環境 environment

経済 economy

フードロス

再生可能エネルギー

気候変動/気候危機

リジェネレーション

バイオマス

水素

エコシステム

カーボンニュートラル/脱炭素

プラスチック

生物多様性

サステナブル・オフィサーズ

インタビュー

話題のキーワード

サーキュラーエコノミー

謙虚さ忘れずに、森林と向き合う――住友林業が「木材第一」にとどまらないビジネスを模索

JoAnna Haugen

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/01/16/g1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit: </sup><a href="https://unsplash.com/@asoggetti?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash"><sup>Alessio Soggetti</sup></a></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>コロナ禍で一躍脚光を浴びたバーチャル旅行。旅行産業がパンデミック前の水準に戻り、人々が行き交う物理的な旅行が再開されるなか、オーバーツーリズムの解消や環境負荷の低減にもなるバーチャル旅行の現状と今後について、米カリフォルニア州とニュージーランドの企業に話を聞いた。(翻訳・編集＝小松はるか)</p>
<p>山を登ると、そこには一面の銀世界が広がり、別世界のような大自然と出合う。左を見渡し、右に目を向けると、アイスランド・クヴェルフィヤットル火山の巨大な噴火口に目を奪われる。</p>
<p>噴火口は、他の時期には人気のハイキングスポットだが、冬に行くのは難しい場所だ。しかし、遠隔ドローンを使ったバーチャルツアーを提供する<a href="https://www.natureeye.com/">ネイチャーアイ(NatureEye)</a>のおかげで、この自然の素晴らしさを真上から生中継で見ることができる。</p>
</div>
<div style="width: 560px; margin: auto;"><iframe loading="lazy" src="https://player.vimeo.com/video/889389925?h=2cb35583ae" width="560" height="315" frameborder="0" allow="autoplay; fullscreen; picture-in-picture" allowfullscreen></iframe></p>
<p><a href="https://vimeo.com/889389925">Welcome to NatureEye. Where will you fly today?</a> from <a href="https://vimeo.com/user211917072">NatureEye</a> on <a href="https://vimeo.com">Vimeo</a>.</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ネイチャーアイで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるミッシェル・ウェール氏は、「アイスランドのクヴェルフィヤットル火山は私のお気に入りの場所です。当社のガイドのヨハンは、この地域の地質や歴史に関する知識が豊富です。冬の火山の上空を飛ぶのは、これまで見たなかで最も素晴らしい光景の一つです」と話す。</p>
<p>クヴェルフィヤットル火山からカンボジアのメコン川、ペルーのマチュピチュ遺跡にいたるまで、ネイチャーアイの30分にわたる没入型のドローン飛行は、多くの人にまだ見ぬ景色を見せてくれる。経験を積んだガイドと共同操縦する同社の空中アドベンチャーは、最先端のテクノロジーを使ってスムーズな旅行体験を提供する。</p>
<p>2020年3月、新型コロナウイルスが世界の動きを止めたとき、多くの旅行業者が、家から出なくても旅行者を呼び込めるクリエーティブな方法を手に入れた。マラケシュ・メディナ(モロッコ)でのバーチャルショッピング旅行や国立公園でのトレッキング、世界の有名美術館の360度ツアーなど、人々は実際に旅行するよりも家にいながらの方がより多くの場所を訪れることができるようになった。</p>
<p>しかし、旅行需要が回復するにつれ、こうしたバーチャル旅行の多くはオフラインへと変わり、対面型の旅行へと回帰するなかで廃れていった。そんななか、自社の長期戦略として、コロナ禍がバーチャル旅行を採用するきっかけや促進材料になった企業もある。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>持続可能な旅行としてのバーチャル旅行</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ニュージーランドに本拠を置く<a href="https://virtualjourneys.co.nz/">バーチャル・ジャーニーズ・ニュージーランド(Virtual Journeys New Zealand)</a>ではVR(バーチャル・リアリティ)ヘッドセットやメディアプレーヤーを使ったバーチャルツアーを提供する。創業者のマイケル・ニース氏は、「私はいつも未来を見ています。バーチャルツアーはその環境に没入する感覚が得られます。周囲を見渡せ、実際にその場にいるような感覚になります」と話す。</p>
<p>ニース氏は長年、ニュージーランドやオーストラリア、南太平洋の島々など行くまでに長い時間や多くのお金がかかり、大量のCO2を排出する場所のツアーガイドや旅行デザイナーとして働いてきた。コロナ禍で発展を遂げたテクノロジーに学び、「観光旅行にもこうしたテクノロジーやストーリーテリングを利用できると考えました」という。</p>
<p>旅行という概念はこれまで、人が物理的にある地点へ移動したり、経由することを指してきた。しかし、旅行には早急に取り組まなければならない課題がある。飛行機のCO2排出量の多さは代替の交通手段を選ぼうとする動きに拍車をかけ、その一方で、陸路の交通手段がほとんどない島・地域は観光旅行の減少という課題を抱えている。異常気象や脆弱(ぜいじゃく)な生態系へのツーリズムの影響は、旅行業界の未来に疑問を投げかける。さらに、旅行へのアクセスにも課題がある。休暇の短さ、増加する生活費、そのほかの制限によって、多くの人は旅行ができなくなってきている。</p>
<p>バーチャル旅行は、簡単には行けない場所、行くことができない場所を訪ねる手段を提供し、オーバーツーリズムに加担することも悪い影響をもたらすこともなく、経験や学びを得られ、旅先に貢献できるものだ。例えば、ネイチャーアイでは売上高の最大50%を地元のパートナー企業と分かち合い、経費をまかない、ガイドに報酬を払い、保全活動に投資している。</p>
<p>ウェール氏は、「私たちは、世界中の保護地域を訪れる方法、またその過程で地域に還元する新たな方法を生み出しています。ネイチャーアイの飛行によって各地の壮大な景色を見ることで、人々は、未来を見据えて環境保全に取り組む当社のパートナー組織に、より貢献できるようになるでしょう」と話す。</p>
<p>ネイチャーアイやバーチャル・ジャーニーズ・ニュージーランドが提供する体験は、旅行産業が直面する数えきれないほどの課題への解決策を示している。しかしながら、ニース氏は「旅行業界は非常に消極的です。バーチャル旅行を重要なものと認識していません」と話す。</p>
<p>旅行業界はパンデミックとその影響にがく然とさせられた。今は、旅行需要が2019年のコロナ禍前の水準まで回復し、世界旅行ツーリズム協会(WTTC)などの組織は活気づき、将来的にも物理的な移動に依存し続けようとしているが、バーチャル旅行に力を入れる企業は別の未来を見据えている。</p>
<p>「私たちは、AからBに旅行するために、飛行機で20時間かけて移動したり、飛行機に乗り、目的地を巡り、また飛行機に乗って戻る必要がある、と認識しています。ですが、それは少し変ではないでしょうか。将来、私たちの孫たちは『どうしてはるばる旅行するのか？』と尋ねると思います。バーチャル旅行は、旅行業界の一部になる必要があると本気で考えています。次世代のためにもそうする必要があります」</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

