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廣末智子

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/26/world800.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>2024年の世界レベルでのSDGs17目標の進捗状況を示したダッシュボード。濃い赤は「主な課題」、オレンジは「重大な課題」を表している</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2030年までに世界レベルで達成できる目標は1つもなく、進捗しているのはSDGsのターゲットのわずか16%に過ぎない――。このほど発表された<a href="https://s3.amazonaws.com/sustainabledevelopment.report/2024/sustainable-development-report-2024.pdf">SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)などの分析による世界166カ国のSDGsに関連する2024年版の報告書</a>で、世界のSDGsの取り組み指数が2020年以降、停滞していることが改めて分かった。中でも目標2の「飢餓をゼロに」は、栄養の偏りの問題を含めて見た時にいずれの国連加盟国も達成しておらず、持続可能な食料と土地利用が世界共通の大きな課題として浮上している。日本は全体としてやや改善し、前年の21位から18位にランクが上がった。(廣末智子)</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>17目標169ターゲット中、世界レベルで達成されているのは16%<br />2030年までに達成できる目標は1つもないと推測</h2>
</div>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>SDSNは、国連事務総長の後援のもと、世界的な科学技術の知見を結集し、2012年に設立されたネットワーク。SDGsが発効された2016年以降、毎年、世界各国のSDGsの進捗状況を『サステナブル・ディベロップメント・レポート(持続可能な開発報告書)』としてまとめ、各国のスコアをランキング形式で発表している。</p>
<p>2024年版の報告書によると、世界レベルでのSDGsの進捗は、2020年以降停滞している。SDGsの17目標169ターゲットのうち、達成されているターゲットは16%に過ぎず、残りの84%は、2030年にそれを達成するには不十分であるか、あるいは逆行している。これらを踏まえ、現状では、「2015年にSDGsが採択されてからの進捗率に基づいて、2030年までに達成される目標はないことが推測される」という。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>目標2「飢餓をゼロに」は国連加盟国のどの国も達成していない<br />持続可能でない農業と、食生活の組み合わせが原因と指摘</h2>
</div>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>17目標のうち特に進捗が遅れているのは、次の6つ。</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>・目標2「飢餓をゼロに」<br />・目標3「すべての人に健康と福祉を」<br />・目標11「住み続けられるまちづくりを」<br />・目標14「海の豊かさを守ろう」<br />・目標15「陸の豊かさも守ろう」<br />・目標16「平和と公正をすべての人に」</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>中でも今回の報告書では、栄養不足に加え、栄養の偏りに起因する「肥満率」の高さなども課題に含む目標2が、「国連加盟193カ国のうち、唯一どの国も達成していない目標だ」と指摘した。</p>
<p>今回の報告書は、この目標2に関して「2030年までに6 億人が依然として飢餓に苦しむ一方で、肥満が世界に増加している。多くの国が栄養不足と過体重という相反する二重の課題に直面している」と問題視し、その原因を「持続可能でない農業と食生活の組み合わせが原因である」と強調。また、この問題を含め、特に進捗が遅れているターゲットの大半は、「食料の安全保障システムと生物多様性の保全、持続可能な土地利用などに関するものである」ことから、これらを大きな課題と位置付け、2017年に設立された世界的な研究者ネットワーク「FABLE(FoodとAgriculture、Biodiversity、Land-Use、and Energyの頭文字をとったもの)コンソーシアム」による2030年と2050年に向けた新たなシナリオを提示した。</p>
<p>それによると、▷食料安全保障の観点から、2030年以降、各国の栄養不足の蔓延(まんえん)率を5%未満に抑え、1人当たりの1日のエネルギー摂取量を10%以上増やすか、50%未満に減らすこと、▷生物多様性の観点から、2030年までに全陸地の30%を保護地域とし、耕作地の50%で農業生態学的手法で管理すること、2030年以降、森林の減少をなくし、自然のプロセスが優勢な土地の損失を発生させないこと、▷気候変動緩和の観点から2050年までに農業からのCO2排出量を4ギガトン未満とすること――などが挙げられている。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>上位10位は例年通り欧州勢、脆弱な国々との格差広がる<br />日本は総合で21位→18位に　ジェンダー平等、気候変動対策などなお課題</h2>
</div>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>最新の国別達成度ランキングの1位はフィンランド(総合スコア86.4%)、2位はスウェーデン(85.7%)、3位はデンマーク(85.0%)で、例年通り、10位までを欧州勢が占めた。地域では、東アジア・南アジアがSDGs達成に向けて最も進展をみせる一方で、小島嶼開発途上国(SIDS)を含む、最も貧しく脆弱(ぜいじゃく)な国々との格差は2015年以降、ますます広がっている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>SDGs達成度ランキング2024</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_table">
<table border="1" cellpadding="1" cellspacing="1">
<tbody>
<tr>
<td><strong>1位</strong>　フィンランド　　　</td>
<td><strong>11位</strong>　スロベニア　　　</td>
<td><strong>21位</strong>　スロバキア　　</td>
<td><strong>53位</strong> イスラエル　　　</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>2位</strong>　スウェーデン</td>
<td><strong>12位</strong>　チェコ</td>
<td>・・</td>
<td>・・</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>3位</strong>　デンマーク</td>
<td><strong>13位</strong>　ラトビア</td>
<td><strong>25位 </strong>カナダ</td>
<td><strong>56位</strong> ロシア</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>4位</strong>　ドイツ</td>
<td><strong>14位</strong>　スペイン</td>
<td>・・</td>
<td>・・</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>5位</strong>　フランス</td>
<td><strong>15位</strong>　エストニア</td>
<td><strong>33位</strong> 韓国</td>
<td><strong>68位</strong> 中国</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>6位</strong>　オーストリア</td>
<td><strong>16位</strong>　ポルトガル</td>
<td>・・</td>
<td>・・</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>7位</strong>　ノルウェー</td>
<td><strong>17位</strong>　ベルギー</td>
<td><strong>44位</strong> ウクライナ</td>
<td><strong>164位</strong>　ソマリア</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>8位</strong>　クロアチア</td>
<td><strong>18位</strong>　日本</td>
<td>・・</td>
<td><strong>165位</strong>　チャド</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>9位</strong>　英国</td>
<td><strong>19位</strong>　アイスランド　　　</td>
<td><strong>46位</strong> 米国</td>
<td><strong>166位</strong> 中央アフリカ　　</td>
</tr>
<tr>
<td><strong>10位</strong>　ポーランド</td>
<td><strong>20位</strong>　ハンガリー</td>
<td>・・</td>
<td><strong>167位</strong>　南スーダン</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本は総合スコアが前年比0.5%増の79.9%とやや改善し、21位から18位と、2021年の水準にまで順位を戻した。例年同様、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14と目標15に加え、目標12「つくる責任 つかう責任」が最大の課題とされている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/26/japan.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>2024年の日本のSDGs17目標の進捗状況を示したダッシュボード。目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は唯一、「目標を達成」になっている</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>詳細な評価項目で日本の大きな課題とされているのは、税金と給付後の貧困率、持続可能な窒素管理指数、国会における女性の議席数、男女賃金格差、最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合、家賃負担の重い人の数、電子廃棄物、プラスチック廃棄物の輸出量、化石燃料の燃焼とセメント生産によるCO2排出量、炭素価格スコア、海洋健康指数、乱獲などによる漁獲量、輸入に内在する海洋生物多様性への脅威、生物多様性の保全に重要な淡水域の平均保護面積、レッドリストに掲載されている種の存続、金融秘密だ。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>世界金融アーキテクチャの改革はかつてないほど緊急の課題<br />国連を基盤とする多国間主義への取り組みの強化を</h2>
</div>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>また報告書は、世界レベルでの憂慮すべき状況に対し、「世界金融アーキテクチャの改革がかつてないほど緊急の課題となっている」として、低・中所得国がSDGs目標の達成のために大規模な投資が行えるよう、世界的な課税を含む資金調達の新しい形態の必要性を例年以上に強調。さらに「地球規模の課題には地球規模の協力が必要である」として、国連を基盤とする多国間主義への取り組みの強化を訴えている。</p>
<p>この多国間主義への各国の取り組みについては、今回の報告書で初めてスコア化し、上位5位はバルバドス、アンティグア・バーブーダ、ウルグアイ、モーリシャス、モルディブと、カリブ海やインド洋の島々が大勢を占めた。これとは対照的に、米国(193位)、ソマリア(192位)、南スーダン(191位)、イスラエル(190位)、朝鮮民主主義人民共和国(189位)は最低ランクに位置している。</p>
<p>報告書の主執筆者で、著書『貧困の終焉──2025年までに世界を変える』で知られる米コロンビア大学の経済学者ジェフリー・D・サックス氏は、今回の報告書の発表に際し、「世界は悲惨な環境危機、広がる不平等、破壊的で潜在的に危険な技術、致命的な紛争など、大きな地球規模の課題に直面し、私たちは岐路に立っている。国際社会は国連システムの重要な成果と限界を評価し、今後数十年に向けて多国間主義の向上に取り組まねばならない」と警鐘を鳴らしている。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ワールドニュース

