• 下田屋 毅
  • コラム
  • 公開日:2020.08.31
  • 最終更新日: 2025.03.27
フードシステムを改善しコロナ禍に立ち向かう、レストランのサステナビリティ

下田屋 毅(しもたや たけし)

世界におけるレストランのサステナビリティを推進する動きが出てきている。これは、英国のサステイナブル・レストラン協会が推進するもので、ミシュランのおいしさを表す1つ星、2つ星、3つ星のように、飲食店・レストランのサステナビリティの取り組みについてのレーティングを行い、それぞれのサステナビリティのレベルを上げていくことを考えているものである。

現在、気候変動による異常気象、森林破壊、水資源の枯渇、農薬や化学肥料による土壌への悪影響、水産資源の減少、さらには海洋プラスチックなどの環境問題が発生している。また社会課題としては、サプライチェーンの上流で働く生産者の貧困、農薬や化学肥料の使用による健康被害や労働者の過剰勤務、また現代奴隷と呼ばれる状況で働いている人達もいる。そして世界の人口の9分の1にあたる約8億人が、栄養不足や飢餓で苦しむ中、日本を含む先進国では、年間13億トンもの食糧が廃棄されている現状がある。

これらは、我々が生きていく上で欠かせない食糧に関わる話であり、飲食店・レストランのテーブルに並べられる料理の食材がどのように生産、収穫されているのか理解をしている消費者は少ない。フードシステムとよばれる、農林水産業、食品製造業、食品卸売業、食品小売業、そして外食産業を経て、最終の消費者の食生活に至る食料供給の一連の仕組みは、このような環境・社会面のサステナビリティにおける多くの課題を抱えているにもかかわらず、我々は十分な対応策を打つことができていない。

このような環境・社会問題が顕在化している状況下において、現状を打開すべく、飲食業をはじめとするフードシステムのサステナブルな運営を促進するために活動が行われてきている。英国の有名シェフ2名が今後レストランにもサステナビリティの考えがとても重要になるとして、それを具体化するためにサステナビリティの専門家とともに2010年にサステイナブル・レストラン協会(SRA)を立ち上げた。これは飲食店・レストランのサステナビリティを向上させるとともに、フードシステムを変え、より良い状態へとシフトするための取り組みである。

このSRAは、多くの飲食店・レストランが自分達とつながりのある顧客・消費者、生産者やサプライヤーの人々とともにサステナビリティの重要性を理解し、実践を始めている。そして、その流れを日本にも波及させることを考えて日本において「一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会」が2018年に設立され、準備期間を経て、2020年7月27日にオンラインでのローンチイベントを開催するに至っている。

SRAは、現状を可視化し、より効果的な取組みを推進するためにサステナビリティにおける具体的な3つの指針と10の重要項目を次のように打ち出している。

1.調達
・地産地消と旬の食材の推進
・より多くの野菜とベターミートの使用
・水産資源に配慮した魚介類の使用
・世界の農家とサプライヤーの支援

2.社会  
・従業員の公平な評価・処遇
・地域コミュニティへの支援
・健康的な食事の提供

3.環境
・エネルギー資源の有効活用
・食料の無駄をなくす
・リデュース・リユース・リサイクルの推進

これらの基準をもとに飲食店・レストランがレーティングを行うと、サステナビリティの重要な10項目において、それぞれの項目ごとにレベルを理解することができ、さらにこれらの項目で何を実施すれば良いのかが明確となる。そして飲食店・レストランが、それぞれの項目でサステナビリティの推進を行うことで、フードサービス業界のサステナビリティの向上、またフードシステムをも変える活動につながるのである。

飲食店・レストランは、来店する顧客である消費者とのつながりを持ち、また、サプライチェーン上で働く生産者の人達やそのサポートをする人達、また食料関連品や飲料品などを製造販売する方達とのつながりを持つ「ハブ(中心)」である。そして飲食店・レストランの方々が、これら生産者と消費者の橋渡し役として非常に重要な役割を果たすことができるのである。

これは飲食店・レストランの方々が、消費者にサステナビリティについてどのように取り組みをしているのか、また何故その取り組みが重要なのかを伝えることで、サステナビリティの観点から重要性を認識した消費者に選ばれるレストランとなることができる。そして飲食店・レストランがよりサステナビリティを配慮した生産者とサプライヤーを選ぶことができるようになるという好循環が生まれるのだ。

このことから日本サステイナブル・レストラン協会では、飲食店・レストランのシェフやスタッフの方々をサポートし、飲食店・レストランが中心となってサステナビリティのリーダーシップを取ることができるようにすることを主眼においている。この一連の活動が、フードシステムをより良い状況へと変え、地球環境や人権への影響を軽減していくことにつながるのである。

英国SRAは2010年から開始、加盟レストランは英国を中心に10,000店舗を超えた。それらレストランが中心となって、生産者・サプライヤー、また消費者などのステークホルダーにより良い影響を及ぼしてきている。そして現在英国以外の国でも同様の取り組みが始まってきており、日本、香港がローンチし、ギリシャ、ハンガリー、ポルトガル、オランダ、台湾、エジプトが準備を進めており、世界的な流れとなってきている。

昨今、新型コロナウィルスにより、飲食店・レストランの活動が制限され影響を大きく与えており、これまでとは違う運営形態や日常となってきており、困窮している飲食店・レストランもでてきている。しかしこの状況下で食のあり方、飲食店・レストランの社会的、文化的役割、そして人間が食を通じてもたらす様々な影響について考える人が増え、そしてこのコロナ禍においても、食に関わるサステナビリティの重要性についてより認識した飲食店・レストランは、日本サステイナブル・レストラン協会の活動に賛同し活動を始めている。この大きくフードシステムを改善していく活動を、飲食店・レストランの方々が認識し、活動が広がることを切に願う。

written by

下田屋 毅(しもたや たけし)

サステイナビジョン代表取締役 一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。大手重工メーカー工場管理部にて人事・労務・総務・労働安全衛生などを担当。環境ビジネス新規事業立ち上げ後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。

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