ワールドニュース

ウェルビーイング

社会 social

テクノロジー

ツーリズム

バーチャル旅行のいま――米国・ニュージーランドの旅行会社に聞く

細田 悦弘

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/01/12/etsuhirohosoda.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>企業の舵(かじ)取りに際して、「サステナビリティ」はセンターラインに据えるべき概念となり、ますます本質を捉えた対応が重要となっています。そこで、そのルーツともいえる『企業の社会的責任』の歩みを紐(ひも)解いてみます。歴史上で何が起きて、どう対応してきたのかを知れば、いま何をすべきかを読み解くヒントになります。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本における『企業の社会的責任』の系譜</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>これからの企業経営を考える上で、「サステナビリティ」は外せない要素となりました。そこで、ここに至るまでの源流の概念として、『企業の社会的責任』の系譜をおさえておきます。とりわけ次世代経営者には、温故知新によって、新しい経営のあり方を模索するための大事な知見となります。その時々の社会において、企業が伝統的に<u>期待されてきた役割</u>に立ち返り、<u>ステークホルダー(社会)との関わり</u>について勘所を見極めるのに役立ちます。</p>
<p>『企業の社会的責任』ときくと、多くの場合、2000年代初頭から注目された「CSR(Corporate Social Responsibility)」が想起されることでしょう。ただし、日本でCSRの概念が芽吹いたのは、半世紀以上前になります。1956年に経済同友会の経営方策特別委員会が「企業は社会の公器である」との自覚の下、「経営者の社会的責任の自覚と実践」を発表したことが嚆矢(こうし)といえます。経営者は「経済体質の改造」と「企業経営の近代化」が最大任務とされ、これを機に「経営者(企業)の社会的責任」という言葉が広く知れ渡るようになりました。</p>
<p>本稿では、その後CSRがブームといえるような様相となった、1970年代と 2000年代の状況を俯瞰し、現状のサステナビリティへの流れについて概説します。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/01/15/zusashikae.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>1970年代の『企業の社会的責任』</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>1970年代に大学で「CSR」を学んだ経営者が多くいます。当時の日本は、高度成長の<u>負の影響(外部不経済)</u>による環境破壊・公害問題や欠陥商品などの企業不祥事等により、社会の企業に対する見方が大きく変化し、『企業の社会的責任』が問われるようになりました。企業不祥事に代表される企業体質のネガティブな側面が、市場や社会から厳しい批判を受けたことなどが契機となり、経済団体による企業のあるべき姿についての提言も相次ぎました。企業は、<u>世の中からの目線(評価)を正しく認識し、社会的ニーズを的確に捉えて期待に応え、社会との強い信頼関係を築くこと</u>がきわめて重要な課題となりました。</p>
<p>こうした文脈から、1973年に「現代用語の基礎知識」(自由国民社)に初めて、「企業の社会的責任」が登場しました。同書は、まだスマホのない時代のビジネスパーソンの虎の巻ともいえる情報源でした。しかしながら、企業側の対応は、対症療法的な公害部の新設や財団設立などによる利益の社会還元(いわゆる社会貢献活動)が中心でした。企業が社会的視点を備えたことは意義深いことですが、ほとんどが本業に直接関わるものでありませんでした。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>2000年代からの『企業の社会的責任』</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2000年以降は、それまでの流れを踏まえつつも、新たなCSR時代が到来しました。目覚ましい技術革新と拡大する経済のグローバリゼーションの光と影が交錯する中で、環境や社会にまつわる多くの課題を克服し、経済を持続的に発展させるべく新しい世紀の幕が開けました。</p>
<p>一方では、2000年頃から立て続けに企業不祥事が発覚して大きな社会問題となりました。日本でも大企業を中心に「CSR経営」が認識されだし、それまでの環境、社会貢献、コンプライアンス等の部門が「CSR部(室)」として装いも新たに設置され始めました。CSRに関わる多様な法律も成立しました。</p>
<p>そして、2003年を「CSR元年」とする象徴的な1冊となる、経済同友会「第15回企業白書：市場の進化と社会的責任経営」が発行されました。提唱された主なポイントは以下のとおりです。</p>
<p>⚫︎CSRは、<u>将来のリスクを低減</u>するとともに、社会のニーズの変化を<u>新しい価値創出や新しい市場の創造</u>に結び付けることによって、企業の持続的な発展や競争力向上につながる。したがって<u>「コスト」ではなく「投資」</u>として位置付けるべきである<br />⚫︎CSRは、<u>企業の持続的発展とともに、社会との相乗発展を目指すもの</u>である。その意味で、今の日本企業に失われた信頼とダイナミズムを回復し、日本経済・社会の活力を再生するための挑戦である<br />⚫︎CSRは「法令遵守」や「社会貢献」といったレベルにとどめるのではなく、企業理念や戦略の展開という<u>企業経営の中核に位置付けるべき課題</u>である</p>
<p>このタイミングで、前述の「現代用語の基礎知識」に、あらためて「企業の社会的責任」が掲載されました。さらには、2010年には、「組織の社会的責任」の指針であるISO26000が発行されるに至ります。この段階くらいから、CSRは本業以外の社会貢献や法令遵守のみではないことが、日本企業にも少しずつ浸透しだしました。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>今だからこそ、押さえておきたい「原理原則としてのCSR」</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>CSRとは本来、「<u>本業を通じて</u>、社会と企業の持続可能性の同時追求」を目指すものです。企業存続のための企業倫理確立や不祥事防止のための法令遵守等の義務的な取り組みは大前提であり、また企業に余裕がある時の社会への利益還元や社会貢献は大事な活動ですが、それだけではありません。</p>
<p>しかしながら、1970年代のCSR草創期においては、ややもすると、CSRは本業とは別のところで行われる取り組みとみなされていました。つまり、慈善的な活動であったり、事業活動における環境負荷等をカバーする免罪符のような処し方も散見されました。</p>
<p>その後2000年代に入ると、CSR論議が百花繚乱の様相を呈し、その『定義』は200以上あったといわれています。その中から、世界のスタンダードといわれる欧州委員会(EU)とISO26000、及び日本の経済産業省のCSRの定義を確認しておきましょう。</p>
<p>◎欧州委員会(EU) …　<u>企業の社会への影響</u>に対する責任<br />◎ISO26000 … <u>事業活動が社会・環境に及ぼす影響</u>に対して、透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任<br />◎経済産業省 … 企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その<u>活動の影響について責任をとる企業行動</u>であり、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方</p>
<p>これら3つの定義に共通する重要単語は、<u>「影響」</u>です。<br />CSRは、『企業が自らの事業活動により環境や社会に及ぼす<u>影響への責任</u>』というのが本旨です。すなわち、<u>企業が社会に与える影響に責任を持つ</u>ことであり、環境、社会、経済への<u>ネガティブな影響を防ぎ最小化し、ポジティブな影響を最大化する</u>ということです。</p>
<p>これこそが、次世代経営者としての『サステナビリティの絶対音感』を鍛える視点であり感性です。上記のような<u>原理原則</u>をしっかりと踏まえ、「サステナビリティ経営」に腰を据えて取り組むことで、持続的成長・中長期的な企業価値向上につながります。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

コラム

ファイナンス

ESG投資

【コラム細田悦弘の新スクール】 第5回「企業の社会的責任」の生い立ち

コミュニティ・ニュース

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
<p><strong>Sponsored by 三菱UFJモルガン・スタンレー証券</strong></p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/01/05/01_43.jpeg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>JICA(独立行政法人国際協力機構)は、主要業務として日本の政府開発援助(ODA)の二国間援助で技術協力、有償資金協力、無償資金協力などを担い、その規模は2022年度で年間約2兆7450億円<sup>注1</sup>となる。JICAは2008年から債券発行を開始し、有償資金協力の事業に充てている。その後、2016年に社会課題の解決を目的としたソーシャルボンド<sup>注2</sup>を発行しており、ESG投資の機運が高まっているいま、この分野の草分け的存在となっている。</p>
<p>現在、ソーシャルボンドを含むインパクト投資<sup>注3</sup>は、金融商品のカテゴリーとして認知されつつあるが、ソーシャルボンド/サステナビリティボンドであるJICA債発行の背景には「一緒に社会課題に取り組むパートナーを見つけたいという思いがある」と、同機構 財務部 財務第一課 課長の高橋順子氏は語る。</p>
<p>JICAの活動は、SDGsが広がる前から、開発途上国の発展に資するソーシャルインパクトを目指した開発支援事業が土台にある。高橋氏は「ソーシャルボンドの機運が出てきた時に、まさに我々が行っている事業目的そのものと認識して、2016年に国内初のソーシャルボンドを発行した」と説明する。2008年から債券を発行していたが、JICAが行っている事業のインパクトを市場に効果的に伝えることができていなかったため、ソーシャルボンドを発行することで、市場にJICAの活動を発信する目的があったという。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/28/02_01-2.jpeg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>高橋氏</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>また2019年から、社会・環境課題の特定テーマや地域に資金使途を限定した「テーマ債」を発行<sup>注4</sup>。2023年4月には債券フレームワークを刷新し、「JICAソーシャル/サステナビリティボンド フレームワーク」を公表し、2023年5月に初のサステナビリティボンドを発行した。フレームワークでは、「JICAの事業はそのすべてが社会課題の解決に貢献する事業」であり、その中には「社会課題だけでなく環境課題の解決にも貢献する事業」があることを打ち出し、発行する債券に特色を持たせている。</p>
<p>注目されるのは「サステナビリティ」という概念が強化されたことだ。高橋氏は「JICAはこれまで“ソーシャル”としての認知はあったが、“環境”や“気候変動”にも寄与していることを表現したかった」と説明する。気候変動による災害の激甚化は、開発途上国のような脆弱(ぜいじゃく)な地域に大きな被害をもたらす。「2023年9月に発行したテーマ債『防災・復興ボンド』は、甚大化する自然災害に対し、防災や災害からの復興に向けた取り組みを一層強化する目的がある」(高橋氏)。</p>
<p>ソーシャルボンドやサステナビリティボンド発行にあたっては、資金使途となるプロジェクトをどのように選ぶのか透明性が求められる。JICAのプロジェクト選定は、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)による6つの評価基準「妥当性」「整合性」「有効性」「インパクト」「効率性」「持続性」から評価し、事業効果は定量・定性の両方から検証する。高橋氏は「特にプロジェクトが完成した後に、その効果が“持続的”になるよう運営されることが重要」だと話す。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/28/03_PDCA.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>プロジェクトの選定は、現地からの要望やJICA側からの提案により検討を始め、プロジェクトがどのように社会・環境課題の解決につながるのかロジックを明確にし、「適切な事前審査を行い、開発に伴って起きうる環境・社会への負のインパクトにも配慮する」と高橋氏はいう。「JICAのプロジェクトは規模が大きく裨(ひ)益者の人口も多い。事業開始時に、例えば10の指標で成果やインパクトの基準値を測り、完成後の達成すべきレベルを数値化、ゴールを設定している」。</p>
<p>また、プロジェクト評価も事前・事後評価をホームページで公開し、特に事後評価は第三者による外部事後評価として透明性と客観性を確保している。さらにプロジェクトで得た“教訓”を他のプロジェクトで生かし、改善するための自己評価を実施するという徹底ぶりだ。</p>
<p>一方で、気候変動に関してはCO2削減など分かりやすく一様な指標があるが、ソーシャルインパクトは事業対象地域のコンテキストなども考慮が必要で指標の設定が難しい。「JICAは評価の“教訓”から思考してより良いインパクト指標を探し、トライアンドエラーで繰り返し検証している」と高橋氏は話した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>インドで女性の社会進出を後押し、住民に自信が芽生える</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/28/04_2.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>デリー市の地下鉄の様子(写真提供：久野真一)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>高橋氏は駐在員としてインド首都の地下鉄建設による街の変化を住民目線で見てきた。デリー市は大気汚染や交通渋滞などの社会問題が起きていたが、2003年に一区間が開通。交通渋滞の緩和やクリーンな交通手段の整備を目的にした事業だったが、何よりも大きかったのは女性の社会進出を後押しすることだったという。</p>
<p>「南アジアは文化的な理由により女性の社会進出が難しい。唯一の公共交通手段であるバスも治安が悪く、女性の多くは利用を避けたがる」と高橋氏は振り返る。本事業では、デリー市内を縦横に走るメトロに女性専用車両や監視カメラを設置することで、女性や幼い子どもなどが安心して出かけられるようになった。</p>
<p>またインドは、都市部と地方で貧困格差が大きい。インド国内でも極めて貧しい北東部地域のトリプラ州は、山岳地帯の州で焼畑農業により森が荒廃しているという。そのため、土壌の保水性が低下し災害が増え、さらに貧困に陥るという負のスパイラルが課題だった。こうした課題を解決すべく、JICAはインドの各地で植林事業を支援し、植林を軸にした環境保全、貧困削減を住民参加型で2000年代より進めてきた。</p>
<p>住民の森林管理能力を高めたり、森に依存しない生計手段を持てるよう職業訓練を行ったり、女性たちの自助会を作り、お互いに少しずつ資金を出し合いながら起業できる機会をつくった。さらに森林組合には必ず女性を副議長に任命したり、1～2人以上を構成員にするなどジェンダーに配慮するルールを決めた。</p>
<p>このトリプラ州の植林プロジェクトの完成後、地元の大学が住民にアンケート調査したが、高橋氏が一番嬉しかったのは「住民が自分に自信がもてるようになったこと」だという。アンケートでは、プロジェクトに関わったことで、自分の決断で状況を改善できるという前向きな発想ができるようになり、新たな収入源も自信につながったことが分かった。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>投資から社会課題への思いを持った人たちとのつながりに期待</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「JICAソーシャルボンド インパクトレポート 2022年度発行分」では、「事業目的を明記し、具体的な指標を設け関連事例を多く掲載することを意識した」(高橋氏)という。この意図は投資家に伝わり、ロジックフレームがしっかりしていると好評を得ているという。</p>
<p>2024年1月に、個人が1万円から購入できる新たなサステナビリティボンド(JICA SDGs債)を発行するが、「社会貢献したいと考える、個人の思いを受け止めるツール」であるという。高橋氏は「JICA SDGs債を通じてJICAの取り組みを理解していただき、投資から社会課題への思いを持っている人たちとつながり、新しいパートナーシップを築きたい」と改めて期待を込めて語った。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/28/05-2.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><sup>注1) JICAサステナビリティ・レポート2023<br />
注2) ソーシャルボンド：発行体(民間事業法人、金融機関、独立行政法人等)が、国内外のソーシャルプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券(金融庁「ソーシャルボンドガイドライン 2021年」を参照)<br />
注3) インパクト投資：経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資(一般財団法人 社会変革推進財団(SIIF)ホームページを参照)<br />
注4) これまで「TICAD債」(2019年度)、「新型コロナ対応ソーシャルボンド」(2020年度)、「ジェンダーボンド」(2021年度)、「ピースビルディングボンド(平和構築債)」(2022年度)を発行。2023年度は、自然災害が頻発し被害が甚大化していることを踏まえ、JICAとして初めて「防災・復興ボンド」を発行</sup></p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>インタビュー：山吹善彦　SBJ Lab Advanced Practitioner of Integrated Thinking<br />
サンメッセ株式会社/サンメッセ総合研究所(Sinc)副所長/上席研究員</p>
<p>監修：川村雅彦　SBJ Lab Senior Practitioner of Integrated Thinking<br />
サンメッセ総合研究所(Sinc)所長/首席研究員</p>
<p>文・構成：松島香織　サステナブル・ブランド ジャパン　　撮影：原 啓之</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><sup>(免責事項)</sup><sup>本記事内で紹介している債券は、読者の皆さまに対し、何らかの商品または取引を強く勧誘・推奨等をするものではありません。したがって、本記事の内容については、ご自身の判断のもとにご活用くださいますようお願いいたします。</sup></p>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

