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Joanna Buczkowska-McCumber

<p></p>
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<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/07/03/01.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit: RonaldCandonga</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>さまざまな業界の企業に対し、サステナブルな事業運営、環境への影響削減、ESG報告、取り組みの透明性の導入とともに、常日頃の説明責任を求める圧力が高まっている。こうした機運が高まれば、組織とサプライチェーン全体で効果的に戦略や業務を実行・推進できるスキルを持った専門家や従業員の必要性も高まる。しかし、多くの企業で、サステナビリティ目標を達成できる知識・経験・スキルを持つ人材が不足しているのが現状だ。この問題に対し、ここにきて社内でスキル不足解消のための対策を講じる企業が増えている。スキル不足解消に取り組む4つの戦略を紹介しよう。(翻訳・編集＝ 茂木澄花)</p>
<p>多くの企業が、サステナビリティ人材の需要が供給を上回るペースで高まっていること、そしてその差は広がる一方だということを認識している。サステナビリティ関連の業務は増え、新たな役割も生まれているため、CSuO(最高サステナビリティ責任者)がいるだけでは十分とは到底いえない。</p>
<p><a href="https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---dgreports/---dcomm/---publ/documents/publication/wcms_628654.pdf">ILO(国際労働機関)</a>の試算によれば、ネットゼロに向けた取り組みに伴う雇用数は2030年までに世界で1800万件の純増となる見込みだ。最新の調査では、82%のサステナビリティ担当役員が、サステナビリティの課題に取り組むための社内のスキルが不足していると考えていることが分かった。</p>
<p>世界経済フォーラムは、スキルを持った人材の不足が、サステナビリティ戦略を実行するにあたって重大な障壁の一つになっているという認識を示した。また<a href="https://unglobalcompact.org/participation/report/cop/active/451946">国連グローバル・コンパクト</a>は、こうしたスキル不足に直接的な対策を取ることを企業に求め、従業員のスキル獲得、スキルアップ、リスキリングに優先的に投資するよう促している。</p>
<p>企業はサステナビリティ人材の強化に様子見のアプローチを取りたがるが、それではスキル不足解消に拍車がかからず、サステナビリティ戦略の実行に悪影響が及ぶことになる。<a href="https://blogs.microsoft.com/on-the-issues/2022/11/02/closing-sustainability-skills-gap/">マイクロソフト</a>、<a href="https://www.salesforce.com/news/stories/sustainability-jobs-training-salesforce-research/">セールスフォース</a>、<a href="https://sustainablebrands.com/read/walking-the-talk/biomimicry38-interface-demystify-path-regenerative-business">インターフェイス</a>(米国のタイルカーペット企業)など、スキル不足を社内で解消するために独自の解決策を展開する企業が増えている。</p>
<p>企業がサステナビリティ目標を達成するには、社内でサステナビリティ関連のスキル不足解消に取り組むことが不可欠だ。そのための4つの戦略を以下に挙げてみよう。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>1 サステナビリティ戦略の優先順位を上げること</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>まず何より、企業が力強いサステナビリティ戦略を立てることで、現在の従業員にも今後従業員となる可能性のある人にも、サステナビリティに取り組んでいることを明確に示すことができる。これは、価値観を共有できる企業で働きたいと考えている人材に対する強力なアピールになり得る。企業は表立ってサステナビリティ目標を掲げ、その目標を達成するために必要なリソースに投資することで、優秀な人材を引き寄せ、サステナビリティの取り組みに意欲的な従業員を確保することができる。とはいえ、サステナビリティ戦略による効果は適切な人材を集めることだけではない。既存の従業員に対しても、参画を促し、動機付けし、スキルを向上させることにつながる。</p>
<p>サステナビリティ戦略に投資すれば、トレンドや規制を常に先取りしやすくなるという側面もある。各国政府はサステナビリティに関する規制を強化しているが、すでに率先して取り組みを行っている企業は、そうでない企業に比べて、変化に対して有利に適応できるはずだ。今からサステナビリティ戦略に投資することによって、今後の規制遵守に備え、競合の一歩前を行くために必要な知識、スキル、リソースを確保できる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
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<h3>2 組織全体でさまざまな形の研修を行うこと</h3>
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<div class="elem_paragraph">
<p>当然のことかもしれないが、サステナブルな事業運営を効果的に行うために必要なスキルと知識を身に付けさせるために、教育・研修プログラムは不可欠だ。プログラムにはさまざまな形式(ワークショップ、オンライン研修、メンタープログラム、インターンシップなど)があり、具体的な職能やレベルに合わせて組み立てることができる。社内で企画しても、オンラインのプログラムを活用してもよい。さらには教育機関と共同で作成する方法もある。</p>
<p>この戦略において重要なのは、既存の従業員のレベル向上と新たな人材獲得の準備を並行して行うことだ。そのためには、社内と社外の両方の視点で研修を考える必要がある。マイクロソフトはその好例で、サステナビリティ関連のスキル不足に社内外からアプローチしている。従業員向けの社内研修に力を入れる一方で、同社の<a href="https://www.microsoft.com/en-us/sustainability/learning-center">「サステナビリティ ラーニング センター」</a>を通じて社外にも学びの機会を提供している。</p>
</div>
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<div>
<h3>3 企業文化にサステナビリティを組み込むこと</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>戦略立案と研修は知識を授け土台を整えるために重要なことだが、企業文化にサステナビリティが根付いて初めて、取り組みは有意義なものになる。2021年に<a href="https://www.weforum.org/agenda/2022/06/why-sustainability-is-crucial-for-corporate-strategy/">世界経済フォーラムが発表した研究</a>によると、サステナビリティが企業文化に深く根付いている企業は、適切なスキルと知識を持つ従業員を引き寄せて維持する傾向があり、人材流出が抑えられているという。</p>
<p>サステナビリティが根付いた企業文化を形成するために必要なことは、ひとえにサステナビリティを優先し重視する文化を醸成することと、職責に関わらず従業員のサステナビリティ関連スキルの習得を推奨することだ。そのために企業がまずできることは、サステナビリティの目標とターゲットを設定して計画を立てることと、それらを明確に伝えることだ。全従業員を巻き込むのはもちろんのこと、彼らが計画を実行するために何らかの役割を担っていると感じられるようなコミュニケーションが重要となる。</p>
<p>従業員にサステナビリティ目標に向けて取り組む場を提供し、新しい取り組みを提案する権限を与え、ボランティアの機会や従業員リソースグループによって足りない部分を補う。そうすることでサステナビリティが根付いた豊かな社内エコシステムが育まれる。また、リーダーシップを発揮してイノベーションを起こした従業員を評価し、サステナビリティ目標を達成したチームを表彰することも有効だ。従業員は社内でサステナビリティの推進者となることを目標に取り組むことができ、そうしたことに積極的な従業員が社内に残りやすくなる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>4 従業員の採用、育成、評価にサステナビリティを組み込むこと</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>従業員の採用、育成、評価においてもサステナビリティを重視する必要がある。主要な人事機能に組み込むということだ。<a href="https://hbr.org/2018/02/how-to-make-sustainability-every-employees-responsibility">ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された研究</a>によると、募集と採用のプロセスで、サステナビリティ目標と社会的インパクトを考慮することが従業員のエンゲージメントを高め、離職率を減らすことにつながるという。具体的には、募集要項、面接の質問項目、選考基準などを通じて、サステナビリティ関連のスキルと経験、さらには新たなスキルを身に着ける意欲までをも重視していることを強調できる。</p>
<p>サステナビリティの取り組みに投資することで、従業員がこの重要な分野に関するスキルを磨き、知識を蓄える機会を多く設けることができる。職能開発研修、面談、業績評価といった通常の人事機能にサステナビリティの要素が組み込まれていれば、上司は意識的に専門スキル開発を行い、社内で新たなチャンスがあれば適切な従業員を配置することも可能になる。</p>
<p>企業が市場競争力を維持するためには、サステナビリティ関連のスキル不足に先手を打って対策を講じる必要がある。具体的には、上述したようにサステナビリティの優先順位を上げ、研修を行い、企業文化や人事機能に組み込むための投資を行うことだ。この事業課題に対して先手を打てば、環境・社会的な課題に対する実績に必ず良い影響が及ぶ。しかし、それを怠れば、企業は時代に取り残されてしまうだろう。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ワールドニュース

