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  • 公開日:2023.09.20
  • 最終更新日: 2025.03.11
「SDGsを救うため世界的な計画が今こそ必要」2030年に向け、折り返しのサミットで国連が政治宣言採択

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

2030年のゴールに向けて折り返しを迎えたSDGsの進捗について議論するためニューヨークの国連本部で開かれたSDGsサミット(UN Photo/Cia Pak、国連のオフィシャルサイトより)

年に一度の国連総会を前に、2030年の目標達成年に向けて折り返し地点を迎えたSDGsの進捗を踏まえて各国の首脳らが議論する「SDGsサミット」が18日から2日間にわたって米ニューヨークの国連本部で開かれた。パンデミック以降、ロシアのウクライナ侵攻など複数の危機が生じたことでSDGsは進捗の軌道から大きく外れていることが分かっており、首脳らは状況がむしろ後退していることの危機感を共有。初日にアントニオ・グテーレス国連事務総長は、「道半ばにあるSDGsを救うための世界的な計画が今こそ必要だ」と訴え、目標達成に向け行動を加速させるため、途上国への支援を拡充する国際的な金融改革などを盛り込んだ政治宣言を採択した。(廣末智子)

169ターゲットのうち軌道に乗っているのは15%のみ

「誰一人取り残さない」をスローガンとするSDGsは、極度の貧困と飢餓に終止符を打つこと、清潔な水と衛生環境、気候変動への具体的な対策や、働きがいのある仕事と経済成長の両立、ジェンダー平等と質の高い教育の保障など17の目標と細かい指標を定めた169のターゲットで構成している。

今年6月に発表された、世界166ヵ国のSDGsに関連する取り組みを分析した報告書によると、2015年から2019年にかけて、世界はSDGsに関してある程度の前進を見せていたものの、COVID-19によるパンデミックの発生と、ロシアのウクライナ侵攻といった「世界的な危機と挫折」が同時に起こって以降、進歩が停滞していることが判明。「このペースでいくと2030 年までに世界レベルで達成される目標はなく、高所得国と低所得国との間の格差が広がるリスクも予想される」と指摘されている。

国連のオフィシャルサイトなどによると、グテーレス事務総長は、サミット初日のハイレベル会合の演説で、169のターゲットのうち「現在軌道に乗っているのはわずか15%に過ぎず、多くの目標が後退している」と危機感を表明。こうした状況の背景には、発展途上国や新興国に対する慢性的な融資不足が大きな問題としてあるとされることから、途上国への資金提供へのコミットメントや、少なくとも年間5000億ドルの“SDGs刺激策”を行うことへの明確な支持、効果的な債務救済メカニズムなどを盛り込んだ政治宣言を採択するよう加盟国に呼びかけた。その意義について、「SDGsの進捗を加速させるゲームチェンジャーになり得る。道半ばにあるSDGsを救うための世界的な計画が今こそ必要だ」と付言した。

国連によると、2022年の時点で、世界の12億人が依然として貧困状態にあり、世界の人口の約8%に当たる6億8000万人が10年後までに飢餓に直面することになるという。この数字について、グテーレス事務総長は「壮大な人権侵害であり、私たち一人ひとりに対する非難である」とする強い言葉で懸念を表明。さらに「世界中であまりにも多くの子どもや若者が質の低い教育の犠牲になっている。あるいは教育を全く受けていない」と続け、教育と働きがいのある仕事、社会的保護、そして「ジェンダーに基づく暴力の災禍を終わらせること」の必要性を強調した。

ゼレンスキー大統領「気候変動への対応、さらなる戦争防ぐためにも団結を」

一方、今回の国連総会には、ロシアによる侵攻開始後初めて、ウクライナのゼレンスキー大統領が対面で参加。グローバルサウスの国々を中心に即時停戦を求める声も高まるなか、19日の一般討論演説で、改めてウクライナへの支援を呼びかけ、「一握りの大国間による密室の対話では平和は訪れない。世界が早急に気候変動などグローバルな課題への対応に集中し、さらなる戦争を防ぐためにも、すべての国が手を取り合い、団結することが必要だ」と訴えた。

岸田首相は、「SDGs達成に向けて国際社会全体での取り組みを加速しなければならない。地球規模の課題に取り組む過程で個人の尊厳が蔑ろにされてはならない」と主張。SDGsの達成に必要な投資額と実際の投資額との「資金調達ギャップ」を埋めるため、民間資金も活用する考えを強調し、「日本は各国と共に投資のダイナミズムを引き寄せつつ、人間の尊厳を守る経済のあり方を模索していく」と述べた。

2030年のゴールに向けてターニングポイントを迎えた今、今回のサミットをSDGs達成に向けた新たな原動力とし、遅れた取り組みを挽回し、加速させることができるかどうか。ウクライナ情勢を巡る暗雲が晴れないなか、日米欧など先進国が、今回の政治宣言で打ち出した新興国に対する新たな支援策をどこまで実行力のあるものにできるか、国際協力の本気度が問われている。

関連記事=世界のSDGs達成度3年連続後退 パンデミック、ウクライナ侵攻などで軌道外れる 日本はランキングで21位に下降

written by

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局  デスク・記者

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年より現職。サステナビリティを通して、さまざまな現場の思いを発信中。

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