ニュース

スポンサー記事

エシカル

JICA、SDGs債の発行は社会課題解決の「仲間づくり」

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/01/02/consul02800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>photo by <a href="https://unsplash.com/ja/@coopery?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash">Mohamed Nohassi</a> on <a href="https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%B0%B4%E5%9F%9F%E3%81%AB%E5%9B%B2%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%B2%A9%E3%81%AE%E4%B8%8A%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A4%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88-odxB5oIG_iA?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash">Unsplash</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>世界中で猛暑が続き“地球沸騰化”という表現もなされた2023年。世界の気温上昇を産業革命前から1.5度に抑える目標の達成が危ぶまれるなか、企業のサステナビリティに対する取り組みを巡っては、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による最初の開示基準やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言も発表されるなど、世界的に非財務情報の開示を求める動きが本格化した1年となった。<br />そしてウクライナやパレスチナ情勢の先行きも見えないなかで幕を開けた2024年はどんな1年になるのか――。いわゆる4大グローバルコンサルファームと言われるPwCとデロイト トーマツ、KPMG 、EYが昨年末にかけて発表した最新の調査結果から、企業を取り巻く2024年のリスクと機会の傾向と課題を探った。(廣末智子)</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>気候変動と社会的不平等に対するリスクが上昇</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>・PwC</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>PwCが2023年9月に、<a href="https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/global-investor-survey.html">世界30の国と地域の投資家とアナリストを対象に行った最新の意識調査</a>によると、投資家は「企業が短期的な危機への対応と中長期的なビジネス変革の間で生じる潜在的なトレードオフ(一方を達成すれば、一方を失うという関係性のこと)にどのように取り組んでいるのかをより詳しく把握したい」と考えている。</p>
<p>投資対象の企業が、今後12ヵ月において、どんなリスクにさらされると思うかという質問の1〜5位は「インフレ」(46%)、「マクロ経済の変動」(39%)、「地政学的対立」(34%)、「サイバーリスク」(32%)と「気候変動」(同)だった。前年の同じ調査では、インフレが67%、マクロ経済の変動は62%と、これら2項目は今回の調査で約20ポイント減っているが、気候変動に関するリスクは22%から10ポイント増え、さらに社会的不平等も11%から21%へと高まっている。</p>
<p>そして、投資家の75%は、企業がサステナビリティに関連するリスクと機会をどのように管理するかが投資の意思決定における重要な要素だ、と回答。サステナビリティが財務上のパフォーマンスにどのような影響を与えるかを示すレポートだけでなく、逆に「企業が環境や社会に与える影響についても知りたい」と考える投資家も、前年の60%から75%に増加した。さらに69%は、「事業のパフォーマンスや将来展望と関連があるサステナビリティの課題に適切に対処している企業への投資レベルを高める」、67%は「社会や環境に有益なインパクトをもたらすために事業のやり方を変える企業への投資を増やす」と回答している。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>注目すべき結果は、94%にわたるほぼすべての投資家が、サステナビリティの実績に関する企業報告には、しばしばグリーンウォッシングと呼ばれる「何の裏付けもない主張が含まれていると考えている」ことだ。この点は従来にも増して、投資家は警戒感を強めている。投資家がEUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)や、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)などの新しい開示基準を支持するのも、「第3者による保証」とともに、サステナビリティに関する「より一貫性のある比較可能な報告」を求めてのことに他ならない。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本企業も役員報酬へのESG指標の組み入れ急増</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>・デロイトトーマツ</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>デロイトトーマツグループは2023年末、<a href="https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20231225.html">2022年度におけるTOPIX100構成銘柄の有価証券報告書を分析し、役員の業績連動報酬へのESG要素の反映状況を調査した結果</a>を発表した。それによると、短期または中長期のインセンティブのいずれかにESG要素を反映する日本企業の割合は直近3年に急ピッチで増え、2020年度(24%)、2021年度(52%)に続き、2022年度は66%だった。</p>
<p>ESG連動型役員報酬を導入している企業(66社)のうち、指標の内訳を具体的に開示しているのは56社で、項目としては人的資本(多様性、従業員エンゲージメント等)が短期インセンティブ15件(前年度比+4件)、中長期インセンティブ21件(同+5件)と多くの企業で導入されているほか、温室効果ガス排出削減量など気候変動に関するものも、特に中長期インセンティブで25 件(同+9件)と大きく増えた。</p>
<p>加えて66社について、役員報酬に紐づくESG指標と、マテリアリティの関係を、統合報告書をもとに調査したところ、自社のマテリアリティを定義している企業は57社で、そのうちマテリアリティと役員報酬に設定されるESG指標が連動している企業は7社にとどまった。</p>
<p>この結果について、デロイトトーマツ グループは、「ESG指標を役員報酬と連動させることで企業がESG課題に取り組む姿勢を内外に示す動きは広まっているが、適切な制度設計を行なっていないために、ESG目標に対して経営陣が、『本気で取り組んでいる』とステークホルダーに示すという期待効果が発揮されていないケースも散見される」と課題を指摘。さらに「役員報酬へのESG組み入れは今後も増えていくと予想されるが、ブームに追随した形だけの取り組みに終始せず、ステークホルダーからの信用を確保するに足る、説明性・実効性をもった内容になっていくことを期待する」としている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>テクノロジーイノベーションの最優先課題にESGが躍進</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>・KPMG</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>テクノロジーに関する組織の優先課題と、企業におけるDX戦略の次の段階の展望について、KPMGコンサルティングは世界16ヵ国の大手企業の上級管理職者らを対象に行った「<a href="https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/jp/pdf/2023/jp-global-tech-report2023.pdf">KPMGグローバルテクノロジーレポート2023(日本語版)</a>」を発表した。</p>
<p>それによると、回答者の多くがテクノロジー投資によって10%を超える収益性や業績の向上が得られたと回答。前年の約2.5%を大きく上回った。さらに、最新ツールや先端テクノロジーの導入に対する経営者の支持は10%から38% へと、前年のほぼ4倍に増加したという。業種別では製造業が50％と最も多く、次いでエネルギー産業と政府機関(いずれも44%)、ヘルスケア産業(43%)の順だった。</p>
<p>一方、「テクノロジー部門が今後2年間で優先するイノベーション目標は何か」という、デジタル投資の重点領域に関する設問には、前年まで最下位だった「ESG課題への取り組みが主要なイノベーション目標になる」とする回答が躍進し、48%が温室効果ガスの排出量削減を含むESG課題へのコミットメントを最優先課題として挙げた。</p>
<p>また、調査では回答者の多くが、DXの成功を危うくするボトルネックとして「企業文化」の弊害と「コラボレーション」「コミュニケーション」の不足を挙げた。さらに回答者の69%は、「新しいテクノロジーの可能性をより効果的に経営層に説明できるようになる必要がある」と回答し、日本を含むアジア太平洋地域ではこの数字が80%に上った。これらの調査結果について、KPMGは「連携の欠けたテクノロジー部門こそが、DXの進捗を妨げる最大の要因だと多くの回答者が考えていることがうかがえる」と分析している。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>2024年は引き続き生成AIが大きなビジネス機会に</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_heading_lv3">
<div>
<h3>・EY</h3>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>EYは昨年末、「テクノロジー業界の2024年の展望は過去12ヵ月より明るい」とする<a href="https://www.ey.com/en_gl/tmt/top-10-opportunities-for-technology-companies-in-2024">最新のレポート</a>を発表した。テクノロジーに特化した内容になっているが、その骨子をあげておこう。</p>
<p>それによると、世界のテクノロジー業界は2023年、マクロ経済の弱さと地政学的な緊張を乗り越え、生成AIを中心とした企業戦略で投資家の信頼回復を引き寄せた。そうした流れから、2024年の業界は、企業経営に生成AIをどう導入するかが大きなビジネス機会になるという。</p>
<p>しかしながら、ほとんどの企業(90%)ではAIの成熟度がまだ初期段階にあり、その影響は「諸刃の剣」だ。なぜなら、生成AIの出現前に設計・実装されたDXの取り組みは急速に時代遅れになりつつあり、新機能を優先する競合他社にその地位を奪われる可能性がある。一方で、DXの初期段階で遅れをとったテクノロジー企業は生成AI を経営戦略へ効果的に取り入れることで、はるかに先を行っていた競合他社を追い抜くことができるのだ。</p>
<p>このリスクと機会のバランスに直面し、デジタル変革において業界のリーダーシップを維持または達成しようとしているテクノロジー企業には、「(担当責任者ら主要な幹部で構成する司令塔となる)『AIコントロールタワー』を設立する必要がある」とレポートは指摘。根底は、「人間がデジタル変革の中心にとどまり続けること」であり、人を中心とした安全で倫理的なAIの導入が前提になると強調している。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

