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気候変動/気候危機

リジェネレーション

バイオマス

水素

カーボンニュートラル/脱炭素

プラスチック

生物多様性

箕輪弥生

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/04/07/izutop.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>猟師、早川五男さんは貴重な鹿マタギの技術を受け継ぎ、環境省の鳥獣保護管理捕獲コーディネーターでもある</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>増えすぎたニホンジカが全国で農林業や生態系への深刻な被害をもたらし、その被害額は2019年で約53億円にものぼっている。静岡県伊豆市の天城山ではシカの口の届く範囲の植物や樹皮は食べつくされ、深刻な生態系への被害が見られた。同市では公設の食肉加工施設が整備され、捕獲した鹿を食用として活用するほか、民間の加工施設もペットフード加工で利益をあげる。一方で、減りつつある狩猟者を育成しようというNPOも活動し、ジビエとして活用する機運も高まる。伊豆市でシカ被害の実態や利活用の試みを取材した。(環境ライター箕輪弥生)</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>増えすぎたシカが森の生態系を壊す</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/04/07/izu2.JPG"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>シカの口が届くところは食べつくされた伊豆市の天城山の森。倒木も多い</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「山が死んでいる」。50年以上、伊豆市の山で狩猟を行ってきたハンター早川五男さんがつぶやく。静岡県伊豆市の天城山で見た森林は、ササなどの下草が全くなく、樹木の皮も剥がされ、残っているのは毒のある馬酔木(アセビ)だけという無残な姿だった。</p>
<p>以前はウサギや鳥などが多く生態系も豊かだったがそれらも姿を消し、保水能力がなくなった森の沢はほとんど枯れている。ニホンジカは口の届く高さまでの下草や葉を1日3～5kg 食べるという。それらが食べつくされると、今まで食べなかった特産品のワサビや椎茸、果ては毒のあるヒガンバナまで食べてしまう。</p>
<p>個体数の増えたシカは農作物を荒らし、山を丸裸にするだけでなく、新しい木が生えなくなり、森の循環が絶たれるという深刻な事態に陥ることもある。山は保水力がなくることで土砂災害が起こりやすくなり、海の豊かさにも影を落とす。</p>
<p>早川さんはこの状態をとらえ、「捕獲が15年遅れた」と話す。シカの獣害について市に早くから訴えていたが、当時は聞き入れてもらえなかったという。</p>
<p>しかし、なぜこれほどまでにシカの数が増えてしまったのか。原因として考えられるのは、戦後から2007年まで続いた雌ジカの禁猟政策、シカの繁殖力の高さ、温暖化、駆除を担うハンターの高齢化と数の激減などと推測されている。</p>
<p>国は2023年度までに2011年度比でニホンジカの個体数を半減することを目標としている。</p>
<p>伊豆地域のシカの生息密度で見ると、農林業被害が少ない生息密度(1～2頭／km2)や自然植生への影響が出ない生息密度(3～5頭／km2)に比べ、約30頭／km2(平成27年度)と非常に大きいことがわかっている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>シカの命を無駄にせず、食用として利活用を広げたい</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/04/07/izu3.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup><sub>「しかまる」の施設はコンテナ。伊豆市での使命が終われば移動することもできる</sub></sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>現在、伊豆市では、シカの被害対策として年間を通して捕獲を推進し、食用としての利活用を進め、全国的にもトップレベルの有効活用率を誇る。</p>
<p>その中心となるのが2011年から市設市営の食肉加工センター「イズシカ問屋」だ。「イズシカ」として伊豆市の新たな特産物とすることを目指し、個体の買い取りにより、狩猟者の金銭的負担の軽減につなげることを目的としている。</p>
<p>現在は、国産ジビエ認証も取得し、年間に約900頭の鹿を処理するイズシカ問屋だが、施設の処理容量から1日4頭までしか処理できず、狩猟者が山に埋める個体も数多い。また、食肉販売では、シカは歩留りが15％程度と悪く、利益を生み出しにくく赤字が続いているという現実もある。</p>
<p>そこで、受け入れられなかったシカを年間400頭受け入れ、ペットフードに加工して販売しているのが、「DEER BASE izuしかまる (以下、しかまる)」だ。経営する高山弘次さんは元々、伊豆市役所に勤め、「イズシカ問屋」を立ち上げから7年間手がけてきた。</p>
<p>「しかまる」を始めた理由には、処理できないシカの受け入れを日々、捕獲者に断る辛さがあったという。少しでも命を無駄にしたくないと始めた事業は、今では予約で商品提供が追い付かないほどで、黒字経営が続いている。</p>
<p>新たに、ジビエへの活用を考える団体も動き出している。一般財団法人「森から海へ」は、長野県で鹿肉を活用したペットフードを製造販売しているが、伊豆市の鹿肉を使ったジビエの展開を考えている。また、シカ皮でのインテリアグッズの開発なども手掛ける。</p>
<p>同社団法人の渡邊智恵子代表は、「伊豆市ではクオリティの高いジビエとしての供給が可能なことがわかった。シカの命の無駄をなくすこと、そして地域に関わっている人たちが食べていける事業を考えていきたい」と話す。</p>
<p>シカ肉は牛や豚と比べても、高たんぱく質で低脂肪、高鉄分であることから、食材として優れた健康食とされ、年々消費者の注目度も高まってきている。きちんとした供給体制が整えば、食材としてのニーズが伸びる可能性が高い。</p>
<p>一方、伊豆市を中心に安全で効率のよいシカ捕獲手法の開発で実績をあげ、狩猟や捕獲だけでなく次の世代をつくっていくプロの猟師を育成しているのが、NPO法人「若葉」だ。</p>
<p>若葉の岩崎秀志理事は「高い意識、知識、技術をもつ優秀なハンターを育成すれば、捕獲数も伸びていく。その命を無駄にせず、利活用を広げていきたい」と話す。</p>
<p>一度失われた生態系が元に戻るには長い年月がかかる。生態系にとって最適な頭数を維持し、かつシカの命を無駄にしないためには、捕獲と利活用両面での知恵の出しあいが必要とされているようだ。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ニュース

話題のキーワード

山を食べつくすシカを減らし、食用として消費拡大へ――伊豆市に見るシカ被害と対策

廣末智子

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/03/14/jenny800_2.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>surakit sawangchit</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>既存のパラダイムから脱却し、38億年もの間、生命を存続させてきた再生可能な世界へと踏み出す時――。今年も「リジェネレーション(再生)」をテーマに開かれたサステナブル・ブランド国際会議2022横浜。初日の基調講演では、企業のサステナビリティからリジェネレーションへの移行を戦略的にサポートする英国の専門家でクリエイティブ・ストラテジストのジェニー・アンダーソン氏が「リジェネラティブ(再生可能)であるということ：思考・心・感覚を変える」と題してビデオ登壇し、「自分の思考を一度壊して新しい何かを受け入れるための実践を始めよう」と呼びかけた。講演の骨子を紹介する。(廣末智子)</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/03/14/regeneration700.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ジェニー・アンダーソン氏</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>いつの時代も勇敢なパイオニアはまだ見ぬ未来を実感することができる</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/03/14/threehorizon.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>「三つの地平」now(現在)、transition(移行期)、future(未来)<br /><a href="https://explore.scimednet.org/wp-content/uploads/2017/09/6Sharpe.pdf">https://explore.scimednet.org/wp-content/uploads/2017/09/6Sharpe.pdf</a></sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>アンダーソン氏はまず、ヒューレット・パッカード研究所でかつてリサーチ・ディレクターを務め、現在は独立研究者のビル・シャープ氏が開発した未来について考えるためのフレームワーク「3つの地平(視界)」を紹介した。今の行動が未来にどのようにつながるのかを示したものだ。一つ目は時代ごとの支配的な地平であり、その欠点を認識し、そこに破壊的変革をもたらそうとする地平が二つ目に、三つ目は、「必要な変化を察知するだけでなく、想像もつかないような根本的に異質なものの誕生を感じることのできる人たちの地平」だ。</p>
<p>これを現代に当てはめると、一つ目は過去250年にわたって構築された世界経済モデルであり、このモデルは一部の国や人々にとてつもない富と長期の経済成長をもたらすと同時に、不平等を悪化させた。その結果、気候変動や生物多様性の損失、森林減少といった代償が明らかになったことで、化石燃料エネルギーを破壊的に変革する太陽光や風力発電、工場化した農業システムを変えようとする企業などが今、二つ目の地平として挙げられる。</p>
<p>もっとも二つ目の地平の変革者は巨額の利益を目論む従来の経済の枠組みの中にあり、全面的な変革にはならない。そこで第三の地平として、今の時代に生まれつつある新しい洞察や情報に対してオープンであり、自ら変化をつくり出すことのできるパイオニアたちの世界観がある。勇敢なパイオニアはいつの時代にもまだ見ぬ未来を実感することができる。人が飛ぶことを知らなかった時代にヘリコプターを夢見たダビンチやガリレオのような人々のことだ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>生命の輝きと原理を見抜き、感じ取ること</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>一方で、多くの人は社会やこの惑星が今のままではいけないと分かっていても、機械論的思考に閉じ込められている。脱却するには想像力が必要であり、人類はこれまでの支配的なパラダイムから命を高める新しいパラダイム、38億年もの間、生命を存続させてきた原理にのっとった再生可能な世界へと移行し、自然との新しい関係性の構築に踏み出していかなければならない。</p>
<p>38億年の進化の中で、生命は常に命をつなぐための条件をつくりだしてきた。何十億年も前に存在した単細胞生物から、珊瑚礁や熱帯雨林の複雑な生態系に至るまで、最初の受精卵から誕生、成長、飛翔、そして再生へと命は粘り強く続いてきた。雪の結晶は自然界の主要パターンの一つであり、星型でありながら、雪のひとひらひとひらはどれをとっても一つとして同じものはない。</p>
<p>今、世界が存続するかどうかの脅威を前に、死んでいるかのように無反応な私たちの心を美しい世界に目覚めさせる最良の方法は、生命の輝きと原理を見抜き、感じ取ることだ。私たち自身が命の軌跡であることに気づき、動かなくなった心を再び動かし、反応できるようになったら新たな挑戦が待っている。対応力を取り戻すことは入り口に過ぎず、常に実践が必要だ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>自分の思考を一度破壊し、新しい何かを受け入れる実践を</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>考え方を変えるためには何が必要か。それには自分の思考を一度破壊して、新しい何かを受け入れる実践を始めることだ。その過程を通じて、自分の意見は本当に自分自身のものなのか、実は古いパラダイムで考えているのではないかということに気づく能力を養うことができる。</p>
<p>過去から続く生態系や文化、経済のパターンから、次に行くべき場所を読み取り、システムを発展させる。それぞれの場所で唯一無二のパターンを見出し、次に何が起こるかを想像し、感じ取る。その際、役に立つのが上記の「フレームワーク」に基づいた思考だ。</p>
<p>絶え間ない闘争の中で新しいものを生み出すのは出産と同じで痛みを伴う。だからこそ、その土壌を育てるために資金を共有し、お互いがお互いのメンターとなり、リソースを提供し合うことが発展の道を歩み続けるために必要だ。人間は地球上で、システム進化の触媒として強力な役割を担っている。自身が再生するために、知恵と新しい思考を身につけるための実践を続けてほしい。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