話題のキーワード

企業はサステナビリティ関連のスキル不足をどう解消したらよいか――今こそ4つの戦略をわきまえよう

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>SB国際会議2023東京・丸の内</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
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<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
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<div class="elem_block color">
<p class="heading">Day2  ブレイクアウト</p>
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<div class="elem_paragraph">
<p>終わりの見えないウクライナ侵攻などを背景に、持続可能な未来に向けて、世界は2030年の目標年にSDGsの17のゴールを本当に達成できるのかが危惧されている。そうしたなか、SDGsが掲げる課題のうち、食糧と水、資源循環、エネルギーの4分野に的を絞り、それらを人類が直面する「生存ボトルネック」として捉えて解決を目指す、日本発のグローバルなプラットフォームが共創を加速している。2020年にスタートし、世界6大陸の若手社会起業家やサステナビリティの実践者らと企業や公的機関を結びつける、『4Revs(Revolusionsの略)―a co &#8211; creative ecosystem=以下、4Revs』だ。2月に行われたサステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内には、その主要メンバーが登壇し、取り組みの方向性や活動の現状について報告した。(木野龍逸)</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>ファシリテーター</strong><br />ピーター D. ピーダーセン・NPO法人NELIS 代表理事<br /><strong>パネリスト</strong><br />クリスチャン・シュミッツ・PDIEグループ創業者 Aventa CEO<br />駒木亮伯・東芝 CPSｘデザイン部 デザイン開発部 共創推進担当 スペシャリスト<br />サラーム・アル・カティーブ・NELIS中東 コアメンバー Social Value Arabia 創立者<br />ジョヴィン・ハリー・NELISモーリシャス 4Revsプログラムマネージャー<br />フェリックス・イジオモー・NELISアフリカ 4Revsプログラムマネージャー<br />横林夏和・日立製作所 システム&amp;サービスビジネス統括本部 社会イノベーション 事業統括本部 次世代事業開発本部 パートナリング部</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>一世代のうちにどう振る舞うかで未来が決まる</h2>
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</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/27/peter.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>ピーダーセン氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>『4Revs』の発起人で、セッションのファシリテーターを務めたピーター D. ピーダーセン氏は冒頭、「発端はSDGsに対するモヤモヤ感だった」と話し、次のように続けた。「SDGsの中でまず解決すべき課題を整理したところ、4つの生存ボトルネックに直面していること、それに対して革命的なイノベーションが必要だということがわかり、『4Revs』が生まれた」。</p>
<p>その「4つの生存ボトルネック」とは、食糧、水、資源循環、エネルギーの4分野であり、ピーダーセン氏は、「この4つをなくしては、平和や教育、福祉やジェンダー平等といった他のSDGs目標の達成は絶対に不可能だ」と強調。「日本が国際社会における新たな役割を果たせるのであれば、この分野に対してイノベーションを加速させることだ」という考えのもとに、イノベーターと実践者、企業、公的機関などをつなぐ「4Revs」を構築した背景や、活動を通じて「2020年から2050年の『一世代』のうちに我々がどう振る舞うかで未来が決まる」と決意していることなどを語った。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「4Revs」で生まれる業界横断の取り組みと思考</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
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<div class="elem_paragraph"><sup>横林氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>『4Revs』に参加する日本企業26社の一つ、日立製作所の横林夏和氏は、例えば資源循環でもグループ企業の中だけで取り組むのではなく、他業種と横につながることで、より消費者が手に取りやすい製品が生まれたり、必要な規制改革が可能になるという考えを示した。経済価値、社会価値、環境価値のすべてを取りこぼさない形で事業をつくっていく上で、『4Revs』とは親和性が高く、「熱意を持って、社会課題を素早くアクションにつなげる人たちとつながるフィールドがあること」の意義は大きいという。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/27/toshiba.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>駒木氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>東芝の駒木亮伯氏は、「4Revs」で得られた情報をデザインに落とし込んだ活動について具体例を紹介した。その一つ、「Think a new dayプロジェクト」では、例えば地球温暖化に歯止めがかからない場合に「もし人類が冬眠するようになったら」など、未来の価値観に合わせたアプローチを提起して議論を深めているという。<br />駒木氏は「サステナビリティは難しいというイメージを持っている人を含めて、いかに巻き込めるか、ワクワクさせられるかにデザインが寄与できないかを考えて活動している」と、コラボレーションの醍醐味を話した。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>イノベーションセンターを東京に創設する計画の意義とは</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/27/salam.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>カティーブ氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>『4Revs』には次の取り組みとして、東京にグローバルイノベーションセンターを創設する計画がある。その意義についてNELIS中東コアメンバーのサラーム・アル・カティーブ氏は、「4つの課題に絞ってイノベーションを起こしていく上で、実質的なインパクトにつなげていくための中心的な役割を担う」と説明。その上で「4課題のイノベーションのフロンティアがどこにあるかというと、2050年に人類の9割が住む南米やアフリカ、中東、アジアだ。欧州や北米ではない」とする考えを強調した。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/27/cris.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>シュミッツ氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>また同センター創設に向けて協力している一般社団法人PDIE(パーパス・ドリブン・イノベーション・エコシステム)グループCEOのクリスチャン・シュミッツ氏は、「日本政府の関係者から、日本はもっとグローバルにならないといけない、インパクトをつくらないといけないという意見を聞いた。そこは日本が今遅れているところだ」と指摘。サステナビリティに特化したイノベーションセンターを日本につくることで「イノベーターを核融合させ、共創によってより良いエコシステムをつくりたい。日本に眠っているイノベーションを世界に持っていくこともできる」と意欲を示した。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「ローカルに根差しながらグローバルとつながる」が強み</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/27/online.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>オンライン登壇したハリー氏(左)とイジオモー氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>セッションには、リサーチチームの一員として『4Revs』のプログラムに参画するモーリシャスとナイジェリアの次世代リーダー二人もオンラインで登壇。このうちジョヴィン・ハリー氏は『4Revs』の特徴を「世界各地でコミュニティの現状を知り、サステナビリティを実践するエキスパートと共にプロジェクトを推進できる。ローカルに根差しながらグローバルとつながることができるところにある」などと話し、「これはおそらく世界にふたつとないやり方ではないか」とその意義を強調した。</p>
<p>一方、アフリカで今、急成長している都市の一つであるナイジェリアのラゴスに暮らすフェリックス・イジオモー氏は、2050年には2017年比で人口が2倍になる可能性があるアフリカでは、「いま現在もネット環境が悪く、電力インフラも脆弱であるのに、人口が倍になった時にはどうなるのか」と危機感をあらわに。「サステナブルなイノベーションなしには未来が描けない」という思いから「まさにアフリカの社会起業家がどうスケールアップを図るか。若者世代を巻き込んで危機に対応し、コミュニティー保全や生態系修復に貢献する具体的なアクションを起こす」と『4Revs』にかける思いを語った。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

