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お客様・従業員・株主・社会の「4S」への責任を果たす ――永田亮子・日本たばこ産業執行役員CSR担当

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<p>日本コカ･コーラは「サステナビリティ」を経営戦略とし、米国本社の方針のもとSDGs(持続可能な開発目標)へのコミットを表明するなど、積極的なCSRの取り組みを行っている。広報、パブリックアフェアーズの立場でCSRに関わる後藤由美副社長に、その考え方や取り組みを聞いた。</p>
<p>6月に完成した新本社ビル(東京・渋谷)は、CO2削減をはじめFSC認証木材の使用など環境配慮型であり、コカ・コーラ社のグローバルな環境コミットメントと整合するユニークな考えに基づき設計されている。</p>
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<h2>地域の活性化なくして、事業の成長もない</h2>
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<tbody>
<tr>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/09/05/01.jpg"/></div>
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</td>
</tr>
</tbody>
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<p>川村：コカ･コーラ社がグローバルに取り組んでいる水資源管理の「ウォーター･ニュートラリティ」は有名ですが、まず日本コカ・コーラのCSR/CSVに関する基本スタンスについて、お聞きしたいと思います。</p>
<p>後藤：ビジネス成長の必須条件としてサステナビリティを捉えており、CSRやCSVはサステナビリティの一環となります。</p>
<p>当社は米国アトランタにあるザ コカ･コーラ カンパニーの日本法人(非上場)ですが、日本全国で製品の製造と販売を行う6社のボトリング会社とともにビジネスを展開しており、全体で「コカ･コーラシステム」と呼んでいます。現地で製造・販売を行っていることから地域との結びつきは深く、事業を通じて地域の発展に貢献していくという理念のもと、CSR/CSVについてもボトリング会社と協働して取り組んでいます。</p>
<p>なお、経営戦略の一部であるという認識からコンセプトには自ずとCSVの概念が織り込まれていますが、社内では「サステナビリティ」という言葉に集約されて浸透しています。</p>
<p>川村：地域との連携からサステナビリティを考えていくということですね。コカ･コーラ社はグローバル展開をされているので、米国本社の考え方が基本だと思いますが、日本独自の活動があれば教えてください。</p>
<p>後藤：当社には、「me(個人)、we(地域社会)、world(環境) 」というサステナビリティのフレームワークがあります。meは個人(お客様)の健康とハピネスに貢献する活動、weは地域社会に貢献する活動、worldは地球環境保全の取り組みです。</p>
<p>この3つの重点分野の中に9つの活動領域があって、東日本大震災の復興支援など日本特有の活動も含まれます。これらの活動は感覚的に推進するのではなく、まず数値目標を設定し、四半期ごとに本社で結果の取りまとめを行っています。</p>
<p>川村：各地域ごとにKPIを、毎年更新しているのですか。</p>
<p>後藤：財務･非財務を併せた米国本社の成長戦略「ビジョン2020」のもとで、地域ごとに2020年度をゴールとしています。2015 年に発表した「環境2020 年目標」は、米国本社の基準より厳しい目標を持っている領域もあります。</p>
<p>水資源保護は引き続き「ウォーター･ニュートラリティ」の達成を目指し、地球温暖化防止では製品ライフサイクルのCO2排出量を2010年比で25％削減を目指すなど、各領域で数値目標を掲げています。</p>
<p>川村：それでは、推進体制はどのようなものでしょうか。</p>
<p>後藤：私のチームに地域貢献活動を担当する社員が2名、ボトリング会社を含めると全国で30~40人が携わっています。また当社内にステアリング･コミッティが設置されており、社長を筆頭にマーケティングや人事など各部門の責任者が参画しています。このような横連携がサステナビリティを経営戦略に組み込む上での大きな柱となっています。</p>
<p>川村：サステナビリティの考え方が本業に組み込まれている、ということですね。</p>
<p>後藤：そうですね。</p>
<p>川村：次に、飲料メーカーとしてのバリューチェーン対応やマテリアリティがあれば教えてください。</p>
<p>後藤：サステナビリティは事業と密接に関わっていますので、バリューチェーンを視野に入れたプログラム開発に注力しています。一例として「5by20(ファイブ･バイ･トゥウェンティ)」があります。これはコカ･コーラビジネスに関連する事業を通じて、2020年までに世界で500万人の女性の経済的自立を支援するプロジェクトです。</p>
<p>日本では製品の原材料である農産物の生産活動に従事されている女性の活躍支援を行っています。具体的には持続可能な農業に関する研修会などを開催しており、2020年までに7500人を支援する目標に対して、2015年末時点で累計約650人が参加しました。</p>
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<h2>サステナビリティを意識した独自の取り組み</h2>
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<tbody>
<tr>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/09/05/04.jpg"/></div>
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</tr>
</tbody>
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<p>川村：コカ･コーラ社の水リスクへの対応は、インドにおける地下水汲み上げ問題から、グローバルに広がったと理解していますが、いかがでしょうか。</p>
<p>後藤：水資源保護については以前から優先度の高い課題という認識でしたが、水資源保護に対する企業責任を真摯に考えさせられる出来事だったと思います。現在は、2020年までに製品製造時に使用した水と同じ量の水を自然に還元する「ウォーター･ニュートラリティー」に取り組んでいます。</p>
<p>川村：具体的にはどのような取り組みをされるのですか。また、いつ頃から始まったのですか。</p>
<p>後藤：具体的な取り組み内容は、工場での水の使用効率の改善、水のリサイクル･リユース、さらに水資源涵養です。2009年から各国に概念が導入され始めましたが、日本では工場の水源域調査が1年から2年かかりましたので、実際の活動は2012年頃から全国で順次行っていきました。</p>
<p>川村：1リットルの製品を造るのに4.15リットルの水を使用しているとのことですので、飲料メーカーとしては画期的な取り組みですね。時代的にも不可欠だと思います。地球や地域にサステナブルでないことは自社にとってもサステナブルではない、という認識ですね。非常に先進的だと思いますが、これは世界で初めての取り組みですか。</p>
<p>後藤：世界では多くの企業が水資源保護に熱心に取り組んでいると承知していますが、米国本社は水資源保護の分野でグローバルリーダーになる、という大きな目標を掲げています。</p>
<p>他にも、日本では売上の一部を地域のNPOなどに寄付する支援型の自動販売機や、東日本大震災後に開発された「ピークシフト自販機」の設置を進めています。また、「い･ろ･は･す」のボトルに軽量で植物由来の素材を一部に使用したPETボトルを採用することで原油使用量の削減を図るなど、サプライチェーンの様々な場面でサステナビリティを意識しています。</p>
<p>川村：学生の間でも「い･ろ･は･す」は有名ですし、ブランディングとして成功していると思います。</p>
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<h2>不動産格付け認証LEED取得を目指した新本社</h2>
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<tbody>
<tr>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/09/05/05-2.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph">FSC認証を取得した木材を使用した内装。グラスボトルを象徴したデザインなど至る所でブランディングへのこだわりが見える</div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
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<p>川村：この新本社に移られてまだ間もないですが、建物の特徴を教えてください。</p>
<p>後藤：まず、雨水利用や、節水型の機器の採用することにより、1年で「い･ろ･は･す」431万本分の節水効果が期待出来ます。また、省エネを推進するべくルーフトップにソーラーパネルを設置したり、館内の空気循環に工夫を施すことで建物全体のエネルギー使用量を米国の基準値より38％削減を計画しています。</p>
<p>そのほか、社員同士が館内を行き来してコミュニケーションしやすいように、吹き抜けの階段に打ち合わせスペースを設けるなどの工夫もしています。</p>
<p>川村：ビルは50年は使うものですので、長期的視点からCO2対策やZEB（ゼロ･エミッション･ビル）が必要です。この新社屋は環境に優れた建築物として認められる不動産格付けである米国のLEED( Leadership in Energy &amp; Environmental Design)、あるいは日本のCASBEE(建築環境総合性能評価システム)に対応しているのでしょうか。</p>
<p>後藤：LEEDは取得を目指して申請中です。</p>
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<h2>長期経営戦略としてのSDGsへの取り組み</h2>
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<p>川村：さきほどビジョン2020のお話がありましたが、SDGsは2030年、パリ協定のCO2削減は2050年を見越しています。そこで2020年以降のサステナビリティに関するビジョンや戦略が重要ですが、影響力のあるグローバル企業は積極的に取り組んでいくことになりますね。</p>
<p>後藤：米国本社はSDGsの17のキーワードに沿ってどう取り組んでいくのか、公表しています。実は、社内フレームワーク(me、we、world)を策定するときに、SDGsを意識していまして、米国本社ではWWFやグリーンピースなどNGOとのエンゲージメントを行っています。</p>
<p>川村：そのようなプロセスを経て、フレームワークを公表されているのは素晴らしい。</p>
<p>後藤： 当社は女性活躍推進にも積極的に取り組んでいまして、2016年4月現在で女性社員比率は32%、女性管理職比率は22%です。</p>
<p>川村：日本企業の平均から見ると、高い水準にありますね。</p>
<p>後藤：最後にひとつ申しあげますと、当社がサステナビリティ活動で念頭に置いていることは「ゴールデン･トライアングル」です。つまり、企業･行政･市民などのステークホルダーが協力し合うことで、最大の効果が生み出せると考えています。</p>
<p>川村：本日は、興味深いお話をありがとうございました。</p>
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<p></p>