SB国際会議

サステナブル・ブランド国際会議2022

生物38億年の進化にのっとった「リジェネラティブ」な世界へ移行を

井上美羽

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/26/kk700.JPEG"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>あなたが今、口にしている食材はどこからやってきたのか。食のルーツをたどり、知ることは持続可能な食や社会を考える上で、非常に重要な第一歩となる。文化庁委嘱日本遺産映像専門家の楠健太郎さんは広島県を拠点にコロナ禍で奮闘する牡蠣の養殖や酪農などの生産者を丹念に撮影し、無償で編集、譲渡している。生産現場の後継者が減少し、食文化の消滅に対する危機が迫っているなか、映像で記録し多くの人に伝えていくことに大きな価値が見えてくる。映像作家・楠さんへのインタビューを通じて、食文化を記録する現場を追った。 (井上美羽)</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>楠健太郎 (くすのき けんたろう)</strong><br />LIFECT代表。 制作会社で10年間、ブライダルを中心に映像制作の経験を積んだ後、2014年に独立しLIFECTを設立。フリーランスとして、テレビCM・企業VP・教育機関・医療機関・インバウンド・地方自治体PRムービー・商品広告・ウエディングなどの映像制作に携わる。国内外15カ国 54都市での撮影実績、受賞歴多数。<br />LIFECT HP：<a href="https://lifect.jp/">https://lifect.jp/</a></p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>地域の魅力を映像で発信</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>楠健太郎さんは制作会社から独立し広島県福山市を拠点にフリーで活動を始めて今年で8年目、主に地域の魅力を発信する映像を作ってきた。映像制作となると、ディレクター、カメラマン、照明、音声、現場コーディネーターなど、大きなクルーで動くことが一般的だが、彼は企画、ディレクション、撮影、編集まで全てを基本一人で行う。</p>
<p>彼の作品は、ポルトガル国際観光映像祭や日本国際観光映画祭などでも評価され、こうした数々の受賞作がその実力を物語っている。</p>
<p>しかし、2020年のパンデミック到来により予定されていたロケや撮影は延期・中止となり、仕事は激減。そんななか、地元広島県を中心に第一次生産者の映像を作り、生産者へ提供することを思い立った。</p>
<p>そのコンセプトは極めて明快だ。みんなが口にする食材のルーツを映像でたどり、多くの人々に見てもらうこと。「大人の食育」として始まった自主制作『THE ROOTS』は、1年で7人の生産者を記録している。映像では、生産者が自分たちの生産物やその背景について熱く語る様子が描かれている。農業の未来を考えながら広い土地で牛を放牧し搾乳する酪農家、ニンニク一つを娘のように大事に育て世に出すニンニク農家、豊富な栄養を含む瀬戸内海で1年中美味しい牡蠣を養殖する漁師、自己流のスタイルを築き上げて世界の有名シェフにも認められたハーブ農家、メロンを見せながら小学校の授業で食育を行うメロン農家、里山と共生し動物の命をいただくことに真摯に向き合っている猟師、孫の笑顔をみるために愛情を込めて育てるブラッドオレンジ農家――。七人七色の生産者の顔と人柄が、それぞれわずか5分ほどの映像を通してくっきりと浮かび上がってくる。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/26/kk6.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>『土地の広さにあわせた数の牛を飼えば、草と牛とが無理のない共存ができる』という広島県神石高原町の酪農家、相馬充胤さん</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>生産者の熱量を消費者に知ってもらうために</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>観光や地域プロモーションの撮影の仕事で頻繁に地方に足を運ぶ楠さんは、現地で農家や繊維などの一次産業に関わっている人と知り合う機会も多かったのだという。</p>
<p>「例えば地域の特産品として、牛丼があれば、牛肉の牛の撮影をするために、畜産農家の元へ行きます。実際に生産者に会って話を聞いてみると、ものすごい熱量でやっていることを知るんです。自分たちの利益よりも、まず良い食材を作りたい、と考えてやっている。でも、彼らの熱い思いは、撮影で実際に現場に行って、カメラを向けて、休憩時にお茶を出してくれる合間に会話をしている自分だから聞ける内容であって、例えばスーパーにその人の肉が並んでいても、そのプロセスや思いは絶対に知ることができません。この思いを消費者に知ってもらうきっかけはないのかと、ずっと考えていました」</p>
<p>そんななか、2020年の春、緊急事態宣言が発令された。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>恩返しと楽しみが原動力になる</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>この活動を始める引き金になったのは、コロナ禍で飲食店が衰退し、飲食店に卸していた食材の行き場がなくなったことだった。「生産者が作物を廃棄している」という話を聞いたことが、楠さんの胸を打つ。</p>
<p>「初めは、恩返しのつもりだったんです。これまで撮影の現場に行くと、野菜や魚を山ほど持って帰らせてくれたり、食事を出してくれたりする方もいるんですよね。だから、仕事でこれまでお世話になった生産者に恩返しをしたかった」</p>
<p>当初は身近な生産者への恩返しとして始めた『THE ROOTS』であったが、1年続けてみて、今は自分のためにやっているのだという。</p>
<p>「生産者の話を聞くのが、とにかく楽しいんです。様々な生産者とのつながりが増え、生産者と接している時間も人数も増えていくなかで、普通のカメラマンとして仕事をしているだけでは絶対に知り得ない知識を得られます。そして、知識をつければつけるほど、土や肥料、作付けの話など、専門的な話もわかるようになってくるので、『あ、だからこうなっているのですね』というちょっと深い話に入れます。聞けば聞くほど楽しくなって、このループにどんどんハマってきてしまいました」</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「循環」は目的ではなく結果</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>生産者の話を聞いて学ぶことは多い。例えば、<a href="https://www.youtube.com/watch?v=9H8iuir_axk">『THE ROOTS #06 山の神から恵まれたジビエ』</a>に登場する岡田臣司さんは、広島県の里山で狩猟や養蜂も行い自給自足をしながら自然の循環とともに生きているような人だという。</p>
<p>「岡田さんは、鹿を食べたら、その鹿が食べたものが自分の体内に取り込まれるのだという話をしてくれました。例えば、自分たちが環境を汚染すれば、その汚染された草花を鹿が食べ、その鹿を食べることで、自分に還ってくる。その自然の循環にちゃんと向き合って考えている人に初めて出会ったんですよね。環境を守ろう、と表向きにきれいごとを話す人はたくさんいますが、生活のスタイルに落とし込むことができている人、自分の日常が環境に及ぼす影響が、そのまま自分に返ってくることを意識して生きている人は少ないと思います」</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/26/kk5.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>『食のことを考えるということは環境のことを考えるのと同義だ』と語る岡田さんは福山市熊野町で里山を守っている</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「岡田さんの話を聞くまでは、オーガニックが良いというのは情報として持っていただけで、気にせず添加物の入った食材も口にしていました。自分自身はサステナビリティについて深く考えて実践する人間ではなかったのですが、今飲んでいるコーヒーも、昼に食べたコンビニ弁当も、自分自身が口に入れているものがどこからきているのかを少しずつ意識するようになりました」</p>
<p>また、『<a href="https://youtu.be/AiJiaPU2x78">THE ROOTS #04 フィリピン人と育むハーブ</a>』に登場する梶谷譲さんには「世界一うまいシーザーサラダを作る」という夢があり、そのために世界一美味しいハーブと卵をつくることを目指してハーブと鶏を育てている。梶谷さんは美味しいハーブを作るために鶏も飼い始めた。その際に、今まで商品にならず廃棄していた無農薬のハーブを鶏の餌として与え、その鶏糞をハーブの土に撒けば、無駄がなく、農園内で健康的で自然な循環が成り立つことに気がついたのだという。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/26/kk700.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>広島県三原市久井町にある梶谷農園。ハーブや家庭で出た生ゴミも鶏にとっては重要な栄養素</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「多分、これって順番が逆なんですよね。循環させるために仕組みを作るのではなくて、自分のやりたいと思ったことをやったら最終的に循環になっていた。こちらの方が正しい流れのような気がします」</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/26/kk3.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>『楽しくないと続かないじゃん』と話す梶谷譲さん</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>地元の生産者に目を向ける</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>コロナ禍で遠くに行けない状況が作用して、広島近郊の地元の生産者にフォーカスを当てることから始まった『THE ROOTS』。現在公開されている<a href="https://www.youtube.com/playlist?list=PLLQ1qIUemJx_3opXIde7lUOdG0EsS4jXx">7つのストーリー</a>を見ていると、スーパーで並んでいる食材も全て、誰かがこだわりと熱い思いを込めて育てた食材なのだと改めて気づかされる。筆者自身この映像を観ながら「こんなにも多種多様な生産者がこの地域周辺に多くいることに驚いた」と話すと、「今まで生産者に目を向けられていなかっただけだ」と彼は答える。</p>
<p>「どこの地域にも生産者はいるんですよ。ただ、普段スーパーでものを買う人は、生産者、一次産業に対して目を向ける機会がない。でもおそらく全国どこの町でも必ずこの地域と同じくらいの単位で生産者がいるはずです」</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/26/kk4.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>広島県内海町田島で牡蠣養殖業を営む兼田寿敏さん(左)は「夏も冬も家族や友達と牡蠣を楽しめるように」と美味しい牡蠣を育てるために工夫する</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>食文化を未来に残すために</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今後、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束に向かい、映像の仕事が増えてきたとしても、『THE ROOTS』の制作は続けると断言する楠さん。この活動は自分にとっても資産なのだという。</p>
<p>「国内の生産者のコンテンツをこれほど持っているカメラマンは日本にもあまりいないと思います。もしこの制作を10年続ければ、例えば100人の生産者の動画の素材が蓄積される。それは映像が残るだけでなく、自分の中にその生産者から得た知識も溜まるわけです。こんな面白いことをここで止めるわけがない」</p>
<p>彼にとってこの映像制作は、目の前の生産者と自分のために、楽しみながら行っている取り組みでしかない。しかし、このわずか5分間の映像は、食材とその背景に目を向け、人々の食に対する深い気づきを与えてくれる。こうして生産者の思いを映像として記録し、世の中に発信することは、食文化への理解を深め、結果的に日本の食文化を守ることに大きく貢献すると言えるだろう。今ある食文化を確実に未来へ継承していく手段としての映像の価値は、これから大きく開花していくに違いない。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