SB国際会議

ニュース

サステナブル・ブランド国際会議2023

人類が直面する4つの「生存ボトルネック」の解消を―― 日本発、6大陸の若手起業家と企業を結ぶ共創が加速

Tom Idle

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/26/01_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by </sup><a href="https://unsplash.com/@marcellviragh?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText"><sup>Marcell Viragh</sup></a><sup> on </sup><a href="https://unsplash.com/photos/ZQas4Ehf-F4?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText"><sup>Unsplash</sup></a></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>企業・ブランドがグリーンウォッシュを行うことは公的にも、法律上もますます難しくなってきている。欧州議会は5月11日、明確な根拠を示すことなく「カーボンニュートラル」「環境にやさしい」などと謳い、購入する商品が環境に良いものだと消費者が信じるように欺く主張をする企業への<a href="https://commission.europa.eu/publications/proposal-directive-empowering-consumers-green-transition-and-annex_en">規制強化案</a>を決議した。提案された、環境に関する主張やラベルを実証・検証することを義務付ける反グリーンウォッシュの規制案は、「消費者と環境の大きな勝利」と称され、賛成544票、反対18票、棄権17票と圧倒的多数の賛成により可決された。</p>
<p>これにより、EUの加盟国は、疑わしい環境関連の主張を禁じる国ごとの法案を採択する道を開いた。ディディエ・レンデルス司法担当委員は「商品の実際の持続可能性を消費者に誤解させる慣習を禁じることで、グリーンウォッシュとの戦いを強化する」と指摘する。(翻訳・編集＝小松はるか)</p>
<p>企業・ブランドは、証拠による裏付けがない場合、「環境に優しい」「自然の」「生分解性」「エコ」といったグリーン・マーケティングの主張を実質的に禁じられる。さらに、製品やサービスの一部しか持続可能でない場合、製品・サービスの全体を指して持続可能だと表示することもできなくなる。また、製品情報に使われるサステナビリティ認証ラベルについても、公式のサステナブル認証制度に基づくものか、公的機関が定めたラベルしか受け入れられなくなる見込みだ。</p>
<p>加えて、カーボンオフセット制度のみを根拠に、「ネットゼロ」「カーボンニュートラル」といった環境に関する主張を行うことを禁止することも規則に盛り込まれる計画だ。これは、消費者に深刻な誤解を招くとして運動団体から長らく非難され続けてきたことだ。実際に、カーボンオフセット制度をカーボンニュートラルの主張の根拠として使うことを禁じる動きはすでに始まっている。英国では、広告基準協議会(ASA)が状況を評価するのに6カ月の月日を費やし、より厳格な執行手続きに踏みきろうとしているところだ。</p>
<p>カーボンオフセット制度を巡る動きは、カーボンオフセットの真のインパクトに改めて注目が集まっていることとも合致する。1月、英ガーディアン紙は、世界最大のオフセット認証機関の一つヴェラ(Verra)が発行した、熱帯雨林の保全によるカーボンクレジットの90%が「無価値」だと報じた。ヴェラは調査結果に強く抗議しているが、これをきっかけに世界中で、カーボンオフセットの価値のみならずカーボンニュートラルを広く主張することの有効性についても議論がなされるようになった。</p>
<p>英国の投資の現場では、グリーンウォッシュの取り締まりがすでに始まっている。「サステナブル」とみなされている年金基金がいまだに石油・ガス会社の財源として定着している実態を受け、英金融行為規制機構(FCA)が投資ファンドのESGラベリングを見直す反グリーンウォッシュの規則を公表した。</p>
<p>一方、米国では、連邦取引委員会が2012年以降初めて、マーケティング担当者向けの手引書「グリーン・ガイド」の改訂に着手し、企業が製品や使用する素材の持続可能性について誇張できないようにすることを目指している。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>消費者は企業・ブランドに透明性がある緻密なコミュニケーションを期待</h2>
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</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>グリーンウォッシュが完全になくなるまでには間違いなく時間がかかる。しかし、これから始まる規制や改善された基準は、期待通りのインパクトをもたらし始めている。例えば、明確な根拠を示すことなく「持続可能な飛行」「未来を守る」などといった環境に関する主張を行った、エティハド航空やルフトハンザ航空などの航空会社に、広告キャンペーンを停止する指令を出す事例も生まれている。</p>
<p>しかし、ますます抜け目のない消費者に打ち勝ち、野心的なサステナビリティ目標を次々に達成していくという競争のなかで、グリーンウオッシュを回避することは依然として課題だ。野心的なサステナビリティ目標の撤回を余儀なくされた企業でさえも、大きな監視の目にさらされる。例えば、サンダルなどを販売する米クロックスは4月、企業を新たに買収したことでCO2の絶対排出量が前年比で45.5%増加したことから、ネットゼロの達成目標年を2030年から2040年に後ろ倒しする計画を発表し、反発を受けた。新たな目標は「より信頼でき現実的」かもしれないが、消費者は企業・ブランドにもっと透明性が高く緻密なコミュニケーションをとることを期待しているのだ。</p>
<p>そして、それが実際に大きな課題だということも証明されている。世界広告宣伝業連合(WTA)などは、マーケティング部門のサステナビリティの取り組みについて世界調査<a href="https://wfanet.org/leadership/planet-pledge/sustainability-2030/about">「サステナブル・マーケティング2030」</a>を行った。調査によると、グリーンウォッシュへの規制が強化されるなかでも、8割のマーケティング担当者は「企業はサステナビリティの取り組みの発信において、より積極的になる必要がある」と回答した。しかし、3分の1はそれを実行するための知識・スキルが不足していると答えている。</p>
<p>また、多くの企業・ブランドが、自社には伝えるに値するサステナビリティのストーリーがあると回答しているにも関わらず、能力ギャップは2021年の20%から35％に増加し、状況は後退している。サステナビリティをマーケティング部門のKPI(重要業績評価指標)と捉える企業が2021年の26%から現在の42％に増えていることを考えると、この傾向は大きな懸念事項だ。調査に協力した英カンターのオズレム・セントゥルク氏は「マーケティング担当者の94%が革新的な変化の促進に積極的に取り組みたいと考えているにもかかわらず、組織が未だににこれまでと同じように振る舞っていることは驚くべきことだ」と語っている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「主張の裏付け」というプレッシャーが高まる</h2>
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</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>この調査は、最近公表された英公認マーケティング協会による<a href="https://www.communicatemagazine.com/news/2021/greenwashing-fears-are-reducing-confidence-among-comms-teams-research-finds/">調査結果</a>とも関連する。半数の企業が「グリーンウォッシュだと揚げ足を取られ、非難される恐れがあるため、サステナビリティのキャンペーンを行うことは気が進まない」と回答した。</p>
<p>多くのサステナビリティ課題と同じく、グリーンウォッシュの問題を解決するのにも協働で取り組んでいくことがメリットをもたらす。まさに、クリエイターや代理店、サステナビリティに取り組む人たち向けに、サステナビリティ・コミュニケーションの新たなスキルを身につける支援を行う国際ネットワーク<a href="https://www.creativesforclimate.co/">「クリエイティブズ・フォー・クライメート(Creatives for Climate)」</a>の考えと同じだ。ホームページでは、トレーニングプログラム<a href="https://www.creativesforclimate.co/greenwash-watch-ondemand">「グリーンウォッシュ・ウォッチ(Greenwash Watch)」</a>のページを設け、反グリーンウォッシュの規制・決定について役立つ分析を紹介し、消費者に誤解を与えることのない信用できる戦略をつくるためのフレームワークも提供する。</p>
<p>広告の規制機関がより厳しい措置を科し、消費者監視団体もグリーンウォッシュに精通し、政府でさえも取り組みを強化するなか、企業が根拠を示すことなく環境に配慮していると主張する時代は終わりを迎えている。同時に、消費者との接点となるコミュニケーターには、自らの能力を高め、主張の裏付けを必ず行わなければならないというプレッシャーが高まってきている。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

