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  • 公開日:2024.04.18
  • 最終更新日: 2025.03.28
ESD教育が拓く社会 対話による深い理解と価値ある実践

    横田 伸治(よこた・しんじ)

    SB国際会議2024東京・丸の内

    Day2 ブレイクアウト

    サステナブルな未来をつくるために、教育への注目はますます高まっている。社会の担い手として、主体的に課題と向き合える人材を育てようとするESD(持続可能な開発のための教育)の現場で最も重要なテーマが「対話」だ。さまざまな社会課題に対し、子どもたちが主体的に自らの思いや考えを語り、大人がそれに真剣に向き合うことで、地域や社会に新しい価値が生まれていく。その意義や実践のポイントはどこにあるのかを小学校・高校・大学の現場に立つ教員らが語り合った。(横田伸治)

    ファシリテーター
    岡山慶子・朝日エル 会長
    パネリスト
    石田まなみ・杉並区立西田小学校 教諭6年生担任(2月時点)
    秦さやか・杉並区立西田小学校 教諭5年生担任、研究主任(同)
    勝浦寿美・東京工科大学 教養学環副学長/教授
    徳永俊一・愛媛県立今治北高等学校 商業科 教諭

    地域の大人たちの参加型授業に手応え――杉並区立西田小学校

    秦氏

    杉並区立西田小学校では、同区唯一のユネスコスクールとして、生活科や総合的な学習の時間などを活用し、全学年でSDGsについての学習に取り組む。同校の秦さやか氏は「今までのように変化に対応する子どもを育てるという教育ではなく、これからは新しい価値をつくっていく、社会を変革できる子どもたちを育てる教育が大事だ」とした上で、「これまでの学校の現場には、対話が圧倒的に少なかったのではないか」と問題提起した。

    同校では対話の実践を増やすため、子どもたちが取り組む探究テーマを互いに分類・整理したり、時事問題について友達と意見交換したりする場を総合の時間だけでなく各教科において積極的に導入している。こうした学習が発展すると、「子どもたちは、もっと対話の相手を広げたくなる」(秦氏)ため、自分たちが取り組んでいるテーマについて一緒に活動してくれるよう呼びかけるなど、保護者や地域の大人との接点も増えているという。

    石田氏

    その一例として、同校の石田まなみ氏は、「西田の丘トーク」の事例を紹介。子どもたちが大人との対話を通して取り組みのアイデアをもらおうと、地域の人たちの参加型授業として行っているもので、「子どもたちは大人が真剣に聞いてくれることや一緒に考えてくれることにとても充実感を感じている」と話した。授業をきっかけに、子どもたちは地域課題をより「自分事」として捉え、何のために活動するのかを問い直すようになるなど、行動に変化が生まれている。学校にウクライナの避難民を招くなど、実際の地域活動にもつながり、大人にとっても、地域への主体性を高める刺激になっているという。

    公教育が変わらなければならない――今治北高・徳永氏

    徳永氏

    愛媛県立今治北高等学校の徳永俊一氏は「(教育分野の社会課題の)すべての根は、『子どもたちが未来に希望を持てない社会』という共通課題だ」と断言する。同氏はサステナブルな教育を生み出すために、多様な課題に対するアプローチを現場で実践し、その経験をメディアや書籍、研究論文等で発信してきた。

    例えば教員が多忙により疲弊している現状や、家庭の経済格差が子どもの機会格差につながるなどの課題について「教育は限界を迎えている。公教育が変わらなければならない」と警鐘を鳴らす。公立学校を拠点として自治体、地元企業、研究機関などを巻き込んだ新しい地域コミュニティをつくることを提案し、「今の社会をつくった私たちの世代には責任がある。生徒も教員も希望を持てる社会に」と会場に訴えた。

    重要な、相手に学び、対話を体験する姿勢――東京工科大・勝浦氏

    勝浦氏

    「実学主義教育」を掲げる東京工科大学の勝浦寿美氏は、学生が異文化圏とコミュニケーションするための海外派遣プログラムの概要を紹介した。文化体験を目的としたシンガポール・韓国への1週間の海外研修や、イギリスやオーストラリアへの2週間の語学研修、そしてベトナムでの4週間のインターンシップなど、学生が目的や期間に応じてさまざまなプログラムを選択できる点が特徴だ。

    勝浦氏は、異文化を学ぶ際に「文化とは何かを知るところから始めるべき」とポイントを語った。プログラムを通じて日本の文化を知り、相手の文化を学び、対話を体験することで、学生たちは「自分以外の人間は皆違うということを理解する」という。

    セッション後半のディスカッションで、ファシリテーターの岡山慶子氏は「ESD教育における対話の重要性はどこにあるのか」と改めてパネリストに質問。勝浦氏は「対話をすることで自分を知ることができる」点を再び挙げ、徳永氏は「地域プロジェクトがうまくいってもいかなくても、『社会のために自分は何ができ、何ができないか?』と考えること自体が、本来の民主主義の根幹」と述べた。

    日々子どもたちと接する小学校の現場では、対話を重ねるほどに教員にとっても学びがある。石田氏は「子どもたちにとっては自分の思いを自分の言葉で伝えることが対話の始まり。対話を通じて考えが広がり、やる気につながる。学びの仲間が増えていく」、秦氏も「子どもたちがいろいろな人と対話をするほど新しい発想が出てくる。それが新しい価値につながり、目の前の課題を解決できるのではないかという自信につながる。自分たちは、大人と対等に話せる存在だと感じている子どもたちの姿勢に、私たちもエネルギーをもらえる」と語り、教育現場における対話の重要性を全員で確認した。

    written by

    横田 伸治(よこた・しんじ)

    東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、サステナブル・ブランド ジャパン編集局デスク・記者。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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