食のルーツをたどり知ること　“生産者の思い”を映像で伝える、未来に残したい地域の食文化

Nithin Coca

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/01/ocean700_2.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>IBorisoff</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>海を取り巻く深刻な環境課題を解決するためには、より多くの企業が直接投資し、リストレーション(修復)、リジェネレーション(再生)、そして、リハビリテーション(復興)に取り組む必要がある。ツナ缶詰やサーモン缶詰などの水産加工食品を手がける米国企業「バンブル・ビー(Bumble bee)」は、カリフォルニアに拠点を置くNPO「サステナブル・サーフ(Sustainable Surf)」が手がけるプログラム「シーツリーズ(SeaTrees)」とパートナーシップを結んだ。異なる二者が手を取り合い、プロジェクトを進めていく今回のビジネスモデルは、これからの時代に必要とされる企業とNPOのパートナーシップの良い事例となるだろう。(井上美羽)</p>
<p>水産缶詰などの加工食品を手がける「バンブル・ビー」と「シーツリーズ」の新たなパートナーシップ連携は、科学的なデータを用いながら海の資源を再生させるための取り組みを2カ国でスタートさせる。</p>
<p>本パートナーシップは沿岸や海洋の生態系を保全する活動に企業が直接関わり、支援ができるロールモデルを作ることを目指している。</p>
<p>「海は気候変動を逆転させ得る非常に大きな力を秘めています。しかしその力を発揮させるためには、藻場などのブルー・カーボン(沿岸や海洋に吸収・固定されている二酸化炭素)生態系を守り、回復させながら取り組んでいくことが重要です」と、シーツリーズの共同創設者であるマイケル・スチュワート氏は語る。</p>
<p>シーツリーズとバンブル・ビーは共に、重要な穴を埋めることを目指している。健全な海は、地球の気候を一定に保ち、数億ものタンパク質の源泉であり、豊かな生物多様性の保管場所であるにもかかわらず、長い間その価値を無視されてきた。人工物によってもたらされる害や、持続可能ではないやり方での海の資源の搾取は、数百万トンもの海洋プラスチックの放出、サンゴ礁や海藻を含む生態系の破壊の起因となり、増加する人口を養うための漁業は海への負担をかけ続けている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>海はSDGsの中でも最も投資の少ない分野</h2>
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</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>それにもかかわらず、海の保全に対する基金は不足している。国連の持続可能な開発目標の14番目「海の豊かさを守ろう」においては、最も少ない予算しか充てられておらず、政府やNGO、そしてほとんどの企業からもその重要性を見過ごされている状態なのだ。</p>
<p>「現在の経済において、お金を持っている組織は営利企業です。つまり、企業がカギとなるのです。シーツリーズは、企業が直接海の保全のために投資支援ができるプラットフォームとなっています」とスチュワート氏は語る。</p>
<p>バンブル・ビーが昨年、水産物の持続可能性への取り組みの先頭を切り、革新的な活動を推進すると声を上げた時、かなりの反響があった。ここでは、「漁業を保護すること」「混獲やプラスチック汚染を減らすこと」「公正な労働環境の実践やコミュニティプログラムを通じてサプライチェーン上の全ての労働者の保護を保証すること」といった3つの指針が掲げられていた。そして、宣言を出すということは、次のステップとしてこの宣言を有意義な行動に移すということでもあった。</p>
<p>「世界中の組織や企業が海洋を回復するために行っている取り組みについてヒアリングし、理解を深めていく中で、海洋資源や状況についてさらに調査を進める必要性を認識しました」と、バンブル・ビーのコーポレート戦略・コミュニケーション担当兼バイスプレジデントであるレニー・ユング氏は話す。「そしてわれわれが調査を進めるにつれ、海は驚くべき回復力をもつ一方で、これらのプロセスを共に遂行していく仲間が必要だと気づきました」。</p>
<p>バンブル・ビーとシーツリーズが協働することとなったきっかけは、双方が属していた米サステナブル・ブランドのコミュニティだった。シーツリーズ代表のスチュワート氏は、バンブル・ビーの計画そのものだけでなく、組織全体が海洋再生に対し、どのように向き合い、何に取り組もうとしているかというその手法に感銘を受けたのだという。</p>
<p>スチュワート氏は、「連絡してすぐに、なんとCEOのジャン・サープ氏から返事をいただけたのです。これは本当に稀なことです。サープ氏は、すぐに私たちに会い、プロジェクトの実施場所を見る時間をつくりたいと言ってくれました。これはつまり、パートナーシップを結ぶということです」と振り返る。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/07/01/mangrove700.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>一般的な森林の倍以上の二酸化炭素を吸収し固定するといわれるマングローブ (Timothy K)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>シーツリーズは地域団体と協力して昆布を活性化させたり、マングローブの森林を再生させたりすることで、炭素隔離をし、漁業を回復しながら損傷した生態系の再建に取り組んでいる。そしてまずは、南カリフォルニアとインドネシアの2カ所で行なっているシーツリーズのプロジェクトにバンブル・ビーが支援する。</p>
<p>南カリフォルニアの昆布の生態系再生プロジェクトの中でも特に重要な側面の一つは、炭素を固定する技術力、そしてその他の生態系に与える影響を評価する科学者が関わっているということだ。現時点でこの研究データはまだ存在しないが、将来のプロジェクトのための情報として提供することができる。また、昆布の森の再生が世界の炭素市場を支援することも今後可能になるだろう。</p>
<p>「もし本プロジェクトを行わず、バンブル・ビーのようなパートナーを呼び込んでいなければ、ベイ財団といった科学者たちが環境インパクトを測定し、それを文書化することはなかったでしょうし、昆布の森の修復が西海岸の他の場所にまで規模を拡大するための効果的な戦略を立てることもなかったでしょう」と、スチュワート氏は話す。</p>
<p>バンブル・ビーにとって、これは始まりに過ぎない。将来の世代のために、海洋の健全性を守り、世界の漁業が繁栄するように、さらなる挑戦を続ける予定だという。</p>
<p>「海洋資源の再生を支援するという私たちの責任は、今年開始した2つのシーツリーズのプロジェクトだけにとどまりません」とユング氏は言う。「環境を回復するために、新たなプロジェクトを各分野における主要団体、NGO、学界、その他の機関とパートナーシップを結ぶことも視野に入れています」。</p>
<p>海の課題に対応するためには、より多くの企業が直接投資することが求められる。そして、企業を巻き込みながら、リストレーション(修復)、リジェネレーション(再生)、リハビリテーション(復興)に共に取り組んでいく必要がある。バンブル・ビーとシーツリーズとのパートナーシップは、そうした協働モデルの良い事例であり、より多くの企業や団体がこうしたモデルを真似することが期待される。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ワールドニュース