EUが規制強化案を決議、グリーンウォッシュ時代が終焉へ　企業はマーケティングをレベルアップできるか

廣末智子

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/23/sekai800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>SDGs達成度が高い国ほど濃い色になっている</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>SDGsの目標達成年である2030年への中間地点に当たる今年、持続可能な未来に向けた世界の動きは大きく軌道から外れ、現時点では世界レベルで1つの目標も達成できないと予測される――。SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)などが毎年刊行している世界166カ国のSDGsに関連する取り組みを分析した報告書が21日、発表され、そんなショッキングな結果が示された。パンデミック以降、ロシアのウクライナ侵攻など複数の危機が生じたことで世界のSDGs指数は3年連続で後退し、予想以上に停滞していることがあらわになった形だ。報告書は「多くの途上国が巨額の資金不足に直面している。SDGsは本質的には投資課題であり、憂慮すべき状況にもかかわらず達成は可能」とした上で、SDGsの進捗を回復させるためには、パンデミックや戦争を集結させるとともに、「資金を確保するための国際的な協力が必要だ」とあらためて指摘。グローバル・ガバナンスと世界的な金融の構造改革の必要性を強調している。(廣末智子)</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>達成度ランキング：上位10位は欧州勢、どの国も満点に近づいていない</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>SDSNは、国連事務総長の後援のもと、世界的な科学技術の知見を結集し、2012年に設立されたネットワーク。SDGsが発効された2016年以降、毎年、世界各国のSDGsの進捗状況を『<a href="https://www.sdgindex.org/">サステナブル・ディベロップメント・レポート(持続可能な開発報告書)</a>』としてまとめ、各国のスコアをランキング形式で発表している。 </p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/23/index.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今回の報告書によると、2023年の国別達成度ランキングの1位はフィンランド(総合スコア86.8%)、2位スウェーデン(86%)、3位デンマーク(85.7%)とトップ3は北欧諸国で、例年通り、10位までを欧州勢が占めた。引き続き、欧州勢は「どの地域よりも多くの目標を達成する軌道に乗っている」とされる。一方、これとは対象的にレバノン(95位、67.5%)、ベネズエラ(117位、62.9%)、ミャンマー(125位、60.4%)、パプアニューギニア(148位、53.6%)、イエメン(163位、46.8%)では「最も多くの目標が間違った方向に進んでいる」という。</p>
<p>また国別のランキングについて、今回の報告書は、「SDGs に対する政府の取り組みとコミットメントが低過ぎて、どの国も満点に近づいていない」ことも指摘。国によって大きなばらつきがあり、発展途上国および新興国の中でもインドネシア(70.2%、75位)やガーナ(61.8%、122位)、ナイジェリア(54.3%、146位)など一部の国は積極的な取り組みを示している。さらに注目すべきは、SDGsに対する政治的および制度的リーダーシップに関して、低所得国と開発途上国は、高所得国よりも高い平均スコアを獲得したという。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本のSDGsの進捗は</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/23/japansdgs.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>赤は「最大の課題」、オレンジは「重要課題」、黄色は「課題が残っている」、緑は「達成できている」。進捗を示す矢印は、↑は「達成に向けて進んでいる」、↓は「後退」、→は「停滞」、↗︎は「適度に改善」を意味する</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本は166カ国中21位にとどまった。総合スコアは79.4%で、2019年の15位から2020年は17位、2021年は18位、2022年は19位と、徐々にランクとスコアともに落としている。毎年の傾向として、目標5(ジェンダー)、12(生産・消費)、13(気候変動)、14(海洋資源)、15(陸上資源)について大きな課題が残っているとされる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「世界的な危機と挫折」以降、進歩が停滞</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>さらに今回の報告書は、世界のSDGs達成度の指標を、パンデミック前の傾向と比べて分析。2015年から2019年にかけて、世界はSDGsに関してある程度の前進を見せていたものの、COVID-19によるパンデミックの発生と、ロシアのウクライナ侵攻といった「世界的な危機と挫折」が同時に起こって以降、進歩は停滞し、「パンデミック前に基づいた予測レベルを1ポイント下回っている」とした。このペースでいくと2030 年までに世界レベルで達成される目標はなく、高所得国と低所得国との間の格差が広がるリスクも予想されるという。</p>
<p>またパンデミック以降、2030年の目標達成に向けた動きが逆行している項目については、ウェルビーイングとワクチン接種へのアクセス、貧困、失業率などを挙げる。それによって目標1、2(貧困・飢餓をゼロに)と3(健康・福祉)は大きく軌道から外れてしまっており、11、12、13に関わる大気およびプラスチック汚染や14、15の海上・陸上資源も同様だとした。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>要因は途上国への慢性的な融資不足　金融に新しいメカニズムを</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>こうした憂慮すべき状況の要因として、報告書は「発展途上国および新興国に対する融資の慢性的な不足がある」と強調。世界的な金融構造の改革に向け、信用格付けシステムと債務の持続可能性の指標を改訂することや、国際協力の展開の質と速度を向上させ、オープンかつタイムリーな方法で進捗状況を監視するための新しいメカニズムを開発することなどを提案。具体的には、現在の投資パターンを変更し、世界の貯蓄を投資に回す、いわゆる『グローバル金融アーキテクチャ』を想定し、「2025年までに少なくとも5000億米ドル(約70兆円)の資金の流れを増やす」よう求めた。</p>
<p>世界的な金融改革を巡っては6月22日にパリで新グローバル金融協定のためのサミットが開幕。また今年9月にはニューヨークで国連加盟国がSDGs採択以来2回目の会合を開き、SDGs達成に向けての優先事項を定義することになっている。報告書はこれらに先立って発表されたもので、「現状では世界がSDGsの達成に向けた軌道から大きく外れてしまっているからこそ、残り7年間で進歩を加速させるため、すべての国連加盟国は世界規模で長期的な政策を採用すべきだ。SDGsへの投資と並行して、地球を脅かす活動への投資はやめる。世界人権宣言に基づく、すべての人々の権利の完全な実現のためにはパリ協定や昆明・モントリオール生物多様性枠組みといった世界的な目標が一緒に達成されなければいけない」と提言し、警鐘を鳴らしている。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

世界のSDGs達成度3年連続後退　パンデミック、ウクライナ侵攻などで軌道外れる 日本はランキングで21位に下降

川村 雅彦

コラム

【統合思考経営22】TCFD開示の国際比較から見えてきた日本企業の経営課題と解決方策(後編)～『TCFD開示の業種別・日米欧企業比較分析』より～

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>SB国際会議2023東京・丸の内</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/12/ditop800_1.JPG"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<p class="heading">Day1 　ブレイクアウト</p>
<div class="inner"> </div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本企業でも当然の価値観として広がりつつあるDE&amp;I(多様性、公平・公正性、包摂性)。最近ではこれにB(Belonging、帰属意識)というワードも加わり、企業としても社会としても、一人ひとりの人間がそれぞれの個性を発揮できるよう、時には伴走し、背中を押すようなリレーション(関係性)の構築が求められる。暮らしも働き方も急速に変化するなかで組織としていちばん大切にすべき「人的資本」の根幹を巡って、グローバル企業の担当者や社会起業家らが意見を交わした。（眞崎裕史）</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>ファシリテーター</strong><br />山岡仁美・サステナブル・ブランド国際会議 D&amp;Iプロデューサー<br /><strong>パネリスト</strong><br />朝山玉枝・イケア・ジャパン ピープル＆カルチャー カントリーピープル＆カルチャーマネジャー<br />河合将樹・UNERI 代表取締役CEO<br />武井浩三・社会システムデザイナー<br />山口有希子・パナソニック コネクト 執行役員 常務 CMO/デザイン部門担当役員/DEI担当役員/カルチャー&amp;マインド推進室 室長 </p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2022年は「人的資本経営元年」とも位置付けられた。初めにファシリテーターの山岡仁美氏は日本を取り巻く企業や社会、働き方の変化に触れ、「それぞれが個性を発揮してこそ、ヒューマン・キャピタル(人的資本)になっていくのではないか」と指摘。その上で、社内外でどのようなリレーション構築が重要かと投げかけ、セッションの口火を切った。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>経済成長よりも助け合いが重要</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/12/takei.JPG"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>武井氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>「上司、部下なし」の自律分散型組織を立ち上げるなど、約15年間にわたって「新しい経済と新しい社会をつくる」活動を実践する社会システムデザイナーの武井浩三氏は、リレーション構築のキーワードに「共感」を挙げた。人口減少社会では「経済成長」よりも「助け合い」が重要という観点から、代表取締役を務める非営利株式会社「eumo(ユーモ)」では、貨幣換算できない価値を資本とする「ギフトエコノミー」の構築に取り組み、例えば、自身が顧問として携わる養鶏場からは卵を、チョコレート会社からはチョコレートを現物報酬としてもらうなど、「お金がないと生きられない社会から人間性を取り戻す」ことに力を入れているという。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>環境に対する配慮においてもやはり軸になるのは「共感」で、ケニアから取り寄せた薔薇を販売する店では、薔薇1本に対して5円の寄付を募り、そのお金で毎月30本の植林をケニアで行い、CO2排出量をオフセットしている。中には5000円の花束を買って、1万円を寄付してくれる人もあるなど、「そういう取り組みが共感を呼び、人の活動が動いていく」のを実感しているようだ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>健全なカルチャーがないと企業は正しく動かない</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/12/yamaguchi.JPG"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>山口氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>日本を代表する大手企業であり、世界に３万人の従業員を有するパナソニック コネクトの山口有希子氏は、DE&amp;Iを推進する理由を「人権のためだ」と端的に表し、「どんなに良い戦略や組織能力があったとしても、健全なカルチャーがないと企業は正しく動かない。働いている人たち一人ひとりを、違いを含めて大切にしないと企業は存続できない」と力説した。<br />具体的には、LGBTQの人たちへの支援策として、日本では「同性婚を実現させなければいけない」ということを明確に表明するなど、さまざまなアクションを通じて従業員の行動変容を促している。男性の育休取得も5、6年前には数%にとどまっていたのが、実施を強化したところ3年で96.6%になるなど、大きな手応えも感じている。</p>
<p>もっとも大企業であればあるほど企業風土の変革にはトップの考え方、リーダーシップが欠かせない。昭和の成長戦略が染み込んでいる世代に向けては、D&amp;Iのトレーニングを通して気づきを促し、考え方や行動のアップデートにつなげることも。また、社員の状況を理解するためにも対話が必要で、「問題を放置しないカルチャー」の重要性を強調した。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>一緒に働く仲間から刺激を受け、日々感動も</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/12/asayama.JPG"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>朝山氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>一方、スウェーデン発祥でサステナビリティ先進企業ともされるイケアの日本法人、イケア・ジャパンから登壇した朝山玉枝氏は、「イケアでは仕事をする時、みんなと過ごす時、連帯感や環境と社会への配慮など、本当に大事にしているバリュー(価値)が8つある。このバリューができているかをいつもいつも確認しながら進めている」と話し、「人の力を信じている」と強調した。</p>
<p>2014年には「同一労働同一賃金」の取り組みを開始し、その際に「平等な機会創出」と「多様な人材の受け入れと活用」、「長期的な関係構築の保障」の3つを柱に据えたことを説明。これがあることで「みんなが人として尊重され、そのなかで、さあ次に何をしようかなという前向きな気持ちで毎日が進んでいく」という。それぞれがライフステージやその時々の意思によって職場でのポジションを決める仕組みで、「スキルが高い人よりもバリューに共感できる人を採用している」のも特徴だ。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>朝山氏自身、日本でのイケアの1号店ができてから約18年間勤めるなかで、「一緒に働く仲間から刺激を受け、感動して目頭が熱くなることも結構ある」と同じバリューを持つことの意味を熱弁。DE&amp;Iの推進においては、各店舗でコワーカー(従業員)のファミリーデイを設け、家族を呼んで「イケア」を体験してもらう取り組みにも力を入れているという。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>出会いをきっかけに成長する循環の仕組みを</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/12/kawai.JPG"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>河合氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>最後に登壇したUNERIの河合将樹氏は、社会起業家の支援を通したエコシステムづくりに奔走している。同社のミッションは「誰もが自分の道を歩めるような社会をつくっていきたい」。まだ20代で自身を「ぎりぎりZ世代」とする河合氏は活動にかける思いを「これからは共助によるビジネスモデルの必要性がめちゃくちゃ増す。つまり社会起業家の、民間起点で共助の仕組みをつくるプレイヤーの需要が高まるからだ」と話した。</p>
<p>起業家を支援する上で最も重要視しているのはソーシャル・キャピタル(社会関係資本)で、資金調達の直接的なサポートではなく、関係性を付与する「触媒機能」の役割に重点を置く。これは簡単に言うと、「出会いがきっかけになって成長していく。そんな循環の仕組みをつくること」であり、省庁や自治体と、起業家との間に同社が立ち、「それぞれの暗黙知を翻訳して関係性を紡いでいる」という。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>人的資本を生かす上で、どのようなリレーション構築が必要かという問いに対して、河合氏は「会社組織は階層よりも波紋に近い」とする考えを述べ、「大きな会社ほど誰が意思決定しているのかが分からなくなることもあると思う。大事なのは、会社というキャンバスに誰が最初に水を落とすか。年齢や役職に関係なく、最初に水を落とした人をみんなでエンパワーメントしていく。一人一人が波紋を起こしていくことで、結果的に触媒が連鎖し、関係性が構築され、組織が良い方向へ変わっていくのでは」と展望を語った。</p>
<p>セッションは最後に「DE&amp;Iの、そして人的資本経営の根幹になければならないのは何か」とする質問が投げられ、山口氏は「人に対する愛」、河合氏は「自分が本当にやりたいからやる、という人が増え続ける世の中になればいい」、朝山氏は「一人一人が尊重される会社でいたい」、武井氏は「地球とともに調和しながら生きる。自然の摂理に則って営む」と、それぞれに持論を披露。山岡氏が、「どんなに素晴らしいソリューションであっても、人のあり方で全く意味のないことになってしまう。人の集合体の社会や企業として、根幹をぶれずに推進していくことが重要だ」としめくくった。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ウェルビーイング

