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  • 公開日:2023.06.23
  • 最終更新日: 2025.03.11
世界のSDGs達成度3年連続後退 パンデミック、ウクライナ侵攻などで軌道外れる 日本はランキングで21位に下降

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

SDGs達成度が高い国ほど濃い色になっている

SDGsの目標達成年である2030年への中間地点に当たる今年、持続可能な未来に向けた世界の動きは大きく軌道から外れ、現時点では世界レベルで1つの目標も達成できないと予測される――。SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)などが毎年刊行している世界166カ国のSDGsに関連する取り組みを分析した報告書が21日、発表され、そんなショッキングな結果が示された。パンデミック以降、ロシアのウクライナ侵攻など複数の危機が生じたことで世界のSDGs指数は3年連続で後退し、予想以上に停滞していることがあらわになった形だ。報告書は「多くの途上国が巨額の資金不足に直面している。SDGsは本質的には投資課題であり、憂慮すべき状況にもかかわらず達成は可能」とした上で、SDGsの進捗を回復させるためには、パンデミックや戦争を集結させるとともに、「資金を確保するための国際的な協力が必要だ」とあらためて指摘。グローバル・ガバナンスと世界的な金融の構造改革の必要性を強調している。(廣末智子)

達成度ランキング:上位10位は欧州勢、どの国も満点に近づいていない

SDSNは、国連事務総長の後援のもと、世界的な科学技術の知見を結集し、2012年に設立されたネットワーク。SDGsが発効された2016年以降、毎年、世界各国のSDGsの進捗状況を『サステナブル・ディベロップメント・レポート(持続可能な開発報告書)』としてまとめ、各国のスコアをランキング形式で発表している。

今回の報告書によると、2023年の国別達成度ランキングの1位はフィンランド(総合スコア86.8%)、2位スウェーデン(86%)、3位デンマーク(85.7%)とトップ3は北欧諸国で、例年通り、10位までを欧州勢が占めた。引き続き、欧州勢は「どの地域よりも多くの目標を達成する軌道に乗っている」とされる。一方、これとは対象的にレバノン(95位、67.5%)、ベネズエラ(117位、62.9%)、ミャンマー(125位、60.4%)、パプアニューギニア(148位、53.6%)、イエメン(163位、46.8%)では「最も多くの目標が間違った方向に進んでいる」という。

また国別のランキングについて、今回の報告書は、「SDGs に対する政府の取り組みとコミットメントが低過ぎて、どの国も満点に近づいていない」ことも指摘。国によって大きなばらつきがあり、発展途上国および新興国の中でもインドネシア(70.2%、75位)やガーナ(61.8%、122位)、ナイジェリア(54.3%、146位)など一部の国は積極的な取り組みを示している。さらに注目すべきは、SDGsに対する政治的および制度的リーダーシップに関して、低所得国と開発途上国は、高所得国よりも高い平均スコアを獲得したという。

日本のSDGsの進捗は

赤は「最大の課題」、オレンジは「重要課題」、黄色は「課題が残っている」、緑は「達成できている」。進捗を示す矢印は、↑は「達成に向けて進んでいる」、↓は「後退」、→は「停滞」、↗︎は「適度に改善」を意味する

日本は166カ国中21位にとどまった。総合スコアは79.4%で、2019年の15位から2020年は17位、2021年は18位、2022年は19位と、徐々にランクとスコアともに落としている。毎年の傾向として、目標5(ジェンダー)、12(生産・消費)、13(気候変動)、14(海洋資源)、15(陸上資源)について大きな課題が残っているとされる。

「世界的な危機と挫折」以降、進歩が停滞

さらに今回の報告書は、世界のSDGs達成度の指標を、パンデミック前の傾向と比べて分析。2015年から2019年にかけて、世界はSDGsに関してある程度の前進を見せていたものの、COVID-19によるパンデミックの発生と、ロシアのウクライナ侵攻といった「世界的な危機と挫折」が同時に起こって以降、進歩は停滞し、「パンデミック前に基づいた予測レベルを1ポイント下回っている」とした。このペースでいくと2030 年までに世界レベルで達成される目標はなく、高所得国と低所得国との間の格差が広がるリスクも予想されるという。

またパンデミック以降、2030年の目標達成に向けた動きが逆行している項目については、ウェルビーイングとワクチン接種へのアクセス、貧困、失業率などを挙げる。それによって目標1、2(貧困・飢餓をゼロに)と3(健康・福祉)は大きく軌道から外れてしまっており、11、12、13に関わる大気およびプラスチック汚染や14、15の海上・陸上資源も同様だとした。

要因は途上国への慢性的な融資不足 金融に新しいメカニズムを

こうした憂慮すべき状況の要因として、報告書は「発展途上国および新興国に対する融資の慢性的な不足がある」と強調。世界的な金融構造の改革に向け、信用格付けシステムと債務の持続可能性の指標を改訂することや、国際協力の展開の質と速度を向上させ、オープンかつタイムリーな方法で進捗状況を監視するための新しいメカニズムを開発することなどを提案。具体的には、現在の投資パターンを変更し、世界の貯蓄を投資に回す、いわゆる『グローバル金融アーキテクチャ』を想定し、「2025年までに少なくとも5000億米ドル(約70兆円)の資金の流れを増やす」よう求めた。

世界的な金融改革を巡っては6月22日にパリで新グローバル金融協定のためのサミットが開幕。また今年9月にはニューヨークで国連加盟国がSDGs採択以来2回目の会合を開き、SDGs達成に向けての優先事項を定義することになっている。報告書はこれらに先立って発表されたもので、「現状では世界がSDGsの達成に向けた軌道から大きく外れてしまっているからこそ、残り7年間で進歩を加速させるため、すべての国連加盟国は世界規模で長期的な政策を採用すべきだ。SDGsへの投資と並行して、地球を脅かす活動への投資はやめる。世界人権宣言に基づく、すべての人々の権利の完全な実現のためにはパリ協定や昆明・モントリオール生物多様性枠組みといった世界的な目標が一緒に達成されなければいけない」と提言し、警鐘を鳴らしている。

written by

廣末 智子(ひろすえ ともこ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局  デスク・記者

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年より現職。サステナビリティを通して、さまざまな現場の思いを発信中。

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