![]() 着終わったら「リユースバッグ」に入れて下取りへ(ZOZO提供のイメージ画像)
|
ファッションの世界でも、原材料の生産・調達から製造・販売、さらには商品が活用された後の回収やリユース、リサイクルまでの全工程において、「サステナブル」であるかどうかは今、一つの重要な物差しになっている。そうしたなか、この10年の間に生活者の意識が大きく変わったものの一つに古着があるだろう。流行に左右されることなく、好きな服を好きな時にネット上で買い、一定期間楽しんだ後は、下取りに出して次の服を買う。そんなファッションの循環を生み出し、加速させるのに一役買ってきたのが開設12年目に突入したZOZOUSED(ゾゾユーズド)のプラットフォームだ。
ECサイトで古着を買う、自分が着ていた洋服を売る行為が身近に
「世の中的にはサステナビリティへの意識の高まりが非常に大きいと思います。古着をECサイトで購入することが、サステナブルなファッションの楽しみ方として、一般的に受け入れられるようになった。事業者サイドから見ても、そう、すごく感じています」
この10年の古着を巡る生活者の感覚の変化を、島村龍也・ZOZOマーケティング本部USED事業部ディレクターが実感をもって語る。ZOZOUSEDは、年間購入者数1100万人以上(2023年9月末時点)のファッションに特化したECモールであるZOZOTOWN上の古着専門ゾーンとして2012年11月にサービスを開始し、この11年間、リユースに向き合い続けた。
![]() ZOZOUSEDの11年間の歩みとこれからについて語る島村龍也・ZOZOマーケティング本部USED事業部ディレクター(ZOZO提供)
|
島村龍也(しまむら・たつや)氏 青山学院大学卒業後、2010年にクラウンジュエルに入社し、物流、バイヤー、MD、PMなど幅広く経験。2019年のZOZOへの吸収合併以降、USED事業部のディレクターとしてZOZOUSED事業全体を統括
ZOZOUSEDの開設の翌年には大手フリマアプリもスタートし、国内のECサイト上の古着を含めたリユース市場は一気に、且つジワジワと開花した感もある。それより前、かつての古着のイメージを、島村氏は「例えば、ヴィンテージのような一点物で、とてもプレミアムなものとされる一方で、新品は予算的に買えない時にも古着なら買えるというような意識もあったと思います」と振り返る。その上で、ECサイト上で古着を買う生活者の心理を「かつての古着のイメージがだんだんと薄れ、古着を買うという行為、そして自分が着ていた洋服を売るという行為自体のハードルが低くなり、身近に感じるようになってきたのではないでしょうか」と分析する。
![]() ZOZOUSEDのTOP画面
|
そのように市場が広がりを見せるなかで、ZOZOUSEDは、他のフリマアプリなどとどう差別化を図ってきたのか――。大前提として、ZOZOUSEDはZOZOTOWN上の1サービスであり、島村氏は、「ZOZOTOWNという一つの大きなプラットフォームの中で、新品と古着が共存するからこそ、ブランドや価格を横断し、点ではなく、線のサイクルで循環型ファッションを促進することができた」と強調する。
「ZOZOだからこそ」の下取り、〝買い替え割〟が古着の回収を促進
例えばZOZOTOWNはカジュアルブランドからハイブランドまで8900以上のブランドを取り扱い(2023年9月末時点)、ZOZOUSEDでは7000以上のブランドから常時約80万点の古着アイテムを中古ならではの価格で提供している(同年9月時点)。ここで挙げられる『ZOZOだからこそ』のサービスが、2016年導入の洋服の下取りサービスである“買い替え割”に加え、2019年導入の、過去に購入したアイテムをいつでもZOZOポイントと交換できる“いつでも買い替え割”だ。
![]() 「買い替え割」の画面の一例
|
具体的には、ZOZOTOWNで2回目以降、洋服を購入する場合、過去に購入したアイテムのうち、買取対象アイテムの下取り価格が提示され、その場で下取りを希望し、アイテムを選択すると、その金額分が値引きされる(=買い替え割)。また、いつでも好きな時に、過去に購入したアイテムの下取り価格を確かめ、下取りに出すことを決めれば、その金額分のポイントと交換し、次の買い物に使うことができる(=いつでも買い替え割)。希望者は、購入したアイテムと一緒に届く「リユースバッグ」(繰り返し使用可能)に、該当するアイテム(下取りに出した洋服など)をそのまま入れて送れば取引は完了する。個別に梱包して送るといった面倒な手続きは一切不要だ。
買い替え割で下取りしたアイテムを送付する際、ZOZOTOWN以外で購入したアイテムも同梱することで買取を依頼することが可能。この場合、送ったアイテムは後日、ZOZOにより査定がなされ、その金額分がZOZOポイントと交換か、あるいは現金で振り込まれるという。
![]() ZOZOUSEDの「買い替え割」の仕組み
|
これらの仕組みを利用した古着の回収点数は、2020年度約700万点、2021年度約800万点、2022年度約1000万点と、着実に伸びている。島村氏はその要因を、「なぜ人は古着を買うんだろうかというところに帰結するかもしれませんが、やはり古着とは、コストを抑えながらおしゃれを楽しむということを自動的にかなえるものだと感じています」と古着の一側面を語りつつ、「1人の人にとって衣服に使える額が決まっている中で、古着をうまく組み合わせることでより多くの選択肢を持てる。過去に買い逃したアイテムも、古着であれば少しお得に手にすることができ、古着を介して新しいブランドを知ったり、今までチャレンジできなかったジャンルにも挑戦できます。そのように古着によって、いろいろな可能性を広げていけるという考えが、ユーザーの方々に浸透してきたのではないでしょうか」とみる。