社会 social

ダイバーシティー

DE&Iをぶれずに推進していくために。大切にすべき「関係性の構築」とは

箕輪弥生

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>SB国際会議2023東京・丸の内</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/16/kakushin800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<p class="heading">Day1  ブレイクアウト</p>
<div class="inner"> </div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>加速する気候変動への対応や、循環型社会の実現など、企業が対応すべき課題がこれまでとは大きく変わってきている今、サステナブルなイノベーションを進めるにあたって必要となる新たなビジネスモデルとはどのようなものだろうか――。本セッションに登壇する3社は保険業にリユース業、化学品メーカーと、分野も業態も全く違うが、それぞれに他業種の企業や研究機関と協働して循環するエコシステムを構築している。それらの実例を通して、エコシステムをつくる上での課題や重要なポイントを議論した。 (環境ライター 箕輪弥生)</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>ファシリテーター</strong><br /> 山吹善彦・サンメッセ/サンメッセ総合研究所(Sinc)副所長<br /><strong>パネリスト　</strong><br />寺崎康介・MS&amp;ADインターリスク総研 リスクマネジメント第三部 サステナビリティ第一グループ グループ長・上席研究員<br />堀内康隆・ブックオフグループホールディングス 代表取締役社長<br />六田充輝・ダイセル 執行役員 事業創出本部 本部長 兼 バイオマスイノベーションセンター長</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>気候変動や生物多様性のリスクと機会を研究機関と分析し、企業をサポート―MS&amp;ADインターリスク総研</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/16/msad.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>寺崎氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>最初に登壇したのは、MS&amp;ADインターリスク総研の寺崎康介氏だ。同社は三井住友海上火災など損害保険会社のグループ会社として、気候変動や生物多様性、自然資本のリスクなど、どこにどんなリスクがあるのか見つけ、発現を防ぎ、影響を緩和する、または経済的な負担を減らすといったリスクマネージメントを行う。</p>
<p>具体的には、気候変動によるリスクを、世界の平均気温が産業革命前から4度上昇した場合には500年に一度起こる洪水の浸水が何メートルに達するかというように、河川の洪水や高潮、豪雨や山火事、干ばつなどの災害ごとに定量化するサービスなどを通じて、企業のニーズに応えている。これらのデータは金融機関の融資や投資のポートフォリオにも使われ、昨今ではTCFD（気候関連財務情報開示タスクフォース）やTNFD（自然関連財務情報開示タスクフォース）の提言に沿った企業の取り組みをサポートするケースも多い。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>そうした気候変動や自然資本のリスク分析を、同社は琉球大学発のベンチャー企業や芝浦工業大学や東京大学の専門的知識を持つ組織との協働で行ってきた。さらに昨年11月には三井住友フィナンシャルグループとの間で、自然資本と気候変動分野における提携を発表。それぞれの専門性やネットワークを活用して協業を深めるなかで、「ネイチャーポジティブコンソーシアム(仮称)」を設立し、そこではネイチャーポジティブ実現のためのソリューションを持つ企業や研究機関、研究者が集まり、自然資本に関わる課題解決に向けた調査や研究をさらに深めるという。</p>
<p>寺崎氏は「TCFDやTNFDといった枠組みは道具にしか過ぎず、ただテクニカルに対応するのでは本来の目的からずれてしまう。そうではなく、それぞれのリスクや機会を全社の戦略や意思決定に組み込んでいくかが大事であり、保険会社としてそうした本来のあり方に有機的につなげていきたい」とする考えを示した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>不要なものを価値につなげるビジネスモデルを海外にも広げる――ブックオフグループ</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/16/book01.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>堀内氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>次に登壇したブックオフグループホールディングスは、国内に790店舗をもち、書籍だけでなくあらゆるもののリユースを推進する小売り企業だ。書籍の再販売は良く知られているが、実際の販売割合では書籍は3割を切り、ファッション・スポーツ用品や家電・生活雑貨などが31％、ソフトが26.2%、カードゲーム・ホビーが13.3％という販売構成だという。</p>
<p>このうち国内で販売できなかったものは、マレーシアなどの海外店舗での販売も始めた。こちらも需要が高く、年間2600トンを販売する実績をもつ。<br />さらに、国内事業者との連携により、買い取り後に一定期間販売に至らなかった書籍をリサイクルして作られた古紙からプライベートブランド商品を作ったり、販売できなかったCDを再生プラスチックにするなど、資源の循環にもチャレンジしている。</p>
<p>同社社長の堀内康隆氏は、「集まるすべてのものに価値があるとみなして回収し、従来は廃棄物として処理していたものをグローバル展開やパートナーシップによって再資源化し、CO2の排出抑制にも貢献している。リユース業界に限らず、物が残っている場所、集まる場所にアプローチし、経済活動をより大きく広げていきたい」と展望を語った。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>化学技術でエコノミーとエコロジーを両立させる循環を構築――ダイセル</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/16/daisel01.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>六田氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>最後に登壇したダイセルはメディカルヘルスケアからプラスチックまでの製造を扱う大手化学品メーカーだ。100年以上前から木材を主原料とするセルロイドを生産する企業としてスタートし、今ではセルロース化学、有機合成化学、高分子化学など事業領域を大きく広げている。</p>
<p>同社執行役員の六田充輝氏は、「石油由来ではないプラスチックであるセルロイドを開発してきた原点を忘れずに、今はより効率的に省エネで自然に負荷をかけない原材料を入手することを目指している」と説明。具体的には、大学の研究機関などとも連携して木質素材から、循環する新しいバイオマスプロダクトツリーを構築し、今までなかった新しい素材を作り出している。</p>
<p>そこでは例えば、バイオディーゼルの廃棄物をケミカルリサイクルすることで、タイヤに使われるゴムの原料となる気体をつくるなど、「エコノミーとエコロジーを両立させる」（六田氏）ための化学技術を進化させているのが特徴だ。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>志を同じくするパートナーを見つけ、バトンを渡していく</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/16/yamabuki.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>山吹氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>ファシリテーターの山吹善彦氏は3社の実例を聞いたうえで、イノベーションのためのエコシステムを機能させるために重要なポイントや課題を問うた。</p>
<p>ブックオフの堀内氏は「何を目指しているか、志を同じくするパートナーを発見することが重要で、自分たちの利だけを考えると実現しない」とした上で、「経営としても腹決めをして粘り強くやっていくこと、時間をかけて取り組んでいくことが大きな課題だ」と決意を表明。</p>
<p>MS&amp;ADインターリスク総研の寺崎氏は「大学などの研究機関との協業では、研究だけでなく、社会実装のためにこういうことが必要なのだと同じ方向を向いてもらうことが必要」と強調し、「これまで気候変動に関する研究では、企業が使うことは想定していなかったが、今はニーズが増加していて、人材の育成も急務」と付け加えた。 </p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ダイセルの六田氏は、「研究機関は特定の分野に突出しているので、企業と大学間でお互いに補完しながら新しい価値をつくっていくこと」と指摘。その上で「手を挙げてくれるところと一緒にやろうというのでなく、積極的に一緒にやりませんか？と進める。それぞれにプレイヤーが役割をちゃんと果たして循環を回す。バトンは受け取りやすいようにする」と協働の大切さを口にした。</p>
<p>最後に山吹氏は、「エコシステムを構築していく上で、研究機関やパートナー企業と信頼関係をつくり、同じ志をもってバトンを渡していくことが重要だと分かった。パートナーシップでいろいろなことが成し得る」と締めくくった。　</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

