• サステナブル・ブランド国際会議2017~2020
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  • 公開日:2019.04.18
  • 最終更新日: 2025.03.28
ビジネスが変われば、社会が変わる

寺町 幸枝(てらまち ゆきえ)

SB2019Tokyo

セッション「The SB Brand Transformation Roadmap」。左からファシリテーターのコーアン・スカジニア氏、P&Gのヴァージニー・ヘリアス氏、マーク・プリッチャード氏。

「サステナブル・ブランド(SB)国際会議2018バンクーバー」で発表された「サステナブル・ブランズ・ブランド・トランスフォーメーション・ロードマップ」。これは、真の「サステナブル・ブランド」を目指す企業のフレームワークとなるべく開発されたもので、レベル1の「従来型のビジネス」から、レベル5の「サステナブル・ブランド」まで、各段階における道筋が提示されている。(寺町幸枝)

「SB国際会議2019東京」で行われたセッション「The SB Brand Transformation Roadmap」では、ファシリテーターにサステナブル・ライフ・メディアのコーアン・スカジニアCEOを迎え、「ロードマップ」の詳しい紹介をするとともに、サステナビリティのリーディングカンパニーであるプロクター&ギャンブル(以下P&G)における、改革の道筋の具体例が紹介された。

「SBブランド・トランスフォーメーション・ロードマップ」による道筋

冒頭、スカジニアCEOは過去数十年の歩みの中でわかってきたこととして、「ビジネスが変われば、社会が変わる」と熱っぽく語った。そしてビジネスの中核である各企業のイノベーションを起こすための過程で必要な道しるべとなるものを、「サステナブル・ブランズ ブランド・トランスフォーメーション・ロードマップ」として開発したと宣言した。

様々な企業との対話と協力のもと作られたこのロードマップだが、一方現時点で「真のサステナブル・ブランドはまだ存在していない」とスカジニアCEOは語り、いま取り組んでいる企業もブランドも、まさにトランスフォーメーションの過程を歩んでいる最中であることを改めて断言した。

セッションに登壇したのは、SBアドバイザリーボードメンバーでもある、P&GのVP&チーフサステナビリティオフィサーのヴァージニー・ヘリアス氏と、同社の最高ブランド責任者のマーク・プリッチャード氏だ。

P&Gに30年以上務めるヘリアス氏は、「ビジネスにおけるサステナビリティ化は、イノベーションを起こせる可能性がある」と語った。自身がフランスのP&Gで、洗剤を販売する過程で経験したことを通じて、サステナブルな製品は、社会にとっても、ビジネスにとっても共通の利益を生む存在だと認識するようになったと語った。

一方プリッチャード氏は、「Cover Girl(カバーガール)」というティーン向けの化粧品の広告の仕事の中で、自分たちが発信する情報が、どれだけ若い世代に影響力を持っているかを意識したことで、変化が生まれ同時に責任を感じるようになったと話す。

さらにP&Gが環境NGOグリーンピースに、サプライチェーン上における問題の指摘を受けたことをきっかけに、改めて「自分たちの事業は、社会を良くするために存在すべきだ」と思ったと語った。

120項目の質問が導くロードマップ

スカジニアCEOは世界の様々なステークホルダーと対話する中で、多くの企業がどのようにして変わっていったらいいのか、あるいは自分たちが今その改革の途中において、どのあたりにいるのかを理解するためのツールの必要性を感じたという。

こうして出来上がったツールでは、120項目に及ぶアンケートの答えを分析することにより、マップ化できるもので、次の5つの要素を重要項目として設定している。

「Purpose Beyond Profit(利益を超えた目的)」「System-wide Brand Influence(システム全体のブランドの影響)」「Regenerative Operations(再生的な事業)」「Net Positive Products and Services(バリューチェーンを通じた持続可能な製品とサービス)」「Transparent and Proactive Governance (透明性のあるガバナンス)」――の5つだ。

「Purpose Beyond Profit(利益を超えた目的)」とは、ただ利益を追求するだけではなく、企業としての存在意義を持つ必要があるということ。

「System-wide Brand Influence(システム全体のブランドの影響)」とは、ブランドが、未来を作る非常に重要な役割を果たしていて、どのようなサプライチェーンを構築するかということから、パッケージの素材選びまで、あらゆる面で大きな意思決定と影響力を持つということだ。そしてブランドがコミットすることで、その製品を使う消費者の意識が変わり、同時に社会への大きなうねりになるという。

「Regenerative Operations(再生的な事業)」とは、日々のオペレーションの中で、コンセンサスをとる必要性を指摘している。真にポジティブな影響を与えるために、全体的に見て、顧客にとって明らかな利益となる事業かどうかを判断することが大切だと説いた。

「Transparent and Proactive Governance (透明性のあるガバナンス)」とは、(企業のリーダーである)CEOによる、環境対策に関する強い思いが感じられる言葉などが挙げられるという。

なおスカジニアCEOは、「この120問のアンケートは、各企業が社内でサステナビリティの度合いや方向性を決めるのに非常に役立つものだ」と語った。

セッションでは、P&Gが本格的なイノベーションを行う前の2010年から、2025年までの5年毎の姿をマップとして紹介した。P&Gが本格的にサステナブル・ブランドになるべくその旅を始めたのは、2012年ごろからだという。

「当時(P&Gにおける)サステナビリティ化というと、省エネや、廃棄物規制など『生産背景』に関するいくつものゴールのみ。企業として、当初のモチベーションの源は『費用削減』という観点だった」とヘリアス氏。

実際、2010年からのイノベーション過程で利用し始めた再生可能エネルギーによって、5億ドル(約560億円)の削減が実現したという。

アライアンスこそ、社会にインパクトを与える形態

さらにスカジニアCEOは、「P&Gは同業他社の競争相手に対して、協力関係を求められる数少ない企業」と指摘した。

プリッチャード氏は、サステナビリティを推進する関係性において、現在は金銭的な寄付(チャリティー)よりも、協力関係の構築(アライアンス)という形が最も適した形態だと話した。その理由を「アライアンスによって、複数の業界がともに活動することで、社会により大きなインパクトを与えることが可能となるからだ」と話す。

「同業他社と競争するよりも、イノベーションを一緒に行う方がよっぽど価値がある。アライアンスによって、市場そのものが成長することが一番ビジネスにとって利益につながるからだ。限られた市場の中で取り合いをするより、協力して市場そのものを大きくする方が、メリットは多い」(プリッチャード氏)

2025年には、サステナビリティはスケールアップしている必要がある。そのため、自分たちが持っている基準を上げていく必要がある。ブランドのリーダーたちをいかにサポートしていくか。それはこの問題について、定期的に問題提起することだという。

そして目に見える形で「賞賛(リワード)」を与え、良いブランドに育てること。そして若く能力の高い人材を企業に引き入れ、サステナビリティへコミットしていくとまとめた。

最後には質疑応答が行われた。「従業員へのサステナビリティ教育はどのようにおこなったらいいか?」という質問に対して、スカジニアCEOは、「私はできれば〈インスピレーション〉と言いたい。イノベーションの機会は、与えられるものではなく、気づくものだから」と答えた。

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寺町 幸枝(てらまち ゆきえ)

Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。

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