そうした傾向はもちろん、ZOZOUSEDとして“設計”してきたことではあるものの、「こちらが考えていた以上に受け入れられた。今では新品を買うのと同じように古着を買う選択肢があると同時に、不要になったアイテムもこれまでならば捨ててしまったりしていたのが、どのぐらいの金額で買い取ってもらえるんだろう、というような気持ちになる方が増えているのを実感しています」。
年間約1000万トンを回収・リユースで、CO2排出量を約1万8800トン削減
環境省の特設サイト「SUSTAINABLE FASHION〜これからのファッションを持続可能に」によると、海外で生まれ、日本で消費される衣服の、原材料調達から製造段階までに排出されるCO2排出量は年間約9万キロトンにのぼる。これを服一着に換算すると、CO2排出量は約25.5キログラムで、これは500ミリリットルのペットボトル約255本分に当たるという※1。さらに原料となる植物の栽培や染色などで大量の水が使われ、生産過程で余った記事などの廃棄物も大量に出る。
こうした環境負荷削減に向け、ZOZOUSEDでは、例えば2022年度に回収・リユースした約1000万点を、同じアイテム数の新品を生産した場合と比較すると、「製造過程から廃棄焼却までに発生するCO2排出量を約1万8800トン削減したのと同じ効果がある※2」とする数字を示している。「捨てない、という選択肢は、捨てることによって焼却しなければならなくなった時に出る温室効果ガスを出さなくても済み、大切な資源の保全につながります」。
ZOZOUSEDの特徴としては、仕入れから販売までの各プロセスにAIを導入していることも挙げられる。ZOZOTOWNで販売する新品とZOZOUSEDで販売する古着の膨大なデータを活用したAIによって、売れる金額とタイミングを高精度に予測、より高い買取金額の提示を実現しているほか、気象情報をうまく使って、季節性の強い商品の売れ残り率を削減することにも効果を挙げているという。つまり、テクノロジーと買い替え割などの柔軟なサービスを掛け合わせ、一次流通と二次流通両方の事業を展開するZOZOならではの仕組みでファッションの循環を加速させてきたのがZOZOUSEDのこの11年の歩み、と言える。
※1 2019年時点における服の国内供給量と、2020年の調査に基づいて算出
※2 環境省が推奨する3R原単位の算出方法に基づき、新品の生産・流通・廃棄時に排出される二酸化炭素量を推計
ZOZOという会社がハブになり、ファッション業界全体をより良く
![]() ZOZOの西千葉本社屋(ZOZO提供)
|
ZOZOは2021年4月、サステナビリティステートメントとして、「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」を掲げた。
その重点取り組みとしては
1. サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供
2. 廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築
3. ファッションに関わるすべての人のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進
4. 持続可能な地域づくりへの貢献
の4つを推進。
具体的には、2030年度までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」に加え、取引先などで排出される温室効果ガス排出量(スコープ3)も含めたサプライチェーン排出量を、2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」を目指しているほか、2030年までに取締役や上級管理職(部長以上)の女性比率を30%以上にするといったKPIの達成を、全社一丸で目指している。
中でも「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」はZOZOUSEDの在り方そのものであり、上述したように、買い替え割などのサービスで実現してきた。さらに、ZOZO全体としては出店ブランド企業へのエンゲージメントを高め、ブランドと共につくるサステナビリティ基準をもとに商品を表示するなど、人権や環境に配慮されたサービスを推進していく考えだ。
「ZOZOは、地球環境だけではなく、生産や製造の現場の労働環境など、人権の問題にも発展していくんだということをしっかりと確認して取り組むようにしています。我々1社だけでできることは多くはない。でも一方で、我々ZOZOという会社がハブになり、少しずつでも仲間を増やしていくことで、ファッション業界全体をより良くしていくことは可能なんじゃないかと思っています」
2022年にはファッション業界のサステナビリティ情報を幅広く発信する常設コンテンツ「elove by ZOZO (エラブ バイ ゾゾ)」もZOZOTOWN上でローンチしている。こうした方針を踏まえた今後のZOZOの目標を、「ファッション業界のインフラになっていきたい。全社でサステナビリティに力を入れていく」と力強く語る。
2030年、そして2050年以降の未来に向けて、役目を終えた洋服などをどう回収し、廃棄のない循環型の「サステナブルファッション」を構築していくか――。多数のブランドの新品と古着が一つのプラットフォーム内に共存するZOZOだからこそ生み出せる“体験価値”に今後も注目していたい。