サーキュラーエコノミー

経済 economy

循環型のイノベーションを進めるために欠かせない、協働するエコシステム

細田 悦弘

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/17/49top.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「雑草という草はない」という心にしみる名言。NHK朝ドラ「らんまん」が好評放映中です。モデルは、日本の植物分類学の父と称される牧野富太郎博士です。持って生まれた才能や生きざまはもちろん秀逸ですが、その『出で立ち(いでたち)』も含め、この主人公からブランドのエッセンスを垣間見る(かいまみる)ことができます。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「らんまん」のモデル・牧野富太郎</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>NHK朝ドラ「らんまん」は、春らんまんの明治の世を舞台に、夢を追いかけて天真らんまんに駆け抜けた天才植物学者の波瀾万丈の物語です。モデルは高知県出身で、日本の植物分類学の父と称される牧野富太郎博士です。主人公の槙野万太郎を神木隆之介さんが好演しています。</p>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/17/ranman01.jpeg"/></div>
<div class="elem_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>江戸時代末期、万太郎は高知で酒造業を営む裕福な商家の一人息子として生まれました。少年の頃、体が弱くいじめられていましたが、植物の魅力に没頭し秘めた才能を発揮するのでした。草木を見つけるために毎日野山を歩き回ったおかげで、健康で丈夫な体に育ちます。</p>
<p>そして小学校を中退しながらも独学で植物学を学び、一念発起し、東京大学植物学教室へと進みます。助手として働くことになった万太郎はまるで水を得た魚のように研究に明け暮れて、次々と新種を発見し学名をつけていきます。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/17/ranman02.jpeg"/></div>
<div class="elem_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>しかし、その活躍に嫉妬する周囲の人々から理不尽な目にあったり、さまざまな苦難が降りかかります。<br />それでも愛する植物のため、「<u>日本独自の植物図鑑を編さんする</u>」という壮大な目標実現のため、さまざまな苦難にみまわれますが、万太郎は情熱を失うことなく一途に突き進んでいきます。</p>
<p>このような、ひたむきに道を究める主人公に視聴者は魅了されますが、そこには<u>「ブランディング」のエッセンス</u>が詰まっています。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>主人公の『見た目』は、ブランドの重要ファクター</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>朝ドラファンの心をつかむ、「らんまん」の主人公・槙野万太郎。回を重ねるにつれ、イントロで神木隆之介さんが『正装』で登場すると、この先のドラマの展開が待ち遠しくワクワクします。その姿はドラマに『花』を添え、彩を与え、エンターテインメント性を醸し出しています。さまざまな出来事が身に降りかかると、『きっと、彼ならこうして乗り越えるだろう』という『期待』が沸き上がり、『やっぱり、彼らしいなぁ』と和みます。この『<u>期待』と『らしさ』こそが、ブランディングの躯体</u>(くたい：基盤となる骨組み)です。</p>
<p>「ブランディング」とは、ブランドをつくり上げ、マネジメントをしながら、さらにいっそう強くしていく一連の活動です。そのためには、ありたい姿である『らしさ(Brand Identity)』を鮮明にし、それに<u>『期待』を寄せるステークホルダーとの『約束』を一貫して守り続ける</u>ことが鉄則です。</p>
<p>そして、ステークホルダーからすれば、企業に期待をするに際して、『目印』となるのがシンボルマークやロゴです。そのブランドを象徴するデザイン要素一式のことを「<u>ビジュアルアイデンティティ(Visual Identity)</u>」といい、略すと一般的に「VI」とされます。「らしさ」をシンボライズした(象徴した)ものが、VIといえます。VIは、ブランドが目指す姿(らしさ)を瞬間で伝える威力を発揮します。</p>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/17/ranman03.jpeg"/></div>
<div class="elem_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>すなわち、<u>『見た目』(VI)は、ブランドの重要なファクター</u>となります。ドラマ主人公・万太郎が植物採集等の活動をする時の出で立ち(いでたち：服装、衣装)は、基本的に『正装』だったそうです。モデルとなった牧野富太郎博士は、若い頃から晩年まで、いつも『きちんとした』洋服を着ている写真が残っています。フィールドワークで服が汚れないかと心配になりますが、「<u>恋人である植物に会うのだから</u>」と野山に出かける際にオシャレをしていたという逸話があります。大好きな植物に常に真剣に向き合っていたことが伝わってきます。ブランドの必須条件である『こだわり』の発露(はつろ)です。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>これこそが、牧野富太郎ファンにとっての「ビジュアルアイデンティティ(Visual Identity)」といえます。<br />彼のVIである佇まい(たたずまい)から、彼の人格・人柄・個性・卓越した能力等を連想し『<u>期待</u>』します。そして常にそれに応え、『<u>約束</u>』を守り続けるところに『牧野富太郎ブランド』は成立します。『正装』は、彼のブランドが化体(かたい：形のないものを具体的に感知できるものにする)されたものといえます。企業のシンボルマークやロゴと同じ機能を果たしています。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「雑草という草はない」</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ドラマの印象的な場面で、主人公の「<u>雑草という草はない</u>」という重厚なセリフが刺さりました。東京の住まいとなった根津の十徳長屋で万太郎は、「雑草ゆう草はないき。必ず名がある。天から与えられ、持って生まれた唯一無二の名があるはずじゃ」と言いました。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/18/sashikae.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>高知のシーンでも、「名も無き草はこの世になし」と説いています。自由民権運動の演説会で、弁士が「雑草は役立たず」と発言したことに対し、万太郎は「それは違う」と、下記のように反論しました。</p>
<p>「名もなき草らあはこの世にないき」<br />「どんな草やち、同じ草らあひとっつもない！一人ひとりみんなあ違う。生きる力を持っちゅう！」</p>
<p>このメッセージを現代社会において敷衍(ふえん)して解釈すれば、今日の「<u>ダイバーシティ・エクイティ＆インクルージョン(DE&amp;I)</u>」の真髄にも相通ずるものがあります。<br />そして第9週45回において、<u>「日本中の植物を載せた植物図鑑を作る」という夢(パーパス)</u>に裏打ちされた心に響く土佐弁の名ゼリフが発せられました。このフレーズは、彼の『らしさ』の根幹と受け止めることができます。</p>
<p>「やるべきことがあります。自分で決めた仕事ですき。それを放り出してしもうては、わしがわしではのうなります」</p>
<p>植物学者・牧野富太郎博士の植物をこよなく愛し自然を慈しむ(いつくしむ)『らしさ』満載の情熱的な生き方は、私たちの心を打ち、現代の生物多様性等の尊重にも通じ、<u>時空を超えたサステナブルブランディング</u>が体現されているといえましょう。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ファイナンス