パーパス

経営 management

ブランド戦略

2024年のリスクと機会はどこにあるのか――4大コンサルファームが指摘する企業のサステナビリティ戦略

エプソン販売株式会社（Sponsored）

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/top800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>佐賀銀行本店の前で。下田さん(左)と西山さん</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>創業140年を超える佐賀銀行は、佐賀と福岡の橋渡し役として、地域経済に大きな影響を与えてきた。近年は時代の流れに応じてその立ち位置をアップデート。サステナブルなビジネスモデルの構築に向け地域のコンサルファームを自任し、地域振興やDX支援に積極的に取り組んでいる。そんな佐賀銀行のサステナブル経営の実践に向けての一翼を担っているのがセイコーエプソンのペーパーラボだ。導入の経緯や運用方法をキーマン2人に聞いた。</p>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>Interviewee　<br /><strong>佐賀銀行 営業統括本部 地域支援部 地域共創グループ 調査役</strong><br />西山孝史（にしやま・たかふみ）さん<br /><strong>佐賀銀行 総合企画部 経営企画グループ 調査役</strong><br /> 下田美樹（しもだ・みき）さん </p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>地域経済のハブを目指して</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──まずは佐賀銀行様のサステナビリティの取り組みについて教えてください。「地域の皆さまとともに」というスローガンの背景は何ですか。</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：私たちは現代の地域金融機関として、金融サービスを提供するにとどまらず、地域の発展に深く関わる使命を持っています。2022年4月に開始した中期経営計画では、地域支援戦略、DX戦略、組織戦略、市場運用戦略の4つを主要戦略としており、どの戦略においてもベースとなるのは、グループ全体がコンサルティングファームとして地域社会の課題に対応し、解決策を提案していこうという強い意思です。この思いが、「地域の皆さまとともに」というスローガンに表れており、私たちの活動が地域コミュニティと密接に連携していることを示しています。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/02.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>佐賀銀行のサステナビリティ戦略について説明する西山さん</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──4つの主要戦略の一つに掲げられている地域支援戦略の実例の中でも、「荒廃園における放牧牛の販売」への支援が特に目を引きました。詳しく教えてください。</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：これは佐賀県西部の鹿島市での取り組みです。こちらに鹿島市と協力して、荒廃したみかん農園を活用した放牧牛の肥育事業を進める事業者様がいらっしゃいます。間引きのために摘果したみかんやワラ、酒粕などをエコフィードとして与えたり、ICT技術による効率化のために大学と共同研究したり、先進的な取り組みを行っていたのですが、課題がありました。食肉の加工だけは大分の業者でしかできず、加工用の肉を運ぶだけでも多大な労力とCO2排出が問題となっていました。鹿島市が地元業者との連携に苦戦していた中、私たちは地域金融機関としての関係性を活かし、鹿島市内の加工業者様と直接交渉することで、地元での加工を実現することができたのです。この取り組みは第2回地方創生SDGs金融表彰を受賞しました。</p>
<p>──<strong>佐賀銀行様が間に入って、事業者同士を結びつけたのですね。</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：はい、このほかにも、お客様との信頼関係を基盤にさまざまな事業に取り組んでいます。例えば地域商社「さぎんコネクト」を通じて、佐賀県産品の販売を支援しており、これにより地域の特産品が広く知られる機会を提供しています。</p>
<p><strong>──さぎんコネクトとはどのような企業ですか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：さぎんコネクトは、2021年10月に設立された銀行業高度化等会社<sup>（※1）</sup>です。具体的には、佐賀空港やJRの駅など県外からの来訪者が多い場所で佐賀県産の商品を販売する「よかばいマルシェ」を主催したり、クラウドファンディングや広告事業などを通じて地域の良さを域内外に発信したりしています。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/03.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ペーパーラボを設置している地下室にて。下田さんはまず大きさに驚いたという</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──地域振興に銀行が積極的に関わる理由は何ですか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：銀行は地域で独特の役割を担っています。融資などを通じてお客様のビジネスの裏側まで深く理解しているため、本音ベースでの対話が可能であり、さまざまな業種のお客様との接点を持っています。これが地域振興においても私たちの強みとして発揮できるのではないかと考えました。</p>
<p><strong>──銀行が地域振興のハブとなるということですね。</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：はい、私たちは資金面のサポートだけでなく、顧客同士を繋げる役割にも力を入れています。これにより、地域内での協力体制が強化され、地域全体の経済発展に貢献できるのではないかと考えています。</p>
<p><sup>※1＝2016年の銀行法改正で銀行が子会社などを通してフィンテックや地域商社に参入することを可能にした制度により設立された会社。</sup></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>若手行員を中心にペーパーラボ導入を検討</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──ペーパーラボの導入経緯について教えてください。</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：私は、現在は別の部署に異動していますが、以前は総合企画部におり、ペーパーラボ導入の際は私がプロジェクトの責任者でした。現在は下田が中心となり、総合企画部がペーパーラボの運用を行っています。</p>
<p><strong>──ペーパーラボについて知ったのはいつ頃ですか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：2021年の11月から翌年の3月にかけて結成したSDGsスタディグループにいた時です。このグループは若手行員が中心となり、総合企画部が事務局として運営を行っていました。最終的な目標は、2022年3月に経営陣へSDGsに関する提案をするというもの。ペーパーラボについては、その提案を準備する過程で発見し、導入を考えるようになりました。</p>
<p><strong>──ペーパーラボ導入を決めた主な理由は何でしたか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：私たちはその時、ペーパーレス化の取り組みを加速させていましたが、銀行業務ではどうしても紙の使用が避けられません。そこで、紙の使用を減らすだけでなく、ペーパーラボを導入することでリサイクルまで行い、資源を循環させることができないかと考えました。</p>
<p><strong>──実際にペーパーラボはいつ導入されたのですか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：2022年3月に私たちのスタディグループが提案を行い、その後私が事務局を引き継いで、経営陣に向けた具体的な導入計画を1年以上かけて進め、2023年の2月に導入されました。</p>
<p><strong>──ずいぶん時間がかかりましたが、導入の際に障害はありましたか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：エプソン販売さんの手前言いにくいのですが、最大の障害は金銭的な面でした。初期投資が高額であるため、他の省エネ対策と合わせて、経営陣に採算性を示して説得する必要があったのです。また、社会的な価値も打ち出す必要があり、これについては就労支援施設と連携して現金封筒の製作を行うことを提案しました。こうした説得材料を揃えるのに少々時間がかかってしまったのです。</p>
<p><strong>──ペーパーラボを初めて見た印象はどうでしたか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：私は写真で事前に見ていたので、外見に関しては特に驚きはありませんでしたが、実際に紙が再生される様子を見た時は、その速さと効率の良さに驚きましたね。</p>
<p><strong>下田</strong>：私は事前に写真を見ていなかったので、紙を再生するためにはこんなミニバンみたいな大きな機械が必要なのかと驚きました。よく本社の狭い地下室に入ったなというのが率直な印象です。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/04.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ペーパーラボがある部屋には部署ごとに分けられた回収箱が</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──古紙の回収方法について教えてください。</strong></p>
<p><strong>下田</strong>：回収は週に一度行っています。定められた日時に各部署から紙を持ってきてもらうシステムを設けています。</p>
<p><strong>──行員の皆さんの反応はどうですか？</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：私の今の部署は紙を多用する部署なのですが、皆が自然と紙を分別して回収箱に入れています。行員の間で特に抵抗は感じられません。</p>
<p><strong>──紙の分別は行員にとって既に習慣になっているのですか？</strong></p>
<p><strong>下田</strong>：随分前から紙の分別を促しており、すでに多くの行員がそれを日常的に行っています。ペーパーラボの導入により意識がさらに高まったと実感しています。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>誰一人経済的に取り残さないための「現金封筒」</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/05.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ペーパーラボの再生紙で作った現金封筒</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──現金封筒を再生紙で作ろうと思った経緯を教えてください。</strong></p>
<p><strong>西山</strong>：以前は東京の大手印刷会社から現金封筒を仕入れていました。しかし、地域経済への貢献と循環を考慮し、県内での製作に切り替えようと考えました。特にSDGsの観点から、誰一人経済的に取り残されない取り組みであることを重視し、就労支援施設との連携を模索したのです。その際、参考にしたのが北九州市のNPO法人「わくわーく」さんの、「KAMIKURU(カミクル)」プロジェクトです。ペーパーラボを中心に据えたこのプロジェクトでは、紙の再生を単なるリサイクルではなく、多様な雇用機会創出にも役立てていました。そのモデルを佐賀県版としてアレンジしようと考えたのです。</p>
<p><strong>──月間でどれくらいの量を製作していますか？</strong></p>
<p><strong>下田</strong>：現在は5つの施設に依頼し、各施設から月に1000枚ずつ、合計5000枚を受け取っています。これらは佐賀銀行の全支店に配布されています。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/06.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>破れないよう厚みを要するのが課題</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>──作る施設側と使う営業窓口側の反響はそれぞれどうですか？</strong></p>
<p><strong>下田</strong>：施設側からはのり付けの作業が大変という意見もありましたが、継続して取り組みたいという前向きな意見が多いです。営業窓口側では、封筒の厚みが気になるというお客様の声が伝わってきています。ただ、薄くすると破れるリスクがあり、実際に500円玉を入れて振ると封筒から落ちてしまうことがありました。そのため、今の段階では封筒を厚くせざるを得ず、配布するときは「再生紙なので何度もお使いください」とお客様にお声がけするようお願いしています。また、束になったお札が入らないという意見もありますが、これはマチ付きの別の再生紙製品を用意して対応しています。</p>
<p><strong>西山</strong>：多少の不便はありますが、再生紙による現金封筒は地域社会への貢献という点では大きな意味を持っていると思います。なぜなら、私たちの支店ネットワークを活用することで、全県の就労支援施設へ依頼することが可能であり、これにより、県内の中心部だけでなく、地域全体にあまねく仕事を分散させることができるからです。実際、就労支援施設からは感謝の声を頂いており、この価値は便利さやコストと比較できるものではありません。</p>
<p><strong>──銀行のユニバーサルサービスの力を存分に発揮しているわけですね。最後にペーパーラボを導入したことについて、総括をお願いします。</strong></p>
<p>​​​​​​</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/07.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>終始明るい雰囲気で話してくれた西山さんと下田さん</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>西山</strong>：ペーパーラボを導入する場合は、リサイクルだけでなくアップサイクルという観点から活用方法を考えるべきだと改めて思いました。その点、現金封筒は環境と地域経済への双方の価値を創出できたので良かったと思っています。</p>
<p><strong>下田</strong>：銀行に入った時は、このような取り組みに携わるとは思ってもいませんでした。しかし、自分たちが作成した製品をお客様に提供できることは素晴らしいことです。これからも、現金封筒だけでなく、さまざまなアップサイクル品を提供し、銀行業務とは異なる形でお客様に還元していきたいと思います。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