世界のSDGs指数は停滞、食料と土地利用が課題に浮上――日本はやや改善、ランキング18位に

松島香織

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>SB国際会議2024東京・丸の内</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/20/g00_10305049_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>DAY1　ブレイクアウト</strong></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>企業に対する非財務情報の開示への要請は、法制度化されますます整備が進んできた。開示の前提には、まず企業理念やパーパスがあり、その理念の実践としてサステナビリティへの取り組みを位置付ける必要がある。本セッションではISSB(国際サステナビリティ基準審議会) の開示基準をテーマに、日立製作所、オムロン、PwCが登壇。情報開示には統合思考が必要であり、ストーリーテリングや対話が重要であること、情報の信頼性を確保するための内部統制の構築や第三者認証が有効であること等、それぞれの立場から議論を展開した。(松島香織)</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>ファシリテーター</strong><br />山吹善彦・サンメッセ／サンメッセ総合研究所(Sinc) 副所長<br /><strong>パネリスト</strong><br />田原英俊・PwC Japan有限責任監査法人 サステナビリティ・アドバイザリー部 上席執行役員 サステナビリティ・アドバイザリー部長 パートナー<br />増田典生・日立製作所 サステナビリティ推進本部 主管／一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事<br />劉　越・オムロン サステナビリティ推進室 室長<br /><sup>※所属・役職は開催当時</sup></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2023年6月に確定したISSB は、事業のリスクを特定して科学的な根拠に基づいて分析し、目標を掲げることを求めている。ファシリテーターを務めた山吹善彦氏によると、スコープ3までの情報開示は当たり前であり、製品でどこまで貢献できるかといったところにまでその範囲が広がっているという。なかでも企業対応のポイントになるのは移行計画だ。山吹氏は「単純に計画して実行するのではなく、企業の在り方を変えていくことが問われている」と強調した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>経営戦略の品質をどう上げていくか――日立製作所</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/20/g01_ma10305117.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>増田氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日立製作所ではサステナビリティを経営戦略の中核に位置づけ、財務・人材戦略などと統合して取り組んでいる。「なぜかというと、企業の中の戦略戦術というのは、すべからく日立の持続的な成長を目的にしている。それは社会の持続的な成長に、私達が貢献することによって担保されるという構図があるからだ」と同社の増田典生氏は説明する。さらに「情報開示は最終的な出口でしかないので、経営戦略の品質をどう上げていくかが重要だ」と続けた。</p>
<p>情報開示の鍵となるのが、企業パーパスとの統合だ。増田氏は「我々はこういったパーパスがあるからこういう戦略があり、このインパクトが出る。そうやって自分たちの資産を説明しながらうまくストーリーとして組み上げていくことが大事」だという。また、ストーリーを伝える相手を意識することも重要だ。</p>
<p>同社は、有価証券報告書とサステナビリティレポート、統合報告書で情報を開示。統合報告書は昨年100ページを超えていたが、投資家からのニーズを取り入れ、戦略を語るストーリーテリングに特化し50ページにまとめた。サステナビリティレポートは、データブック的な位置づけだという。増田氏は「有報でも非財務情報の開示要請が増えている。どう向き合っていくかはこれからの課題だ」という。</p>
<p>増田氏はまた、同社が主導して2020年に立ち上げたESG情報開示研究会を紹介した。事業会社や機関投資家、省庁など、120を超える団体が集まり、実務的な面から企業の情報開示について考えるコミュニティだという。増田氏は「価値創造のストーリーが大事」「投資家と発行体の対話のミスマッチが起きている」「社内で効率的な情報収集をするためDXの活用が必要」など、研究会の活動から得たポイントを挙げた。最後に、「何よりもトップがコミットメントすること。トップが本気でないと進まない」と力を込めた。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>規制に対応するのでなく、自社のスタンスを定める――オムロン</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/20/g02_ryu10305029.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>劉氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>オムロンの劉 越氏はまず、「ステークホルダーと対話することが、経営のスタンスとして組み込まれているので、いかに誠実に情報開示していくかを重要視している」と話した。そして情報開示について、「統合的な思考が大事」だとし、決算短信や有報の内容を補完するものとして、統合報告書が大きな役割を担っているという。</p>
<p>統合思考による情報開示について、劉氏は「永遠のベータ版」という言葉を用い、「終わりのないチャレンジ」だと述べた。昨年、財務情報と非財務情報のコネクティビティ(結合性)をどう高めていくのかを模索。人財施策の成果指標と財務指標の相関関係を仮説検証し、その内容を統合報告書で開示した。</p>
<p>また同社は、常に新しいものに取り組んでいくという姿勢を大切にしているという。新しい取り組みやリアリティのある情報、そのストーリーを統合報告書で語ること。それによって投資家との対話も活発化し、結果的に経営や事業戦略に反映されると考えている。「このループを回していくことはとても重要だ」と劉氏は強調する。</p>
<p>一方で、開示の要請事項は増え、同社では、欧州で発令されたCSRD(企業サステナビリティ報告指令)の対応に追われているという。「開示基準の項目が1000個ぐらいあり、その中で600のマテリアリティを特定しなくてはならないが、そんなことはまず不可能」だと劉氏は話す。そして日々の業務もある中で劉氏が考え抜いて得た答えは、「求められているのは、一つ一つの数字の開示ではなくて、何が自分たちの責任でありそれに対してどうコミットしているか。つまり戦略そのもの」だったという。</p>
<p>また、開示のためのデータ収集について社内で検討し、非財務情報の業務プロセスがまだないので、システムを作れないという結論に至った。「私たちは規制に対応するというよりは、自社のスタンスをしっかり定めて、徐々に進化していく取り組みをしている。それぞれの業務プロセスをまず設計するといったことも、今後サステナビリティ推進室の仕事になってきそうだ」と劉氏はいう。</p>
<p>最後に劉氏は「“データ開示”という言い方はミスリードであって、開示しなくてはいけないのは財務と同じようにパフォーマンスだ」と主張した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>法定開示に関する企業経営の課題は3つ――PwC</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/20/g04_ta10305110.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>田原氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>企業を支援する第三者としての立場から、PwCの田原英俊氏は、非財務情報の開示について「この2、3年の動きは異常なスピード」だと驚きを隠さない。そうした中で、問題になっていることは「基準と規制という話がセットになってきている」ことだと指摘する。</p>
<p>こうした潮流のなかで、なぜISSBが重要なのかについて「基準そのものではなく、その基準を各国の規制で法規制化させるというところが最大のポイント」だと説明する。さらに「基準と法規制がセットになって、投資家が注目するようになり、ようやくこの非財務情報を取り巻く資本市場のプレイヤーが出揃った。まさにここから本格的な変革が始まると見ている」という。</p>
<p>こうした法定開示の要請で「肝になるのは、マテリアリティとストーリー、あとは情報の信頼性というところに尽きるのではないか」と田原氏はいう。ストーリーで言えば、中長期的な企業の成長を促す活動と意思決定が、相互に正しく反映されているかが重要だ。その考え方の根底になるものが、オムロンの劉氏も述べていた「統合思考」だ。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/20/g98pwc_1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>講演資料より</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>企業活動にはまず、財務資本や自然資本などのインプットがあり、その企業活動から利益やビジネス機会の損失のアウトプットがあり、資本の増減によるアウトカム(社会へのインパクト)を生み出している。インパクトを数値化して可視化することで、それが正しい企業の意思決定につながり、統合的に物事が考えられる。田原氏はそのように説明し、「この6つの資本をどう増やすのか、減らすのかということがきちんと考えられるようになれば、企業活動のストーリーが伝えられるようになる」と話した。</p>
<p>最後に田原氏は、法定開示に関する中長期的な企業経営における課題として、大きく3つを挙げた。1つ目が「サステナビリティ情報開示の信頼性の改善」だ。「ガバナンスやレポートの統制といった内部統制の構築、そして情報の信頼性の担保がこれから間違いなく求められる」と田原氏はいう。2つ目は「企業戦略と情報開示のつながり」で、3つ目は「財務情報と非財務情報の統合」だ。「ストーリーが重要であるが、そこには概念が必要。一つの考え方として意思決定できるような財務・非財務のコネクティビティが、情報開示だけではなく、企業経営の意思決定においても重要だ」と述べた。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

SB国際会議

ニュース

サステナブル・ブランド国際会議2024

ISSBに向けた日立製作所とオムロンの情報開示、キーワードは「ストーリー」と「統合思考」

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>SB国際会議2024東京・丸の内</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/14/00_221A1763_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>DAY1　ブレイクアウト</strong></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>JSBI(Japan Sustainable Brands Index)は、生活者から見た企業のサステナビリティへの取り組みやブランドイメージを測る指標だ。サステナブル・ブランド ジャパン アカデミックチームが発表した最新のレポートでは、サントリーホールディングスのSDGsへの取り組みは、生活者が期待する企業の取り組みを超えていた。同社のパーパスや具体的な取り組み事例から、なぜ生活者の期待を上回る活動ができたのか、また、サステナブル・ブランド ジャパンのユースコミュニティnestに所属する若者2人が加わり、企業はどのような生活者コミュニケーションを取るべきなのかを探った。(松島香織)</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>ファシリテーター</strong><br />江戸克栄・県立広島大学大学院　経営管理研究科 ビジネス・リーダーシップ専攻長 教授 / サステナブル・ブランド ジャパン アカデミックチーム<br /><strong>パネリスト</strong><br />北村暢康・サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部 副本部長 兼 サステナビリティ推進部長<br />入江遥斗・nest[SB Japan Youth Community]<br />藤井玲緒・nest[SB Japan Youth Community]<br /><sup>※所属・役職等は開催当時</sup></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>はじめにファシリテーターの江戸克栄氏は、JSBIはSDGsを基に企業のサステナビリティ活動を測る一つの指標であり、「生活者の視点から評価していることが非常に大きなポイント。それを企業活動に生かしていただきたいという狙いがある」と説明した。SDGsに関する認知度や企業別の貢献度、また実際のサステナブル・アクションに関する重要度や評価などの4項目について調査し、「SDGs貢献イメージ得点」と「SDGs評価得点」を算出。この2つの評価を比較することで、企業は自社と生活者とのコミュニケーションの課題を知ることができる。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/14/g01_JSBI.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>講演資料より</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>また江戸氏は、生活者が考える企業が取り組むべき「SDGs17目標」と企業の実際のアクションについて、「生活者が重要と考えるSDGs目標に、企業の取り組みが追いついていない」と指摘。だが、サントリーホールディングスの評価事例では、「目標2 飢餓」「目標3 健康」「目標6 水と衛生」など、生活者の重要度よりも取り組みが進んでいる。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/14/g02_JSBI.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>講演資料より</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>同社の北村暢康氏は、グラフを示しながら「口に入るものを提供する事業なので、飢餓や健康は、業界としてもよって立つところが大きい」と説明した。こうした企業の取り組みの拠り所となるのが、企業理念、パーパスだ。同社では「人と自然と響き合い、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」を掲げている。「私どもは水をはじめとして、自然の恵みを商品という形に変え、人と社会の接点を持っている。単につなぐだけでなく、より良い関係に高めること。それを『響き合う』という言葉に込めた」と北村氏はいう。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/14/02_221A1768.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>北村氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>このパーパスを基に、創業者の価値観であった「利益三分主義」などをバリューに設定し、「原料」「容器・包装」などといった7つを取り組みテーマに据えた。北村氏はそのうちの「温室効果ガス(GHG)」への取り組みについて紹介。2021年5月に稼働したサントリー天然水　北アルプス信濃の森工場(長野県大町市)では、再生エネルギーやバイオマス燃料を用いて、CO2排出量ゼロを実現した。またサントリー白洲工場(山梨県北杜市)にグリーン水素を製造する国内最大規模の設備を導入したという。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/14/g03.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>サントリー天然水 南アルプス白州工場・サントリー白州蒸溜所</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ペットボトルの取り組みでは、まず「プラスチック基本方針」を制定。2018年に協力会社とともに、フレーク状態からプリフォームに直接加工する「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発。使用済みペットボトルからプリフォーム製造までの工程において、約70%のCO2排出量を削減することに成功した。さらに、植物由来素材100%ペットボトルの開発を米国のバイオベンチャー企業と共同開発し、早期の実用化を目指している。</p>
<p>また、「購入していただいたお客さま一人一人も、正しく分別処理していただくことが大事」(北村氏)であり、生活者の理解が必要だ。「新しい地図」が出演するテレビCMで、リサイクルを訴求している。これまでお客様センターには、キャンペーンやCM出演者に関する問い合わせが多かったが、「未来への責任」というメッセージを込めたCMの効果で、ペットボトルや回収に関する質問が多くなった。そうした意見は商品化に生かしているという。</p>
<p>飲料品を展開する同社にとって、「水」はなくてはならないものだ。一方で「水」は地域との共有資源・資産でもある。「水と生きる SUNTORY」を企業メッセージとする同社は、「水理念」を2017年に制定。北村氏は「グローバルに事業を展開しているので、その国の言語に訳して、サントリーとして共有している」という。</p>
<p>「水」をサステナブルに循環させるために、工場で節水する、きれいに返す、といったことは当然だ。同社は、さらに水を育む森に目を向け、工場でくみ上げる地下水の倍以上の水を涵養(かんよう)するため、土壌を保全した環境林を整備している。その規模は全国21カ所に及び、約1万2000ヘクタールに相当する。</p>
<p>北村氏は、「森は1年で急に変わらない。長い年月をかけてゆっくり改善して、より良いものに育てていく。そのためには次の世代、またその次の世代まで、しっかりと取り組んでいく」と力強く語った。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>ブランドイメージを浸透させるフェーズが重要</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/14/03_221A1796.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>入江氏(左)、藤井氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>北村氏の発表を受けて、江戸氏は、「JSBIでは、全世代の生活者がテレビから情報を得ているという調査結果がある」と話し、若い世代はどのような情報収集をしているのか、nestの入江遥斗氏と藤井玲緒氏に尋ねた。大学4年生の入江氏は、「我々はテレビを見ない世代と言われるが、スマートフォンやパソコンなど、テレビの見方が変わっているだけで、テレビを見ている人はまだまだいるのではないか」と回答。</p>
<p>高校3年生の藤井氏は、「自分の家ではずっとテレビはついている。小学生の弟はCMの歌を口ずさんだりしていて、企業のキャッチコピーだったり、伝えたいメッセージは頭に残っていると思う」と話した。しかし、「実際に商品を買おうとしたり、情報収集するときは、SNSやインターネットを使っている」という。</p>
<p>2人の意見を聞いた北村氏は、「企業はオールターゲットと言いながら、“刺さる”ルートで適切に情報を送り続けることしかできない。我々はBtoCなので、商品やメディアで情報をかみ砕いて生活者目線で伝えることも必要だ」と述べた。</p>
<p>さらに北村氏は、教育でSDGsを学び、従来の社会人とは情報の土台が違う2人に、「SDGsの観点から商品を買ったりするのか？」と質問。藤井氏は「例えば水のペットボトルが2つあるとして、サステナブルな商品かどうかは関係なく、安い方を優先する」という。「SDGsを学び、理解しているが購買まで至らない」という事実は、自身のマーケティング調査結果でも出ていると江戸氏が補足した。</p>
<p>入江氏は「高校生だと、手持ちで使えるお金は限られてきている。(ブランディングやマーケティングとは)いま、若者に対してブランドのサステナブルなイメージを形成していくことで、いざ選択できる大人になって何かを選ぶときに、その頭の片隅にイメージが残っているものではないか」と、ブランドイメージを浸透させるいまのフェーズが重要なのではないかと示唆した。</p>
<p>北村氏も「15秒のCMでメッセージが伝わるわけがない。『水と生きる』というメッセージを出したのは2005年頃で、20年経ってようやく皆さんの頭にメッセージが残った。それぐらいの時間がかかる」と話した。そして企業が取り組むポイントとして、「時間」「尖ったユニークネス」「インテグリティ(誠実さ)」を挙げた。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