第49回　『らんまん』主人公に学ぶ！時空を超えたブランド・エッセンス

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>なぜ今、『統合思考経営』なのか？<br />～ESGを踏まえた長期にわたる価値創造のために～<br />第21回</strong></p>
</div>
<div class="elem_paragraph right">
<p><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/index.html"><strong>SBJ Lab Senior Practitioner of Integrated Thinking</strong></a><br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/index.html"><strong>サンメッセ総合研究所(Sinc)所長/首席研究員　川村雅彦</strong></a></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/14/kawamurasantop_1_1_1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>前回(第20回)は、「TCFD開示の国際比較分析」の『前編』として、分析結果の全体感を述べました。今回は『中編』です。まず、国際比較分析から判明した日本企業のTCFD開示の現状を確認します。そのうえで気候関連のリスクと機会に関する、日本企業の構造的な経営課題として3点を指摘します。問題提起です。</p>
<p>(注)前回の稿末に、次は『後編』と書きましたが、少し編集して『中編』と『後編』に分けます。</p>
<p>なお『後編』の最後でも述べますが、<strong>TCFDの気候関連財務情報開示の「気候」を「サステナビリティ」に置き換えると、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の</strong><strong>「サステナビリティ関連財務情報開示に関する全般的要求事項(IFRS S1号)</strong>」になります。日本企業がTCFD開示で判明した経営課題を抱えたままISSBに臨むと、「<strong>大変なことになる</strong>」予感があります。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本企業のTCFD開示で、評価が低いのは何か？</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■ガバナンスとリスクマネジメントで評価が低い日本企業</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>改めて国・地域別にTCFD開示の推奨開示項目のスコアを見ると、日本企業は全体に評価が低いことがわかります(図表1)。中でもスコアが低かったのは以下の3点です。<strong>①「ガバナンスa)」の取締役会の監督、②「戦略b)」の気候リスク・機会の影響、③「リスクマネジメントb)c)」のリスクマネジメント・プロセスとERM</strong><strong>(Enterprise Risk Management</strong><strong>：全社統合型リスクマネジメント)</strong><strong>への統合</strong>。つまり、ガバナンスとリスクマネジメントが、日本企業にとって改善を要する分野だということになります。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表1 TCFD開示の推奨開示項目スコア(国・地域別)</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/22/0101.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>　　　(注)スコアの下線は各推奨開示項目での最低値を示し、楕円は特に日本企業の低評価を示す。<br />　　　<a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/1215298_2675.html">「前編」の図表6参照</a>。<br />　　　(資料)筆者作成</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>そこで、TCFD開示におけるガバナンスとリスクマネジメントについて、評価の高い企業の特徴を見てみます。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■評価の高いガバナンス態勢：「監督」と「執行」の分離、取締役会に気候の専任委員会</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>図表2にガバナンス評価の上位9社を示します。1位はTSMCとBPで、8位までを欧州と米国の企業が占めました。これらの企業はいずれも、<strong>取締役会の「監督」と経営陣の「執行」の機能分離が明確であり、取締役会とその専任委員会が、気候変動問題の方針決定に高次のリーダーシップを発揮している</strong>ことが読み取れます。</p>
<p>9位のリコーGはマネジメント・ボード型態勢です。<strong>マネジメント・ボード</strong>とは、日本企業に多いガバナンス形態で、取締役会が監督と執行の両機能をもち、業務執行の意思決定を重視する取締役会モデルです。これに対比されるのが<strong>モニタリング・ボード</strong>で、経営陣の業務執行に対する監督に専念するため、取締役会の構成は社外取締役が中心となります。<strong>欧米では多くの上場企業が後者を採用しており、TCFDもこちらを前提としています</strong>。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表2 TCFD開示における「ガバナンス」評価の上位9社と特徴</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/22/0202.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>　　　　　　　　　　(資料)各社のTCFD開示資料を基に筆者作成</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■評価の高いリスクマネジメント態勢：気候リスクの財務インパクトの検証とERMへの統合</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>次に、リスクマネジメント評価の上位10社を図表3に示します。TSMC、マイクロソフト、リコーGが同率1位ですが、半数を欧州企業が占めました。これらの企業は、<strong>気候関連リスク・機会による事業・戦略インパクト、さらに財務インパクトを検証し、ERMに統合している</strong>ことがわかります。ちなみに今回分析した日本企業の中には、ERMを明示的に表記するところはありませんでした。</p>
<p>ここでERMを簡単に説明します。ERMとは、企業目的を明確にして、あらゆる経営リスクを全社的視野で統合的・包括的に把握・評価し、ポートフォリオ効果によるリスク分散を狙うリスクマネジメント手法です。一般にはリスク・マトリックス(リスクの発生頻度と経営影響度)を基に、リスク・ポートフォリオを作成します。<strong>今回多かったERMの要素は、戦略・財務・オペレーション・ハザードのリスク側面でした。</strong></p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表3 TCFD開示における「リスクマネジメント」評価の上位10社と特徴</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/22/0303.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>　　　　　　　　　　(資料)各社のTCFD開示資料を基に筆者作成</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>TCFD開示から見えてきた、日本企業の気候変動対応の現状と経営課題</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■TCFD開示の国際比較からわかる、日本企業の気候変動対応の現状</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>TCFD開示の国際比較分析の結果を総合すると、<strong>日本企業に共通する気候関連リスク・機会に関する態勢や取組の現状(現在の到達点)</strong>は、以下の4点です。ただし、“開示なきは実践なし”を前提としています。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/22/0404.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>既にお気づきのことと思いますが、<strong>このような日本企業の気候変動対応の現状は、もはや開示の巧拙の問題ではなく、そのまま経営課題である</strong>と言うことができます。そこで次に、評価の高い企業の態勢や取組を参考にして、経営課題とその解決方策を考えてみます。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■日本企業にはTCFD開示以前の三つの経営課題</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>上記のTCFD開示から見えてきた日本企業の現状を踏まえると、<strong>日本企業の気候関連リスク・機会に関する経営課題は、TCFD開示以前の問題として、以下の3点に集約できます</strong>。これらは、いずれも構造的な経営態勢の問題です。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/22/0505.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>以下では、各課題について現状と解決方策を説明します。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>課題1：気候リスク・機会について取締役会による監督の関与が不十分である。</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>➡解決方策：気候問題に対するガバナンス(監督)態勢の強化</strong><br /><strong>➡➡具体策：取締役会内に意思決定を委任された気候戦略・リスクの専任委員会の設置</strong></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■大事なことは、取締役会内に気候専任委員会の設置</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>評価の高い海外企業では、「監督」と「執行」の双方において、それぞれ気候関連リスク・機会に対応する態勢とプロセスを詳細具体に記述しています。これに対して、<strong>日本企業では執行側の仕組の説明が中心で、監督側の記述は限られています</strong>。この背景には取締役と執行役(員)が重なるマネジメント・ボード構造があり、「取締役会の実効性評価」にも関わるものと考えられます。</p>
<p>取締役会は執行側から上程された提案や報告を審議するだけでなく、時代の潮流を踏まえて、モニタリング・ボードとしての機能を発揮することが求められています。<strong>その機能を担うのは、意思決定を委任された専任委員会</strong>です(図表2参照)。実際、国際的な主要株価指数である米国のS&amp;P100や英国のFTSE100の構成銘柄(企業)では少なからず設置されています。ある米国企業では、取締役会内の専任委員会は独自の見識と人脈をもち、執行側とは一種の緊張関係にあると言われています。</p>
<p>今回の分析における日本企業で、気候に関する専任委員会を取締役会内に設置している企業はありませんでした。今後、気候関連リスク・機会とその財務インパクトについては、これまで以上に高次の経営判断が求められます。それゆえ、<strong>日本企業は取締役会の監督態勢強化のために、取締役会内に気候戦略・リスクについて独自の視点から意思決定のできる専任委員会を設置すべき時が来た</strong>、と言うことができます。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■日本企業で散見される取締役会内の「諮問機関」</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>気候専任委員会とは異なりますが、日本企業では<strong>取締役会への答申や提言を任務とする任意の諮問機関を取締役会内に設置</strong>する事例が散見されます。指名委員会等設置会社では指名・報酬・監査の3委員会とは別に、ブリヂストンの「ガバナンス委員会」(全委員が社外取締役)、味の素の「サステナビリティ諮問会議」(議長は社外有識者)の例があります。監査役設置会社では、リクルートの「サステナビリティ委員会」(委員長はサステナビリティ担当取締役)、丸井グループの「サステナビリティ委員会」(委員長は社外有識者)があります。</p>
<p>また、トヨタ自動車(監査役設置会社)には取締役会とは別に、<strong>社外取締役・社外監査役も参加する「サステナビリティ会議」</strong>(議長は取締役会議長)があり、企業の持続的成長に向けて社会目線で監督するとともに、ガバナンス体制について審議しています(同社のコーポレート・ガバナンス報告書：2023年4月10日更新より)。</p>
<p>このような<strong>日本企業の独自の取組が、上記の(気候に限らない)専任委員会と同等の監督機能を果たしうるのかどうか</strong>、情報開示の工夫も必要ですが、投融資家などとのエンゲージメントの際に、その実効性が問われることになると思います。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■TSMCの気候ガバナンス態勢：監督と執行の双方に複数の気候関連委員会</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本進出で話題となった世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である台湾のTSMCは、TCFD開示でガバナンスとリスクマネジメントの両方で最も高いスコアを獲得しました(総合評価も最高位)。そこで気候ガバナンス態勢の先進事例として、同社の気候変動に関する「監督」と「執行」が連携した枠組をみてみます。</p>
<p>その特徴を端的に言えば、以下のようになります。<strong>TSMCは、役割と責任を明確にして意思決定を委任された委員会を取締役会(監督側)と経営陣(執行側)に多層的に配置し、双方が連携して気候変動対策にリーダーシップを発揮できる実効的なガバナンス態勢を整えています</strong>(図表4)。この枠組はマネジメント・ボードとモニタリング・ボードの折衷的な態勢ですので、日本企業には参考となるのではないかと思います。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表4 TSMCの気候変動に関するガバナンスとマネジメントの枠組</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/22/06n.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(資料)TSMC「2021 TCFD Report」(p6-p11)を基に筆者作成<br /><a href="https://esg.tsmc.com/download/file/TSMC_TCFD_Report_E.pdf">https://esg.tsmc.com/download/file/TSMC_TCFD_Report_E.pdf</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■TSMCの気候対策を監督する2つの専任委員会、さらに監査委員会と報酬委員会も</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>TSMCは<strong>取締役会の中に、気候変動対策を監督し意思決定する2つの委員会を設置</strong>しています。</p>
<p><strong>・ESG</strong><strong>運営委員会</strong>：気候変動対策の最高意思決定機関と位置付けられ、会長が議長を務める。<br />・<strong>リスクマネジメント運営委員会</strong>：全社的なリスク管理を監督し、気候変動に関するリスクマネジメントの審査と承認を担う。<br />さらに、取締役会直下の「監査委員会」と「報酬委員会」も気候問題に関わっています。</p>
<p><strong>・監査委員会</strong>：オペレーショナル・リスク全般を統括し、水不足・電力不足・自然災害などの気候関連リスクの優先順位を見直す。特に<strong>サプライヤーのリスクレベル別・材料別の洪水リスクマップ</strong>は他に例をみない。<br /><strong>・報酬委員会</strong>：気候変動を含むESG成果に応じた経営陣の業績連動型報酬の評価に責任をもつ。<br />他方、執行側にも監督側の委員会と密接に連携する気候関連の委員会が三つあります。</p>
<p><strong>・省エネ・炭素排出削減委員会</strong>：グループ全体の排出削減進捗を管理する。<br /><strong>・ESG</strong><strong>委員会</strong>：気候施策の部門間プラットフォームとして機能し、気候リスクの識別と管理を担当する。<br />・<strong>リスクマネジメント執行審議会</strong>：短中長期の時間軸による「気候リスク・機会マトリックス」を作成する。</p>
<p>『中編』はここで終わります。次回の『後編』では日本企業の「課題2」と「課題3」について、それぞれの現状と解決方策を説明します。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph right">
<p>(つづく)</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/1215298_2675.html">【統合思考経営20】TCFD開示の国際比較から見えてきた日本企業の経営課題と解決方策(前編)～『TCFD開示の業種別・日米欧企業比較分析』より～</a></p>
</div>
<p></div>
<p></p>