エプソン販売ではエプソングループの長期ビジョン「Epson 25 Renewed」にもとづき、環境負荷の低減に注力し、お客様の課題解決に繋がるソリューションの提案をしています。そして、事業を通じてお客様やパートナーの皆さまと共に「持続可能でこころ豊かな社会の実現」を目指しています。　
『すべては「お客様の笑顔」のために。』　製品というモノに、お客様の願いや、想いを含むコトを添えて提案する。私たちは、そんな姿勢を大切にし、永続性のある価値を創出する企業でありたいと考えています。

エプソン販売株式会社

金融の枠を超え地域の課題解決に取り組む佐賀銀行が ペーパーラボで実践していること

RICHARD HOWITT

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/us/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/19/g1_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit:</sup> <a href="https://unsplash.com/@omarcosassis?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash"><sup>Marcos Assis</sup></a><sup> on </sup><a href="https://unsplash.com/photos/woman-in-white-long-sleeve-shirt-and-brown-hat-standing-on-yellow-flower-field-during-daytime-BdomZSw2DLE?utm_content=creditCopyText&amp;utm_medium=referral&amp;utm_source=unsplash"><sup>Unsplash</sup></a></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><a href="https://www.ohchr.org/en/events/sessions/2023/12th-united-nations-forum-business-and-human-rights">国連ビジネスと人権フォーラム</a>が11月27～29日、スイス・ジュネーブで開かれた。その初日、参加者らは将来的にサプライチェーンのすべての階層で直接的な関わりを結ぶことが不可欠になることに合意した。企業責任・サステナビリティに関わる戦略アドバイザーで、国際統合報告評議会(IIRC)の元CEO<a href="https://www.linkedin.com/in/richard-howitt-a3aa4726/">リチャード・ハウィット</a>氏が報告する。(翻訳・編集＝小松はるか)</p>
<p>サプライチェーンへの責任は、企業の人権にかかわる活動において一貫したテーマとなっている。人権デューディリジェンスに関しては近年、日本や米国、EUなど世界的に新たな動きがあり、今回のフォーラムでもサプライチェーン問題が重視された。</p>
<p>午前中に開かれた「レジリエントで責任あるグローバルサプライチェーン」をテーマにしたセッションは、その答えとなる“パートナーシップの構築”の話題から始まった。ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのビジネスと人権センターによる新たな調査が紹介され、そこでは、企業はグローバルサウスのサプライヤーとの間接的な関係に依存することはできず、直接的に関わる事業モデルを採用することが推奨されるとの提言がなされている。</p>
<p>H&amp;Mで社会的インパクトの責任者を務める<a href="https://www.linkedin.com/in/payal-jain05/">パヤル・ジェイン</a>氏は、それは可能なことだと主張した。同社では10年以上にわたりサプライヤーのリストを公開しており、行動規範を1次請け、現在は2次請けまで適用しているという。さらに、すでに同社ではどうすれば3次請けまで拡大できるかを協議している。</p>
<p>バングラデシュのアパレル調達プラットフォーム「マーチャント・ベイ」の創業者兼CEOの<a href="https://www.linkedin.com/in/abrar-sayem-50b02855/">アブラール・サイエム</a>氏は、フォーラムに対して、各企業が購買やバイヤーの不公正な慣行に不満を漏らさないのは、仕事を失うことを恐れているからだということを認識するよう求めた。</p>
<p>両者ともに、これからのパートナーシップの形においては、製造者への要求が購買する企業のコミットメントに整合していなければならないとの認識で一致した。</p>
<p>「要望を放り出すのではなく、きちんと耳を傾けましょう。一方通行のパートナーシップではなく双方向のパートナーシップであることを保証しましょう。責任を共有するというのは、公正な価格をつけ、ツールを提供し、解決策に取り組むことであり、関与しないことではありません」(ジェイン氏)</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>パートナーシップは「インクルーシブかつマルチステークホルダー」で</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>どのようにパートナーシップが構築されるかが成功の鍵になることが議論された。</p>
<p>現代奴隷を撲滅するグローバル基金(Global Fund to End Modern Slavery)でブラジル支部の責任者を務める<a href="https://www.linkedin.com/in/fernanda-de-castro-carvalho-61a20bbb/">フェルナンダ・カルバリョ</a>氏は、デューディリジェンスの取り組みにおいて、労働者がより弱い立場になりうる危険性があると提言した。労働組合をグリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)の中心に据えることで、解決するしかできないためだ。カルバリョ氏は、企業に対して現代奴隷のサバイバーと関わりを持ち、話に耳を傾けるよう求めた。</p>
<p>登壇者らは、パートナーシップには、人々をまとめてパートナーに責任を問うことができる公正な仲介者が必要だと声を揃えた。スロベニアの人権オンブズマンの<a href="https://www.linkedin.com/in/dijana-m-zupanc-06802385/">ディアナ・M・ズパンク</a>氏は、それぞれの政府の招集者がその実現に重要な役割を果たすと語った。また、登壇した全員が、パートナーシップはインクルーシブかつマルチステークホルダーで、長期的なものである必要があることに賛同した。</p>
<p>関係の不均衡を強調したのはインターフェイス・センター創設者のスティーブ・ベル氏だ。「必要とされているのは責任の共有ではなく、力の共有です」と指摘した。</p>
<p>ほかの登壇者は、コンプライアンス・認証・改善に係る費用の分担とビジネスモデルの構造的変革が、人権侵害の原因に対処する鍵であることを、企業は認識する必要があると指摘した。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>人権デューディリジェンスはソフトローからハードローへ</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>参考になるパートナーシップの成功事例としてあがったのは、オランダの社会経済理事会が仲介した衣類・繊維協定、バングラデシュの火災・建築安全に関する協定、アパレル業界での有害化学物質の使用ゼロを目指すプログラム「Roadmap to Zero Programme」だ。</p>
<p>国際労働機関(ILO)でアパレル産業の労働状況改善に取り組むベターワーク事業を担当するダン・リース氏と、研究著者の<a href="https://www.linkedin.com/in/sanchita-saxena-3580a39/">サンチタ・サクセーナ</a>氏は、新たな法律が状況を大きく変えるだろうとの見解を示した。</p>
<p>サクセーナ氏は「新たな法律とは、企業が説明責任を果たしていく法律のことです。良いパートナーシップは良いビジネスにつながります。購買者とサプライヤーの両方が、自社の行動が人権に負の影響を与えないことに合意しなければなりません」。</p>
<p>リース氏は「人権デューディリジェンスに関してはソフトローからハードローへ移行し、大転換が起きています。多くの企業において、パートナーシップはサプライチェーンを通じて推進されていくでしょう」と語った。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>フォーラム初日のハイライト</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>・国連人権高等弁務官の<a href="https://www.linkedin.com/in/volker-t%C3%BCrk-18bb344/">フォルカー・テュルク</a>氏は、世界人権宣言の75周年記念の一環で、人権を前進させるための“具体的な行動”についての誓約を記録するよう企業に呼びかけた。</p>
<p>・ILO事務局次長である<a href="https://www.linkedin.com/in/celeste-drake-21a9083/">セレステ・ドレイク</a>氏は、ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約」のガイダンスを活用するよう求めた。</p>
<p>・被害者の声を伝えることはフォーラムの大切な側面だが、数千人が参加するような国際会議の場では難しいのが明らかだ。初日には、この課題を乗り越えようとする試みとして、ダム建設で影響を受けたブラジルやインドネシアなどの地元コミュニティを追った、一連の映像が公開された。</p>
<p>・一方、国際法律家委員会の<a href="https://www.linkedin.com/in/sandra-epal-ratjen/">サンドラ・イパル＝ラトシェン</a>氏は、2014年に話し合いが始まった “ビジネスと人権に関する法的拘束力のある条約案”について、対象範囲や法的責任、法域に大きな違いがあると指摘した。しかし、現在の雰囲気は楽観的だとし、「本格的な交渉が始まったところです」と述べた。</p>
<p>・この日、斬新だったのは“環境レイシズム(人種差別)”に関するワークショップだ。ここでは、人種が要因となり社会的に不利な立場に置かれている集団が、環境害や気候変動の影響を被りやすい傾向にあるという現実について議論した。先住民の人々にとっては新しい概念ではないが、特定の課題に関心を引き付ける可能性のある興味深い用語の変化だった。</p>
<p>このほかに課題として挙がったのは、知的財産の範囲をAIがもたらす新たなリスクから先住民の伝統的な知恵に至るまでどう広げていくべきか、“公正な移行”において環境リスクを人権デューディリジェンスに統合する必要性をどう示せるか、世界の紛争とSDGsへの取り組みの後退がどのように今年のフォーラムをより一層切迫したものにしているか、というものだった。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

