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  • 公開日:2021.04.16
  • 最終更新日: 2025.03.28
人生100年時代、支援サービスを活用して幸せな“在宅ひとり死”を実現するには

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

右上から時計まわりに、野村氏、一柳氏、三国氏、上野氏

超高齢化社会が他国より早く進む日本では、2025年には一人暮らしの高齢者の割合が約4分の1になるという。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜のセッション「イキキルを支える現場からのイノベーション〜人づくり、ものづくり、まちづくり、制度づくり〜」に登壇した社会学者の上野千鶴子氏は、地域医療や介護など社会的な支援システムを最大限活用して在宅で最期を迎えることが選択肢のひとつとして重要だと主張する。同セッションで はそれを実現するために課題となっていることは何か、どういう観点が求められているのか、実際に現場で活動するパネリストを加え、議論された。 (環境ライター 箕輪弥生)

上野 千鶴子 社会学者、東京大学 名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長
岡山 慶子 朝日エル会長
野村 恭彦 一柳ウェルビーイングライフ理事、Slow Innovation 代表取締役、金沢工業大学 教授(K.I.T.虎ノ門大学院)
三国 浩晃 人生まるごと支援 理事長、一柳ウェルビーイングライフ 評議員
一柳 弘子 一柳ウェルビーイングライフ代表理事

「最期まで自分らしく生きる」にはキーパーソンが必要

「子どもがいる、いないに関わらず、慣れ親しんだ自宅で幸せに最期を迎えることを望む人が増えている」――。おひとりさま三部作などで著名な社会学者の上野千鶴子氏は、ここ10年で死の臨床像が大きく変わり、最期まで自分らしく生きるために病院や施設ではなく自宅で最期を迎えたいというニーズが高まっていると説明した。

上野氏によると、在宅ひとり死を可能にするには訪問介護、訪問医療、訪問看護の在宅支援サービスに加え、本人の自己決定、まとめ役のキーパーソンの3条件が不可欠だという。

しかし、最近では介護保険の制度が、利用者を要介護の重度に限定、生活援助をメニューからはずしたり、ケアプランを有料にし、自己負担率を上げるなど、利用抑制につながる制度へと変更されている。さらにコーディネーター役のキーパーソンになりうる人が見つからないケースが大きな問題となっていると指摘する。

実際に現場でキーパーソンとして働くNPO「人生まるごと支援」の三国浩晃理事長は、「ケアマネージャーや訪問看護師は施設に入る際や入院の手続き、死後の法的手続きなどは基本的にできない。だから在宅ひとり死を実現するには、本人と医療や介護専門家、法律家などをコーディネートできる覚悟をもったキーパーソンが不可欠だ」と話す。

さらに、三国理事長は「キーパーソンにお金を支払う仕組みがない」という制度上の問題点も提起した。

これらの課題に対して一柳弘子代表理事は、運営する一般財団法人一柳ウェルビーイングライフにおいて、キーパーソン役となる「イキキル コーディネーター」の養成を考えていることを発表した。

「生と死はおまかせではいけない時代になった。自分がどう生きて、どういうエンディングを迎えたいのか、そこを起点としてウェルビーイングを提案していきたい」と一柳代表理事はキーパーソンとなりうる人材を養成する意味を語った。

社会的つながりがおひとりさまの幸福度を左右する

総合ファシリテーターの岡山氏

在宅ひとり死を望む人が増えている背景には、一人暮らしの人が増えているだけでなく、家族感の変化や社会的つながりの多様性も見てとれる。

朝日エルの岡山慶子会長は、「財団で行った分析では、社会的つながりと健康が幸福度に寄与していることがわかった。血縁や地縁だけでなく、同じ課題や趣味をかかえる人との縁など、ゆるやかで社会的なつながりが重要だ」と説明する。

進行役を務めた一柳ウェルビーイングライフの野村恭彦理事は議論をとらえ、「おひとりさまは“寂しい”から、“自由で幸せ”にパラダイムが転換しつつある。企業や行政のサービスは、それをイノベーションのチャンスとして必要なサービスや支援を提案してほしい」と話した。

最後に、上野氏が会場の高校生に対して「あなたたちは祖父母や親の犠牲にならなくていい。そのためには年金制度や介護制度を守ることが大事。制度をつくるのは政治なので、選挙を通して政治参加を」とメッセージを送った。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

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