![]() ソーシャル・ビジネスの説明会が行われるコンベンションセンター
|
日本同様、韓国でもソーシャル・ビジネスを展開する「社会的企業」は存在感を増している。韓国でのソーシャル・ビジネスの広がりはまだ日が浅いものの、急速に成長してきた背景には、1990-2000年代にかけて起こった経済的、社会的な事情がある。(釜山=原美和子)
サムスン、現代(ヒュンダイ)、LGといった企業が韓国にとどまらず海外市場でも飛躍し、勢いを増しているともいえるが、反面、これら企業のほかには韓国では著名な企業が少なく、経済的な地盤に脆弱性があることは否めない。このため世界規模での経済危機が起こった場合に、ダメージを受けやすいという弱点をはらんでいる。
歴代政権が常に掲げてきた「国民間の経済的格差をなくす」という目標とは裏腹に、大企業だけが恩恵や利益を受け、中小企業は厳しい立場を余儀なくされている。
特に1997年にアジア諸国を直撃した経済危機は韓国に大きな影響を与えた。経済面では、それまで韓国内をメインにした経済活動の基盤を海外にも広げるべきであること、教育の分野では海外で即戦力になれる人材の育成を行うことを打ち出し、小学校に英語教育を導入する契機になった。
こうした経済危機や一部企業への一極集中、格差の打開を視野に2000年以降、ソーシャル・ビジネスが注目され始めた。特にソーシャル・ビジネスが参入している分野は、地域活性化、都市農業、企業支援といった地域密着型が多い。
![]() 韓国の大手銀行の小冊子には、銀行がソーシャル・ビジネスの一貫として自治体と手掛けた保育園の紹介が載っている
|
「社会的企業育成法」制定
ソーシャル・ビジネスの活性化と共に推進政策の一貫として2007年に「社会的企業育成法」が制定されたことは特筆すべき点であろう。これは、国が「社会的企業」を支援するためのもので、国が認証した企業のみが「社会的企業」を名乗ることができる。
「社会的企業育成法」の主たる内容は、大きく3つに分けられる。
1.「社会的企業」として国から認証を受けた該当企業は、原則として4年間の税金(法人税と所得税)が半額免除になる
2.人件費の財政支援を受けることができる
3.連携企業についても非営利法人に対して出費する費用の援助を受けることができる
以上のように社会的企業への支援やバックアップを全面的に行っていることが分かる。
政府と非営利機関などとパートナーシップを結び、社会的企業を設立するといった試みも行われている。
例えば、大手保険会社の「教保生命」は政府の支援を受け、既存の奉仕団を基に社会的企業の設立を推進している。また、中間支援組織として「社会的企業支援センター」というものがあり、労働者協同組合運動や自活支援事業に取り組み就労創出を行っている。
しかし、このようにソーシャル・ビジネスが国の支援を受けて成長を遂げている一方で、韓国ではいまだに公的機関のサービスが充実していないという側面もある。少子高齢化が日本以上に加速しているという点からも特に「介護」や「保育」といった福祉分野でのソーシャル・ビジネスの展開と成長が期待されている。
原 美和子(はら・みわこ)