軽視されがちな海洋生態系保全　水産加工品メーカー「バンブル・ビー」の挑戦とは

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/02/11/deforestation.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by <a href="https://unsplash.com/ja/@justusmenke?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash">Justus Menke</a> on <a href="https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E7%B7%91%E3%81%AE%E6%9C%A8%E3%80%85%E3%81%A8%E8%8C%B6%E8%89%B2%E3%81%AE%E5%9C%9F-Xywi2MePlYQ?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash">Unsplash</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>世界24カ所で日本の1.2倍に匹敵する森がなくなった——。世界自然保護基金(WWF)はこのほど、南米やサハラ以南のアフリカ、東南アジア、オセアニアを中心とする世界24カ所で、2004年から2017年までの間に約4300万ヘクタール以上、日本の1.2倍にも匹敵する大きさの森林が消失したとする報告書を発表した。森林の減少は地球温暖化や生物多様性の損失に直結するばかりか、新型コロナウイルスのような動物由来の感染症を引き起こすリスクも高めるとされる。森林の価値が再認識される今、これ以上の森林減少を食い止めるにはどうすれば良いのか。報告書では時と場所によって異なる森林減少の要因とさまざまな対応策を分析。真の効果を生み出すために、経済や食料、金融システムを大きく転換するなど、人と自然との関わりを抜本的に見直すことの重要性を提起している。(廣末智子)</p>
<p>報告書のタイトルは『森林破壊の最前線〜変わりゆく世界における森林減少の要因と対応』。ここでいう「森林破壊の最前線」とは、森林が急速に失われ、且つ残された森林もさらなる減少の危機にある地域を指し、衛星画像など5つのデータソースから熱帯と亜熱帯に絞って調査した。その結果、対象地域は、2015年の調査でも名前が挙がっていたアマゾン、中央アフリカ、メコン、インドネシアのほか、新たに西アフリカ、東アフリカ、南米を加えた24カ所の総面積約7億1000万ヘクタールに広がっている。このうち約半分は現在のところ森に覆われているものの、2004年から2017年の間に、残された森の10%以上に当たる約4300万ヘクタールの森林が消失していた。それらの地域ごとの要因とそれについての取り組みを包括的に分析した結果をまとめたものがこの報告書だ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>牛の放牧、大豆、パーム油の栽培など<br />商業的農業と植林地開拓が突出要因</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>それによると、こうした世界的な森林減少の要因として突出しているのが、大規模ないし小規模な商業的農業と植林地の開拓であり、インフラ整備や採掘など自然資源の採取も重要な要因となっている。これらは、グローバルな市場や投資動向、国内政治の変化や地域ごとの政治経済など、その時々によって、さまざまな影響を受け、変わる傾向がある。もっとも、多くの現場では、採掘と森林伐採の拡大に伴って道路開発が進み、その後に商業的農業開発が行われるという共通点が見られ、農地への転換は気候や地理条件、市場の物流、そして辺境地域に根強く残る投機的な土地取引とも関係するとしている。</p>
<p>その上で報告書は、24の森林破壊の最前線について、それぞれの地域で森林減少をもたらした要因を分析。南米では牛の放牧(主にアマゾン)と大豆の栽培(主にセラードとチャコ)を、東南アジアでは植林やパーム油のプランテーション開発などを直説的な一次要因として挙げた。またアフリカでは依然として自給的農業が主要因であるものの、商業的農業も拡大傾向にあり、同時にエネルギー源としての木材の採取が小規模に行われていることが森林劣化の原因となっている。さらにいくつかの新しい傾向として、カカオやパーム油、トウモロコシなどの栽培や畜牛などを行う小規模農家が増加しており、非公式の採掘や、人の居住地の拡大による圧力を受けている場所でも森林減少が拡大していることなどを指摘している。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>世界各地で対応も顕著な効果に至らず<br />「万全なアプローチは存在しない」</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/os/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/02/11/shinrinhakaisaizensen.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>『森林破壊の最前線〜変わりゆく世界における森林減少の要因と対応』</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>一方で報告書はこれ以上の森林減少を食い止めるため、国際的な枠組みや国、地方行政、企業、先住民、地域住民、NGOなどのさまざまなステークホルダーにより、世界各地で行われてきた取り組みと経緯についても詳細に説明。近年では、途上国が森林減少や劣化を防ぐことにより温室効果ガスの排出量を減少させた場合などに先進国からの経済的支援を受けられるメカニズムである「REDD +(レッドプラス)」や、政府や企業、地域住民などがそれぞれの経済的利益や社会的発展、環境保全を統合的に進展させる「管轄アプローチ」などの新しいイニシアチブも生まれていることにも言及している。</p>
<p>もっとも結果として、そうしたいずれの取り組みも森林破壊の最前線に顕著な効果をもたらすには至っていないのが現状であることから、森林減少を食い止める対応策について「万全なアプローチは存在しない」と結論付ける記述も。その上で、「違法な経済活動、地下経済や汚職が持続可能性の実現を阻み続けており、アカウンタビリティと透明性の確保が急務である」といった課題を指摘しつつ、「これまでのように経済成長と金銭的利益を過度に重視するのをやめ、過剰な消費と向き合い、健康と公正性により高い価値を置くことで自然との関係を変えることこそが重要だ」と結んでいる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>2030年までに自然を回復軌道に乗せ、脱炭素社会の実現を</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>また報告書の巻頭で、WWFインターナショナルのマルコ・ランベルティーニ事務局長は、「森林の減少や劣化は、新型コロナウイルスなど動物由来の感染症が蔓延する大きな要因にもなっている。今こそ自然が私たちにもたらしてくれる恵みを再評価する時であり、中でも見直すべきは森林だ。本報告書が示しているように、私たちは各地の事情を考慮した統合的な解決策を探るとともに人と自然の双方に利するよう、森林保有国から、森林減少を招く消費や暮らしをしている国に至るまで、すべての人々が力を合わせて行動を起こす必要がある」と述べ、2030年までに自然を回復軌道に乗せ、真に持続可能な開発とカーボン・ニュートラルを実現し、ネイチャー・ボジティブで公正な社会の実現を目指す「人と自然との新たな関わり方(New Deal For Nature and People)」について提言している。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>インドネシアでは泥炭湿地の農地化深刻<br />日本も無関係ではない。意識持って生活を</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>一方、報告書の発表に際して行われたメディアブリーフィングでは、WWFの古澤千明氏が、インドネシア・スマトラ島の現状などについて解説。自然林を大規模に伐採した後に植えられるユーカリやアカシアといった製紙原料用の広葉樹は成長のスピードが速く、5〜7年で収穫され、且つ1種類しか植えられないため、元あった森林環境とは大きく異なることを、うっそうとした濃い緑の森林の手前に、緑の色が薄く、背の低い製紙原料用の植林が大規模に広がる写真を例に示した。また自然の森の価値を理解する上で分かりやすい事例として、インドネシアに多い泥炭湿地を人為的に乾燥させた産業用の植林地や農地を挙げた。湿地を乾燥させる過程で地中に含まれている炭素が大量に噴出されるだけでなく、そこで野焼きや焼畑を行ったり、もしくは自然発生的に火がついてしまうことによって大規模な火災が発生し、2015年にはCO2換算で17億トンもの温室効果ガスを排出するなど、大きな問題になっていることを報告した。</p>
<p>さらに古澤氏は、森林破壊の最前線には含まれていない日本の現状について、「日本は木材や紙、パーム油、天然ゴム、バイオマス燃料、大豆、牛肉など多くの林産物、農畜産物を海外から輸入し、消費している。その時点で、日本に暮らす人々のビジネスや生活は、森林減少と決して無関係ではなく、大きな関わりがある」と強調。「例えばそれらの原料の多くが生産されているインドネシアでは、森林の伐採によって大きく生態系が損なわれ、場所によっては人権問題も生じている」と、日本でも森林破壊について高い意識を持って生活することの重要性をあらためて訴えた。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

