• 細田 悦弘
  • コラム
  • 公開日:2018.07.17
  • 最終更新日: 2025.03.02
第27回:サステナビリティ時代の「大学ブランディング」

細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

伝統校といえども、大学が岐路に立たされています。企業も大学も、時流によって磨きをかけないと、ブランドは老け、錆びつきます。『時代に選ばれ、次代にも輝き続ける大学』であるために、「大学ブランディング」に関心が高まっています。

大学が直面する、「2018年問題」とは

大学経営において、「2018年問題」が取り沙汰されています。日本の18歳人口が2018年ごろから減少期へと突入し、進学率の頭打ちも重なるため、定員割れや廃校・閉校に追い込まれる私立大学が散見されるようになりました。

文部科学統計要覧(2016年版)によると、私立大学数は604。今後、大学経営が厳しくなることは避けられず、大学淘汰が本格化すると言われています。

そんな中、伝統校・有力校と称されてきた大学といえども、差異化による競争力強化は喫緊の課題であり、「大学ブランディング」が脚光を浴びています。ブランディングは、大学の生き残り戦略の最後の切り札として語られることも増えてきました。

これまで私大連盟や個別の大学で講演をしたこともありますが、近未来に向けて『選ばれ続ける大学』 であるために、志ある大学が「大学ブランディング」に熱心に取り組んでいます。

「大学ブランディング」というと、一般的には、マスメディアによる広告やロゴマーク等を通じた目に見えるコミュニケーション活動による「イメージ戦略」の概念が強いようですが、「Credibility(実態)なくして、Visibility(イメージ:見栄え)なし」です。

大学関係者におかれましては、「企業ブランディング」のプリンシプルを、「大学ブランディング」に応用・翻訳することをおすすめします。

それではまず、「ブランドの変遷」を踏まえ、「企業ブランド」が重視されている潮流を解説します。

ブランドの変遷~「企業ブランド」重視の時代へ

「ブランド」というと、これまで、ラグジュアリーブランドと呼ばれるヨーロッパ等の高級品、商品そのもの、商品品質、ロゴマークや商標、広告・キャンペーンで作られるもの、特定の顧客だけをターゲットとする、などと捉えられる傾向が強くありました。

いわば、プロダクトブランド(商品ブランド)を中心に、顧客を対象としたマーケティングや広告といった限られた分野において、マーケターの手に委ねられていた時代といえます。

それが21世紀に入り、経営層において企業価値やコーポレートブランドへの関心が高まり、企業経営の根幹的な問題として議論されるようになってきました。商品だけでなく、「企業」もブランドとなります。

そして、「大学」も「病院」もブランドになります。マーケティング分野だけでなく、経営戦略としても「ブランド」が論じられるようになりました。

コーポレートブランド(企業ブランド)は、『見えざる資産』として、顧客だけでなく、あらゆるステークホルダーとの関係において付加価値を創造し、同時に独自の価値を生み出す機能を有します。

企業ブランドとステークホルダー

企業ブランディングは、消費者視点だけでなく、企業に関わる人たちすべてを広範囲に捉えたステークホルダーと企業とが、共に創り上げていくことに焦点が当てられます。

さらには、顧客といっても、一般の消費者であると同時に生活者でもあり、従業員は、顧客だったり株主であったり、地域住民でもあります。取引先や地域住民は、消費者・顧客であったり、株主であったりと、それぞれが多面的なステークホルダーでもあるわけです。

こうしたステークホルダー像が、企業が責任ある行動をとるべき対象となる「社会」です。そして、社会を構成するステークホルダーに対して「誠実な対応」をしていくことが、今日の企業ブランディングの礎となるCSR(Corporate Social Responsibility)の本分となります。

このようにして、企業にも社会性が求められ、社会からすれば、企業の顔が見えると安心感と信頼感が高まります。

商取引を例にとると、これまで顧客とのWIN-WINが理想とされていましたが、これに「社会の視点」を加えて、WIN-WIN&WINのスタンスでビジネスに臨むことが、サステナビリティ時代における持続的成長の矜持となります。

大学のステークホルダーは、受験生や在校生だけでなく、その保護者、そして高等学校、卒業生(OB/OG)、企業、マスメディア、政府・文部科学省・行政機関、教員・職員、地域社会等、多岐にわたります。

企業も大学も、ステークホルダーに「よく知ってもらい、信頼してもらって、好きになってもらって、それぞれの立場から支持してもらう」までを含めて、初めて現代のブランディングといえます。

時代に選ばれ、次代にも輝き続ける企業(大学)であるために

伝統ある企業も大学も、時流によって磨きをかけないと、ブランドは老けるし、錆びつきます。いつの日か、レガシーと見なされ、古株・古豪と称され、「時価」が下がり続けます。人も企業も大学も、ナイスエイジングを心掛けたいものです。

時代に選ばれ、次代にも輝き続ける企業であるために、事業活動に「時代への対応力」と「らしさ」を融合させ、競争優位を創り出す戦略メソッドが「CSRブランディング」です。

※第3回コラム 参照
http://www.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/1188025_1535.html

written by

細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師 一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。 ◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史 ◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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