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  <div class="c-interview_card__title">interviewee</div>
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        <div class="c-interview_card__body">
      <div class="c-interview_card__name">後藤 由美（ごとう・ゆみ）</div>
      <div class="c-interview_card__company"></div>
      <div class="c-interview_card__text">
      <p>東京生まれ。1998年米国ジョージタウン大学、経営大学院（ビジネス・スクール）卒業。MBA取得。長年にわたり外資系企業にて　広報、政策の要職を歴任。2012年6月、日本コカ・コーラ入社、現職にいたる。コカ・コーラ協会副会長、公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団、常務理事。</p>
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  <div class="c-interview_card__title">interviewer</div>
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        <div class="c-interview_card__body">
      <div class="c-interview_card__name">川村 雅彦 （かわむら・まさひこ）</div>
      <div class="c-interview_card__company"><p>前オルタナ総研　所長・首席研究員。前CSR部員塾・塾長</p>
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      <div class="c-interview_card__text">
      <p>九州大学大学院工学研究科修士課程修了（土木）。三井海洋開発㈱を経て㈱ニッセイ基礎研究所入社、ESG研究室長を務め、現在は客員研究員。環境経営、環境ビジネス、CSR経営、統合思考・報告、気候変動適応を中心に調査研究・コンサルティングに従事。（認定NPO法人）環境経営学会の副会長、（一社）サステナビリティ人材開発機構の代表理事。論文、講演、第三者意見多数。主要著書は『環境経営入門』『カーボン・ディスクロージャー』『統合報告の新潮流』『CSR経営 パーフェクトガイド』『統合思考とESG投資』など。</p>
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「サステナビリティ」は経営戦略―後藤 由美・日本コカ・コーラ 副社長

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