世界24カ所で日本の1.2倍の森林が消失：WWF「森林破壊の最前線」報告

佐々木ひろこ

<p></p>
<div class="blockTemplateArea">
<div class="elem_paragraph">
<p>今年8月、北大西洋等で遠洋はえ縄漁業を展開する宮城・気仙沼の臼福本店が、大西洋クロマグロ漁で世界初の快挙となるMSC認証を取得した。「海のエコラベル」ともいうべきMSC認証取得のニュースは、我が国の水産業が持続可能な方向に向けて舵を切るための新たな契機となるかもしれない。臼井壮太朗社長に、3年がかりで取得したという認証への思いや今後の課題を聞いた。(佐々木ひろこ)</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/1199002_2775.html">前編はこちら</a></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/7.JPG" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph">臼福本店の臼井壮太朗氏(中央)を中心に、チーム一丸となって認証取得を目指した関係各社の方々とともに</div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>――まず改めて、MSC認証の取得、本当におめでとうございます。実は申請からずいんぶん長くかかったと伺いました。</p>
<p><strong>臼井：</strong>ありがとうございます、予備審査から計算すると、足かけ3年かかりましたね。船員がインタビューされたり機密情報の漁業日誌を公開したり、海鳥が誤って仕掛けにかからないようにする装置や、仕掛けにつける餌の小魚が乱獲されたものでないかの確認まで、当社大西洋クロマグロ遠洋漁船の基地、カナリア諸島のラス・パルマス港で行われた審査の内容は多岐にわたりました。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>遠洋漁業をご存知ですか？</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>臼福本店が操業するのは大西洋のアイルランド沖やアフリカ西岸のナミビア沖など、日本から遠く離れた海域の公海だ。このような遠洋漁船は、戦後、日本が世界の海を股にかけて航行し、各地での大量漁獲から「海洋大国」の名を築いた時代には多くが操業していた。ところが1970年代以降、各国が沿岸の海を守るためEEZ(排他的経済水域・いわゆる200カイリ規定)を設定するようになると操業が公海に絞られたために、日本の遠洋漁業船は激減。現在は日本全国で150船を割り込んでいる。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>――アフリカ西岸のスペイン領、カナリア諸島ですね。御社はここを基地のひとつとし、「遠洋はえ縄漁」の操業を長く続けられています。これはどのような漁法でしょうか。</p>
<p><strong>臼井：</strong>遠洋はえ縄漁は、約150kmの長さの幹縄に2500−3000本もの枝縄を下げ、それぞれに餌をつけた仕掛けを海に流すという大掛かりな漁です。1回に釣れるクロマグロは多くても十数本と多くないですが、その分状態よく船上に上げられるため、ていねいに処理しクオリティの高い魚に仕立てられるのが強みです。船に上げたらすぐに血や内臓を抜いて神経締めを行い、即座にマイナス60℃の冷凍庫で急速冷凍しています。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/umi.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><a href="http://www.hokkatsu.net/gyohou.html">宮城県北部鰹鮪漁業組合のウェブサイトより「遠洋まぐろ延縄漁法」　</a></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>クロマグロ漁いろいろ</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>クロマグロの漁法には、このはえ縄漁のほか、群れを追いかけて網で囲い込むまき網漁、主に浅い海に大きな網を設置し、中に入った魚を引き上げる定置網漁、竿や糸で船上から釣る一本釣り漁などがある。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>――クロマグロ漁ではこれまで、MSC認証漁業がありませんでした。つまり今回はまさに世界初の快挙ということになりますね。</p>
<p><strong>臼井：</strong>はい。以前は枯渇が叫ばれていた大西洋クロマグロが、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の漁獲規制のおかげで、ずいぶん増えていることが大きいと思います。たとえば2019年に弊社に配分された漁獲枠、68t653kgは1カ月もかからず獲り切ってしまったんですが、10−15年前には同じ量を獲るのに2−3カ月もかかりました。つまり、今はそれほど海にマグロの数が戻っていて、仕掛けを入れるとすぐにたくさん食いついてくれるんです。さらに漁獲情報の報告や厳格な管理など、ICCATが漁業者に義務付けた細かいルールを日本の遠洋漁業者がきっちりと遵守してきたことが、今回のMSCの審査基準に合致したんだと思います。</p>
<p>――ICCATの規制や管理は本当に厳しいと聞いています。</p>
<p><strong>臼井：</strong>そうなんです、とにかく細かくて厳しい。まず規制の面で言うと、産卵期の漁や幼魚の漁獲規制を徹底的に行ったことが、資源の大幅増加につながったと思います。現在激減中の日本の近海マグロ(太平洋クロマグロ)も、もし同様に産卵期などの漁獲を厳しく規制すれば、大西洋のように短期間で増えるんじゃないでしょうか。　</p>
<p>また漁業者側の管理に関しては、まず漁場で釣ったマグロは船上で一本一本計量し、そのデータを漁獲場所や日付などとともに記録した通し番号付きタグを魚につけます。水産庁にも毎日漁獲内容を報告しなくてはなりません。漁獲枠をオーバーした際の魚の海上投棄など、不法行為を防ぐために、ICCATによるオブザーバーの乗船も一定率求められます。</p>
<p>――私は清水港での水揚げを何度か見せていただきましたが、マグロを積んだトラックが港を出る際、車ごと検量されているのを見て驚きました。</p>
<p><strong>臼井：</strong>水揚げ時には水産庁職員の立会いのもと、マグロを積んだトラックはすべて検量して積算し、トータル重量に齟齬がないか確かめることが求められるんです。ここでもし1kgでも漁獲枠をオーバーしてしまうと、漁業ライセンスの剥奪もありうる厳しい罰則が待っているので、本当に神経を使うんですよ。でも、振り返ってみればこれだけのことをしてきたからこそごまかしの余地がなく、マグロが守られたんでしょうね。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/1.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>静岡・清水港の水揚げ風景。150kg級の大型マグロが、船倉の冷凍庫から次々と運び出される。釣り上げてすぐ血抜きと神経締めを行い、エラと内臓、尾を除き、マイナス60℃の冷凍庫で凍らせたマグロは、まるで霜をまとった巨大なライフル弾のよう</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/2.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>重い地響きとともに魚が作業台に降ろされる。作業員が分担して品質やデータのチェックをし、終えたらあっという間に待機中のトラックの荷台に積み込み次の荷下ろしを待ち受ける。熟練の連携プレーだ</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>――さて、御社がMSC認証の申請に踏み切られたきっかけを教えてください。</p>
<p><strong>臼井：</strong>日本の一次産業の苦しい状況を打破したかったこと、が一番の理由です。「安さ」ばかりを求める食の価値観が主流となっているために、今の一次産業は大きな負担を強いられています。薄利多売の状況下では、漁業現場にどうしても乱獲が起こり、魚がさらに減っていきます。また生産履歴が不透明で、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)で獲られた可能性の高い安価な輸入魚(＊1)が日本マーケットに流入しやすく、そのために市場がどんどん安値主流に傾いていく。苦しい中でもルールを守ってがんばっている現場の漁業者が夢を持てない状況を、なんとか変えたいと思っていたところ、海外市場で評価が高いMSC認証の取得を勧められて、挑戦することにしたんです。</p>
<p>日本は水産資源だけではなく、漁業に関わる人の資源、つまり携わる人もどんどん減っています(＊2)。農業と違って漁業は、関連産業も含めた地域コミュニティがなければ成り立ちません。漁業が産業として生き残るために、世界で戦える素地を手に入れて地元のコミュニティを活性化したい、そして日本社会に向けてその意義を発信したい、伝えたいという思いうが強かったですね。</p>
<p>それに、サステナブルな運営が重視される、オリンピックの東京開催が決まったことにも背中を押されました。SDGsへの世界的な注目も高まっている中、これからは日本の漁業もサステナブルな方向に舵を切っていかなければ未来がないと思います。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><sup>＊1：IUU漁業、つまりIllegal, Unreported and Unregulated(違法、無報告、無規制)に行われている漁業で獲られた魚。現在、世界の海で水産資源を減少させる大きな要因のひとつになっている。<br />＊2：漁業者だけでも1960年代に60万人を数えていたが、2018年時点で約15万人(海面漁業従事者のみ。「2018年 漁業センサス」より)。</sup></p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>――9月1日、豊洲市場の冷凍大物売場に、御社は世界初のMSC認証ラベル付きクロマグロを上場されました。関係者として見学させていただきましたが、セリの際はかなり盛り上がりましたね。コロナ禍でマグロの値が全体に低調な中、キロ6800円はこの日一番の値付け。通常の冷凍クロマグロと比べキロ3000円(約2倍)高でした。</p>
<p><strong>臼井：</strong>はい、MSC認証ロゴをつけたマグロがセリ場に並んだ様子を目にした時は嬉しかったですね。あのマグロは、北大西洋のアイルランド沖で獲れた142kgの魚だったんですが、仲買の皆さんがたくさん見に来られて、ロゴマークの写真を撮っていかれました。相場より高い値付けは、持続可能な漁業で獲れた魚に「価値」を見出してくれたということだと思います。MSCとは何か、その意義は何か、市場の仲買さんたちの間にも今後いっそう広めていけたらと思います。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/5.JPG" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>MSC認証ラベルが貼付された臼福本店・第一昭福丸が漁獲した大西洋クロマグロ。９月1日に豊洲市場に上場された</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/4.JPG" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>クロマグロは、種として最大300−400kgまで成長する魚。冷凍大物売り場に並ぶ大西洋クロマグロは150kg前後のサイズが多い。しかし太平洋クロマグロは資源減少のため、残念ながら近年、このような大型マグロがたくさん並ぶ光景は見られない</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>――今後に向けて、なにか課題があれば教えてください。</p>
<p><strong>臼井：</strong>IUU漁業の疑いがある水産物は国内で流通させない、というポリシーを徹底している先進国が多い中、現在の日本市場には本当にたくさん流通しています。たとえばサク加工された中国産の冷凍マグロなど、アメリカが「生産履歴が不透明」と判断し輸入禁止にした安い水産加工品は今、多くが日本に流れこんでいます。日本政府には、世界最大のマグロ消費国としてチェックを厳しくし、世界に対して海とマグロを守る責任を果たしてほしいと願っています。</p>
<p>当社としての課題といえば、認証取得の直後からアメリカやアジアの流通業者より取引の問い合わせが続いているのに対し、日本企業からはまだないことでしょうか。価値あるものに適正な対価を支払うという消費者文化を醸成し、日本の水産・流通業を変え、魅力ある産業にしていきたいという思いで認証を取得したので、ぜひマーケットの協力をお願いしたいのです。日本のみなさんにMSC認証マグロを食べていただけるよう、国内企業の方々からのお問い合わせをお待ちしています。</p>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>


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        </div>
      </div>
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        <img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp//article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/8_1.jpg" alt="" loading="lazy">
      </div>
          </a>
  </div>
</div>


<p></p>

その他のインタビュー

インタビュー

日本の大西洋クロマグロ漁業が世界初のMSC認証を取得、臼井社長に課題を聞く(後編)

<p></p>
<div class="blockTemplateArea">
<div class="elem_paragraph">
<p>今年8月、北大西洋等で遠洋はえ縄漁業を展開する宮城・気仙沼の臼福本店が、大西洋クロマグロ漁で世界初の快挙となるMSC認証を取得した。「海のエコラベル」ともいうべきMSC認証取得のニュースは、我が国の水産業が持続可能な方向に向けて舵を切るための新たな契機となるかもしれない。臼井壮太朗社長に、3年がかりで取得したという認証への思いや今後の課題を聞いた。(佐々木ひろこ)</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/3.JPG" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>臼福本店の大西洋クロマグロを使った、東京・北参道のフランス料理店「シンシア」の前菜。クリーミーな根セロリのソースとパウダー状に凍らせたカレー風味のソースを添えて</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「やっとここまで来ることができました。長かったです」</p>
<p>2020年8月10日は、宮城県気仙沼に5代続く遠洋漁業者、臼福本店の臼井壮太朗社長にとっては忘れられない一日となった。北大西洋海域で大西洋クロマグロ漁を操業する同社が、2018年に申請した水産物の国際認証、MSC(海洋管理協議会)の審査が正式に終了し、認証取得の報が臼井さんに届いたのだ。持続可能な漁業の証として、現在もっとも信頼性が高いスキームのひとつであるMSC認証を、日本のクロマグロ漁業者が取得したというこの出来事は大きなニュースとして世界に報じられた。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>MSCとは?</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>世界自然保護基金(WWF)とユニリーバが構想を発案し、1997年に設立された持続可能な漁業の普及に取り組む国際団体Marine Steward Council(海洋管理協議会・本部ロンドン)。「資源の持続可能性」「漁業が生態系に与える影響」「漁業の管理システム」という3原則に則った漁業認証規格を用い、独立した審査機関が審査を行うという厳格なスキームを持ち、現在世界100カ国でMSCラベルがついた製品が販売されている。残念ながら日本のMSC認証漁業数は現在7と少ないものの、ここ数年で審査入りする漁業が少しずつ増加。また認証水産物として販売するために、サプライヤーを含め必要となるCoC認証を取得する流通や外食事業者は急増中だ。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>大西洋クロマグロはメキシコ湾や地中海で産卵し、大西洋を回遊する大型マグロだ。日本近海で産卵し太平洋を泳ぐ太平洋クロマグロ(近海本マグロ)とは亜種の関係にあり、戦後以降に遠洋漁業船が活躍した歴史から日本でも広く流通している。品質においてマグロの最高峰とされるクロマグロは1970年代以降、その経済的価値の高さから世界中で乱獲が進んできた。ともに激減の一途をたどった結果、大西洋クロマグロは2011年、太平洋クロマグロは2014年に国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定されている。</p>
<p>しかしその後、事態を重く見た大西洋クロマグロを管理する国際機関、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は資源回復に向けて厳しい管理手法を導入する。2000年代後半以降、まずは産卵場がある海域での漁を規制し(＊1)、未成熟(産卵前)である30kg以下の幼魚は原則漁獲禁止に。また科学的な調査・研究をもとに、全体の漁獲量も大幅に制限する(＊2)。さらに規制遵守のために必要となる漁獲データの収集・管理体制を強固にしたうえで、各国政府と連携しながら厳格に運用してきたのだ。その努力が功を奏して、現在大西洋マグロの数は大きく増加しV字回復の途上にある。</p>
<p><sup>＊1：メキシコ湾は産卵期全面禁漁。地中海では、大量漁獲のため資源への影響が大きいとされるまき網船の漁獲期間を年間1カ月のみ、はえ縄や釣り漁などの漁法は4−5カ月に制限。<br />＊2：まき網漁は約90％減、はえ縄や釣り漁などの漁法は約50％減。ただし零細漁業者については規制外。</sup></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/kuromaguro_3.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>回遊するクロマグロの群れ</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/ssb.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>親魚量(Spawning Stock Biomass)の推移 <a href="https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2019/REPORTS/2019_SCRS_ENG.pdf">(ICCAT Report 2019)</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>マグロ・カツオ類の資源は国際機関が管理</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>多くの海域をまたいで泳ぎ、経済的価値も大きいマグロ・カツオ類の資源は一国で管理できるものではなく、関係各国で責を担うべきという考え方から、地域ごとに5つの国際機関が設立されている。このうち大西洋クロマグロ生息地域は大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)、太平洋クロマグロ生息地域は中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC／太平洋のアジア側)と全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC／同アメリカ側)が管理している。</p>
</div>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今回の臼福本店に対する認証付与は、大西洋(東側)のクロマグロの数が十分に回復し、持続可能な状態になったとMSCも公式に認めたということだ。水産物に関する国際間協定に詳しい国際政治学者で、早稲田大学の地域・地域間研究機構研究院客員准教授である真田康弘さんは言う。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「ICCATが進めた漁業規制と管理は、その後のマグロの増え方を見てもきちんと結果を出してきました。臼福本店のMSC認証取得はすばらしいニュースで、今後MSC認証漁業者が増えマーケットに浸透すれば、大西洋クロマグロのさらなる資源保全に向けて、ICCATの規制との相互強化が期待できるはずです」</p>
<p>水産資源は有限の資源であり、科学的な根拠に基づいた資源管理が欠かせない。この大西洋クロマグロの資源回復例は、いったんは絶滅の危機に瀕した商業魚の数を増やし、持続的に漁獲・利用する素地をつくったモデルケースのひとつとして、今後世界の水産業のなかで参照されていくだろう。</p>
<p>折しも日本では、水産業に持続可能性を導入すべく、70年ぶりに改正された新漁業法が今年12月1日に施行される。過剰漁獲を主要因に日本の海から魚が激減し、総漁獲量が1984年のピーク時から3分の1にまで落ちこんでしまった今、資源回復を成し遂げ、日本の漁業者が世界初のMSC認証を取得した大西洋クロマグロのすばらしい成功体験から、何らかの知見が生かされることを期待したい。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/4.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup><strong>太平洋クロマグロ親魚資源量の推移(1952年ー2016年)</strong><br />2015年以降、日本、韓国、台湾、アメリカなど27カ国・地域が加盟するWCPFCが国別漁獲枠制を導入したものの、各国に委ねられる部分が多く、日本では現在、年間のクロマグロ総漁獲量の6割以上が産卵期に産卵場で漁獲(<a href="http://kokushi.fra.go.jp/H30/H30_04S.html">水産庁・国立研究開発法人 水産研究・教育機構「国際漁業資源の現状」</a>)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph"> </div>
<p></p>
</div>
<p></p>