サプライチェーン

人権

サプライチェーンに“間接的な関係”という選択肢はない――第12回国連ビジネスと人権フォーラム

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/18/etsuhirohosoda.png"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今どき、サステナビリティは経営の必修科目とわかっていても、どうも踏み切れない。予算も人材にも余裕がない。ただし経営の本分に立ち返れば、自社を存続発展させること。そのための活路となるのが「サステナビリティ」であると腹を据えて割り切りたいものです。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>サステナビリティは『コスト』ではなく、『投資』</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「サステナビリティ経営」に舵を切るのに二の足を踏む経営層は、まだまだ多く見受けられます。サステナビリティを経費(コスト)と考えれば、それが必要経費であっても『出っぱなし』ですが、<u>投資と捉えれば、『リターン』があります</u>。こうした文脈から、企業がサステナビリティに取り組む意義について、次のように列挙します。 </p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/18/zu.jpeg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「サステナビリティ経営」の10のご利益(ごりやく)</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p><strong>1. </strong><strong>リスクマネジメント</strong><br />サステナビリティ経営とは、「<u>環境・社会の持続可能性への配慮により、事業の持続的成長を図る経営</u>」といえます。したがって、自社の業種業態がどのように地球や社会に『<u>負の影響</u>』を与えるのかにまず着眼することが先決です。これが、サステナビリティ経営に取り組むべき「リスクマネジメント」の観点です。すなわち、現代社会の『要請』ともいえる「ハードロー」と「ソフトロー」への対応を意味します。前者を遵守するのは当然ですが、後者を軽視し対応を怠ると、経済的・道義的に不利を被ることになります。さらには、ソフトローが徐々に社会通念上の妥当性が高まり、ハードロー化すれば、事業の制約や差し止めの窮地に追い込まれることもあります。</p>
<p><strong>2. </strong><strong>イノベーション</strong><br />サステナビリティ経営が目指すところは、<u>社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを『同期化』</u>させ、地球や社会の持続可能性を担保しながら、企業の持続的成長を図ることです。それを実現するには、従来からのコアビジネスにサステナビリティ視点の『制約(ハードル)』を課されることになります。それを乗り越えるには単なる改良ではなく、これまでなかった柔軟で斬新な発想による「イノベーション」が求められます。『制約』をドライバーとしてイノベーションに挑めば、新しい競争力が身に付きます。</p>
<p><strong>3. </strong><strong>コストダウン</strong><br />サステナビリティへの取り組みは、原材料の再利用・省エネルギー等の環境配慮を通じ、原材料費や販管費を低減できる業種があります。商品やサービスの製造過程において、エネルギーや廃棄物の量などを見直すことができれば、コスト削減につながります。これを商品やサービスの提供価格に反映させることで市場競争力が高まります。さらにアップサイクルができれば、それまで廃棄コストがかかっていたごみが、環境負荷を軽減しながら収益源に変貌します。</p>
<p><strong>4. </strong><strong>資金調達先(投資家・金融機関)の評価向上</strong><br />金融機関が投融資先を選別するに際し、『持続的成長が果たせる会社』を見極めます。<u>持続的成長が期待できる会社は、地球や社会に配慮した会社</u>です。サステナビリティに取り組まない企業より、真摯(しんし)に取り組んでいる企業の方が<u>資金調達面で有利になる傾向</u>が顕著になっています。そして金融機関は、自らのサステナビリティ推進のために、資金の力でサステナビリティに熱心な企業を後押ししていく動きも活発になっています。</p>
<p><strong>5. </strong><strong>取引先とのサステナビリティ協働による競争力強化</strong><br />多くの製造業はサプライチェーンの中間に位置します。取引先からサステナビリティへの取り組みを迫られる局面が増えています。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に象徴される対応においては、スコープ3である<u>事業者の活動に関連する他社の温室効果ガスの排出量</u>も対象となっています。<u>サステナビリティ協働は、これからのビジネスにおける『取引条件』</u>になる傾向は強まり、企業間取引の拡大の契機と捉えることもできます。</p>
<p><strong>6. </strong><strong>業界や地域経済の活性化</strong><br />事業エリア周辺から雇用や物品・サービスの調達を通じ、地域の持続可能な発展に寄与できます。地域における産業集積や知的集積によってクラスターが形成されていけば、地域産業の競争力向上や地域社会・経済の活性化にもつながります。そして、<u>地球や社会に対する『外部性(影響)』は、業界によって異なります</u>。そこで業界としてサステナビリティに取り組めば、<u>業界としての競争力を強化</u>でき、ステークホルダーからの共感や評価が高まります。</p>
<p><strong>7. </strong><strong>優秀な人的資源の獲得</strong><br />Z世代を中心にサステナビリティへの志向性が芽生え、ライフスタイルや消費行動のみならず、『会社選び』の基準にも反映されてきています。「エシカル就活」という言葉もよく見聞きします。求職行動の喚起にあたっては、サステナビリティに対する企業姿勢の訴求が不可欠となっています。働く側として、<u>『社会に役立つ仕事』ができるかどうか</u>は就職先を選ぶ際の要件として重みを増してきています。<u>サステナビリティ経営は、採用ブランドを高めます</u>。</p>
<p><strong>8. </strong><strong>従業員の離職率低下とモチベーションアップ</strong><br />伝統的に有力な日本企業は、『社員を大切にする』という考え方のもと、雇用の保障や福利厚生の充実という形で報いてきました。しかし、いま大きく変容しているのは、『労働条件の満足』から一歩踏み込んで、<u>『個人のウェルビーイング』と『会社のパーパスや中長期の経営計画』をしっかりとつなぎ合わせていく</u>点にあります。従業員が、パーパスに依拠したサステナビリティ経営に共感すれば、エンゲージメントが強化され、ロイヤルティが高まります。そして、「リテンション戦略(優秀な人材の離脱を防ぎ、継続して活躍してもらう)」に効果を発揮します。</p>
<p><strong>9. </strong><strong>社会的評価(レピュテーション)の向上</strong><br />「社会からの評価(レピュテーション)」において、サステナビリティが新しいモノサシとなっています。表層的な企業イメージではなく、レピュテーションは<u>社員一人ひとりがサステナビリティを具現化</u>することによって、時間をかけて醸成されていきます。あわせて、サステナビリティ経営に関する情報をステークホルダーに的確に伝え理解・共感を得るため、「統合報告」等を通じ開示していくことが重要です。レピュテーションが高まれば、それが<u>『無形資産』として企業価値に寄与</u>します。</p>
<p><strong>10. </strong><strong>新しい価値創造、新しい市場開拓</strong><br /><u>「事業によって社会課題を解決し、社会とともに発展する」といった経済価値と社会価値を両立させる経営</u>の視座が強く求められています。「社会課題を解決しよう！」と言うと、とかく現行ビジネスの『プラスα』といった印象を受けがちです。しかしながら、生活者が直面する『お困りごと』をビジネスで解決できれば、生活者が消費者(お客様)に変わり、新しい価値創出・新しい市場開発につながります。この視点は、既存市場に根差したマーケットインを超えて、<u>社会を軸としたアウトサイドインのビジネス</u>への足掛かりとなります。</p>
<p>上記の『10のご利益』に鑑み、サステナビリティ経営に本腰を入れて取り掛かるべき時が到来しています。目指すところは、<u>事業基盤である環境や社会面のリソースを維持・増強しながら、経済活動としての事業を持続的に成長させること</u>です。サステナビリティを経営戦略に組み込み、企業と社会の相乗発展に結びつけ、中長期的な企業価値向上を果たすことが、現代のリーディングカンパニーの矜持(きょうじ)です。これからの経営を担う次世代の人たちの腕の見せどころといえましょう。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