【統合思考経営21】TCFD開示の国際比較から見えてきた日本企業の経営課題と解決方策(中編)～『TCFD開示の業種別・日米欧企業比較分析』より～

SUSTAINABLE BRANDS

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/14/1.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit: Creatives for Climate</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
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<div class="elem_paragraph">
<p>世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」が6月19日に開幕する。広告業界では近年、広告の内容のみならず、制作過程における環境負荷の低減などサステナビリティの実践がより一層求められるようになっている。クリエイティブ業界の気候変動への取り組みを促進するオランダのNGO<a href="https://www.creativesforclimate.co/">「Creatives for Climate(クリエイティブズ・フォー・クライメート)」</a>は、グリーンウォッシュ問題に根本から取り組む“チェンジエージェント(変革の促進者)”の連携を強化・拡大することを目指し、昨年に続いて仏カンヌで新たなツールを発表する。(翻訳・編集＝小松はるか)</p>
<p>2019年に設立されたCreatives for Climateは、世界中で消費者とのコミュニケーションに携わるさまざまな人たちに向け、気候変動対策に取り組むためのスキルやツールを提供する団体だ。広告業界では、サステナビリティに関するコミュニケーションを行う上で必要となる知識やスキルが不足し、能力ギャップの拡大が課題となっており、そうした状況に対処する狙いがある。Creatives for Climateのメンバーらは、グリーンウォッシュを監視するために新たに開発したツール「グリーンウォッシュ・スウォッチ(グリーンウォッシュ見本)」を携えてカンヌライオンズを隅々まで歩き回り、「広告業界の気候変動対策」という話題が参加者らの会話の中心になるよう目指す。</p>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/06/14/2.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit: Creatives for Climate</sup></div>
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<p>グリーンウォッシュ・スウォッチは、英国の金融系シンクタンク「プラネット・トラッカー」が制作した枠組みをもとにつくられている。昨今は<a href="https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1213751_1532.html">グリーンクラウディング、グリーンリンシング、グリーンシフティング</a>などの新たなグリーンウォッシュが生まれている通り、ますます複雑になるグリーンウォッシュを識別するためのツールだ。手のひらサイズで色見本帳のような形をしており、グリーンウォッシュの種類を簡単に判別できるようになっている。企業・ブランドの責任について会話が広がるように、シンプルで興味を引くデザインになっているのが特徴だ。</p>
<p>Creatives for Climateの創始者兼会長のルーシー・フォン・スターマー氏は、「私たちがいくら環境・社会に良い影響をもたらすためにクリエイティビティを活用していくことを目指していても、業界として、悪影響をもたらすクリエイティビティに対して立ち向かわないのであれば何の意味もありません。グリーンウォッシュに対して立ち上がるということは、取り組みの遅れや徐々に違法になってきている企業・ブランドの行動に対して立ち上がるということです。残念ながら、グリーンウォッシュを行う代理店や企業・ブランドは増えており、カンヌライオンズでは道義に反した行為を多く目にすることになると考えています」と注意を喚起する。</p>
<p>Creatives for Climateは開催期間中、気候変動対策に取り組み、化石燃料関連の企業と仕事をしないことを誓約する580社の広告代理店により結成された「Clean Creatives(クリーン・クリエイティブズ)」と連携し、イベント<a href="https://www.eventbrite.nl/e/change-agent-happy-hour-tickets-647915070417">「チェンジ・エージェント・ハッピー・アワー」</a>(6月20日火曜日19:00〜20:30)を開催する。ここでもグリーンウォッシュ・スウォッチを配布する予定だ。</p>
<p>このほか、オランダのクリエイティブ産業の世界展開を支援する<a href="https://embassyofdutchcreativity.com/">「Embassy of Dutch Creativity(エンバシー・オブ・ダッチ・クリエイティビティ)」</a>が会場で開催するイベントのなかで、「気候危機に取り組むことは、人材危機に取り組むこと」と題したトークセッションを主催する。セッションでは、企業や代理店のリーダー、草の根活動家、起業家など業界のいろいろなアクターに光を当て、「気候危機の解決は人材危機の解決になりうるか」「気候危機の解決のためにスキルアップやリスキリングすることは、より良い代理店や企業・ブランドづくりにつながるのか」といったテーマを深掘りしていく。</p>
<p>Creatives for Climateはカンヌライオンズの開催期間中、オンラインで「グリーンウォッシュ・スウォッチ」を利用した参加者に対し、有料のトレーニングツール<a href="https://www.creativesforclimate.co/academy">「グリーンウォッシュ・ウォッチ・トレーニング」</a>を無償提供する予定だ。</p>
<p> <sup>(編集部注：記事内の日時は全て現地時間)</sup></p>
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オランダのNGO、6月19日開催のカンヌライオンズでグリーンウォッシュを監視　新開発のツールも配布

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テーマ / 経営 management

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