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  • 公開日:2022.06.28
  • 最終更新日: 2025.03.28
サーキュラーエコノミーで産業はどう変わるか 欧州企業の事例から考える

井上 美羽(いのうえ みう)

ロートハルト氏、福岡氏、イェンセン氏、中石氏 (左上から時計まわり)

2月に開催したサステナブル・ブランド国際会議2022横浜では「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を重要テーマとして取り上げた。サーキュラーエコノミー・ジャパンの中石和良代表がファシリテーターを務めたセッションは、「広い意味でのサーキュラーエコノミーについて話したい」という呼びかけで幕を開けた。中石氏は、なぜ企業がビジネスとしてサーキュラーエコノミーに取り組むべきなのかという問題提起をグローバルな視点から掘り下げていった。(井上美羽)

ファシリテーター:
中石和良・サーキュラーエコノミー・ジャパン 代表理事
パネリスト:
ニールス イェンセン・ノボ ノルディスク A/S Corporate Environmental Strategy Associate Director
福岡浩二・SAPジャパン 事業開発部 社会共創担当リーダー
ルッツ ロートハルト・BMWジャパン デベロップメント ジャパン 本部長

循環型ビジネスの確立には透明性の高いデータ共有が必要

医薬品や医療機器の開発を行う、デンマーク企業のノボ ノルディスクからはCorporate Environmental Strategy Associate Directorのニールス イェンセン氏がオンラインで登壇。同社は2019年から「Circular for zero(サーキュラー・フォー・ゼロ)」戦略を掲げ、2030年までに医療機器などの循環型ビジネスで環境負荷ゼロの実現を目指している。具体的には、デンマークをはじめイギリス、ブラジル、フランスなどの薬局で使用済み注射器を回収するモデルを構築したり、プラスチックのスクラップで新たな製品開発のための実証実験を重ねたりしている。「循環型ビジネスの確立のためには、競合製品も取り扱っている卸売業者とも透明性の高いデータ共有を行なう必要がある」と述べた。

ドイツ老舗自動車メーカーのBMWジャパンからは、デベロップメント ジャパン 本部長のルッツ ロートハルト氏が登壇。「2030年までに、生産拠点におけるCO2排出量を世界全体で80%削減し、使用段階の車両のCO2排出量も半減させる。また、同年までにリサイクル材料の使用率を現在の30%から50%に引き上げる」と宣言した。

「自社だけで目標達成をすることは不可能で、サプライチェーン全体を巻き込まなければいけない」と強く訴えるロートハルト氏。「部品を届けることだけではなく、常に情報交換をして改善をしていく必要がある。完璧なITソリューションも必要で、メーカーやサプライヤーだけがデータを所有するのではなく、誰もが使えるようなものにしなければいけない」と続ける。

医療機器メーカーと自動車メーカーの2社が口を揃えて「データ連携がカギだ」と話した。つまり、IT企業が大きな役割を担うのだ。

同じくドイツ企業で、企業向けソフトウェアをつくるSAPジャパンの福岡浩二氏をパネリストに招いているのは、こうした理由からだろう。同社は、サーキュラーエコノミーを含めたサステナビリティの仕組みを自社のソフトウェアシステム(ERP)を通して、各企業の運営に組み込んでいるという。「例えば、出張時に航空券を予約する際、飛行機よりも陸路であればCO2を90%削減できるというアラートを出すことで、従業員の日々の行動変容に影響を与えることができる」。

インダストリー4.0とサーキュラーエコノミーの関係性

後半のトークセッションでは、ファシリテーターの中石氏が「インダストリー4.0(第4次産業革命)とサーキュラーエコノミーは一対で進められてきたのではないか。両者の関係をどのように考えているか?」と投げかけた。

それに対し、福岡氏は「個社だけでなく社会全体の最適解を図り、より良い産業、より良い社会を目指していくという意味では、本質的には同じ方向性だ」。BMWのロートハルト氏も次のように続けた。「インダストリー4.0は全てをつなぐこと。会社がデジタル化するところから始まる」。ノボ ノルディスクのイェンセン氏は「競争前の段階で、競合と連携して共有ソリューションを市場に導入しようと取り組んでいる。サーキュラーエコノミーが基点になり、業界をネットワーク化している」と語った。

最後にイェンセン氏の口から発された「ノボ ノルディスクがBMWの廃プラスチックのサプライヤーになることは可能か」という質問と「そのために何が必要か考えて、お互いがウィンウィンな状況をつくり出すことを楽しみにしている」と答えたルッツ氏のやりとりが、今回のセッションの内容を集約していた。

中石氏は「縦割りの壁を溶かし、横割りのサイバーとフィジカルの壁を溶かすことでバリューチェーンを最適化することがポイントになる。最適化によって地球規模の課題解決に結びつけていくというパスウェイを描いて欲しい」と締め括った。

プラスチックの諸問題を解決する枠組み発足

飯田氏、中村氏、三沢氏

ファシリテーター:
三沢行弘・世界自然保護基金ジャパン 気候エネルギー・海洋水産室 プラスチック政策マネージャー
パネリスト:
飯田(眞利子)征樹・日本コカ・コーラ 広報・渉外&サスティナビリティー推進本部 サスティナビリティー推進部 部長
中村亜希子・資生堂 経営革新本部 サステナビリティ戦略推進部長

サステナブル・ブランド国際会議では、世界自然保護基金ジャパン(以下、WWFジャパン)が推進する、持続可能なサーキュラー・エコノミーの実践によってプラスチック諸問題の解決をめざす枠組み「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」についての発表も行われた。今年2月22日に発足したこのイニシアティブは、海洋プラスチック汚染問題に焦点を置く。海洋に流出するプラスチックの量は2040年までに年間3000万トンになるといわれており、海洋流出を根絶するためには「システムの転換」が必要だとWWFジャパンの三沢行弘氏は訴えた。

同団体の呼びかけに応じ、2025年までのコミットメントを宣言した国内企業は、キリン、サントリー、資生堂、JAL、日本コカ・コーラ、ニッスイ、ネスレ、ユニチャーム、ユニリーバ、ライオンの10社だ。日本コカ・コーラ サスティナビリティー推進部長の飯田(眞利子)征樹氏は、水平リサイクル(ボトルtoボトル)を念頭に2030年までに100%サステナブル素材へ切り替えることを推進すると話した。資生堂 サステナビリティ戦略推進部長の中村亜希子氏は、詰め替えの化粧品や生分解性パッケージの開発、企業を横断してプラスチックの使い捨て容器の削減に向けた取り組みを進めていく方針を語った。

written by

井上 美羽(いのうえ みう)

埼玉と愛媛の2拠点生活を送るフリーライター。都会より田舎派。学生時代のオランダでの留学を経て環境とビジネスの両立の可能性を感じる。現在はサステイナブル・レストラン協会の活動に携わりながら、食を中心としたサステナブルな取り組みや人を発信している。

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