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ここ数ヶ月間に発生したアマゾン、オーストラリア、東南アジアでの悲劇的な森林火災を受けて、食品業界に向けられる投資家や消費者からの森林破壊に対するプレッシャーはますます強くなってきている。そのため、食品会社はサプライチェーンを調査し、森林破壊をしていないと保証できない農産物原料メーカーとの契約を取りやめたり、中止したりしている。(翻訳=梅原洋陽)
食品会社だけでなく森林破壊のリスクを常に抱えている原料メーカー、そして投資家も原料メーカーの影響力を理解する必要がある。森林破壊をなくすために何をしていて、何ができていないかについて情報開示を行う必要もある。
米NPO「Ceres」の新たなベンチマーク分析によると、食品原料メーカーは原料の森林破壊リスクを十分に明らかにしていると言えず、投資家たちに情報が伝わっていない。実際に、世界トップ10に入る影響力を持つ大豆やパーム業者が、サプライチェーン内の森林破壊を食い止めるための取り組みについて数値的な情報をきちんと公表していないことが分かった。
取引業者の情報開示、その欠如は重大なことだ。大豆やパーム油などの原材料を扱う企業は食品サプライヤーやスーパーで目にする食品ブランドの間に存在するが、ほとんど目に止まることはない。しかし取引業者というのは、商品がどのように製造されるかに大きな影響力を持つ。
出回っている食品や日用品の中に使われている大豆やパーム油は、さまざまな人の手にわたり、何千マイルも旅をする。大豆とヤシの実は収穫され、精製工場を通り、主要な食品メーカーの製造ラインにたどり着く前に、港に集められる。そして、さまざまな製造ラインに輸送されるたびに、原料メーカーは、どのように育てられ、収穫されたかを説明する。
原材料メーカーが掲げる取り組み目標と実際の取り組みの隔たりは、投資家にとっては不安要素だ。契約解消などのリスクがあるからだ。ここ数ヶ月間、いくつかのメディアが報じたように、ネスレは世界最大の穀物会社であるカーギルが透明性に関する基準を満たせなかったとして、ブラジル産大豆の仕入れを打ち切った。企業のリスクを減らするための努力を評価するには、投資家自身も原料メーカーの森林伐採をなくすための取り組みの進捗を理解する必要がある。
しかし、多くの原料メーカーは投資家の求めるレベルの情報を公開していない。例えば、米穀物企業アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー (ADM)は、「重要な自然生態系を守る」ために森林破壊ゼロの取り組み方針を掲げ、実行していると伝えている。マレーシアの貿易会社サイム・ダービーは、パームを森林破壊ゼロの方法で収穫するだけでなく、事業全体で多くの取り組みを行なっていると公言する。シンガポールの農業総合商社オーラムは、同社のリビング・ランドスケープ(生活景)方針の中で、森林伐採を含む許されるべきではない土地の利用をなくすために取り組んでいる。しかし、これらのどの企業も具体的な取り組みに関しては明かしていない。
これは私たちの2019年の森林破壊レポート『Out On a Limb』の報告内容とも一致している。森林破壊をなくすという目標を掲げるグローバル企業500社のうち、掲げた目標達成に向けて実際にどのように取り組みをしているか公表している企業は21社しかない。
2020年には、投資家はより原料メーカーに注目するだろう。特に、森林破壊をなくすために重要なことが2つある。森林破壊をなくす方針に合致する割合で製造または購入された原料は年間どれぐらいあるか。そして、原料のサプライヤーの何パーセントが森林破壊をなくす方針に基づき事業を行っているか。
原料メーカーがこれらの情報を公開し始めたら、サプライチェーン全体が、それぞれの森林破壊をなくす取り組みを始めることになるだろう。大豆やパーム油の原料メーカーの取り組みはスーパーの棚に並べられるところまでの全ての過程で影響力を持つことになる。
そうすることで森林に与えるポジティブな影響は相当なものになる。現実には、2014年から2018年の間に毎年、ニューハンプシャー州とマサチューセッツ州を合わせた4万3000平方キロメートル以上の面積の熱帯雨林が失われているのだから。
2020年に入り、投資家の注目も高まっている。世界の原料メーカーは森林伐採が引き起こす重大なリスクに取り組み、森林伐採をなくすための取り組み過程の情報開示をしていくべきだ。