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  • 公開日:2023.03.10
  • 最終更新日: 2025.03.28
資源価値を最大化してサーキュラー・エコノミーの実現を

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

SB国際会議2023東京・丸の内

Day2 ブレイクアウト

これまで資源循環では、廃棄物削減の視点から3R(リユース、リデュース、リサイクル)がキーワードだったが、現在はそれにとどまらず、投入された資源の価値をどれだけ最大化し、いかに長持ちさせ、社会のなかで循環させるかという視点が非常に重要になってきている。そのようなサーキュラーエコノミーの実現に向けて企業努力をしている4社が登壇し、その取り組みについて紹介すると共に、推進する上での重要な課題について議論した。 (環境ライター 箕輪弥生)

ファシリテーター
茂呂正樹・EY Japan 気候変動・サステナビリティサービス(CCaSS)アソシエートパートナー
パネリスト
佐藤多加子・リコー ESG戦略部 エキスパート
高橋正勝・花王 ESG活動推進部 部長
三浦仁美・積水化学工業 ESG経営推進部 担当部長
吉田健介・オカムラ オフィス環境事業本部マーケティング本部ワークプレイス製品部WELLファニチュアグループ

三浦氏

最初に自社の取り組みを紹介した積水化学は、2050年に「生物多様性の保全された地球」を目指し、そのために脱炭素、サーキュラーエコノミーの実現、健全な水の3つのテーマを重点課題として掲げている。
「それぞれの環境課題はつながっている。中でも資源循環は気候変動課題と密接につながっている」と三浦氏は強調する。
脱炭素のための目標として、地球の温度上昇を産業革命前に比べて2℃から1.5℃に見直すと、「これまで以上にサプライチェーンと連携して原料を転換したり、(廃棄物の)再資源化をしないといけないことがわかってきた」という。

そのために開発した「バイオリファイナリー」は微生物触媒を活用して可燃性ごみをプラスチックなどの原材料になるエタノールに変換するケミカルリサイクル技術だ。現在、岩手県の久慈市に実証プラントを建設し、今後各地で社会実装していく計画で動いている。

今後も「既存の製品やビジネスを資源循環視点で見直して変えていくことや、新しい資源循環システムをイノベーションで支えていくことを重視したい」と三浦氏は話す。

1社では完結しないサーキュラーエコノミー

高橋氏

次に登壇した花王は、家庭向け製品が約8割と一般消費者にも多くの接点をもつ。多くの製品はプラスチック容器に入っていて、洗剤などの原料にはアブラヤシから採れるパーム油を多く使い、紙製品は木材パルプなどいわゆる自然資本を利用する。
そのため、森林破壊をしていないパーム油を購入するため、トレーサビリティに力を入れ、認証品を購入すると共に、独立小規模農園の技術支援も強化する。

また、同社は投入する資源量を減らす「リデュースイノベーション」として、ボトルをコンパクトにする濃縮化アプローチや、ボトルを繰り返し使ってもらう詰め替え用製品、薄いフィルム容器の開発などを推進する。

その上でどうしても減らせないものはリサイクルするが、その仕組みづくりとして、最近では同業他社から流通、リサイクル業者、自治体などのさまざまなステークホルダーが加わってプラスチックボトルから再びプラスチックボトルを作り出す水平リサイクルを行うプロジェクトに加わっている。

高橋氏は「サーキュラーな仕組みは1社ではできない。ステークホルダー全体でサプライチェーンに関わって、経済的にどうまわすかが課題だ」と指摘する。

どう資源を再利用するか、価値を最大化するか

佐藤氏

続いて登壇したリコーは、「コメットサークル」と名付けた自社独自の循環型社会の取り組み方針に基づいて、製品であるコピー機や複合機を修理して長く使う、使い終わったら製品や部品として回収し再利用する、材料としてマテリアルリサイクルをするなどの取り組みに力を入れる。
佐藤氏は、「地球から取り出した資源はかけがえのないものとして、できるだけ有効活用することに努めている」と強調する。
これらの取り組みにより、コピー機や複合機の生産に投入した新しい資源量は10年前に比べて36%減少し、回収製品の再資源化率は96%以上を維持している。

さらに、同社は1983年から再生製品や部品の販売事業でグローバルネットワークを構築しており、当初は赤字だったのが、2021年には300億円の売り上げを記録したという。

使い終わったものを回収・分別し、新しい製品へ

最後に登壇したオカムラは、オフィス家具の製造や空間のデザインをメイン事業とする。同社は1997年から始めた独自の環境基準「グリーンウェーブ」をさらに進め、2021年には製品開発でのサーキュラーデザイン思考やカーボンオフセットプログラムを導入している。

吉田氏

サーキュラーエコノミーの実現をめざして、エレンマッカーサー財団の「バタフライダイアグラム」に基づいて、製品の軽量化から、製造時に再エネを使う、輸送時に製品をコンパクトにする、部品や製品の再利用、使用済み製品のリサイクルまで、それぞれの過程において取り組みを加速する。

「今までは売って終わりだったが、使い終わったものを回収して分別して粉砕し新しい製品に作り直す新たなプロジェクトにも着手している」と同社の吉田氏は説明した。

消費者にも分かりやすい資源循環の見える化を

茂呂氏

各社の事例紹介が終わり、ファシリテーターの茂呂氏がサーキュラーエコノミーを推進するにあたってこれまで語られた以外の課題について尋ねると、積水化学の三浦氏、リコーの佐藤氏、オカムラの吉田氏共に「資源循環に関する市場価値が顕在化していない、消費者の意識に働きかけるのが難しい、一般の人に浸透している指標がない」といった同様の意見が相次いだ。

これに対して茂呂氏は「サーキュラーエコノミーを推進していくには、消費者にも分かりやすい資源循環の見える化が求められている」と指摘した。

written by

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

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