サントリーの取り組みとJSBIから探る、生活者コミュニケーションのあり方

川村 雅彦

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>なぜ今、『統合思考経営』なのか？<br />～ESGを踏まえた長期にわたる価値創造のために～</strong><br /><strong>第27回</strong></p>
</div>
<div class="elem_paragraph right">
<p><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/index.html"><strong>SBJ Lab Senior Practitioner of Integrated Thinking</strong></a><br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/index.html"><strong>サンメッセ総合研究所(Sinc)所長/首席研究員　川村雅彦</strong></a></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/07/kawamurasantop_1_1_1_1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>前回(第23-26回)は、ISSBとCSRDについてマテリアリティの観点から考察しました。今回は、<strong>「日本企業のかたち」である男性中心の同質性集団</strong>を取り上げます。日本企業の風土や体質には以前から違和感があったのですが、2冊の本<sup>※1、2</sup>(いずれも著者は女性)を読んだことで、自分なりの論点整理ができたからです。具体的には以下の3点です。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/07/zu01.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><sup>(※1)<strong>ルディー和子著『男子系企業の失敗』</strong>：日経BP、日本経済新聞出版、日経プレミアシリーズ、2023年11月刊<br />男子系企業の同質性と経営者資質に焦点。帯は、<strong>「役員には選ばれた。しかし、経営はできない」</strong><br />(※2)<strong>浜田敬子著『男性中心企業の終焉』</strong>：文芸春秋、文春新書、2022年10月刊<br />ジェンダー格差、働き方、組織に焦点。帯は、<strong>「経済停滞にあえぐジェンダー後進国からの脱却」</strong></sup></p>
<p>それにしても、<strong>「失われた30年」</strong>あるいは<strong>「停滞の30年」<sup>※3</sup></strong>を経た現在でも、その真因である<strong>「昭和のおじさんシステム」</strong>に依存している(ことに気づかない)日本企業の多さに驚きます。一方で、そこから脱却し、人材多様性を重んじる仕組みを構築し、新しい戦略を展開する企業が登場してきたことも事実です。</p>
<p><sup>(※3)バブル経済崩壊後の1990年代初頭から2020年代初頭までの30年間をさす。</sup></p>
<p>実は、<strong>筆者はどっぷり「昭和のおじさん」</strong>です。昭和51年(1976年)に修士修了、同時に就職し、「失われた30年」も体験しました。またエンジニアリング会社からシンクタンクに転職したことで、会社によって企業風土や価値観が異なることを実感しています。本稿は筆者自らの感覚もたどりながら筆を進めます。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>見えてきた「日本企業のかたち」</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■「男子系企業の失敗」とは、どういうことか？</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>『男子系企業の失敗』(以下、同書)は、行動経済学や社会心理学あるいは脳科学の知見を踏まえた、日本企業の体質や経営者の資質に関する示唆に富む批判の書です。<strong>「失われた30年」をもたらした真因は同質性の男子系企業にある</strong>、悪いことに<strong>メンバーの多くはそれに気づいていない</strong>、と明言しています。</p>
<p>同書の言う<strong>「男子系企業」とは、経歴や考え方が似通った同質性の高い中高年男性が経営の主導権を握る企業</strong>のことです。それでは、日本企業における「男子系企業の失敗」とは、具体的にはどのようなことでしょうか。筆者の理解では、以下の連鎖する4事象です。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/07/zu02.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■同質性の高い男性中心の日本企業の特徴</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>同質性の高い男性中心の日本企業の典型的な特徴は、<strong>「内向きの集団思考」</strong>です。それゆえ、自己集団の属性や暗黙知に属さない<strong>「はずれ者」を意図的に排除する傾向</strong>があります。図表1は、筆者の経験も踏まえて、日本企業の特徴を〔思考パターン〕と〔行動パターン〕に分けて模式的に示したものです。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表1：日本企業に特徴的な男性中心の同質性集団の思考と行動</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/07/zu03.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(注)各事象は必ずしも意図的なものではなく、<strong>「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」</strong>のことが多い。<br />(資料)『男子系企業の失敗』と『男性中心企業の終焉』に触発されて筆者作成</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>〔同質性集団の思考パターン〕</strong><br /><strong>・現状維持志向</strong>：変化や未知なるものへの抵抗感から、現在の事業や慣行に固執する心理的傾向<br /><strong>・前例主義</strong>：現状変更や説明責任を避けるために、合理的な検証をせずに前例を踏襲する考え方<br /><strong>・減点主義</strong>：失敗すると評価が下がるため、いかに失敗をしないかを重視して挑戦を避ける考え方<br /><strong>・リスク回避主義</strong>：将来の不確実性回避を優先し、機会を犠牲にしてでもリスクを選択しない考え方</p>
<p><strong>〔同質性集団の行動パターン〕</strong><br /><strong>・同質性競争(横並び)</strong>：同業他社は広義の「内者」であり、互いに他社の動きに同調することを是とする<br /><strong>・「戦略」でなく「反応」</strong>：近視眼的な他社模倣は「戦略」ではなく、リスク回避の安易な「反応」にすぎない<br /><strong>・「改革」でなく「改善」</strong>：現状維持志向の強さゆえ、「構造改革」と称して単なる「改善型経営」に徹する<br /><strong>・説明無責任の連鎖</strong>：同質性集団で内部昇格した歴代経営者は、「前例と同調」以外の説明をしない</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■この30年、日本企業は何もしなかった訳ではないが・・・・・・</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本企業は改善型経営に徹しましたが、バブル崩壊後30年間に何もしなかった訳ではありません。バブル崩壊直後の対処は間違っていませんでした。3つの過剰(債務・設備・雇用)が喫緊の課題であり、<strong>研究開発を含む設備投資や人件費の削減は急務</strong>だったのです。<strong>問題は、それを長く続け過ぎたこと</strong>です。</p>
<p>財務省「法人企業統計調査」から過去30年間を概観すると、売上高が微増する中で経常利益は2倍弱となり、内部留保(利益剰余金)は増え続けて4倍を超えました。これは、<strong>日本企業が長期にわたりコスト削減のみを是として、未来のための投資もせず社員の賃金も上げずに、儲けをため込んだことの証左</strong>です。</p>
<p>実態は、<strong>新入社員から内部昇進で上り詰めた同質性の高い男性の社長や経営者には、革新的な製品・サービスの開発や新しいビジネスモデルへの挑戦は考えるべくもなかった、</strong>ということになります。その意味で、最近の株価上昇は、株主還元(高配当と自社株買い)を増やした結果にすぎないという指摘があります。</p>
<p><sup>(参考資料)伊丹敬之「人件費と設備投資 増やす時」日本経済新聞、経済教室、2024年4月1日</sup></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「昭和のおじさんシステム」は、いかに形成されたのか？</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■いまなお根強く残る「昭和のおじさんシステム」</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>本稿では、<strong>「失われた30年」の原因となった「日本企業のかたち」の実相を「昭和のおじさんシステム」</strong>と呼ぶことにします。実際、それはどのようなもので、いつ、どのように形成されたのでしょうか。図表2は、高度成長期に定着した<strong>雇用・人事制度</strong>を土台にして、<strong>事業現場の常識</strong>、さらに<strong>監督と執行の曖昧さ</strong>の3階層に分けて表現したものです。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表2：いまなお日本企業に残る「昭和のおじさんシステム」</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/06/07/zu04.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(資料)『男子系企業の失敗』と『男性中心企業の終焉』に触発されて筆者作成</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■雇用・人事制度が作った男性中心の同質性集団</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>同書では日本企業の同質性は、戦後に始まった<strong>終身雇用制</strong>と高度成長期に本格化した男子学生の<strong>新卒大量一括採用制</strong>が組み合わさって強固になったとしています。そして、<strong>年功序列の人事制度</strong>が定着し、1970年代後半には<strong>「男性＝総合職＋世帯主」</strong>を前提に、男性中心の同質性集団が形成されたようです。</p>
<p>事業現場では<strong>「男は仕事、女は家庭」</strong>を是とする諸制度ができ上がりました。転職は一般的でなく、<strong>男性社員(多くは総合職)</strong>は「家族を守る」ために、満足できない職場であっても辞めることができず、長時間を厭わず働きました。社員教育はOJTが基本で、<strong>中間管理職</strong>は現場オペレーション上がりの男性社員から選ばれました。</p>
<p><strong>女性社員の多くは一般職</strong>(総合職の補助で、管理職候補にあらず)として採用され、数年以内の<strong>「寿退社</strong>(結婚を機に退職)<strong>」</strong>が当たり前でした。1985年に男女雇用機会均等法が成立したものの、日本企業には女性社員の能力開発やキャリア向上に努める意欲は乏しかったようです。詳しくは、『男性中心企業の終焉』に書かれています。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「素人の経営者」は、いかに生み出されたのか？</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■男性のサラリーマン社長と社内取締役</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本企業の経営トップは、今でも多くが<strong>内部昇進の男性サラリーマン社長</strong>です。「彼」を支えるのは、同世代で考え方が似通った、<strong>現場オペレーションで成功した男性執行役(員)から成る経営会議</strong>です。この同質で視野の狭い経営態勢では、大胆な戦略目標を掲げて事業変革を断行するなど考えたこともなかったと思います。</p>
<p>一方、<strong>執行を監督すべき取締役会も、その大半を内向き思考の男性社内取締役</strong>が占めてきました。それゆえ、上程案件の形式的承認に主眼があり、企業価値に関する議論は皆無に近いものでした。つまり、長期戦略とリスクマネジメントを含めて、長らく日本企業のコーポレート・ガバナンスは機能してきませんでした。</p>
<p>このように考えると、<strong>「素人の経営者」を生み出したのは「昭和のおじさんシステム」そのもの</strong>です。ここで密接に関連する、日本企業特有の経営上の慣習(ガラパゴス化現象)を2つ取り上げます。どちらも筆者がサステナビリティと統合報告書の国際比較をしていた時に気づいたことです。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■中期経営計画(中計)は日本企業だけ</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>海外企業に「中計」はありません。</strong>任意ながら、日本企業の多くは3年程度の中計を誇らしげに開示しますが、当面の施策と売上高などの達成目標の説明にすぎません。味の素は2023年に社長主導で、<strong>数値目標のみを追う「中計病」から脱却すべく中計を廃止</strong>し、「中期ASV経営2030ロードマップ」を公表しました。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■ミドルアップ型経営は「待ちの経営」</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>トップダウン型の欧米企業とは異なり、日本企業では業界横並びで既存路線を踏襲することが多く、新企画には<strong>中間層が提案し判断を仰ぐ「ミドルアップ型経営」</strong>が定着しています。社長から承諾を得る時の決めセリフは、<strong>「A社もやってます」</strong>です。これではVUCA時代に戦略的に適応することはできません。</p>
<p><strong>日本企業の「常識」ともいえる「昭和のおじさんシステム」は、1970年代後半には完成</strong>したとみられます。高度成長が終焉した1980年代、1990年代初頭のバブル崩壊を経てもなお、それが温存された結果、<strong>「変えられないサラリーマン社長」と「監督できない社内取締役」の再生産が30年も続く</strong>ことになったのです。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>「JTC(Japanese Traditional Company：伝統的日本企業)」</strong>という言葉があります。これは、「昭和のおじさんシステム」を抱え込んだままの日本企業そのものゆえ、今まさに問われているのは変革への本気度です。次回は<strong>「人材多様性と人材ポートフォリオ(その1)～人材多様性はとても非効率で面倒くさい!？～」</strong>として<strong>人材多様性の意味</strong>を論じます。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph right">
<p>(つづく)</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>本コラム27</strong><strong>(</strong><strong>前編</strong><strong>)</strong><strong>のフルレポートは、サンメッセ総合研究所</strong><strong>(</strong><strong>Sinc</strong><strong>)</strong><strong>の下記サイトを参照ください。</strong><br /><a href="https://www.sri-sinc.jp/knowledge/2024052701.html">https://www.sri-sinc.jp/knowledge/2024052701.html</a></p>
</div></div>
</div>
<p></div>
<p></p>

