められた作り手の思いを「ストーリーとして丁寧に紡いでいくことで、QVCとしても継続的に成長していきたい」と力を込めた。

地方発、『得と徳を掛け合わせた企画』が人気に――楽天

平井氏

オンラインショッピングプラットフォーム、楽天は、2018年に『サステナブルな買い物を日常に。』をスローガンとするサイト、Earth Mallを立ち上げた。同社の平井江理子氏によると、当初、Earth Mallでは客観性や透明性の観点から、さまざまな国際認証を取得した商品を中心に紹介していたが、「そうした認証に頼らず、お客さまがより楽しく買い物ができる世界を作っていくために」、2022年にはサステナブルショッピングガイドという独自の商品基準を作成し、オーガニック、フェアトレードなど8つの軸に合わせて商品を選べるような仕組みを作った。

中でも最近は、「日本のサステナブルプロダクトを応援する」取り組みに注力。例えば愛媛産の柑橘や今治タオルなど、地域に特化した商品を「価格はある程度するけれども、こういった商品があるなら買いたいな」という気持ちを持ってもらうよう、ビジュアルで提示するとともに、楽天らしいクーポンを付けた、「まさに、得と徳を掛け合わせたような企画」で、愛媛産の商品は前年比136%と好調な伸びを見せているという。

「これから、サステナブル市場はどのようにして伸びていくと思いますか?」という青木氏の問いに対し、最近は教育の現場で授業をさせてもらうことも多いという平井氏は、公立中学校でのワークショップで、生徒たちのサステナビリティリテラシーがかなり上がっていることを目の当たりにした体験から、彼らが消費者層になった時には、「サステナブルな商品を選ぶことがスタンダードになる。グリーンウォッシュは見抜かれてしまう」と実感を持って話した。

QVCと楽天の話を受けて、インテージの田中氏は、「大事なのは、多様な価値観を持つ消費者が市場に飛び込んだ時に、その商品と消費者との接点をどれだけ用意できるか。商品の物語を人とつなぐという意味で、いろんな情報を参考に商品を選べる手法はとてもいいと思う」と2社の取り組みを評価。サステナブルな消費を喚起し、浸透させていくには、「その商品を買う自分にとっても得で、それがフェアトレードや地域創生といった社会の徳につながるという仕掛けづくりが鍵を握っている」と強調した。

人々の関心をより引き付けるため、QVCでは、商品の特徴と、顧客にとっての価値を織り交ぜてストーリー化し、さらに顧客のフィードバックを分析して、次のストーリーにつなげている。正司氏は、「お客さまからいただいたデータは当社にとっての重要な資産。この資産を活用して、お客さまをどれだけ理解することができるかが(他との)差別化につながる」と思いを語った。

written by

井上 美羽(いのうえ みう)

埼玉と愛媛の2拠点生活を送るフリーライター。都会より田舎派。学生時代のオランダでの留学を経て環境とビジネスの両立の可能性を感じる。現在はサステイナブル・レストラン協会の活動に携わりながら、食を中心としたサステナブルな取り組みや人を発信している。

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