• ワールドニュース
  • 公開日:2022.08.31
  • 最終更新日: 2025.03.13
都市でもエビの養殖が可能に 米フードテック、コンテナ型の「垂直養殖」技術を開発

従来のエビの養殖場 (Image:Vinitdeekhanu)

世界中で食されるエビは、乱獲や養殖による環境汚染が深刻で、持続可能な生産・消費への転換が急務とされる。米フロリダ州のフードテック「アタラヤ(Atarraya)」は、AIを搭載した持続可能な垂直養殖技術を開発した。目指すのは、都市や内陸でも使用できるコンテナ型の養殖場「シュリンプボックス」を世界中に展開し、近場で養殖された新鮮なエビを消費者に届けることだ。

テック業界は、危機的状態にあり持続可能とはいえない「食料システムの未来」をより良くするべく、技術や能力を発揮しようと挑むイノベーターの出現で活況を呈している。

持続可能なアーバン・アクアカルチャー(都市型養殖)を実現する、アタラヤのコンテナ型養殖場「シュリンプボックス」

その一社がアタラヤだ。同社が開発したシュリンプボックスは、AIを搭載した自動化システムによって水質の管理、温度や酸素濃度の調整、エビの餌付けを遠隔で行うことが可能だ。シュリンプボックスに使われている技術は、養鶏や養豚の最大10倍のROI(投資収益率)を実現でき、コストや環境負荷など従来の養殖業が抱えてきた多くの課題を克服し、養殖業者に新たな収入源をもたらすものだ。

創業者のダニエル・ルセックCEOは、「われわれは過去10年にわたり、シュリンプボックスを市場に投入するために力を注いできました。今まさに、産業規模で展開していく準備が整いました。当社の技術は、これまでのエビの養殖やトロール漁がもたらしてきた環境への負荷とコストを低減するものです。新鮮かつ持続可能な、地場産のエビの生産を実現し、養殖業者が投じた額のおよそ10倍の利益を生む垂直養殖場は、世界のあらゆる場所に設置することが可能です」と話す。

米国のエビの販売量は、2020年までの過去5年間で2億7500万ポンド(約12.5万トン)から4億1500万ポンド(約18.8万トン)まで増加している。(日本はエビの自給率が4%。エビの輸入量は2016年の約16.7万トンから2021年には約15.8万トンに推移している:農林水産省輸出入統計)

こうした需要の高まりは、環境への負荷や労働問題を悪化させてもいる。エビのトロール漁は、脆弱な海底を劣化させ破壊し、その回復には数年を要す。さらに既存のエビ養殖場は、50万人が暮らす自治体で使われる水の量に匹敵する水を必要とし、往々にして地下水汚染の要因となってきた。エビ漁に従事する人たちの労働状況は多くの国で悲惨なものだ。

そうした中、アタラヤは生態系バランスを考慮しながら、エビ漁の時代遅れな操業方法やビジネスモデルを転換すると同時に、消費者が近場で育てられた持続可能で新鮮なエビを安定的に手に入れられるよう取り組んでいる。

抗生物質を使用しないエビの養殖を実現

シュリンプボックスに搭載されたバイオテクノロジーや独自のソフトウェア、ハードウェアについて紹介する。

バイオテクノロジー:シュリンプボックスは、エビが生育する海中環境を模倣し、微生物の集合体(バイオフロック)を浮遊させ水質を浄化するバイオフロック技術を活用している。バイオフロックシステムによって、エビが病気にかかるリスク、抗生物質などの有害な化学物質が必要なくなり、エビの垂直養殖の拡大を可能にする遺伝的特徴を生み出すことにもつながる。

ソフトウェア:専門の担当者を置く必要がなく、遠隔で生産管理ができる。ソフトウェアの使用により、一貫性を実現し、ネットワークを遠隔制御でき、養殖業務や操作の訓練・実務も容易になる。

エンジニアリングと自動化:人件費が高い国であっても、安定した生産と経済合理性が確保できるように設計されている。素早い反応と厳格な管理を可能にし、人件費を最小限に抑えることが可能だ。AIを搭載したプラグアンドプレイ技術によって、養殖や水産養殖の経験がなくても誰でもエビを養殖することができる。

アタラヤは最近、シリーズAの調達ラウンドで390万ドル(約5億3000万円)の資金調達を行い、その後の評価額は4100万ドル(約56億6000万)となった。エンジェル投資家らによる資金調達で、同社はこれまでに総額1000万ドル(約13億8000万)を調達している。アタラヤは調達した資金で、シュリンプボックスの技術を世界に展開し、米インディアナ州・インディアナポリスに本社を設立する計画だ。

投資家の一人は「シュリンプボックスは本物のエビを養殖しています。研究室で培養されたものでも、幹細胞から育てたものでもありません。海にいる野生種のエビが暮らす環境と同じ、理想的な繁殖環境を再現しています。アタラヤへの出資は当然の選択です。シュリンプボックスは地球環境にとっても正しく、さらに消費者の需要に応え、養殖と水産養殖の新しい可能性を切り開く貴重な機会を提供するものです」と話している。

シュリンプボックスの試作はすでにメキシコのオアハカ州グアピノレの沿岸地域で稼働している。さらに、アタラヤはインディアナ経済開発公社(IEDC)と連携し、今年後半には、訓練と実演を行うためにシュリンプボックスを使った養殖場を開設する予定だ。

SB.com オリジナル記事へ

Related
この記事に関連するニュース

群馬・浅間山のふもとで、自然資源を生かした循環型「地域未来創造事業」を営む
2024.10.29
  • ニュース
Sponsored by 環境省『LIBRARY』
  • #エコシステム
  • #生物多様性
異業種の参入も増加、水耕+魚養殖の循環型農法「アクアポニックス」で未利用資源を活用
2024.05.15
  • ニュース
  • #エコシステム
【アーヤ藍 コラム】第7回 4月22日はアースデー:地上と海中から「地球の声」を聴く実践者たちに学びたい
2024.04.18
  • コラム
  • #エコシステム
  • #生物多様性
藻類を活用し、化粧品業界が起こそうとしているイノベーションとは―― 資生堂とちとせグループの共創に見る
2024.03.07
  • ニュース
  • #エコシステム
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

News
SB JAPAN 新着記事

自社の歴史から学ぶ、人の感動起点の製品開発とサステナビリティ
2025.04.02
  • ニュース
    米国の現状から何を学ぶべきか、「リジェネレーション」の可能性とは――米SBの創設者とCEOが語る
    2025.04.01
    • ニュース
    • #リジェネレーション
    SB-Jの発行元がSincに移行――サイトリニューアルでコンテンツを一層充実へ
    2025.04.01
    • ニュース
      本格的に動き始めたエネルギーの「アグリゲーションビジネス」とは何か
      2025.03.31
      • ニュース
      • #再生可能エネルギー

      Ranking
      アクセスランキング

      • TOP
      • ニュース
      • 都市でもエビの養殖が可能に 米フードテック、コンテナ型の「垂直養殖」技術を開発