コラム

【統合思考経営27】「失われた30年」と「昭和のおじさんシステム」～日本企業は同質性集団が最大の経営リスク！！～

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>第</strong><strong>6</strong><strong>回未来まちづくりフォーラム</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/15/00-1_YYY08051.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2015年に採択されたSDGs。2030年の達成期限を前に2027年には、ポストSDGsの議論が始まると予想されている。まちづくりに取り組む企業、団体、研究者らによる「未来まちづくりフォーラム」は、オープニング特別シンポジウム「SDGs2024『ポストSDGs検討元年』を迎えて」を実施。ポストSDGsをどう捉えるべきか、日本企業や大阪・関西万博の取り組みを交えながら議論した。(清家直子)</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>ファシリテーター</strong><br />笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム 実行委員長、千葉商科大学 教授、サステナビリティ研究所長<br /><strong>パネリスト</strong><br />長谷川知子・一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事<br />永見 靖・公益社団法人２０２５年日本国際博覧会協会 持続可能性部 企画局 持続可能性部長<br />泉谷由梨子・BuzzFeed Japan ハフポスト日本版 編集長</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ファシリテーターを務めた笹谷秀光氏は、「2024年からのキーワードはポストSDGs。世界で通用する共有言語でありベースであるSDGsを、今こそ再考するべきだ」とシンポジウムをキックオフ。</p>
<p>笹谷氏は、これまで企業がSDGsの169のターゲットに当てはめて取り組んできたことは「規定演技」であるとし、これからは重点を決め直し、独自の強みを生かす「自由演技」を拡大すべきと提唱した。「企業の“自由演技集”こそが、SDGs18番目の目標となる」と期待を込め、24年を「ポストSDGs検討元年」と宣言。その後、パネリストが各事例を紹介した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>情報開示と主体の共創が不可欠――経団連</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>まず、経団連の長谷川知子氏は、2023年9月にニューヨークに派遣した「経団連SDGsミッション」の調査を紹介し、「国連関係者はSDGsの達成について非常に強い危機感を持っていた」と明かす。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/15/g0101.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(講演資料より)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>では、そのなかで国連が日本企業に期待しているものは何か。それは「技術と知見」だという。「日本の技術や知見を世界で発表し、それを共有・普及してほしいと求められた。その技術や知見を積み重ねてきた日本企業や政府がこれからの重要課題について正しく、かつ大胆に決断することこそ、SDGsの達成につながる」と展開した。</p>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/15/02_YYY07856.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>長谷川氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>「Society5.0 for SDGs」を掲げ、経済発展と社会的課題解決の両立を目指している経団連。長谷川氏は「叶えるためには技術革新とともに、多様な人々の2つの “そうぞう力”、クリエイティビティ(創造)とイマジネーション(想像)が不可欠だ」と主張する。</p>
<p>経団連は、政府のSDGs実施指針改定にも参加。そこから見えてきた課題について長谷川氏は「企業の取り組みは一般化してきたものの、市民社会の一部からはグリーンウォッシュやSDGsウォッシュだという批判なども根強い」とし、企業の競争力や価値を向上するために情報開示の充実が必要だと訴える。一方で、サステナビリティ開示基準の乱立に企業は困惑している。「グローバルな場で開示基準の統一化を図る試みがあるので、経団連も積極的に参加し日本企業のニーズを満たす形でベースライン化に協力したい」と語った。</p>
<p>さらに企業や民間、公的機関などによる「多様な主体間の協創」の必要性を挙げ、その活動を国内にとどめることなく、世界で横展開すべきだと締め括った。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>万博で出てきたアイデアなどを未来へのレガシーに――２０２５年日本国際博覧会協会</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/15/03_YYY08045.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>永見氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>続いて、２０２５年日本国際博覧会協会の永見 靖氏はまず、「大阪・関西万博と呼ばれているが、関西のイベントと捉えず、皆さんに関心を持ってほしい」と訴えた。「未来社会のデザインかつ実験場」である同万博。SDGsについて足元の対策を固めつつ、「アイデアやコンセプトを提示し、国際連携できる場にしたい」と語る。</p>
<p>持続可能性の追求としてISO20121適合を視野に、脱炭素や自然循環、生物多様性のほか、調達コードなどに配慮。「過去の万博のレガシーを引き継ぎつつ、サプライチェーン全体を見て、環境や人権への配慮を確認する作業を丁寧に行っている」と明かす。期間中は万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に基づき、地球規模のさまざまな課題を議論する場を設ける。永見氏は「出てきたアイデアやコンセプトを未来へのレガシーにしたい」と意気込む。</p>
<p>永見氏の講演を受けて長谷川氏は、災害や紛争によって多くの人が命を落としていることに胸を痛めていると話す。「改めて命の尊さを実感するとともに分断傾向が著しい時代において、多様性を認め合い、連携の大切さをテーマに掲げている大阪万博は意義が大きい」とし、「経団連も英知を出し合って世界規模のソリューションを見つけ、万博を多様性に満ちた世界をつくるきっかけにしたい」と協力する姿勢を示した。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>ユーモア、ポジティブさ、ワクワクを大切にしたい</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/15/04_YYY08116_1.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>泉谷氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>「知るからアクションへ」を掲げ、「知ることから一歩進み、どうやって実現するかという個別の課題に目を向けていく段階にある」と語るのは、ハフポスト日本版編集長の泉谷由梨子氏だ。</p>
<p>「企業に対する市場評価は変わってきている。その評価のベースとなる情報を提供し、個人・企業が課題を解決する具体的な手法を共有することこそ、メディアの役割」だと話す。水谷氏が大切にしたいポイントは3つ。ユーモア、ポジティブさ、そしてワクワクだという。「不安をあおり過ぎず、遅すぎることはないことや自分たちで変化を起こせることを伝えたい」と展望を語った。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/15/01_YYY07755.jpg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>笹谷氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>シンポジウムの後半では、ポストSDGsや「18番目の目標」などについて、それぞれが持論を展開した。笹谷氏は、「SDGsは文明のリトマス試験紙ではないかというほど、国や地域で取り組みが異なる。日本は日本らしく取り組んできたが、ポストSDGsを考える上で、弱いところ・強いところを詳細に分析し、本質的に深める時期に突入した」と語った。</p>
<p>「日本が得意とする分野は、トランジションテクノロジーやサーキュラーエコノミー、資源循環技術。先駆けて少子高齢化に突入した結果の、ユニバーサルヘルスケア<sup>※</sup>も進んでいる」と長谷川氏。「そういった強みを政府や企業、市民が議論し、世界に発表していくことが、ポストSDGsの18番目として日本が掲げるべき目標につながるのでは。安全保障というSDGsの本質を再考し、課題意識を深めていこう」と訴えた。</p>
<p><sup>※ すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受できること</sup></p>
<p>一方で泉谷氏は、18番目は、「メディアでありたい」と自らの思いを打ち明ける。国際紛争が激しい現代では、偽情報や誤情報が新しい脅威になっているとし、「本当の意味で信頼できる情報を届け、メディアが信頼に足る居場所だと思ってもらえる存在となりたい」と自戒を込めて語った。</p>
<p>最後に笹谷氏は、「発信し、共に考えることがプラットフォームになる。これこそが、『未来まちづくりフォーラム』のテーマ。皆さんそれぞれが違う角度から同じ方向を見ていると実感した。この学びを受け止めて、周りに話すことがもっとも大事な浸透力になる」と締め括った。</p>
</div>
</div>
</div>
<p></div>
<p></p>

