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  • 公開日:2023.07.20
  • 最終更新日: 2025.03.11
消費者は「よりサステナブルな旅行」を望む一方、物価高高騰でジレンマに――世界の旅行者調査 49%は「追加料金もいとわない」

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

image credit : Booking.com提供

世界の消費者のサステナブルな旅行に対する関心がこれまでになく高まるなか、エネルギー危機など不安定な世界情勢を背景とする物価高の高騰によって、人々は、旅行費用を削減するか、あるいはコストは高くともサステナブルな旅行を選択するかのジレンマに陥っている――。世界最大級の宿泊予約サイト、Booking.com(ブッキング・ドットコム)が毎年行っている世界35の国と地域にわたる約3万3000人以上の旅行者を対象にした最新の調査でそんな傾向が浮かび上がった。

前提には、旅行者の49%が、さまざまなオプションなどによってCO2排出量の削減に貢献できるような旅先を選ぶ、「よりサステナブルな旅行はコストがかかり過ぎる」と捉えていることがあるものの、43%は「サステナブルな認証を受けた旅行のために追加料金を支払うことをいとわない」と回答するなど、全体として各人の責任ある旅行者としての自覚は強まっている。(廣末智子)

日本でも高まる関心 「経済的なインセンティブがほしい」が世界で上昇

8年目となる今回の調査は今年2月、直近12カ月間に1回以上旅行をした、あるいは2023年に旅行を計画している18歳以上の旅行者にオンラインで実施された。それによると、世界の旅行者の80%が「よりサステナブルな旅行をすることは自身にとって重要である」、76%が「今後1年間によりサステナブルな旅行をしたい」と回答。日本の旅行者も前者は80%、後者は前年度から10%増の56%がそう回答するなど、日本においてもサステナブルな旅行への関心が年々高まっていることが裏付けられた。

一方、世界の旅行者の49%(日本の旅行者の43%)は「よりサステナブルな旅行はコストがかかり過ぎる」とする認識を示し、76%が(同75%)が「世界的なエネルギー危機と生活費の高騰が支出計画に影響を及ぼしている」と回答していることから、旅行費用の削減を余儀なくされるなか、どちらを優先するかの葛藤があることがうかがえる。

こうした状況を受け、世界の49%(同31%)が「エコフレンドリーな旅行の選択に対する割引や経済的なインセンティブがほしい」と回答しており、これは前年度に比べて世界で12%、日本で22%高い。具体的には世界の42%(同39%)が「よりサステナブルな選択をすることに対して、オンライン予約サイトを通じて付与される特別な無料特典や割引に換えられるポイントがあれば、よりサステナブルな旅行をするきっかけになる」としている。

情報発信かみ合わず 可視化された選択肢の少なさも課題

もっとも世界の51%の旅行者(同54%)が「サステナブルな旅行の選択肢が十分にない」と回答するなど、費用面だけではなく、限られた情報や可視化されている選択肢の少なさが、サステナブルな旅行のハードルになっていることは明らかだ。サステナブルな旅行の選択をする意欲があっても世界の44%(同53%)はその選択肢を「どこで見つけたら良いのか分からない」のが現状で、例えば世界の75%(同53%)が「現地の文化を代表するような本格的な体験を楽しみたい」と回答する一方で、40%(同47%)が「現地のコミュニティに還元できるツアーやアクティビティをどう探せばよいか分からない」とし、旅行者の求める情報と、旅行会社や宿泊先などの情報発信がかみ合っていないことを示唆している。

旅先でも日常習慣取り入れ、「訪れた場所をより良い状態にして帰りたい」

では実際に、世界の旅行者の行動はどう変わっているのか――。調査では、68%(同54%)がエコバッグを、58%(同45%)がマイボトルを持ち歩き、60%(同34%)が同じタオルを複数回使用、45%(同23%)は「旅先でごみをリサイクルする」と回答するなど、「旅行者が旅先でも日常的な習慣を取り入れる割合は大幅に増加している」ことが分かった。

また移動手段に関しても43%(同36%)が「徒歩、自転車、公共交通機関を利用できるように観光計画を立てた」としているほか、43%(同22%)が現地での買い物の際、「小規模の独立系店舗を優先した」と回答。それら旅行先での行動を通じて66%(同56%)は「訪れた場所をより良い状態にして帰りたい」と、責任ある旅行者としての務めを自覚していることが読み取れる。

39%は「サステナブルと謳う旅行がサステナブルだとは信じていない」

また世界の旅行者の65%(同52%)は、「宿泊施設がサステナブルな認証やラベルを取得済みだと分かった場合、その宿泊施設での滞在についてより好ましく感じる」、59%(同35%)は「次回予約を行う際はサステナブル認証を受けた宿泊施設を絞り込んで検索したい」、43%(同22%)は「サステナブルな認証を受けた旅行のために追加料金を支払うことをいとわない」と回答。一方で世界の39%(同28%)が「サステナブルと謳われている旅行の選択肢が実際にサステナブルだとは信じていない」としており、消費者が旅行に際しても“グリーンウォッシュ”に敏感であることが注目される結果も出た。

調査を踏まえ、ブッキング・ドットコムのグレン・フォーゲルCEO は「旅行需要が回復傾向にある一方で、生活費の高騰や気候変動への不安から、より低予算で地球に環境負荷をかけない旅行の選択肢を求める声が強まっている」と分析。その上で、「旅行は地球環境に対して良い影響を与え得るものであり、旅行者自身がサステナブルな習慣をとり入れたり、責任ある体験を求めることで変化を起こすことができる。今後も業界全体のパートナーと協力し、旅行者へのサポートと地域社会や環境のためにポジティブな見直しを先頭に立って行っていきたい」などと話している。

同社は2021年11月から、廃棄物や温室効果ガスの削減、自然の保護、節水、地元コミュニティの支援などのカテゴリーに沿った宿泊施設の取り組みをラベルで評価し、旅行者が宿泊予約時に検索・比較することのできる「サステナブル・トラベル」プログラムを導入。現在、世界95都市で「100%電気自動車」タグを使ってタクシーを検索・予約できるほか、フライトによる環境への影響についての透明性を高めるため、各航空会社のさまざまなオプションのCO2排出量を比較できるサービスなどを提供している。

written by

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。

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