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        <img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp//article/sbj_interview/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/11/04/6.JPG" alt="" loading="lazy">
      </div>
          </a>
  </div>
</div>

日本の大西洋クロマグロ漁業が世界初のMSC認証を取得、臼井社長に課題を聞く(前編)

やなぎさわまどか

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/08/yamachiku_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph">写真：大塚淑子</div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「前年比で言えば、売り上げは半分以下です」と、コロナショックの影響がいかに大きいかを話してくれたのは、熊本県の南関町で竹の箸をつくる<a href="https://www.hashi.co.jp/">ヤマチク</a>の山崎彰悟さん。地方の名産品を都市部で広めようと苦闘してきたが、インバウンドや五輪関連のイベントがすべて白紙となり、2020年の夏までに見込んでいた売り上げが消えた。しかしそれでも、山崎さんの目線は前を向き、確実な光を見ているように強い。どんな思いと戦略でこれからに臨もうとしているのか、山崎さんに同社の取り組みについて聞いた。 (やなぎさわまどか)</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「竹の、箸だけ」という名の下に</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/08/800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph">山崎さん</div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ヤマチクの創業は1963年。創業時からずっと変わらずに、国産の竹だけで箸を製造している。</p>
<p>と、この一行だけでも受け取り方は千差万別だろう。竹の箸ってどんな箸だろう、使ったことあるかな、と心で自問する人もいれば、自分の箸が何でできているかなど気にしたことすらない人もいるかもしれない。また、竹という植物がどのくらい身近か、もしくは、竹がこの国の資源としてどう扱われているかを知っているかも、人によって大きく異なる。</p>
<p>ただ事実として、ヤマチクはすでに半世紀以上もの間、国産の竹だけを使い、年間500万膳の箸をつくり勝負してきた生粋の竹箸メーカーだ。それがどれほどすごいことかは、世界で唯一、竹の箸のみを商材にしている企業ということでも伝わる。他社が参入できない高さまで技術の壁を打ち立てながら、手頃な価格で全国の食卓を支えてきたのだ。同社3代目の山崎さんは現在、専務として、セールスやブランディングといった根幹から同社をリードしている。</p>
<p>「竹って大変なんですよ。まず良質なものを見極めて切り出さなくてはいけません。直径が30センチ近く、長さも20メートル近い巨大な竹を切って、山から降ろす作業だけでもかなりの重労働です。中は空洞ですが水分が多いし、曲がり方も反り方も1本1本微妙に違います。それに皮の方が強度も高いので、緑の表皮を削り過ぎたら箸としての機能性が損なわれてしまう。そうした素材を揃った箸へと加工するために、わたしたちは専用の製造機械を開発することから始めています。機械がつくれないと安定した箸の製造は難しいですね」</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/08/kiriko800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>特異な加工を経て完成したヤマチクの竹箸は、しみじみと見惚れるほどに整っている。軽くて持ちやすく、しなやかで扱いやすい。木材では実現できない繊細な箸先は、竹だからこそ可能なのだという。</p>
<p>使い手を快適にするヤマチクの箸は、OEMとして大手ブランドに貢献するほか、都市部の百貨店などでの催事やポップアップストアで販売してきた。また、それらと並行して約1年前からはオリジナル商品「okaeri」のリブランディングにも取り組んでいる。自社のオンラインストアにも、サイズやカラーなど幅広く揃った竹箸のラインナップが並び、時間をかけて選ぶ楽しさが味わえる。</p>
<p>しかし冒頭の話の通り、2020年はコロナショックによって売上高が激減。山崎さんはこれまで都心や世界を見据えて、外へ外へと向けていた意識を切り変えて、同社の基盤となる地域に向けた取り組みを強めていた。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>ストップした受注と、止められない仕入れ</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/08/kikai800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「製造は続けています。今のうちにどんどん作って、箸の在庫を増やす時期にすることにしました。売り先が減ったとはいえ竹の仕入れは止めません。うちを支えてくれる切り子さんたち(竹を切り出す職人のこと)を守る必要がありますし、彼らがいなくては何もできませんから。受注が止まってもこれまで通り仕入れを続けるからと伝えました。それに自社の社員たちも不安にさせたくないので、経営状況を共有して、このくらいキャッシュがあるから安心して勤務を継続してほしいと話しました。むしろ、時間に余裕ができた今だからこそ、今までやったことない業務や、新しいことにも積極的に挑戦してもらいたいと話しています」</p>
<p>これまでは山崎さんが各地を巡って営業をし、社員さんたちは製造に専念し続けてきたが、従来のやり方にも囚われていない。社員からの希望があれば、取引先との会議や商談の場への同席や、地域の商店や施設に向けた新規営業も推奨している。</p>
<p>「自分たちの箸に自信があるので、受注が止まったというよりも、せっかくつくった箸が誰にも届けられない辛さがあるはず」と社員たちの心情も汲み取った。実店舗はない代わりに、父の日など記念日の前には工場を臨時の販売所として解放し、社員たちが販売する機会を設けた。箸のユーザーと直接的に接した経験は、社員の意識をさらに向上させ、より良いものづくりを目指す好循環を生み出した。</p>
<p>さらに商品化をかけた新作のデザインコンペを社内で企画。商品化されたら1案につき1万円、優秀作には10万円の賞金付きで、同社のクリエイティブディレクターがすべてのプレゼン内容を審査するというから本気だ。</p>
<p>「社内旅行にも行けなくなったので、その分せっかくなら社員たちのためになることに使ったほうが良いじゃないですか。コンペ以外にも、近所の小学校と一緒に箸のデザイン企画をしたいとか、地域の産婦人科医院を通じて出産祝いの品に箸を贈りたいとか、端材でつくる竹のアクセサリーとか、みんなが色んな希望やアイディアを上げてくれています。彼らは箸の作り手ですが、箸のユーザーでもあるので、考えることが緻密だし、どうやったらより知ってもらえるだろうかと具体的に考えているんですよね。へぇー、そんなこと考えてたのかぁという発見と、こんなときでも前向きにお客様のことを考えてくれることが嬉しくて、もうどんどんやってくれ！と応援しています」</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>地域から「竹箸のある暮らしそのもの」を提案したい</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ヤマチクがある南関町は、熊本駅から車で約1時間。文字通り地域経済を担う企業のひとつとして、どのような企業のあり方が理想的なのだろうか。山崎さん自身は「地域の企業としての役割が2つある」と言う。</p>
<p>「ひとつは地域で雇用をつくり続けることです。いくらこの町が好きだから住みたいと思ってもらえても、仕事がなければ暮らすこと自体が難しくなってしまう。だからうちは今も新卒採用を止めずにいます。そしてもうひとつは、地域の自慢の存在になることです」</p>
<p>地域の自慢になりたい、と素直な願いを臆せず口にできる経営者に感動を覚えた。自慢とは、あの会社なら何かやってくれそうだ、という期待だったり、メディアに出れば自分ごとのように人に伝えたり、知人が就職したら誇らしく思うような存在だと話す。</p>
<p>「コロナ前は、都市部だから売れる、と考えていました。しかし大都会の販売先が店舗を閉めてオンラインショップにする事態になった。では、僕らが今ここにいる意味や、ここでできることの価値って何だろうかと考えたんです。熊本からできることで、みんなに喜んでもらえることは何だろうか、と」</p>
<p>遠く離れた都心とは別に、県内の販売先を増やし、できるだけ地元の人とのタッチポイントをつくること。近場の交渉なら社員も積極的にセールスに行ける。聞けば、地元の人にもっと気軽に買ってもらえる場所が前から求められていたことも分かった。</p>
<p>並行して自社のオンラインストアでは、地域の名産品や伝統工芸を竹の箸とともに販売することにした。</p>
<p>「南関町の食べ物ってすごくおいしいんですよ。でも地元の人はこの品質に慣れちゃってるからあんまり宣伝もしなくて、全然知られてない。食だけでなく、歴史ある陶器の窯元もあるんです。名品をつくってるのに電話とFAXだけだったりして、もともと知ってもらう機会が少なかったのにコロナで陶器市までなくなってしまった。でも食も食器も、箸に欠かせない文化ですから、それなら箸と一緒に、うちが地域のプラットフォームになれたらいいと考えました」</p>
<p>箸をつくってはいるが、箸だけ残ればいいわけじゃない。ヤマチクの竹箸は、箸がある文化の中で生きてきたのだ。山崎さんは、製造背景に存在していた文化までもが消えかねない現状を危惧している。</p>
<p>「箸という字は竹かんむり。元々は竹だったんです。それがいつの間にか、安価の輸入木材やプラスチックが主流になってしまったのは、経済性や効率化という概念からです。竹の仕入れだけを見たらコスト高になるのかもしれませんが、国内で供給できる資材が余っているのに使わず、わざわざCO2を排出しながら木材を輸入したり、途上国の森林を乱伐することが本当に経済的なのでしょうか」</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/08/okaeri800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph">熊本や福岡の山から刈り取った天然竹でできたオリジナルの箸 <a href="https://yamachiku.stores.jp/items/5ccdc295272bd0716e75e830">okaeri</a></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>素材はもちろん、老舗メーカーとして品質の高さも譲れない。さらに、品質の確保こそが持続可能な企業であるために重要だと説く。</p>
<p>「たかが箸と思われるかもしれませんが、日々の生活に根ざしたものを変えることで、その他のことに対する目線も変わるんです。サステナビリティや環境問題って、決して我慢を強いることではなくて、良いものを長く使うことでもある。そのためには、使い心地がよく機能的であることが欠かせません。良いものであることは最低条件であって、逆に環境を言い訳にクオリティの低さを免罪符にするのは違います」</p>
<p>コロナによって世界中の混乱を目の当たりにした一方で、よく見えるようになった身近なこともある。ヤマチクのようにサステナビリティを問い直し、強みを生かして今できる地域貢献に努めることこそ、世界を見ている証なのだろう。</p>
<p>「事業の課題も見えてきたと思っています。人の本質も、苦しい時だからこそ見えることがあって、おかげさまで素晴らしい社員や職人さんに支えられていることも実感しました。会社は社員のことを考えて、社員はお客様のことを考える。それによって、お客様が会社のファンになってくださるような、その循環を増やしていこうと話しています」 </p>
</div>
<p></div>
<p></p>