社会 social

まちづくり

2024年は「ポストSDGs検討元年」、経団連や万博協会が日本のこれからを議論

サステナブル・ブランド ジャパン編集局

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/12/g00.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>株式会社 博展(本社：東京都中央区)は、主催する「サステナブル・ブランド国際会議2024 東京・丸の内」において発表された&#8221;生活者のSDGsに対する企業ブランド調査”『Japan Sustainable Brands Index(以下、「JSBI」)』について、個別企業別に詳細情報をカスタマイズした2023年度版の有料版レポートの提供を開始いたしました。企業のサステナブル活動に関する生活者とのコミュニケーションにおける課題を可視化することで、今後の活動の指標としてお役立ていただけます。</p>
<p>『JSBI』は、企業のサステナビリティに対する活動を更に促進することを目的に、日本国内に展開する企業ブランド19業種312社に対して、生活者のアンケート結果をもとに、企業のSDGsへの取り組みやブランドイメージを分析したサステナブル・ブランド アカデミックチーム独自の調査です。調査は2020年より開始し、今回で4回目の発表となります。全国の18～79歳の男女の1万5600回答サンプルをもとに、企業の取り組みや商品およびブランドのサステナブル価値を評価指数化いたしました。</p>
<p>なお、2022年度版で調査対象だった306社については、対前年比較をした詳細レポートとして販売をいたします。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>JSBI 2023 Report(速報版)</strong><br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/event/download/document/__icsFiles/afieldfile/2024/03/26/JSBI2023_Report_Ver-1.pdf">https://www.sustainablebrands.jp/event/download/document/__icsFiles/afieldfile/2024/03/26/JSBI2023_Report_Ver-1.pdf</a></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>▼関連記事はこちら</strong><br />良品計画が今年も1位に、生活者から見たSDGsに貢献する企業ブランド調査「JSBI 2023 Report」発表<br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/community/column/detail/1220351_2557.html">https://www.sustainablebrands.jp/community/column/detail/1220351_2557.html</a></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■調査対象企業一覧(312社)</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/12/g01-1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_pik_box left">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/12/g01-2.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■JSBI カスタマイズレポート(有料版)について</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>・販売価格：44万円(税込)<br />・自社と任意の3社を比較した分析レポート(定型)をご提供<br />・サステナブル活動の指標として活用が可能です</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/12/g02.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>※カスタマイズレポートのイメージ(一部)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>＜NEW！＞今回のレポートより、新たに以下のデータを追加でご提供いたします。</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><u>1. 自社データに関して、従来の男女別・年代別のデータに加え、世帯年収別、子どもの有無​別の分析データ</u><br /><u>2. 「生活者のサステナビリティに関する取り組み調査結果」に関する「9つのサステナブル・アクション」別の属性(年代・性別・子ども有無・最終学歴・世帯年収) 調査結果データ</u><br />日常的にサステナブル・アクションを実施しているのは、どのような層なのかを把握いただくことが可能です。<br /><u>3. 「情報取集媒体に関する調査」に関する性別・年代別の調査結果データ</u><br />※調査実施カテゴリー：電気・ガス、ファッション、旅行・交通、日用品、家具・家電、外食・レストラン、自動車、食料品・飲料、建築・不動産、スーパー・コンビニ<br />各カテゴリーに関して、性別・年代別にどのような媒体から情報を収集しているのかを把握いただくことが可能です。</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■対前年比較レポート(有料版)について</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>※2022年度版でも対象となっていた306社のみ対象<br />・販売価格：66万円(税込)<br />・自社の対前年比較＋業種内1位を比較した分析レポート(定型)をご提供<br />・企業の経年的なサステナブル活動の指標として活用が可能です</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/12/g03.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>※対前年比較レポートのイメージ(一部)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>企業が生活者にどのようなイメージを持たれているのか、実際の取り組みが生活者にどの程度認識されているのかなど、企業のサステナブル活動に関する生活者とのコミュニケーションにおける課題を可視化することで、今後の活動の指標としてお役立ていただけます。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>▼レポートのお問い合わせ</strong><br />サステナブル ・ブランド ジャパン(博展)　<br />E-Mail：<a href="mailto:info@sustainablebrands.jp?subject=JSBI%E5%95%8F%E3%81%84%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B">info@sustainablebrands.jp</a></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■JSBI2023 調査方法について</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「SDGs貢献イメージ得点」と「SDGs評価得点」の評価を比較することで、サステナブル活動に関する生活者とのコミュニケーションの課題が見えてきます。</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>・調査方法：インターネット調査<br />　※回答者は、グループ分けされた6つの企業(対象企業社数計312社)について、それぞれ30問の設問に回答<br />・調査対象者：18～79歳の男女<br />　※スクリーニング調査で「対象企業を知らない」と回答した人を除外して本調査を実施<br />・調査地域：全国47都道府県<br />・使用パネル：あらかじめ登録されたクローズドモニターによって構成されたパネル<br />・調査期間：2023年12月8日～12月28日<br />・回収数：1万5600サンプル(1社あたりの回答者数は300サンプル)<br />・調査実施者： サステナブル・ブランド ジャパン アカデミックチーム<br />・レポート販売：株式会社 博展</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■『JSBI 2023』調査結果概要</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>レポートは、SDGs貢献イメージ得点とSDGs評価得点を合わせ、昨対比較でランキングした312社すべてを掲載。ランキング1位は昨年に引き続き「良品計画(無印良品)」で、僅差で「トヨタ自動車(TOYOTA)」が2位となった。</p>
<p>さらに調査対象の312社を19の業種に分類し、各業種の特徴を分析しランク付けた。レポートでは、JSBI 評価の高い業種として、「薬品・医療用品」「食品」、逆に評価の低い業種として「金融・保険」「放送・エンターテインメント」を挙げている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/12/g04.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>▼関連記事はこちら</strong><br />良品計画が今年も1位に、生活者から見たSDGsに貢献する企業ブランド調査「JSBI 2023 Report」発表<br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/community/column/detail/1220351_2557.html">https://www.sustainablebrands.jp/community/column/detail/1220351_2557.html</a></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■サステナブル・ブランド国際会議とは</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>米サステナブル・ライフ・メディア社が展開する国際会議ネットワークで、10カ国で開催(2023年度)され、参加者数はグローバルで1.3万人を超える規模となっています。国内では博展が2016年より同社と提携し、2017年から毎年開催をしており、2024年2月に第8回目の実施をいたしました。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>▼お問い合わせ</strong><br />サステナブル ・ブランド ジャパン(博展)　<br />E-Mail：<a href="mailto:info@sustainablebrands.jp?subject=JSBI%E5%95%8F%E3%81%84%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B">info@sustainablebrands.jp</a></p>
</div></div>
</div>
<p></div>
<p></p>

