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サッカーW杯・カタール大会の決勝トーナメント1回戦で、日本は惜しくも敗退しました。「新しい景色」を見ることはできませんでしたが、試合後の森保監督へのインタビューでは、日本サッカーの「新しい時代」が感じられました。これは現代企業にとっても、示唆に富む珠玉のメッセージとなりました。
ビジネスの「新しい景色」
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会の決勝トーナメント1回戦において、世界ランキング24位の日本は同12位で前回準優勝のクロアチアに、延長を終えてからのPK戦で惜しくも敗退しました。あと一歩のところでしたが、一次リーグではドイツのみならず、スペインといったワールドカップ・チャンピオンに勝ち、日本サッカーが世界という舞台で充分戦える実力と揚々たる未来を感じさせてくれました。
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森保監督は帰国後の会見で、「(初のW杯ベスト8進出という)『新しい景色』は見ることができなかったが、(選手たちは)『新しい時代』を見せてくれた」と熱く爽快に語りました。心を打つメッセージでした。
この「新しい景色」「新しい時代」という観点は、現代企業にとっても示唆に富んでいます。
長らく企業は、「いかに利益を創出するか」という視点から経営のあり方が論じられてきました。しかしながら、近年では、盤石な地球環境や健全な社会なしにはビジネスは成り立たないことが自明となっています。サステナビリティが基軸の価値観となった 『新しい時代』において、「事業によって社会課題を解決し、社会とともに発展する」という経営の視座が強く求められています。
ここにきて、社会的な文脈の中でいかに生活者の共感を呼ぶ企業であるかが問われるようになりました。今この時代において企業ブランドを語るには、自社商品が社会に生み出す新たな価値(社会的価値)づくりのストーリーが大事です。社会的な文脈のなかで自社の存在意義(パーパス:Purpose)を実現できるかが重要です。
とりわけ株式市場においては、企業を選別するに際し、「これからこの企業に投資をして、望む結果が得られるのか」が判断基準となります。望む結果とは中長期的な運用リターンであり、「リスクを避け、事業機会を生かす企業」に投資することは、金銭的収益最大化を目指す際の定石です。そのため、企業の行き先を見据えるには、財務だけではく、『非財務(ESG)』を吟味するようになっています。
『新しい時代(サステナビリティ時代)』にふさわしい経営をすれば、経済的価値とともに社会的評価(Corporate Reputation)が獲得でき、それが人的資本である従業員のエンゲージメントを高めます。その上で『自社らしさ』を発揮できればコーポレートブランドに寄与し、無形資産(Intangibles)を増大させます。よって、持続的成長・中長期の企業価値向上に結びつきます。それが、ビジネスの『新しい景色』です。
日本(ジャパン)ブランドと企業ブランド
今般の日本代表チームはサッカーの健闘はもちろんですが、総合的な観点からも世界から賛辞が送られました。森保監督はクロアチア戦の試合後、ファンに感謝の意を込めて深々とお辞儀をしました。現地メディアは、「日本人監督の紳士的な行動 ファンにお辞儀!」と題する記事を掲載しました。森保監督がお辞儀をする写真を添えて「彼は試合後、ファンに頭を下げる紳士的な行動をした」「森保監督はフィールドの中央にいる選手の前で感情あふれるスピーチを行い、選手の努力に感謝した」などの報道をしました。
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サーカーの試合内容はもちろん大事ですが、彼のこうした行動は、世界からリスペクトされました。加えて、ロッカールームをきれいに整頓した美意識ある選手たち、ゴミをきちんと回収して去るサポーターやファンの人々が世界の賞賛を浴びたことは、「日本(ジャパン)ブランド」に大きく寄与しました。『日本らしさ』の真骨頂です。
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企業でいえば、事業(サッカー)だけではなく、企業(日本国)としてのブランドが大切です。事業や商品の卓越性はもちろん重要ですが、社会との接点(タッチポイント)における一人ひとりの従業員の一挙手一投足が社会からの評価を受けています。日本代表チームメンバーが「日本」を背負っているように、社員は『自社の代表』としての誇りと自覚を持って職務に従事することが大事です。
〈帰国後の森保監督の会見より~抜粋〉
国民の皆さんの応援・共闘の熱いエールが
この素晴らしい選手たちを後押ししてくださって、
日本一丸になって世界に挑めれば
必ずこの壁は乗り越えられると思います
これまでの応援、皆さま本当にありがとうございました
これからも一緒に戦ってください
そして後押ししてください
ステークホルダーの支援があってこそ、サステナビリティ時代における本業のパフォーマンスを追求できます。ステークホルダーとの信頼関係のもと、ビジネスとサステナビリティを融合させ、無形資産の中核であるブランド力に寄与する『らしさ』を発揮して競争優位を創り出す戦略メソッドが「サステナブル・ブランディング」です。
『新しい時代』において、サステナブル・ブランディングでビジネスの『新しい景色』を希求し、「ブラボー!」と称賛される企業になりましょう!

細田 悦弘 (ほそだ・えつひろ)
公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師 一般社団法人日本能率協会 主任講師
1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。 ◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史 ◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。