「守りたいのは箸だけじゃない」 国産竹の箸だけをつくるヤマチクがコロナ禍で得たこと

SUSTAINABLE BRANDS

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/tr/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/03/top.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph">IMAGE: <a href="https://pixabay.com/photos/typhoon-sea-storm-evening-1725056/" target="_bkank">マサコ アーント/PIXABAY</a></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><div>In a recent conversation about the role of his company in ensuring a sustainable future in times of increasing uncertainty, MS&amp;AD Insurance Group Holdings’ Shiro Fujii said, “We don’t see ourselves simply as an insurance provider, but as a risk solutions expert.” </div>
<p>Amid new risks and greater uncertainties caused by extreme weather across the globe and rapid changes in society due to the digital revolution, Japanese non-life insurance giant <a href="https://www.ms-ad-hd.com/en/index.html" target="_blank">MS&amp;AD Insurance Group Holdings</a> is aiming to create a “resilient and sustainable society.”</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/tr/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/03/msaad800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph">Shiro Fujii, director at MS&amp;AD Insurance Group Holdings | Image credit: Sustainable Brands</div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>As director (EVP at the time of the interview) Shiro Fujii told Sustainable Brands™ in a recent interview: “Insurance has always had a big role to play in supporting people that take on challenges. Providing products and services that address social issues will help prevent and mitigate disasters, as well as create a resilient and sustainable society in which people support each other.”</p>
<p>So, how should we manage the natural disasters and new risks intensifying inside and outside Japan? Naoki Adachi, a producer involved in sustainability efforts at <a href="https://www.sustainablebrands.jp/" target="_blank">Sustainable Brands Japan</a>, asked Mr. Fujii about the role that non-life insurance companies should play, along with their purpose and significance, as society faces an era of mounting challenges.</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>Responding to an increasing number of natural disasters</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>Naoki Adachi: It seems like the <a href="https://sustainablebrands.com/read/marketing-and-comms/climate-crisis-considered-our-greatest-challenge-and-it-s-overwhelming">climate crisis</a> and accompanying extreme weather events are becoming a <a href="https://sustainablebrands.com/read/business-case/scenario-analysis-determine-your-business-resilience-to-climate-change">major business risk</a> for non-life insurance companies. There’s been a tremendous amount of damage in Japan recently — i.e., major floods and three <a href="https://www.theguardian.com/world/video/2019/oct/13/rescue-efforts-under-way-after-typhoon-hagibis-hits-japan-video-report" target="_blank">typhoons</a> in the past two years.</strong></p>
<p><strong>Shiro Fujii:</strong> That’s right. Insurance payments for damages caused by natural disasters have increased significantly in recent years; and unfortunately, premiums have also risen. As an insurance company, we need to find the best solution for coping with this. We have to manage both social sustainability and our own sustainability.</p>
<p>In FY 2018, the insurance industry paid out 1.5 trillion yen (US$13.94 billion) for claims related to natural disasters, and this was a record high. Analysts expect the figure to exceed 1 trillion yen (US$9.29 billion) again in 2019. This amount is down from the previous year; but before 2018, the non-life insurance industry in Japan had never paid out more than 1 trillion yen for damage caused by disasters involving storms and floods.</p>
<p>The industry faces two problems: If fire insurance premiums continue to rise, customers won&#8217;t be able to afford the purchase of such insurance. On the other hand, non-life insurance companies won&#8217;t be able to provide insurance without premiums corresponding to the risk.</p>
<p>In the U.S. state of Florida, which is often damaged by hurricanes, barely any private non-life insurance companies offer coverage any more — the state government handles insurance. Consequently, insurance payouts have become inadequate.</p>
<p>If damage caused by heavy rain and typhoons keeps increasing in Japan, the point may come when non-life insurance companies can no longer provide insurance that fully covers the risks posed by natural disasters.</p>
<p>The government of Japan and private insurance companies are already running joint initiatives for earthquake insurance. The 1964 <strong>Niigata Earthquake</strong> produced<strong> the Act on Earthquake Insurance</strong>. The amount of insurance paid out for the 2011 Tohoku earthquake and tsunami topped around 1.3 trillion yen (US$12.08 billion), but private insurance companies only footed some of the bill, due to the government&#8217;s support through reinsurance. These arrangements meant that coverage options and payments were sufficient.</p>
<p><strong>Adachi: I see. With natural disasters expected to intensify due to extreme weather and climate change, the response from non-life insurance companies will become even more important. There’ll be a huge social impact if you can’t offer insurance.</strong></p>
<p><strong>Fujii: </strong>The most-important aspect of the insurance business isn&#8217;t simply compensating for loss; it&#8217;s protecting customers from loss by working together on measures to prevent and reduce damage from disasters. Insurance will be there to provide compensation if losses occur despite these measures.</p>
<p>We&#8217;re taking the same approach to climate change. We support the<strong> Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD)</strong> and engage in initiatives for mitigating and adapting to climate change. Rising temperatures are increasing the risk of flooding. We&#8217;re working with the <strong>University of Tokyo</strong> and the <strong>Shibaura Institute of Technology</strong> to conduct research on improving global flooding risk forecasts and impact assessments. We want to use these improvements to support the use of climate-related disaster forecasts in management strategies and business investment.</p>
<p>We&#8217;re currently holding internal discussions on our use of <a href="https://sustainablebrands.com/read/cleantech/tide-slowing-turning-toward-a-future-free-of-coal">coal-fired power generation</a>. The Japanese government has positioned coal-fired power as a major source of energy in its fundamental energy plan; however, many Japanese companies are trying to decrease their reliance on this form of energy. We’re taking these discussions very seriously.</p>
<p>We also believe it’s important to participate in initiatives to reduce disaster risk, such as <strong>Ecosystem-based Disaster Risk Reduction (Eco-DRR)</strong>.</p>
<p><strong>Adachi: One of the priorities of this ecosystem-based work is to improve the sustainability of natural capital. Why focus on natural capital?</strong></p>
<p><strong>Fujii:</strong> I believe that the <a href="https://sustainablebrands.com/read/leadership/business-for-nature-our-economy-wellbeing-depend-on-restoring-biodiversity">preservation of biodiversity</a> and health of the Earth form the basis for achieving a resilient and sustainable society. The ways in which we <a href="https://sustainablebrands.com/read/finance-investment/new-guide-will-empower-banks-to-quickly-assess-natural-capital-risk">manage natural capital</a>, such as water and forest resources, are now an essential part of business discussions. The degree of climate change occurring means that this isn&#8217;t easy, but I believe that businesses must think about creating mechanisms for sustaining ecosystems and food chains and incorporating initiatives into their operations accordingly. We’ll work to improve the sustainability of natural capital through the business activities (such as consulting) of our entire group.</p>
<p>As part of this effort, we developed an “animal alert” app with an automotive insurance company, in working to prevent traffic accidents that kill wild animals. Traffic accidents are one of the greatest causes of the death of wild animals. For this, we used data from the government of Japan and local governments to develop a function that provides voice alerts when drivers approach areas in which vehicles frequently hit wild animals, and we loaded this data into our exclusive driving recorder and smartphone app. The sound of the alert changes in accordance with the animal appearance rate, which is based on life cycles, time, and the weather.</p>
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<h2>Need for change when society changes</h2>
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<p><strong>Adachi: So, we can also contribute at these points where we intersect with wild animals, right? And speaking of automobile accidents, vehicle insurance is the biggest earner for non-life insurance companies. But the environment surrounding the automobile industry is changing radically. The electric car that Sony announced at the <a href="https://sustainablebrands.com/read/product-service-design-innovation/tech-for-a-better-world-a-look-at-standout-products-from-ces-2020">CES trade show</a> in Las Vegas in January attracted a lot of attention. AI-based automatic driving technology is advancing, and vehicle accidents are decreasing. How might this affect business?</strong></p>
<p><strong>Fujii:</strong> If every car in the world was self-driving, car accidents would be close to zero. That’s great for society. Fewer accidents and disasters would make non-life insurance companies happier, too. That&#8217;s because an insurance payout for something like a house fire can’t replace the lost memories.</p>
<p>Automatic driving might reduce the need for vehicle insurance, but society will change and other types of insurance will be required. It&#8217;s going to be a while before all vehicles are autonomous. Until that happens, risks will remain, because self-driving vehicles will share the road with conventional vehicles. Authorities will create various measures, such as dedicated lanes, but these won’t eliminate all risks.</p>
<p>In the future, edge computing is likely to provide systems that control self-driving vehicles by making decisions like humans. However, they could be prone to programming errors or hacking. No one can say that there won’t be accidents.</p>
<p>Although revenue from automobile insurance might decrease, the products and services of insurance companies will change with society. There are also aspects of automobile accidents that only insurance companies can provide for, including negotiations with the other party.</p>
<p><strong>Adachi: You&#8217;re also engaging in new communication initiatives. Your 2018 advertising campaign — &#8220;For a Better Future&#8221; — used full-page ads to highlight the following: extreme weather as a regular occurrence, Japan&#8217;s super-aging society, natural capital, the threat of cyber-attacks, and resilient urban development. The solutions that MS&amp;AD can provide through its business were printed on the back of the page. You received the Award for Excellence in the Financial Sector at the 68th Nikkei Advertising Awards at the end of last year. We were surprised that an insurance company would state the risks so definitively.</strong></p>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/tr/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/03/saaiihounomiraihe1.png"/></div>
<div class="m_paragraph">Image credit: MS&amp;AD Insurance Group Holdings</div>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/tr/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/07/03/saaiihounomiraihe2.png"/></div>
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</tr>
</tbody>
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<p><strong>Fujii:</strong> In today&#8217;s society, it&#8217;s important to accurately convey the facts — including the risks.</p>
<p>Our mission is to leverage our global insurance &amp; financial business so as to provide safety and peace of mind, as well as to contribute to the development of a vibrant society and to help secure a sound future for the planet. To achieve this goal, we will address the risks arising from the social issues that challenge us and will provide products and services to overcome these issues. Through these initiatives, we will create an environment in which our customers can thrive and conduct their business activities with confidence. The risks presented in our advertisements were focal points for stories in which we create shared value with society.</p>
<p>First, our job is to make everyone aware of the risks. Next, it&#8217;s essential that we encourage everyone to engage in disaster readiness and safe driving so as to prevent and mitigate damages from such. This is nothing special needed, but it can be very simple and basic, such as in: “Please drive carefully” and “Take care when starting and putting out fires.”</p>
<p>Thinking about the role of our company, we don’t see ourselves simply as an insurance provider, but as a risk solutions expert. Insurance payouts are part of our business, but essential aspects can be found before such payouts occur. In advising customers on risks, we convince them such that they need to understand the risks that they might be exposed to, and we encourage them to consider whether they can manage those potential risks on their own. Most important is a form of accountability that can enable customers to make their own informed decisions, and this also has huge impact on brand building. A brand is built on trust and on a promise between the seller and the buyer.</p>
<p><strong>Adachi: My image of insurance was that it’s quite a passive business, but are you in fact talking about actively building a resilient and sustainable society?</strong></p>
<p><strong>Fujii: </strong>That’s right. Insurance is here to support individuals and businesses taking on challenges. Challenges involve risks. Thinking back to where insurance originated from, it is believed to have begun in the 12th-13th century marine trade with “adventure loans” — an arrangement to cover repayment for the ship and cargo in the event of a shipwreck or other misfortune. The foundation of insurance is supporting adventurous initiatives, which helps with the development of society.</p>
<p><strong>Adachi: Amid the rapid changes in business and lifestyles to come, I feel that the attitude of supporting those taking on challenges is very much in tune with our times.</strong></p>
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Shelter from the Storm: Overcoming Challenges to Build a Resilient, Sustainable Society