SBコミュニティニュース

“生活者から見たSDGsに貢献する企業ブランド調査”『JSBI 2023』、有料版カスタマイズレポートの提供開始

廣末智子HK

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/03/sbt800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by <a href="https://unsplash.com/ja/@jeisblack?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash">Jason Blackeye</a> on <a href="https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%98%BC%E9%96%93%E3%81%AF%E9%9B%AA%E5%8E%9F%E3%81%AB%E5%9B%B2%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E9%A2%A8%E8%BB%8A-kufsOr1-F-s?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash">Unsplash</a></sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>1.5度目標の達成に向け、2030年、そして2050年の中長期的な視点で科学に基づいた脱炭素化の目標を掲げ、推進していくことの重要性が増すなか、SBT(Science-based Target、科学的根拠に基づく目標)の認定を取得、または取得することにコミットした日本企業が、今年3月までに1000社を超え、加速度的に増えている。背景には、パリ協定に整合した排出量の削減行動を取っていないと、グローバルなサプライチェーンから外されてしまうといった危機感があると考えられるが、運営機関の一つである世界自然保護基金(WWF)ジャパンによると、排出量が多く、脱炭素が難しいとされる鉄鋼や化学セクター、環境フットプリントが大きい大手商社などの参加はまだ少ない。取り組みが進むセクターとそうでないセクターで差が開きつつあるのも現状だ。(廣末智子)</p>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/04/03/sbtrogo.jpeg"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup><a href="https://sciencebasedtargets.org/">SBTi</a>のロゴ</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>SBTとは、パリ協定が求める水準と整合した、企業が科学に基づいて設定する温室効果ガス削減目標。2015年にWWFと企業の環境影響に関する情報開示を進める非営利組織であるCDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバルコンパクトによって設立された国際イニシアチブ「SBTi」が、認定を取得した企業やコミットした企業を公開している。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>1年足らずで2倍、認定企業数は日本が世界1位に</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>WWFジャパンによると、<a href="https://www.wwf.or.jp/activities/news/5561.html">SBT認定を取得、または取得することにコミットした日本企業は2024年3月に1000社を超えた</a>。直近の4月1日時点では1082社で、2023年5月に500社を超えてから1年足らずで2倍になった。世界全体では7915社で、国別で見ると、日本は、1位の英国(1155社)に次ぐ2位(3位は米国の970社)。すでに認定を取得した企業数では世界全体が5101社で日本は999社と、米国(549社)、英国(828社)を上回って1位だ。</p>
<p>日本のSBT認定・コミット企業のうち約290社は、SBTi区分による大企業で、東証プライム上場企業も多く含まれる。さらにこの1年の大きな伸びを支えたのは中小企業で、2023年1月時点で214社だった中小企業のSBT取得数は4月1日には791社と3倍以上に増えている。</p>
<p>SBTi区分による業種セクター別では電子機器や機械セクター、建設・エンジニアリングセクター、医薬品・バイオテクノロジーセクターなどが多い。一方で金融機関では1社がコミットしているのみで、排出量が多く、脱炭素が難しいとされる鉄鋼や化学セクター、環境フットプリントが大きい大手商社の参加もまだまだ少ない状況だ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日経平均株価構成銘柄企業225社中110社が認定・コミット</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>こうしたSBTにおける日本企業の躍進を踏まえ、WWFジャパンは、日経平均株価構成銘柄に選定されている225社を対象に独自の調査を実施。その結果、3月15日時点で約半数の110社がSBTの認定を取得、または取得することにコミットしていることが明らかになった。</p>
<p>これは2022年末時点での同様の数字に比べて約9%多く、同銘柄での業種セクター別の内訳は、通信や電気機器、自動車、精密機器などからなる「技術」(約75%)と「資本財その他」(約60%)が全体の取り組みをけん引する一方、水産、食品、小売り、サービスからなる「消費」(約44%)、鉄鋼や化学、商社などからなる「素材」(約36%)、「運輸交通」(約33%)、「金融」(約5%)のセクターは低水準にとどまることも分かったという。</p>
<p>金融セクターのSBT取得が特に少ない理由を、WWFジャパンは「日本の金融各社はGFANZと呼ばれる金融機関の脱炭素実現のための国際連合の方法論をベースにして目標を設定する場合が多いことが考えられる」と分析。ただし、「GFANZの方法論とSBTiの金融機関向けガイダンスは相互補完的」であるため、今後は「金融機関のSBTの認定・コミットが期待される」という。また素材セクターの低さについては、「鉄鋼や化学といった脱炭素が難しい業種を含むため」と考察する。実際に鉄鋼メーカーへのヒアリングでは高炉から電炉への移行のシナリオなど「SBTの求める水準にまで持っていくことが難しい」という声が聞かれたという。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>サービスなど排出量が相対的に多くないセクターの取り組み遅れも</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>これらの調査結果について、WWFジャパンの気候・エネルギーグループの羽賀秋彦氏は、「取り組みが遅れているセクターの中には金融や、一般に多排出で脱炭素化が難しいとされる企業群だけでなく、サービスといった必ずしも多排出な産業構造ではないセクターも含まれていた。これは、排出量が相対的に多くないが故に脱炭素へのプレッシャーが少なく、当事者意識や課題感が低くとどまっている可能性を示唆している」と指摘。さらに日経平均構成銘柄企業の残る115社はSBT未取得でコミットもしていない現状に対し、「日本を代表する大企業としての社会的責任やインパクトを踏まえ、排出量の多寡にかかわらず、すべての企業が野心的な目標を科学に沿って設定することが社会全体での脱炭素を実現するために重要だ」として、SBTの取得・コミットを促している。</p>
<p>WWFジャパンでは、日経平均構成銘柄企業225社の脱炭素化を後押しする意味合いから、その取り組み状況を「<a href="https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5512.html">日本企業脱炭素本気度ウォッチ</a>」と題して今後も継続的にモニタリングしていく方針だ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「SBTネットゼロ基準」は33社、世界6位にとどまる</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>なお、バリューチェーン全体で2050年までに90%以上の温室効果ガスの削減を、残りの10%は大気中からの炭素除去を求めるなど、SBTの中でも認定基準の厳しい「SBTネットゼロ基準」を満たした企業は、4月1日現在、世界で795社のうち日本企業は33社で、世界6位にとどまる。今後、さらにSBT認定を取得、またはコミットする日本企業が増え続けることが想定されるなか、それぞれの企業がいかに高い水準を掲げ、実際に排出量削減を推進していくかが日本の脱炭素社会実現の鍵を握っている、と言えよう。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

話題のキーワード

カーボンニュートラル/脱炭素

環境 environment

日本企業のSBT認定・コミットが1000社超える――日経平均構成銘柄の半数が取得、セクターによって取り組みに差も

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>SB国際会議2024東京・丸の内</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/01m.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>Day2　アフタヌーンプレナリー</strong><br /><strong>青木茂樹・SB国際会議 アカデミック・プロデューサー/ 駒澤大学 経営学部 教授<br />Sanam Akhavannasab・オールボー大学ビジネススクール 准教授</strong></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>JSBI(Japan Sustainable Brands Index)は、生活者から見た企業のサステナビリティへの取り組みやブランドイメージを調査・分析し、2021年からレポートを発表している。併せて生活者のSDGs認知度なども調査しているが、SDGsの言葉自体の認知度は89.8%と高いものの、「内容を知っている」と答えた人は2021年の20.6%から、その後も20%前後にとどまっている。なぜ、生活者のSDGsの内容に対する認知度は上がっていないのか？　本プレナリーでは「コミュニケーション」をキーワードに企業は生活者に向けてどのような取り組みが必要なのかを考察した。</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>はじめに、企業のサステナビリティへの取り組み状況を測るJSBIについて、なぜこうした指標を作ったか、監修を務める青木茂樹氏が説明した。青木氏によればマーケティングという言葉は約120年前にできたという。長い間、企業が作りたい商品を作り販売する「プロダクトアウト」で市場は成立してきていたが、そこには、欧州では自国で売れない商品は植民地で売ることができ、売る努力の必要がなかったという背景があった。だが、植民地がない米国ではプロダクトアウトだけでは市場は成立せず、消費者の求める商品を開発・販売する「マーケットイン」が必要になったという。</p>
<p>こうした市場の変化を踏まえ、青木氏は「一方で、我々はさまざまな社会課題、地球課題、環境課題を抱えている。企業はCSRに取り組んでいるが、それが目に見える形になっていない場合は『のれんに腕押し』だ」「企業はCSR報告書などを作成しているが、それが成果につながっているのか分からないという悩みもある」などと話し、それらを解決するために「ソーシャルインパクト的に企業活動を評価した指標が必要だと考えた」という。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/02.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>青木氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>SB国際会議2024東京・丸の内に合わせて発表された「JSBI 2023 Report」は、SDGs貢献イメージと企業の具体的な取り組みを基に算出したSDGs評価得点を合わせて抽出した企業ランキングしている。トップ5には、良品計画(無印良品)、トヨタ自動車(TOYOTA)、ファーストリテイリング、住友林業、クボタが名を連ねた。またレポートでは生活者のSDGs認知度なども調査しており、青木氏は経年変化のグラフを示しながら、「いちばんの問題はSDGsの理解度が進んでいないこと」だと指摘した。「内容を知っている」と回答した数は昨年の21.8%から、19.7%に低下した。</p>
<p>青木氏は「つまり企業活動が、生活者の理解につながっておらず、理解の喚起すらできていないということ。もっと言うならば、生活者が『SDGs疲れ』になっているような状態」だと懸念を示し、続けて「だが、地球課題はまだまだ解決してない。生活者にアクションを起こしてもらうような方法を考えるべき」だと力を込めた。</p>
<p>生活者にアクションを起こしてもらうために企業は何をすればいいのか？　青木氏は、「生活者は、気候変動やエネルギー、平和などの項目を重要視しているが、企業の取り組みが少なく解決していない」と生活者が重要視するSDGs項目と企業が取り組んでいるSDGs項目にギャップがあることを指摘し、生活者のニーズを把握しギャップを小さくする取り組みが必要だと強調した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>消費者エンパワーメントは、地球を積極的に保護するように考えること</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>青木氏は、「メディアコミュニケーションの力を持ち始めた生活者を企業はどう捉えたらいいのか」と前置きし、自身が客員研究員として在籍しているオールボー大学ビジネススクール(デンマーク)で、消費者エンパワーメントを研究しているSanam Akhavannasab准教授を紹介。Akhavannasab氏は動画で登壇し、「消費者エンパワーメント：持続可能な市場における定義、課題、機会」と題して講演した。</p>
</div>
<div class="elem_various img_right">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/03sanam.png"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>Akhavannasab氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>Akhavannasab氏は、消費者エンパワーメントの過程には、個人のシチュエーションや行動などの「消費者のファクター」と、対応力やエンパワーメント戦略を持った「企業のファクター」、そして「環境要因、市場競争、技術の進歩」などの外部要因があると説明した。SNSなどの情報技術の発達は、消費者が企業の意思決定プロセスをコントロールできるように後押ししているという。</p>
<p>また消費者エンパワーメントには、製品や流通の決定などのマーケティングを変更することができる「社会的な力」と、競合する企業・ブランドの中から選択する「個人の力」という、2つの側面があると説明した。こうした背景や過程を経て、消費者は企業に満足したり信頼を感じたりして、支払い意欲のある行動につながるという。</p>
<p>そのうえでAkhavannasab氏は、消費者エンパワーメントは「グリーンであること」が重要だと強調する。社会はグリーン製品を使用することが重要であると認識し、そういった方向に向かっているが、一方で消費者は市場競争を歓迎しているという課題がある。「企業は、なぜこの製品なのか、どういった特徴があるかなど情報をすべて伝え、消費者に選択の役割と選択の自由を与えることが大切である」と話した。</p>
<p>また企業が消費者同士をつなぎ、コミュニティに参加し、情報を提供し、消費者に力を与えることで、消費者が責任を持って環境により良い行動をとれるように促すことができる。こうした企業の取り組みは、「消費者を受動的な市場プレーヤーから積極的な市場プレーヤーへと移行させるのに役立つ」とAkhavannasab氏は話し、「エンパワーメントは、単に『よし、これだ。これを使わなければならない』と言うことではなく、地球を積極的に保護するように考えることだ」と強調する。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/04.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>だが、同時に注意しなければならないことがある。こうした手法は、マーケティング分野では新しく現段階ではある種の挑戦であり、単純に消費者に選択を迫ることは、消費者のエンパワーメントの概念とは正反対だという。さらにEUがグリーン移行を実現するために促進している立法措置について言及し、「欧州委員会は消費者が望むときにグリーンな選択をするよう求めているだけだ」と懸念を示した。</p>
<p>こうしたミスマッチは考慮されるべきであり、改善されるべきであるだとAkhavannasab氏は言う。そして「エンパワーメントの概念とそれを作る方法が、消費者をよりアクティブにし、市場でグリーン製品を選択する真のビジネスメーカーに役割を与える」と話し、「研究者と実務家の両方が多くの洞察を得るためにも、継続して深く調べる必要がある」と結んだ。</p>
<p>Akhavannasab氏の講演を受けて青木氏は、消費者の発信力が高まっており、企業はSNSなどへの対応が欠かせないことに触れ、積極的にSNSを使ったカスタマーエンゲージメントをしているかを会場に問いかけた。また、JSBIの調査結果では、10～20代女性の64.2%がインスタグラム、34.3%はX(旧Twitter)で、ファッションに関する情報収集をしていることが分かったと説明。全世代の男女合わせても26.8%がインスタグラムを活用しているという。青木氏は「企業はSNSを活用し、生活者と感情的なつながりをつくることが重要であり、双方向のコミュニケーションでエンゲージメントを高めることが必要だ」とまとめた。(松島香織)</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