【コラム細田悦弘の新スクール】 第4回　サステナビリティ経営の10のご利益

依光隆明

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/04/top800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>火災直後の工房。周囲は山々に囲まれ、小鳥の声だけが山峡に響いていた(高知県北川村木積)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>限界集落という言葉は日本社会に定着したが、消滅集落はどうだろう。住民の半数以上が65歳超の限界集落は、集落再生がもう限界に達したことを意味している。消滅集落は、その名の通り消滅である。しかし行政も、人々も、いまひとつ目を向けないのは限界から消滅までの長い年月だ。人口が3人にまで減った高知県のある集落では「自然とともに土に還る」「高齢者でもできる」をキーワードに小さな試みが始まっている。(依光隆明)</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>土佐湾岸から車で半時間ほど走った山あいに北川村木積(こつも)の集落がある。ぐるりが山とあって日照時間は短いが、台風の猛威は避けられる。住むには適していたのだろう、昭和30年代には木造2階建ての立派な小学校があり、子どもたちの歓声が山峡を渡った。育った若者が都会に出て行ったころを境に人口は急下降する。昭和40年代から小さな水田をユズ畑に転換して成功するが、人口減少は止まらなかった。</p>
<p>人口3人になったこの村を不幸が襲ったのは今年5月だった。集落最年少の陶芸家、新田文江さん(77)の工房が火災で焼けたのだ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>神様、そう来るか</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>火災の原因は窯から出した缶だったとみられている。</p>
<p>その日、新田さんは新聞炭鉢の試作品を焼いていた。大きな缶にもみ殻を詰め、そこに新聞紙で作った器を入れる。詳しくいえば新聞紙をどろどろに溶かし、木型を使って鉢の形にしたものをもみ殻の海に埋める。缶をガス窯に入れ、1週間ほど高熱を加えると炭化した鉢ができる。これが新聞炭鉢である。土と山野草を入れれば、ちょっと風雅な寄せ植え盆栽に仕上げることができる。材料費はかからないし、いい感じに仕上がればインテリアとして重宝されるかも、と考えていた。</p>
<p>もういい頃合いだと缶を窯から出し、火の気がないか念入りにチェックした。いったん工房を離れ、戻ったときに火が見えた。缶の周囲が炎に包まれていた。ほかに火の気はないので缶のもみ殻から引火したとしか考えられない。震える手で119番通報し、海岸近くにある消防署から消防車が来た。消火栓はあったが、水がなかった。遠くの川までホースを伸ばし、水をかけた。全焼だった。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>呆然とした新田さんから出た言葉は、「神様、そう来るか」だった。栃木県の益子で陶芸を修行していた新田さんが木積に帰った1年後、父・義治さんが事故で全身不随となった。陶芸家として足を踏み出した直後だった。義治さんを介護しながら「こつも焼」と名付けた作品を作り続けていた。父母を看取り、70歳を超え、陶芸がいつまでできるかな、と思い始めたときに起きたのがこの火事。これはもう陶芸をやめろということだな、すっぱりやめよう、と考えた。<br />年齢のこともあり、新田さんは窯の再興をいったんは諦めた。諦めの中で続いた幾つかの奇跡が、諦めを覆す。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box col2">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/06/02_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>全焼した工房で、窯だけが屹立していた</sup></div>
</td>
<td class="separator"></td>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/06/03_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>村民の協力で立ち上がりつつある建屋</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>全焼した工房の中で、40年前から愛用を続けたガス窯が屹立していた。あたかも「まだ自分は働ける」と主張するかのように。窯に製造会社の名が書かれていた。知人に調べてもらうと、もうすでに存在していなかった。諦めかけながら似た名前の会社に電話してみると、当たりだった。従業員が、いわばのれん分けで新会社を立ち上げていた。</p>
<p>建屋を再建したあとに窯を直すことになった。驚いたのは協力金を寄せてくれる人々の多さだった。村内の知人たちは手作業で小屋を建ててくれた。8月、小さくてシンプルな新工房が姿を見せた。同月末、窯の会社が愛知県からはるばるやってきた。窯は直った。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/06/04.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>再生したガス釜と新田さん。集落最年少だが、いつの間にか70歳を超えた</sup></p></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>新聞炭鉢は年寄りでも誰でもできる</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>火災に遭う前、新田さんはこの窯でさまざまな陶器を焼いていた。コーヒーカップ、湯飲み、皿、花瓶、などなど。考えた末、新田さんは再生した窯を新聞炭鉢専用に使うことにした。「新聞炭鉢は年寄りでも誰でもできる。私たちにそれをやりなさいという神様のお告げやったかもしれん」と新田さんは言う。初の窯出しは10月末だった。60個の炭鉢ができていた。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/06/01_2.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>焼きあがった新聞炭鉢</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/06/0ne.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>炭鉢で育つ山野草。炭鉢が根っこや苔で覆われていく</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>新聞炭鉢には「こつも炭丸」の名をつけた。土を入れ、山野草を植えると炭の鉢から根っこの先が出る。やがて根が鉢を覆い、まるで苔玉のような風情を醸し出す。排水性、保水性ともによく、使い終われば土に還るのもまたいい。新田さんは「自然に近く、壊れやすく、もろくはかない。千利休のわびさびを表現したような作品になります」。さらに続けて、「なによりお年寄りにもできるのがいい」。</p>
</div>
<div class="elem_various">
<div class="elem_pik_box">
<table class="elem_pik_box">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/12/06/06syokutshu3.JPG"/></div>
<div class="elem_paragraph"><sup>新聞炭鉢で育てている食虫植物</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>作った炭鉢を村内のお年寄りに分け、お年寄りたちは身近な山野草を入れて育てる。いい感じで育ったらいろんなところで売ろう。クロード・モネの庭を再現した村内の観光施設「モネの庭」でも売ってもらおう。少しでもお金になればお年寄りに元気が出る、限界集落が活気づく、と考えている。</p>
<p>役場近くの集落で新田さんの同級生が食虫植物を栽培・出荷していたが、9月に亡くなった。新田さんは、彼が育てていた食中植物も炭鉢に入れたいと考えている。「こんな形でつなげていけたらえいなあと思って」と新田さん。</p>
<p>新聞紙が炭になり、植物と一体になってやがては土に還る。人々の思いがつながって、消滅へと進む集落に声が戻る。</p>
</div>
</div>
</div>
<p></div>
<p></p>

