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  • 公開日:2022.10.31
  • 最終更新日: 2025.03.13
進化するサステナビリティ責任者の役割 不安定な時代に成功を収めるには

Photo by Andy Beales on Unsplash

米連邦最高裁は今年7月、発電所の温室効果ガス排出量を規制する環境保護庁(EPA)の権限を制限する判決を下した。石炭産業が盛んな州や関連企業を代表してウェストバージニア州が、政府に排出量を規制する権限はないと訴えを起こしていた。この判決は今日の米国の気候変動対策をめぐる論調を表している。

11月8日に米国の中間選挙が迫るなか、ESGに関する議論はますます政治的な様相を呈してきた。投資家や規制当局は劇的な変化にさらされ、サステナビリティを自社のDNAに組み込もうとする企業も新たな局面を迎えている。2003年に創業し、ロンドン、ニューヨーク、シンガポールなどに拠点を置き、サステナビリティ人材の採用を手がける企業「Acre」の北米担当者キャサリン・ハリス氏が現代のサステナビリティ担当責任者に求められる役割について解説する。

キャサリン・ハリス (Catherine Harris)
Acre 
Director of Sustainable Business, North America

不安定な社会情勢のなか、多くの企業はサステナビリティ部門の拡大や人材のスキルアップなど人的資本を解決策の一つと捉え、活路を見出そうとしている。ESGが企業課題の中心に据えられるようになってきた過去10年間に、サステナビリティの責任者の数も増えてきた。さらに、気候危機が深刻化し、人々の意識が高まり、気候関連目標の達成期限が迫り、規制が複雑化するのに伴い、サステナビリティの責任者の役割も進化してきている。

ESGの分野は、コンプライアンスやCSR、サステナビリティからESGへの展開、そしてウェルビーイング、リジェネレーション、そしてインパクトなどさまざまな用語が登場し、ダイナミックに変化が続いている。この分野で働く人々に求められる業務内容やスキルが進化してきていることは当然のことだろう。

時代に求められる責任者の姿

サステナビリティの責任者は、サステナビリティを自社のビジネスモデルの基盤に据える存在だ。このポジションに就く人たちは、より持続可能な未来に向けて舵をとり、決められた目標の実現に向かって着実に取り組んでいくことが期待されている。

現代のサステナビリティの責任者に求められるのは、大局的な視点に立った技術的理解や専門領域の知識だけではない。事業運営を批判的に分析し、データを精査し、リスクや機会を特定するためにグローバルトレンドを考慮できる人材であることだ。

自社に実際に変化をもたらす堅固な戦略を立て、それを実行し、広めていく能力が必要となる。さらに、投資家や経営幹部の耳目を集め、投資対効果を理解してもらい、長期的視点に立った決定において重要な役割を果たすことが求められる。それゆえに、コミュニケーション力や影響力が非常に重要になってきている。

不安定な情勢のなかでも成功を収めるには

ESGについては、毎日のように新しい見出しが立てられ、スキャンダルも報じられている。ESGはゴールポスト(目標地点)や見解が常に変化する分野だ。不安定な社会情勢のなか、市場は景気後退の脅威にさらされ、ESGに否定的な文言が見出しに並ぶ時代に、サステナビリティの責任者が自身の役割を全うし、成功を収めるには2つのことを念頭に置く必要がある。

一つ目は、サステナビリティが事業全体から孤立しないように、組織全体に浸透させ、統合させることだ。トップダウンとボトムアップの連携がESG戦略を成功に導く唯一の方法だ。サステナビリティの責任者は各部門から取締役会、それ以上のレベルにいたるまで、すべての事業レベルに関与し、影響力を持ち、さらに同業他社とも知見を共有し、真の協力的なパートナーシップを構築することが必要だ。課題管理を日々の業務に統合し、同僚や最高幹部を変革のプロセスに組み込むことがあらゆるものの基盤となる。

二つ目は、ESGを構成するさまざまな要素を個別のものと捉えるのではなく、相関関係を理解し、伝えていくことだ。環境課題や社会課題には相関関係があり、一方だけに着目することは解決を遅らせることにつながる。企業はESGの3本柱すべてに取り組む必要がある。もし、ある企業がダイバーシティやインクルージョン、公正な賃金の支払いにおいて高い評価を得ながらも、温室効果ガスや廃棄物の排出量、人権、汚染などの評価が低い場合は、すべきことがまだ多くあるということだ。

気候危機や社会課題への取り組みにおいて、サステナビリティの責任者が自社の方針転換を成功させた事例は多い。明確で、熱意あるサステナビリティ目標を掲げる企業が長期目標を掲げていない企業よりも財務的に優れた実績を出していることを認識し、多くの上場企業がサステナビリティに投資する際に短中期の収益低下を受け入れるようになってきたことは良いことだ。非財務指標を考慮したより総体的なアプローチが広く普及してきたということは、サステナビリティの責任者が自社が前進するように舵取りを効果的に行っているということだ。今こそ、全ての社員が同じサステナビリティ目標に向かって漕ぎ出す時だ。

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