JSBIから考える、コミュニケーションから生まれるサステナブル・ブランディング

SUSTAINABLE BRANDS

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/01_tom-fisk_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit: Tom Fisk</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>SBTネットワーク(SBTN)は「科学に基づく自然関連目標(自然SBTs)」の導入を推進し、目標認定システムの確立を目指している。今回、先進的な17社が実施している自然SBTsの先行導入から見えてきた内容を公表した。パイロット企業は、自然SBTsの設定に、単なるリスク管理にとどまらない価値を感じているという。SBTNの今後の課題としては、科学的な厳密さと実行可能性の両立、目標認定システムや導入企業支援ツールの整備などが挙げられている。企業側の課題としては、スキルや社内外との連携構築がある。(翻訳・編集＝茂木澄花)</p>
<p>2023年5月、さまざまな業界を代表する企業<a href="https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1216301_1532.html">17社</a>が、類を見ない挑戦に乗り出した。自然環境に重要な影響を与えるサプライチェーンを持つこの17社は、世界初となる<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/how-it-works/what-are-sbts/">自然SBTs</a>のパイロット企業だ。</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>自然SBTsパイロット企業17社</strong><br />アンハイザー・ブッシュ・インベブ、アルプロ(ダノンの一部門)、ベル、カルフール、コービオン、グラクソ・スミスクライン、H&amp;Mグループ、ヒンドゥスタン・ジンク、ホルシムグループ、ケリングとロクシタングループ(2022年に共同で<a href="https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1212901_1532.html">「自然のための気候ファンド」</a>を設立)、LVMH、ネスレ、ネステ、サントリーホールディングス、テスコ、UPM</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今年中に目標認定プロセスを幅広い企業に拡大するのに先立ち、今回の先行導入では厳密さと実行可能性の最適なバランスが焦点となっている。パイロット企業はすでに豊富なデータを提供しており、データの点数は2万を超える。</p>
<p>すでに最終段階に入っている今回の先行導入は、今年5月に完了し、初めて目標が認定される見込みだ。<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/how-it-works/what-are-sbts/">SBTN</a>は、先行導入中に実施したワークショップ、インタビュー、匿名アンケートの結果を組み合わせることで見えてきた<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/news/unlocking-insights-and-changing-mindsets-what-its-like-to-pioneer-science-based-targets-for-nature/">初期段階の知見</a>を発表した。</p>
<p>この公式の先行導入と並行して約160の企業が、何らかの形で自然SBTsを設定するための準備を進めている。このうち125社はSBTNの<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/take-action-now/take-action-as-a-company/join-the-sbtn-corporate-engagement-program/">コーポレート・エンゲージメント・プログラム</a>参加企業だ。また、SBTNの<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/take-action-now/take-action-as-a-company/join-the-sbtn-corporate-engagement-program/referral-program-companies/">アドバイザー紹介プログラム</a>などを活用して取り組んでいる企業もある。</p>
<p>パイロット企業が自然SBTsを運用することで見えてきた「5つのポイント」を整理した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>1)リスク管理にとどまらないチャンス</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>パイロット企業は、自然SBTsをレジリエンス向上のためのリスク管理ツールとして重要視するとともに、それ以上のチャンスも見出している。あるパイロット企業の担当者はこう語る。「このメソッドで得られる価値は、サプライチェーンに関わるリスクを特定することによるリスク緩和です。それとともに、社会的な評判や競争優位性の向上も見込めます」</p>
<p>グラクソ・スミスクラインは「この枠組みには計り知れない価値がある」と強調する。企業が自然に与える影響と、自然への依存に関する理解を深め、既存の自然関連目標の達成に向けて取っている行動の精度や優先順位を上げることにつながるという。</p>
<p>また<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/blog/mobilizing-companies-for-a-nature-positive-future/">SBTNは、関連する他のイニシアチブと相互運用可能</a>なことも評価されている。ベルの担当者は次のように進言する。「SBTNに参加することは、他の枠組みへの道を開くことにもなります。少なくともデータの観点から言えば、そのプロセスは非常に厳密で科学的です。気候と自然は深く関係しあっています。SBTNは、レジリエントな食料モデルを生み出す明確な道筋を示しています」</p>
<p>直近では<a href="https://tnfd.global/">「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」</a>の勧告によって300社以上がTNFDの枠組みに沿った情報開示を採用し、年次の事業報告の一部として開示を始めることを約束した。SBTNはTNFDとも連携している。アルプロの担当者は「今回の先行導入で目標を設定したことに、ビジネス的な価値を感じています」と話す。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>2)正当性を確認し、自社の目標を引き上げる</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ケリングは、<a href="https://sustainablebrands.com/read/supply-chain/kering-commits-to-net-positive-impact-on-biodiversity-by-2025">2025年までに生物多様性にネットポジティブな影響</a>を与えるという野心的な目標を掲げている。今回の先行導入は、その目標に対する社内の意欲にも良い影響を与えたという。自然SBTsのメソッドでは、自社が環境に与える影響の測定範囲を、直接の事業活動だけでなくサプライチェーンの上流まで広げることが推奨されている。</p>
<p>グラクソ・スミスクラインは、自然SBTsを設定するプロセスで重要な変化が促進されたと指摘する。サプライヤーと協働し、原材料調達の場所や方法についてトレーサビリティとデータの透明性を高めたのだ。その対象は「直接調達を行っているサプライヤーに限らない」という。</p>
<p>また別のパイロット企業は、このメソッドがサステナビリティに関する自社の目標を引き上げただけでなく、既存目標の正当性を確認することにも役立ったと報告した。組織が自然に与える影響や自然に依存する現状への認識が社内で広まり、今すぐ有意義な取り組みが必要だという見方に変化していったという。自然と気候への影響を併せて評価することで、温室効果ガスの排出を最小化するものの、自然には重大な影響を及ぼしてしまうという原料を特定した企業もあった。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>3)定量的な事業成果が出せる</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>自然SBTs<a href="https://sciencebasedtargetsnetwork.org/take-action-now/take-action-as-a-company/what-you-can-do-now/">メソッドのステップ1とステップ2</a>は、バリューチェーンが自然に与える影響を評価し、優先順位を付けるプロセスだ。企業は上流のトレーサビリティを向上し、サプライヤーとより緊密に連携して影響を把握する必要がある。このプロセスによって、企業はサプライチェーン内の隠れたリスクを明らかにし、特に影響の大きい地域での取り組みを優先するよう促される。</p>
<p>連鎖的に社内やサプライチェーンとの連携が深まった、という企業も複数あった。より細かいデータを収集するため、サプライヤーの能力構築を行った等の事例がある。さらには、自然SBTsを設定することで、実際に定量的な事業成果が出た例もある。ヒンドゥスタン・ジンクは、水利用の効率化による戦略的なコスト削減計画を立てている。別のパイロット企業は、説得力のある自然関連目標を持つことで信用や融資を得やすくなると語る。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>4)厳密さと実行可能性のバランス</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>各国政府は<a href="https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1217257_1532.html">影響度の大きいコモディティ</a>などに対し、より野心的なバリューチェーン上流の評価を求めている。SBTNのメソッドは、全ての企業が目指さなければならない方向性と整合し、強まる監視と規制に対応を続ける。しかし、企業に説明責任を求めるステークホルダーは政府だけではない。ホルシムは、投資家などの幅広いステークホルダーから、自然関連の説明責任を求められていると述べる。</p>
<p>SBTNは、企業が現時点で実現可能な内容と、取り組みのレベルを向上させる内容のバランスを取ることを目指している。そのためには継続的な最適化という難しい対応が求められる。例えば、科学に基づいた目標設定のためには、サプライチェーン上流のトレーサビリティが求められる。しかし、データ収集とデータ品質がハードルとなり、完全な見える化は企業にとって明らかに難しい課題だ。</p>
<p>自然喪失に対処するためのデータとツールの分野は、気候関連ほど成熟していない。そのため、SBTNは関連するデータとツールを特定するため、開発企業と協働している。企業がサプライチェーン内のトレーサビリティを構築するのに役立つ追加ガイダンスを作成中だ。</p>
<p>また科学的な厳密さと実用性を均衡させるためには、業界特有の事情も関連してくる。SBTNのバリューチェーン評価体系は業界横断型に設計されている。幅広い企業を巻き込むためだ。しかし一部の企業は、より柔軟で業界固有の現実に即したメソッドが必要だと述べる。SBTNはさらなる導入を促すため、特定の業界に向けた導入支援や、認定システムの重要な部分に関するガイダンスを行っている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>5)導入成功の鍵を握るのは人材と社内の賛同</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>パイロット企業が指摘するとおり、導入を成功させるには、方法論だけではなく実行に移す人材も必要だ。ライフサイクルアセスメントとフットプリント追跡の専門知識などのスキル、空間分析の習熟、環境データへの深い理解が欠かせない。これらは社内で構築することも、コンサルタントの支援を受けて構築することもできる。</p>
<p>しかし、技術的なノウハウと同じくらい重要なのが、データ収集を成功させるために必要な社内の賛同と支援だ。例えば、上流のデータに関して調達部門と効果的に連携することなどが挙げられる。これは特に、バリューチェーンの下流に位置する大企業に言えることだ。</p>
<p>SBTNはこのことを認識し、導入過程の企業を支援するための追加リソースを準備している。SBTNのメソッドの実践的な導入ガイドとしてデザインされた「企業向けマニュアル」や、プロセスの開始準備を行う企業を支援する自己評価ツールなどだ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>今後の見通し</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>パイロット企業が認定を受けるための目標提出期限は、2024年3月1日だった。SBTNは最初の目標認定の時期として5月または6月を見込んでいる。それとともに、先行導入によって得られた主要な学びを記載した詳細なレポートも発表する予定だ。</p>
<p>目標認定プロセスの幅広い展開に備えるにあたり、しっかりした認定モデルを構築することを優先課題としている。現在、<a href="https://www.isealalliance.org/">ISEAL</a>と協働での開発が進められている。またSBTNは、TNFDなど関連する他のサステナビリティの枠組みとの整合性をより高めるため、連携した取り組みを続ける予定だ。</p>
<p>2025年までに、自然SBTsの対応範囲が広がり、生物多様性の指標と保護措置が組み込まれると見込まれる。海洋に関する目標の追加や、淡水と土壌の汚染に関する目標の拡充なども行われるだろう。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