地方創生

資源循環

新聞紙の“第二人生”　人口3人の高知・限界集落で始まった「炭鉢」の試み

サステナブル・ブランド ジャパン編集局

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/11/10/top800.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>着終わったら「リユースバッグ」に入れて下取りへ(ZOZO提供のイメージ画像)</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ファッションの世界でも、原材料の生産・調達から製造・販売、さらには商品が活用された後の回収やリユース、リサイクルまでの全工程において、「サステナブル」であるかどうかは今、一つの重要な物差しになっている。そうしたなか、この10年の間に生活者の意識が大きく変わったものの一つに古着があるだろう。流行に左右されることなく、好きな服を好きな時にネット上で買い、一定期間楽しんだ後は、下取りに出して次の服を買う。そんなファッションの循環を生み出し、加速させるのに一役買ってきたのが開設12年目に突入した<a href="https://zozo.jp/zozoused/">ZOZOUSED(ゾゾユーズド)</a>のプラットフォームだ。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>ECサイトで古着を買う、自分が着ていた洋服を売る行為が身近に</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「世の中的にはサステナビリティへの意識の高まりが非常に大きいと思います。古着をECサイトで購入することが、サステナブルなファッションの楽しみ方として、一般的に受け入れられるようになった。事業者サイドから見ても、そう、すごく感じています」</p>
<p>この10年の古着を巡る生活者の感覚の変化を、島村龍也・ZOZOマーケティング本部USED事業部ディレクターが実感をもって語る。ZOZOUSEDは、年間購入者数1100万人以上(2023年9月末時点)のファッションに特化したECモールである<a href="https://zozo.jp/">ZOZOTOWN</a>上の古着専門ゾーンとして2012年11月にサービスを開始し、この11年間、リユースに向き合い続けた。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/11/09/ahimamura_2.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ZOZOUSEDの11年間の歩みとこれからについて語る島村龍也・ZOZOマーケティング本部USED事業部ディレクター(ZOZO提供)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_block color">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>島村龍也(しまむら・たつや)氏  青山学院大学卒業後、2010年にクラウンジュエルに入社し、物流、バイヤー、MD、PMなど幅広く経験。2019年のZOZOへの吸収合併以降、USED事業部のディレクターとしてZOZOUSED事業全体を統括</p>
</div></div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ZOZOUSEDの開設の翌年には大手フリマアプリもスタートし、国内のECサイト上の古着を含めたリユース市場は一気に、且つジワジワと開花した感もある。それより前、かつての古着のイメージを、島村氏は「例えば、ヴィンテージのような一点物で、とてもプレミアムなものとされる一方で、新品は予算的に買えない時にも古着なら買えるというような意識もあったと思います」と振り返る。その上で、ECサイト上で古着を買う生活者の心理を「かつての古着のイメージがだんだんと薄れ、古着を買うという行為、そして自分が着ていた洋服を売るという行為自体のハードルが低くなり、身近に感じるようになってきたのではないでしょうか」と分析する。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/11/09/ZOZOUSED_PC.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ZOZOUSEDのTOP画面</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>そのように市場が広がりを見せるなかで、ZOZOUSEDは、他のフリマアプリなどとどう差別化を図ってきたのか――。大前提として、ZOZOUSEDはZOZOTOWN上の1サービスであり、島村氏は、「ZOZOTOWNという一つの大きなプラットフォームの中で、新品と古着が共存するからこそ、ブランドや価格を横断し、点ではなく、線のサイクルで循環型ファッションを促進することができた」と強調する。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>「ZOZOだからこそ」の下取り、〝買い替え割〟が古着の回収を促進</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>例えばZOZOTOWNはカジュアルブランドからハイブランドまで8900以上のブランドを取り扱い(2023年9月末時点)、ZOZOUSEDでは7000以上のブランドから常時約80万点の古着アイテムを中古ならではの価格で提供している(同年9月時点)。ここで挙げられる『ZOZOだからこそ』のサービスが、2016年導入の洋服の下取りサービスである“<a href="https://zozo.jp/_news/tradein/default.html">買い替え割</a>”に加え、2019年導入の、過去に購入したアイテムをいつでもZOZOポイントと交換できる“<a href="https://zozo.jp/_news/tradein/point.html">いつでも買い替え割</a>”だ。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/11/09/zozoused_kaikaewari.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>「買い替え割」の画面の一例</sup></p>
<p> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>具体的には、ZOZOTOWNで2回目以降、洋服を購入する場合、過去に購入したアイテムのうち、買取対象アイテムの下取り価格が提示され、その場で下取りを希望し、アイテムを選択すると、その金額分が値引きされる(=買い替え割)。また、いつでも好きな時に、過去に購入したアイテムの下取り価格を確かめ、下取りに出すことを決めれば、その金額分のポイントと交換し、次の買い物に使うことができる(=いつでも買い替え割)。希望者は、購入したアイテムと一緒に届く「リユースバッグ」(繰り返し使用可能)に、該当するアイテム(下取りに出した洋服など)をそのまま入れて送れば取引は完了する。個別に梱包して送るといった面倒な手続きは一切不要だ。</p>
<p>買い替え割で下取りしたアイテムを送付する際、ZOZOTOWN以外で購入したアイテムも同梱することで買取を依頼することが可能。この場合、送ったアイテムは後日、ZOZOにより査定がなされ、その金額分がZOZOポイントと交換か、あるいは現金で振り込まれるという。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/11/09/zozousedzu.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ZOZOUSEDの「買い替え割」の仕組み</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>これらの仕組みを利用した古着の回収点数は、2020年度約700万点、2021年度約800万点、2022年度約1000万点と、着実に伸びている。島村氏はその要因を、「なぜ人は古着を買うんだろうかというところに帰結するかもしれませんが、やはり古着とは、コストを抑えながらおしゃれを楽しむということを自動的にかなえるものだと感じています」と古着の一側面を語りつつ、「1人の人にとって衣服に使える額が決まっている中で、古着をうまく組み合わせることでより多くの選択肢を持てる。過去に買い逃したアイテムも、古着であれば少しお得に手にすることができ、古着を介して新しいブランドを知ったり、今までチャレンジできなかったジャンルにも挑戦できます。そのように古着によって、いろいろな可能性を広げていけるという考えが、ユーザーの方々に浸透してきたのではないでしょうか」とみる。</p>
<p>そうした傾向はもちろん、ZOZOUSEDとして“設計”してきたことではあるものの、「こちらが考えていた以上に受け入れられた。今では新品を買うのと同じように古着を買う選択肢があると同時に、不要になったアイテムもこれまでならば捨ててしまったりしていたのが、どのぐらいの金額で買い取ってもらえるんだろう、というような気持ちになる方が増えているのを実感しています」。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>年間約1000万トンを回収・リユースで、CO2排出量を約1万8800トン削減</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>環境省の特設サイト「<a href="https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/">SUSTAINABLE FASHION〜これからのファッションを持続可能に</a>」によると、海外で生まれ、日本で消費される衣服の、原材料調達から製造段階までに排出されるCO2排出量は年間約9万キロトンにのぼる。これを服一着に換算すると、CO2排出量は約25.5キログラムで、これは500ミリリットルのペットボトル約255本分に当たるという<sup>※1</sup>。さらに原料となる植物の栽培や染色などで大量の水が使われ、生産過程で余った記事などの廃棄物も大量に出る。</p>
<p>こうした環境負荷削減に向け、ZOZOUSEDでは、例えば2022年度に回収・リユースした約1000万点を、同じアイテム数の新品を生産した場合と比較すると、「製造過程から廃棄焼却までに発生するCO2排出量を約1万8800トン削減したのと同じ効果がある<sup>※2</sup>」とする数字を示している。「捨てない、という選択肢は、捨てることによって焼却しなければならなくなった時に出る温室効果ガスを出さなくても済み、大切な資源の保全につながります」。</p>
<p>ZOZOUSEDの特徴としては、仕入れから販売までの各プロセスにAIを導入していることも挙げられる。ZOZOTOWNで販売する新品とZOZOUSEDで販売する古着の膨大なデータを活用したAIによって、売れる金額とタイミングを高精度に予測、より高い買取金額の提示を実現しているほか、気象情報をうまく使って、季節性の強い商品の売れ残り率を削減することにも効果を挙げているという。つまり、テクノロジーと買い替え割などの柔軟なサービスを掛け合わせ、一次流通と二次流通両方の事業を展開するZOZOならではの仕組みでファッションの循環を加速させてきたのがZOZOUSEDのこの11年の歩み、と言える。</p>
<p><sup>※1 2019年時点における服の国内供給量と、2020年の調査に基づいて算出</sup><br /><sup>※2 環境省が推奨する3R原単位の算出方法に基づき、新品の生産・流通・廃棄時に排出される二酸化炭素量を推計</sup></p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>ZOZOという会社がハブになり、ファッション業界全体をより良く</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/community/column/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/11/09/zozosyaoku800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ZOZOの西千葉本社屋（ZOZO提供）</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ZOZOは2021年4月、サステナビリティステートメントとして、「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」を掲げた。</p>
<p>その<a href="https://corp.zozo.com/sustainability/policy/#:~:text=4%E3%81%A4%E3%81%AE%E9%87%8D%E7%82%B9%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%81%BF">重点取り組み</a>としては</p>
<p>1. サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供<br />2. 廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築<br />3. ファッションに関わるすべての人のダイバーシティ、エクイティ＆インクルージョン推進<br />4. 持続可能な地域づくりへの貢献</p>
<p>の4つを推進。</p>
<p>具体的には、2030年度までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「<a href="https://corp.zozo.com/news/20220202-17717/">2030カーボンニュートラル宣言</a>」に加え、取引先などで排出される温室効果ガス排出量(スコープ3)も含めたサプライチェーン排出量を、2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」を目指しているほか、2030年までに取締役や上級管理職(部長以上)の女性比率を30%以上にするといったKPIの達成を、全社一丸で目指している。</p>
<p>中でも「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」はZOZOUSEDの在り方そのものであり、上述したように、買い替え割などのサービスで実現してきた。さらに、ZOZO全体としては出店ブランド企業へのエンゲージメントを高め、ブランドと共につくるサステナビリティ基準をもとに商品を表示するなど、人権や環境に配慮されたサービスを推進していく考えだ。</p>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「ZOZOは、地球環境だけではなく、生産や製造の現場の労働環境など、人権の問題にも発展していくんだということをしっかりと確認して取り組むようにしています。我々1社だけでできることは多くはない。でも一方で、我々ZOZOという会社がハブになり、少しずつでも仲間を増やしていくことで、ファッション業界全体をより良くしていくことは可能なんじゃないかと思っています」</p>
<p>2022年にはファッション業界のサステナビリティ情報を幅広く発信する常設コンテンツ「<a href="https://zozo.jp/elove/">elove by ZOZO (エラブ バイ ゾゾ)</a>」もZOZOTOWN上でローンチしている。こうした方針を踏まえた今後のZOZOの目標を、「ファッション業界のインフラになっていきたい。全社でサステナビリティに力を入れていく」と力強く語る。</p>
<p>2030年、そして2050年以降の未来に向けて、役目を終えた洋服などをどう回収し、廃棄のない循環型の「サステナブルファッション」を構築していくか――。多数のブランドの新品と古着が一つのプラットフォーム内に共存するZOZOだからこそ生み出せる“体験価値”に今後も注目していたい。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

好きな時に好きな洋服を 着終わったら下取りに――12年目に突入したZOZOUSEDがファッションの循環を加速　

KEYWORDS

テーマ / 経済 economy

KEYWORDS キーワードから探す