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  • 公開日:2023.02.22
  • 最終更新日: 2025.03.28
海藻の生える場所が急速に減っているーーシーベジタブル・友廣氏の訴える問題提起と解決策とは

SB国際会議2023東京・丸の内

Day2 プレナリー 

友廣裕一・合同会社シーベジタブル 共同代表

人類がまだほとんど開拓していない資源に海藻がある。世界中に大量に存在するにもかかわらず、利用されていないのだ。世界で最も利用している日本ですら、1500種ある海藻のうち食べているのは20数種。しかも多くの人が認識しないまま、海では海藻の生える場所が急速に減っている。

「皆さん、人生で何種類くらい海藻って食べられたことありますか?」
セッションはこんな呼び掛けからスタートした。
少なからぬ参加者が困惑気味に記憶を手繰る中、友廣氏はこう説明した。

「おそらく、ほとんどの方が10数種類は食べたことがあると思います。一方で日本の沿岸海域に何種類の海藻があると思いますか?食用になっているのは20数種類ぐらいだと思うんですが、なんと日本の海域だけで1500種類の海藻があるといわれています」

しかも、と続ける。「毒がないという意味で全てが食用になります。ざっくり1400数十種類は食材としてのポテンシャルがあるのに誰も食べてこなかったわけです」。

それを踏まえ、友廣氏はシーベジタブルが陸上と海面で海藻を栽培していることを紹介した。創業は2016年で、最初は青のりを手掛けたことを説明。主要産地が高知県の四万十川だったこと、年60トンだったピーク生産量が2022年はゼロ、ことしもおそらくゼロであることを述べ、現在は「通年生産できる拠点を北は岩手県の陸前高田から南の熊本天草まで置いています」。

続いて友廣氏は海の中に問題を転じた。全国の海に潜って海藻を調べていること、海の中では急速に海藻が減っていること。「磯焼けって皆さん聞かれたことあるかと思いますが、海藻がすごくなくなっている。めちゃめちゃすごい勢いでなくなっていて、3年前には海藻で底が見えないぐらいだったところがもう全く1本も生えていない」。原因について、友廣氏は「冬場に水温が下がらないため、冬の新芽が草食性の動物に食べられる」ことだと指摘した。

さらなる問題は、それが認識されていないこと。陸上ではげ山ができたら問題になるだろうと前置きし、「砂漠みたいなのがいっぱい増えている。しかし海の中は見えないので、全然認識はされていない」。認識されていないから解決策も提示されていない、と強調。対策として友廣氏たちが導き出した結論は、海藻を海面で栽培することだったという。

海藻を海面で栽培する様子

同社が海藻を漁師に供給し、海の中で育ててもらう。それを同社が買い戻し、販売する。養殖場所の例として友廣氏が挙げたのは香川県だった。同県の瀬戸内海にはのりの養殖板がかつて10億枚あった。それが現在は1億枚。「(海面が)ガラガラに空いている。のりは栄養が必要なので、のりは育てられなくても他の海藻なら育てられるという状況です」。たとえばおいしいモズクが生産できる。モズクを年1000トン生産しようとすると、2000ヘクタールの藻場(海面)が必要となる。つまり年間の藻場の減少量と一致する、と友廣氏は説明した。

「育てる場所も漁師さんもいて、技術も確立して、あと必要なのは出口を作っていく、マーケットを作っていくところが見えてきました」

マーケットづくりについて、友廣氏は東京のテストキッチンで料理の研究を進めていること、青のりと米麹、塩を使ったしょうゆをリリースすることも明らかにした。海藻の新たな食文化が創造される日も近い。(依光隆明)

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