「自然SBTs」がいよいよ始動へ――17社の先行導入から見えてきた5つのこと

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>なぜ今、『統合思考経営』なのか？<br />～ESGを踏まえた長期にわたる価値創造のために～<br />第26回</strong></p>
</div>
<div class="elem_paragraph right">
<p><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/index.html"><strong>SBJ Lab Senior Practitioner of Integrated Thinking</strong></a><br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/index.html"><strong>サンメッセ総合研究所(Sinc)所長/首席研究員　川村雅彦</strong></a></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/kawamurasantop_1_1_1_1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>前回(第25回)は後編1として、シングル・マテリアリティとダブル・マテリアリティの背景にある、「株主至上資本主義」と「ステークホルダー資本主義」の関係について考察しました。今回(後編2)では、ステークホルダー資本主義の実践として、ブラックロックの「<strong>ダブル・ボトムライン</strong>」を取り上げ、最後に最近の新しい動きを紹介します。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「ダブル・ボトムライン」を実践するブラックロック</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■ステークホルダー資本主義を実践する「ダブル・ボトムライン」</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ラリー・フィンクの2022年1月レターに続いて、同年3月にブラックロックは『<strong>ステークホルダー資本主義：企業価値のサステナビリティ</strong>』を公開しました。主要論点は、ステークホルダー資本主義の普及・実現のために、同社が取り組む「<strong>ダブル・ボトムライン(Double Bottom Line)</strong>」の考え方と実践です。</p>
<p><sup>(資料)ブラックロック『<strong>ステークホルダー資本主義：企業価値のサステナビリティ</strong>』 全文<br /><a href="https://www.blackrock.com/us/individual/insights/stakeholder-capitalism-investing"><u>https://www.blackrock.com/us/individual/insights/stakeholder-capitalism-investing</u></a>(英語版)</sup></p>
<p>ダブル・ボトムラインとは、直訳すれば「二重の最終収益」ですが、意味するところは<strong>「</strong><strong>企業が利益追求と社会的責任<sup>※1</sup>を両立させること</strong>」です。利益の一時的な減少はありうるが、長期的にはステークホルダーに利益をもたらし、その評価が企業の繁栄につながる、という考え方です。つまり、<strong>短絡的な二者択一ではなく、長期的な両者の統合の追求</strong>と理解できます。</p>
<p><sup>※1：ISO26000(社会的責任の指針)の定義によれば、「企業の社会的責任」とは、<strong>企業の意思決定と事業活動が環境・社会・人々に及ぼす影響(インパクト)に対する責任</strong>である。コンプライアンスや単なる社会貢献活動に置き換わるものではない。</sup></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■ダブル・ボトムラインによる長期的価値創造の検証</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ブラックロックは、企業が長期的な成功を追求する中で、株主とともにステークホルダーとの持続的な関係を育むことを重視します。「このダイナミクスは、<strong>投資の将来や従来の財務指標を超えた企業業績の指標にとって何を意味するのか？</strong>」と自問しています。</p>
<p>それゆえ、ダブル・ボトムラインは、企業の財務的損益だけでなく、同時に社会的影響(インパクト)を測定するフレームワークとも位置づけられます。実際、ブラックロックは<strong>サステナブル投資の体系的分析(ビックデータによる定量的実証分析)</strong>により、どのようにしたら株主とステークホルダーの双方に利益をもたらすことができるかを研究しています。いくつかの結果を公表しています。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「インベストメント・チェーン」から「インベストメント・ループ」へ</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■「年金加入者＝真の株主＝ステークホルダー」という構図</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>フィンクが強調するように、年金基金であれば、インベストメント・チェーンの中では最終的に投資先企業の利益は、運用益という形で「資金の出し手」である年金加入者に還元され、退職後の資産となります。この意味で、<strong>年金加入者は「最終受益者」として投資先企業の「真の株主」</strong>です。</p>
<p>同時に、年金加入者は年金基金の母体企業・団体の従業員・職員であり、一方で投資先企業の顧客・消費者や地域住民でもあるため、<strong>広義には投資先企業のバリューチェーンにおけるステークホルダー</strong>と言うことができます。ここから<strong>「年金加入者＝真の株主＝ステークホルダー」という新たな構図</strong>が浮かび上がります。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■ステークホルダーを組み込んだ「インベストメント・ループ」</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>この新しい構図で、年金加入者から投資先企業のステークホルダーまで考えると、投資資金の流れは、運用益に着目する<strong>「インベストメント・チェーン(投資の連鎖)」</strong>よりも、サステナビリティに着目する<strong>「インベストメント・ループ(投資の連環)<sup>※2</sup>」</strong>と称した方がふさわしいように思います。</p>
<p><sup>※2:筆者の造語</sup></p>
<p>インベストメント・ループは、ブラックロックのステークホルダー資本主義のダブル・ボトムラインに着想を得たものですが、機関投資家と企業の双方にとって、<strong>ステークホルダー利益(経済的・身体的・精神的・社会的ウェルビーイング)の向上に努めることが共通の責務</strong>となります(図表1)。</p>
<p>この共通の責務を果たすためには、機関投資家と企業がこれまでの発想を変えて、株主と経営者の「利害の不一致」を当然の前提とせずに、逆に<strong>長期のサステナビリティ視点から「利害の一致」を追求することが肝要</strong>です。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表1：ステークホルダーを視野に入れた「インベストメント・ループ」</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/g1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(注)ブラックロックの立場はアセットマネージャーである。その顧客がアセットオーナーたる年金基金などである。アセットオーナーが自家運用した場合には「株主」となる。個人投資家は割愛した。<br />(資料)筆者作成</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>最後に本題であるISSBに戻れば、これまでの論考から、次のようにまとめることができます。すなわち、<strong>企業の情報開示においても投資家の意思決定においても、真のサステナブルな社会の実現のためには、投資家目線のシングル・マテリアリティでは不十分であり、ステークホルダー目線を加えたダブル・マテリアリティが必然である</strong>ことは明らかです。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>サステナブル投資に係る新たな動き</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「後編1」で「生煮えのステークホルダー資本主義」について述べましたが、最近になってサステナブル投資ないしESG投資の推進に関わる新たな動きがあります。ここでは<strong>WBCSD<sup>※3</sup>の「気候関連企業パフォーマンスと説明責任システム(CPAS)」</strong>と<strong>The</strong><strong> PRIの「プログレッション・パスウェイ」</strong>を簡単に紹介します。</p>
<p><sup>※3：「持続可能な開発のための世界経済人会議」：持続可能な開発をめざす企業200社超(日本企業は約20社)のCEO連合体。本部はスイスのジュネーブ。</sup></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■WBCSDによる指針提案：企業の気候パフォーマンスと資本市場との連携</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2023年12月、気候変動のCOP28で、<strong>WBCSDは企業CEO向けに、脱炭素パフォーマンスと資本市場をリンクさせる指針「CPAS：Climate-related Corporate Performance and Accountability System)</strong>を公表しました。そこでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の本質的な理解に基づき、<strong>投資家の意思決定(評価と資本配分)に有用な形での情報開示が肝要</strong>と主張しています(図表2)。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph center">
<p><strong>図表2：気候関連情報の統合で、金融市場と企業の気候行動を同調させる</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/g2.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(資料)WBCSD「CPAS」(12ページ)2023年12月</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>翌2024年1月には、ステークホルダー資本主義を象徴する場とも言えるダボス会議でも講演を行いました。なおWBCSDは2023年6月に、ISSBのIFRS S1(全般的要求事項)とIFRS S2(気候変動)の公表を受け、その実務を支援する<strong>「サステナビリティ開示のための作成者フォーラム」</strong>を設立しています。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>■PRIの問題提起：同じESG投資でも目指すものが違う</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2023年10月に<strong>The</strong> <strong>PRI</strong><strong><sup>※4</sup>は、「プログレッション・パスウェイ(Progression Pathway)」と題する、「投資家の目的」と「ESG課題へのアプローチ」の関係</strong>について興味深い提案を公表しました。それは、<strong>ESG投資における「</strong><strong>投資家の目的」別にみたサステナビリティ・アウトカムに至る「パスウェイ(経路)」の違いであり、3パターン</strong>を想定しています(図表3)。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>図表3：「投資家の目的」別にみたESG投資におけるパスウェイの3パターン</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/03/05/g3.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup><strong>(</strong><strong>資料)PRI「Progression Pathway：PRI署名機関に向けた責任投資プラクティスの推進」2023年10月(筆者仮訳)</strong><br /><a href="https://www.unpri.org/download?ac=19440"><u>https://www.unpri.org/download?ac=19440</u></a>(英語版)<br /><a href="https://www.unpri.org/download?ac=19931"><u>https://www.unpri.org/download?ac=19931</u></a>(日本語版)</sup></div>
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</tr>
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<p><strong>「投資判断にESGを組み入れる」と言う時・言われた時、その意味する内容は人によって異なります。</strong>機関投資家にとっては、自組織の目指すものが過小あるいは過大に評価され、他組織との差異化が阻害される恐れがあります。例えば、ESG要素の組み入れを単に財務的リスク管理として行っているにも関わらず、特定の目的があるかのように拡大解釈され批判されることです(米国でのESG投資の政治問題化？)。</p>
<p>実は、PRIが提起した<strong>「投資家の目的」に基づく責任投資(ESG投資)の概念整理は、用語のあいまいさや混乱の解決に役立つ</strong>ことが期待されます。また<strong>投資家のグリーンウオッシュ(ESGウオッシュ)の抑制</strong>にもつながります。それゆえ、投資家が自らの基本姿勢を明らかにし、<strong>「投資家の目的」に基づくパスウェイの確立と、ステークホルダーに対する明確な説明は、ESG投資(サステナブル投資)の確実な進展に大いに寄与する</strong>と考えられます。</p>
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<p>次回から、<a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/1208799_2675.html">第17回</a>と<a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/1209251_2675.html">第18回</a>で中断していた「<strong>メガトレンド</strong>」を再開します。第3弾として、まずはテクノロジーを取り上げます。</p>
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<p>(つづく)</p>
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<p><strong>本コラム(後編2)のフルレポートは、サンメッセ総合研究所(Sinc)の下記サイトを参照ください。</strong><br /><a href="https://www.sri-sinc.jp/knowledge/2024020902.html">https://www.sri-sinc.jp/knowledge/2024020902.html</a></p>
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<p><strong>【統合思考経営25】ISSBはシングル・マテリアリティ(後編1)～株主資本主義とステークホルダー資本主義の間で～</strong><br /><a href="https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/1220104_2675.html">https://www.sustainablebrands.jp/sbjlab/newscolumn/detail/1220104_2675.html</a></p>
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