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  • 公開日:2020.05.27
  • 最終更新日: 2025.03.14
グローバル企業155社CEO、各国政府に「グリーン・リカバリー」求める
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新型コロナウイルスによって影響を受けた社会や経済を、脱炭素、循環型経済など持続可能な方法で復興しようとする「グリーン・リカバリー」の機運が欧米を中心に高まっている。ネスレやユニリーバ、IKEA、セールスフォースなど155社のCEOはこのほど各国政府に対し、2050年よりも早期に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする気候変動対策を踏まえた復興策を求める共同声明を発表した。「人間が健康であるには地球が健康でなければならない。グレーな経済からグリーンな経済へ」と呼びかける。155社はSBTi(科学的根拠に基づくCO2排出量削減目標イニシアティブ)に加盟しており、日本企業は丸井グループや前田建設、YKK、高砂香料工業の4社が入っている。(翻訳・編集=小松遥香)

グリーン・リカバリーを求める動きが拡大している。今月13日には、米国のNPOセレス(Ceres)が主導したバーチャル・アドボカシー・イベント「LEAD on Climate 2020」を通して、ダノンやマイクロソフト、ナイキ、VISAなど300社以上が上院・下院議員に対し、コロナ後の社会において、よりレジリエントで回復力のある持続可能な経済基盤を構築するよう求めた。これに続き、19日、グローバル企業155社のCEOがコロナ後の経済支援や復興への取り組みを最新の気候科学と整合させるよう共同声明を発表した。

署名した155社の時価総額は2兆4000億米ドルを超え、従業員数は500 万人以上に達する。アドビやバーバリー、カールスバーグ・グループ、コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ、H&M グループ、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、マース、ネスレ、セールスフォース、ユニリーバ、ヴァッテンフォール、ボーダフォングループなどが名を連ねる。これらの企業はSBTiとBusiness Ambition for1.5℃に加盟しており、今回、世界経済の未来を担う政策を求めるさまざまな産業やセクターのリーダーの声を招集するのに一躍買った。両イニシアティブは、2050年までに二酸化炭素の排出量ゼロを達成するために、世界の気温上昇を産業革命以前から1.5℃以内に抑える企業の取り組みを支援している。

企業だけでなく、政府の連帯が必須

今回の声明は、各国政府が新型コロナウイルスのパンデミックによる影響から経済を回復させるために、数兆ドルにもおよぶ景気刺激策をどう振り分け、新たな政策や戦略を実行するか決めようとしている最中に発表された。これからの数週間で、欧州連合(EU)の復興計画、米国とインドからの新たな刺激策、6月のG7首脳会議など、いくつかの主要経済国が復興のための重要な決定を下すことになる。

今月初めに発表されたオックスフォード大学の研究によると、新型コロナウイルスと気候危機に同時に取り組む回復策は、大きな効果を発揮するという。社会や技術の急速な変化に適応できないショックや災害に対する脆弱性を低減させ、雇用を創出し、CO2の排出量を減らし、大気中の汚染物質の量を大幅に改善すると分析する。

さらに昨年12月に発表されたSBTiのインパクト報告書によると、現在、SBTiの枠組みの中で二酸化炭素の排出量削減に取り組む数百社のうち、わずか285社の事業活動から年間7億5200万トン以上のCO2を排出している。これはフランスやスペインの年間の総排出量を上回っている。この285社が科学的根拠に基づく温室効果ガスの削減目標に取り組むことで、2億6500万トンのCO2eを削減することができ、基準年度の排出量と比較して年間平均で35%の削減ができるという。石炭火力発電所68基を停止するのに等しい。

「世界経済を再起動させるだけでなく、リセットすることが急務だ。10―20兆ドルの公的資金を費やして、以前のような不平等で脆弱で高炭素経済を再構築してしまうのは悲劇的なこと」と、世界資源研究所(WRI)の社長兼CEOでSBTiの理事でもあるアンドリュー・スティアー博士は語る。

「155社のリーダーに拍手を送りたい。これらの企業は自社のリセットに取り組むだけでなく、気候に配慮した政策がより多くの雇用を創出し、レジリエントで包括的な経済成長を生み出すことを示す最良の科学と経済学に照らして、各国政府が行動することを求めている」

昨年10月に開催された、気候変動に取り組む主要都市の集まり「C40(世界大都市気候先導グループ)」の世界市長会議では、94の主要都市の知事が世界的な気候変動の緊急事態を認識し、レジリエントな経済の構築に向けて世界をリードするために「グローバル・グリーン・ニューディール」を支持すると発表した。C40は5月7日、38の加盟都市が「新型コロナウイルスからの経済復興において、これまで通りのビジネスには戻らない。より良く、より持続可能で公平な社会を構築する」と宣言している。残念ながら、日本の都市は入っていない。

新型コロナウイルスからの経済復興が喫緊の課題となる中、グリーン・リカバリーの動きは政策のあり方を根源から問う大きな契機となるだろう。

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