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エールフランスが始めた「ミレニアル世代」向け飛行機「ジューン(JOON)」のベルリン―パリ便に乗ってみた。客室係はTシャツにウォーキングシューズ姿でカジュアルな雰囲気だ。持続可能性に関心が高い若者の傾向を反映し、有料の食事や飲み物にはオーガニックもある。(パリ=羽生 のり子)
6月、ベルリンに電車で行き、帰りをエールフランスの最終便にしたらジューンに当たった。ベルリン―パリは1日に最多で7便出るので、ジューンに当たる確率が高い。
機内に乗り込むと、Tシャツにミニスカートの女性と、ポロシャツの男性の客室乗務員が元気よく迎えてくれた。両者とも白いウォーキングシューズを履いている。
搭乗後すぐに飲み物が出た。無料なのはコーヒー(オーガニックでフェアトレード)、お茶、オレンジジュース、水のみで、通常エールフランスの中距離便で出るクッキーやクラッカーはつかない。
その代わり有料の飲食メニューの質が充実していた。フランスワイン、ハーブティ、キノアと栗と乾燥果実のサラダ、ミューズリー、野菜のチップス、コンポートなどがオーガニックだ。
野菜のラップのように、ベジタリアン向けにベジマークがついたものも多い。キノアのサラダ、コンポート、ミネラルウォーターのセットを頼んでみた。
サラダはあっさりした味だ。水は「トノン」というスイスに近い水源の水でおいしいが、ふつう飛行機では出ないし、レストランでも見かけない。キノアのサラダといいトノンの水といい、ベジタリアン志向で質を重視するミレニアル世代が好みそうなものだ。
ジューンのもう一つの特徴は、スマホにジューン用のアプリをインストールして、機内でテレビ番組を見たり音楽を聴いたり、飛行機の位置を確認することができること。
椅子の肘掛にスマホにつなげられるUSBキーの差込口がある。チーフパーサーのティボー・デラルズ氏は「座席の前に長距離便のような画面はないが、スマホで同様のサービスが受けられる」と言う。これもミレニアル世代を意識した設定だ。
デラルズ氏は英国航空で5年、全日空で5年客室乗務員として勤務した。最初の機内アナウンスで「客室乗務員は日本語、スペイン語を話す」と言っていた。
日本語を話すのはデラルズ氏のことだった。話を聞きたいと言ったら座席まで来てスマホを見せながら説明してくれたり、気分が悪くなった乗客を前に連れて行き、水を飲ませて落ち着かせたりと、サービスはエールフランスよりずっと良かった。
降りるとき「ご搭乗ありがとうございました」と日本語で挨拶してくれた。
客室乗務員はジューン用に採用されたがパイロットはエールフランスの社員だ。フランスの経済誌「ラ・トリビューン」の2017年12月1日号によれば、エールフランスがジューンを作った目的は、エールフランス便より経費を削減し、赤字路線や、赤字のため放棄した路線に投入してそれらの路線で利益を上げることだという。
ミレニアル世代向けなのはそのための手段のようだ。客室乗務員の給与を親会社の社員より約4割低くすることで経費を削減している、と同誌は伝えている。
エールフランスでは賃上げ交渉が難航したためCEOが5月に辞任したが、次のCEOが決まらず(今は暫定CEO)、存亡の危機にある。6月末に労組がストを予定し、筆者の便もそれにかかるはずだったが、直前に労組が取りやめたので無事乗ることができた。
リラックスした外見のジューンの裏には親会社の緊迫した状況がある。
羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)
環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。