![]() 『Monna Lisa』でプリントしたタペストリー
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プリンティング技術をけん引し続けるエプソンが、ファッション業界の課題解決に向けて動き出した。現在、アパレルの生産過程においては、水の大量使用による環境負荷や商品の大量生産・大量廃棄などが大きな問題となっており、抜本的な取り組みが求められている。エプソンはこうしたファッション業界における社会課題に着目。独自のデジタル捺染(プリント)技術と3Dデジタル技術を用いて、「過剰生産を減らし無駄な在庫を持たないこと」「クリーンで安全な労働環境を確保すること」を目指し、共創パートナーと共にソリューション展開に挑む。
エプソンは2022年にパーパス「『省・小・精』から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る」を策定した。「大きいこと、量が多いことだけが豊かさではなく、省くこと、⼩さくすること、精緻さを突き詰めることこそが、自然環境にやさしく、人々のこころを豊かにできる」という意味が込められている。同社産業機器営業部部長の松岡大樹氏は「まさにこのパーパスを『Monna Lisa(モナリザ)』という技術を使い、ファッション業界のさまざまな価値創造、お客様と環境のより良いライフスタイルとして実現していきたい」と語る。
![]() 松岡氏
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エプソンの強みは、プリンターメカ設計はもちろん、コアとなるプリントヘッドとインク、印捺するためのソフトウェアまで、すべて自社で開発している点だ。また使用するインクに関しては、有害な化学物質を検証するOEKO-TEX®、有機栽培(飼育)の原料を使用し環境と社会に配慮して加工・流通されたことを示すGlobal Organic Textile Standard(GOTS)、製造過程において有害性の低い物質が採用されていることを示すbluesign®などの認証を受け、安全性を確保している。
こうした技術を詰め込んだデジタル捺染機『Monna Lisa』は、布地に直接印刷(Direct To Fabric)できるインクジェットプリンターで綿、ウール、ポリエステルなど多様な生地種に対応が可能だ。
『Monna Lisa』による製造工程では、従来の捺染作業に比べて納期を短縮することができる。
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オンデマンド印刷のデジタル利点を活かし、適時適量の生産により、過剰な在庫を持たなくて済む。更には従来の方法より作業工程が少ないことから、クリーンで安全な労働環境にも貢献できるという。
捺染は熟練を要するために少子高齢化の中で職人が減り続けている。松岡氏は「『Monna Lisa』使用の習得は短時間のトレーニングでできるので、若年層の人材育成にも貢献できる」と話す。
エプソンの「Monna Lisa」で新しい「3D×無在庫ビジネス構想」を展開!
『Monna Lisa』の活用と合わせて無在庫オンデマンド生産を進めるのが、3D×無在庫ビジネス構想だ。従来、サンプルやパターンの制作は生地で行っていたが、3Dで作成し、それを2Dパターンに変換して『Monna Lisa』でパターン入り生地をプリントし直接縫製まで行う。これらは、アパレル生産管理システムに特化したIT企業である株式会社アベイル(横浜)と協働し進めている。消費者への提案も、タブレット画面で洋服を人型に着せた3Dで表現し着用イメージを見せ、体形や洋服のサイズの違いなどもいくつかのパターンで確認することができる。
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松岡氏は「当社がこうしたビジネス構想のプラットフォームとして役割を担えるのは、異業種ベンダーだからこそ。だが、こうしたプラットフォームの取り組みはエプソン一社だけでは難しく、賛同して共創してくれる多くのビジネスパートナーやブランドオーナーの参画が必要だ」と話す。そこで手をあげたのが、スペイン発のファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」だ。
![]() 渋谷スクランブルスクエアにあるECOALFの店舗
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ECOALFは、海洋環境の改善に積極的に取り組み、海洋ごみからリサイクル繊維を精製したジェンダーレスな衣料品を生産・販売しているブランドだ。企業として労働環境や製造工程などに対して厳しい審査のもと評価される米国の国際認証「Bコーポレーション」をスペインのアパレルメーカーとして初めて取得。またBコーポレーションの中でもさらに優秀だとされる上位5%の企業に認定されるなど、国際的に高い評価を受けている。