米サステナブル・ブランド編集局

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<p>生物資源とバイオテクノロジーを活用して社会的課題を解決し、さらに経済的成長も目指す「バイオエコノミー(生物経済)」は、持続可能な社会を実現する手段の一つとして注目を集めている。中でもフードテックの進化は凄まじく、気候危機や食糧危機の解決策として期待されている。しかし培養肉などに対しては賛否両論あるのも事実だ。今回は、イスラエルと米コロラド州に拠点を置き、動物性たんぱく質を一切使わない乳製品とペット用のおやつを開発するスタートアップ2社を紹介する。食の進化を知ることは、未来を考えるきっかけになるだろう。(翻訳＝梅原洋陽)</p>
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<h2>イスラエルのスタートアップ、植物由来ではない牛乳の代替品を開発</h2>
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<tr>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2020/05/22/700remilk_3.jpg"/></div>
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<p>乳糖不耐症の発生率の増加、環境・動物福祉の観点、そして自身の健康を考えて従来の乳製品に代わる植物由来の代替品を好む消費者の増加といった要因によって、近年、乳製品の代替品ブームに拍車がかかっている。2019年には、植物由来の乳製品市場は約140億ドルにまで達した。</p>
<p>このブームを受けて、世界的な大企業も参入するようになっている。例えば、北米ダノンは最近、SilkやSo Deliciousなどの植物由来乳製品を製造するホワイトウェーブ・フーズを統合した。一方、ネスレはオーストラリアで麦芽飲料ミロの植物由来バージョンを、米国では乳製品を使わずオート麦を主原料としたネスクイック・グッドネスを発売した。</p>
<p>そして今、イスラエルのスタートアップが代替乳製品業界に名乗りをあげようとしている。しかし、この企業はわれわれの知る牛乳を再定義するかのごとく、植物の代わりに微生物を用いているのだ。</p>
<p>起業家のアヴィヴ・ウォルフ氏とオリ・コハヴィ氏が2019年に共同設立した<a href="https://www.re-milk.com/">リミルク(Remilk)</a>は主成分こそ特許保護のために非公開だが、2人の共同設立者は最近、ウェブメディア『フード・ナビゲーター』で、「製造過程はチーズを作る工程に着想を得た」と明かした。そして、このリミルクで生産される乳製品は、従来のものよりも桁違いにサステナブルだという。ウォルフ氏とコハヴィ氏は、ほとんどの代用乳製品はざっと97%が水でできていると指摘。しかし、同社の製品は土地や水、原料、時間、廃棄物の量をはるかに少なく抑えられている。</p>
<p>さらに植物由来の乳製品代替品を販売する他社とは異なり、リミルクには多くの人にとって問題となる乳糖が含まれておらず、本物の牛乳の味、舌触り、栄養価、そして機能性に敵う商品だと言う。イスラエルのビジネス誌『Ynet』によると、リミルクが最初に作った商品はモッツァレラチーズだという。このチーズは、まさに牛乳からできたもののような味、舌触り、そして伸縮性があるとのことだ。</p>
<p>「世界はさまざまな理由からサステナブルな食べ物を必要としていますが、人々に持続可能な食品を食べてもらうためには、本当に美味しい物でないとなりません。それがリミルクで行なっていることなのです」とウォルフ氏は『フード・ナビゲーター』に話した。</p>
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<h2>ボンド・ペットフーズ、肉不使用のペットフードを開発</h2>
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</tr>
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</table>
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<p>一方、米コロラド州ボルダーに拠点を置く<a href="https://www.bondpets.com/">ボンド・ペットフーズ(Bond Pet Foods)</a>は、動物を使わない、高たんぱく質のペットフードを作ろうとバイオテクノロジーに着目している。ボンドは酵母の持つ多様な力を活用している。</p>
<p>同社はこのほど、最初の消費者向け製品として、消化性が高く、犬の食事に栄養を補完する「たんぱく質入り犬用おやつバー」を発表した。</p>
<p>おやつバーの主成分は乾燥酵母たんぱく質で、通常のおやつバーのたんぱく質含有量が12―20%であるのに対し、少なくとも29%以上含まれている。これにより、持続的なエネルギーと全体的な健康をサポートするというものだ。ボンドは、従来の動植物由来のたんぱく質代替品よりサステナブルで、さらに生産に必要な土地や水、エネルギーを節約できるという理由から、酵母たんぱく質を選んだ。おやつバーはアレルギーを持つペットオーナーや子犬を配慮して、ピーナッツを使用していない。そして、外箱は100%リサイクル可能だ。</p>
<p>ペット食品のサプライ・チェーンから動物性たんぱく質を除外しようとするボンドの動きは、「もし米国の犬や猫が自分の国を持っていたとしたら、その国の動物性たんぱく質の消費量は世界で5番目に高いことになる」という試算に基づいている。</p>
<p>同社は、ペットフードの材料の調達方法と製造方法を見直すことで、毎年180億頭の動物の屠殺を抑えることができ、従来の農業や畜産業のネガティブな影響を軽減できると主張している。</p>
<p>「タンパク質入り犬用おやつバー」は、動物性たんぱく質を使わないペットフードを作ろうとする計画の第一歩である。共同設立者でCEOのペルニラ・オーディベール氏もボルダーのデイリー・センチネル紙にこのように話した。</p>
<p>「微生物発酵と酵母の生化学を用いることで、私たちは動物を使用せずに、鶏肉やターキー、魚のような培養動物性タンパク質を収穫しています。そして、われわれの完璧なレシピの基礎部分にこの原料を用いています。独自の方法で、環境や動物福祉、安全性を脅かすことなく、肉類と同じ栄養価を持つタンパク質を生み出しています」</p>
<p>こういった肉タンパク質を使った新しいペット製品が今後3年以内に市販されることを期待しよう。 </p>
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