日本事業は2019年から展開し、3月10日で3周年を迎えた。東京・渋谷にある渋谷スクランブルスクエアの旗艦店には、リサイクルポリエステルでできたTシャツやスニーカー、コーヒーの残りかすを繊維に混ぜたジャケットなどが並んでいる。目を引くカラフルな色もあるが、そのほとんどが無地で日本人に馴染みやすい落ち着いた色味だ。
下川氏(撮影:編集部)
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三陽商会事業本部コーポレートブランドビジネス部エコアルフ課課長 兼 エコアルフ・ジャパン取締役の下川雅敏氏は「今までECOALFにはなかったが、ブランド独自の柄やプリントは、ファッションでは非常に重要なポイントだと思う。しかしサステナビリティを考えたときに、例えば、染料は環境に対してどういう負荷があるのかが気になっていた」と話す。
今回エプソンと取り組むきっかけになったのは「ダイレクトプリント」というキーワードだった。「『Monna Lisa』で使用するプリントの染料や在庫管理など、自分がやりたいこととそれができることがマッチした」という。日本事業独自で商品企画ができるため、環境に良いプリンティング技術で、「本国より先進的な取り組みを国内のマーケットでやりたいと思った」と下川氏は続ける。
3月に開催され、ECOALF創業者のハビエル・ゴジェネーチェ氏が来日したイベント「LOST COLORS ~失われてゆく海の色~」では、水族写真家・二木あい氏の写真を『Monna Lisa』でプリントしたタペストリーを展示。細部まで表現された色の美しさに、訪れた人は目を見張っていた。
![]() 創業者のゴジェネーチェ氏
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![]() タブレットに映した3Dの着用イメージ
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また同様のプリント生地を使ったワンピースをタブレットで展示。今回のイベントでは、3Dソリューションの取り組みはまだトライアルの状況だが、「この服をまた再利用できるのか、いかにその製造・在庫ロスをなくすのか」といったこと引き続き課題であり、「まずひとつのゴールとして『Monna Lisa』を使った3D×無在庫ビジネス構想を世の中に出していきたい」と下川氏は意欲的だ。「消費者に、なぜこれまでECOALFの商品にプリントが無かったのか、なぜ今回できたのかというメリットをきちんと伝えることができる」のはブランドの強みになる。無在庫オンデマンドも従来の大量生産を見直す契機になる。
最後に下川氏は「サステナブルファッションは、その背景やコンセプトを伝えて、知った上で着る楽しみが根底にあると思う。今回の取り組みは、エプソンさんがプリント技術で多くの人と共創して、サステナビリティを推進していこうということ。それを広めるのはファッションの役割であり、ECOALFだけが賛同するのではなく、業界に普通のこととして浸透していくのが一番いい」と語った。
雇用を守り、伝統文化を守ることにもつながる
服の生産は、海外ではプリントから縫製までほぼ大手1社が一貫して行うが、日本では染める会社、裁断する会社、縫う会社、など分業化されている場合が多い。その多くは地方の中小企業であり、「3Dソリューション×無在庫ビジネス構想」でそういったサプライチェーンをシステムとしてつなぎ、支援することで、ビジネス機会を創出できるとエプソンは考える。
「エプソンの『3Dソリューション×無在庫ビジネス構想』は、地方の雇用を守り日本の伝統文化を守ることにもつながる。来年度中にはシステムを完成させ、パートナーと共に共創しファッション業界にイノベーションを起こしたい」(松岡氏)と、国内産業の活性化に貢献する意気込みだ。
(撮影・原啓之)

エプソン販売株式会社(Sponsored)
エプソン販売ではエプソングループの長期ビジョン「Epson 25 Renewed」にもとづき、環境負荷の低減に注力し、お客様の課題解決に繋がるソリューションの提案をしています。そして、事業を通じてお客様やパートナーの皆さまと共に「持続可能でこころ豊かな社会の実現」を目指しています。 すべては「お客様の笑顔」のために。 製品というモノに、お客様の願いや、想いを含むコトを添えて提案する。私たちは、そんな姿勢を大切にし、永続性のある価値を創出する企業でありたいと考えています。